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玄武岩著 「韓国のデジタルデモクラシー」

 集英社新書(2005年7月)


初めからおふざけで失礼します。著者の名前「玄武岩」とは岩の種類ではないですか。それはさておき玄武岩氏は東京大学大学院情報学環助教授である。恐らく情報学環教授姜尚中氏の弟子であろうと思う。同じ在日朝鮮人である。東大情報学環教授姜尚中氏はよくテレビに出られ、私は公正で冷静な意見にいつも感心している。好感の持てる在日系の学者と理解していた。本ブログで一度取り上げたことがあるが、オリンピック候補地選考JOC会議においてあの東京都知事石原氏が福岡市の応援演説をした姜尚中氏のことを「あの生意気な、変な外国人」と個人攻撃した事件を思い起こす。福岡市の応援演説をしたのは姜尚中氏と王貞治氏、東京都の応援演説をしたのは建築家の安藤氏、タレントの萩原キンちゃんであった。不思議なことに福岡市の応援演説をしたのは二人とも外国人(国籍は別)です。王さんは台湾人です。それほど福岡は国際的というか東アジアの交流地点であったということです。したがって石原氏が「生意気な変な外国人」といったのはどちらのことですか。いわずもがな右翼の石原氏が差別するのは朝鮮人の尚中氏に違いありません。本書の書評の冒頭で、何故直接関係の無いこんな事件を取り上げたのかといいますと東アジアの国は歴史的に複雑に入り組んで相関しており、言葉の端々に微妙に感情が侵入してくるものなのです。ということで本書の批評の結論を言います。「差別ではなく連帯を」

本書は韓国現代政治を描いた書であり、盧武鉉(ノムヒョン)大統領の当選とその支持母体ウリ党の勝利をインターネット上の民衆主義の勝利と主張する。つまり過去の軍事独裁政権(李承番、朴正煕、全斗換、盧泰愚)から民政移管後の地域主義に依拠した「三金」政治(金泳三、金鐘必、金大中)を脱して、真の市民民主主義を確立したのが「インターネット大統領」といわれる盧武鉉(ノムヒョン)氏であるとする盧武鉉(ノムヒョン)賛歌の、我々日本人からすればいやの偏った党派的な本だと思う。盧武鉉(ノムヒョン)を大統領としかつ野党ハンナラ党の弾劾闘争から守り抜いたのが盧武鉉(ノムヒョン)を愛するインターネット支持勢力である。という単純なお話だ(若い学生だけならインタネットだけで暴走することは分るが、パソコンを触ったことも無い中高年、家庭にいる女性が踊らされることは無いはず)。それを信じるかどうかは読者にお任せする。

何故インターネット選挙と党派闘争が結びつくかというと、韓国の保守系三大メジャー新聞(東亜日報、中央日報、朝鮮日報)がメディアを独占して財閥政権に奉仕しているため権力に影響力を行使できるインターネット政治批評サイトが興った。反権力闘争の市民側の母体を形成した。それらを立ち上げたのはかって権力側から追われた人々であるので、運動は直ぐに先鋭的な反権力闘争になり自らが権力化するジレンマを抱えている。

この本を読んで私は韓国人の政治好き(闘争好き)は、日本で言えば1960年以前の安保闘争の社会を髣髴とさせてくれると思っている。しかし本書は何故ここまで盧武鉉(ノムヒョン)賛歌とウリ党擁護に徹するのか私には不思議としか言いようがない。盧武鉉(ノムヒョン)だってイラク戦争でアメリカ支持は変わらないし、韓国のおかれた国際情勢の中で行動するため制約だらけである。2007年の大統領選でどうなるか注視したい。


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