書評  060528

梅田望夫 「ウエブ進化論ー本当の大変化はこれから始まる
 ちくま新書(2006年2月初版)
 
不特定多数無限大の良質な部分にテクノロジーを組み合わせる

梅田氏は米国シリコンバレーでネットビジネスをやっておられる。氏のブログサイト"My Life between Silicon Valley and Japan"はこちら。

本書が書かれた動機は、グーグルの検索エンジン革命と、ロングテールという(微少収入×無限大需要)が一定のビジネス(クリック課金と公告業、アマゾンのWeb.2化)を成り立たせるということ、オープンソースとマスコラボレーションにより衆智を集めて迅速にソフト開発が出来ればマイクロソフトなど既存ソフトメーカに脅威を与える可能性の三要因であろう。ブログについては個人ホームページの延長・簡略化ということで革命的意義はない。昨今新聞紙上でライブドアーの問題が取り上げられ虚業産業と攻撃する旧体制側の動き目立つが、冷静にみれば財テクに迷走したインターネット企業が真にWeb.2化すれば良い問題だった。

ウエブ(ネット)世界の三大潮流

インターネット、コストダウン革命、オープンソースが次の十年間の三題潮流となって革命を引き起こす。ネット世界の革命とは1)世界的見地からの構想、2)ネット上の分身がビジネスをする経済圏、3)(微少収入×無限大需要)の価値の集積のことだそうだ。そしてこれらの革命が、IBM、マイクロソフト、メデイアなどのリアル企業を直撃して侵食しつつある事実である。膨大な投資に見合う情報と価値の独占企業が崩壊するという筋書きである。そしてそれを担うのがサーバー側(あちら側)の革命的システムである。

グーグルー知の世界を再編成する

グーグルの使命は「世界中の情報を組織化してそれをあまねく誰からもアクセスできるようにすること」であった。2004年IBMのコンピュータ事業の中国への売却とグーグルの株式公開が象徴的なパワーシフト劇であった。グーグルは30万台のコンピュータを使って情報発電所システムを構築した(その実体についての解説が本書には見られないのが不満だが)。しかしながらその資金源が年間35〜40兆円といわれる世界公告市場に頼っていることである。つまりネット社会は公告代理業に養われているといっても過言ではない。ちょっとこれでは基盤が脆弱ではなかろうかというのが私の感想である。アマゾンやヤフーというアメリカのネット企業もマイクロソフトのネット側への移行も、グーグルのテクノロジー革命に刺激され烈しい競争に入った。日本のネット企業(楽天など)はテクノロジー志向が弱いといわれるのが心配である。

ロングテールとWeb.2

アマゾンのWeb.2化とは(微少収入×無限大需要)を狙ったビジネスでネット書籍で成功し、メデイア(本屋、新聞、テレビなど)に大いに脅威を与えている。またグーグルのクリック課金による公告業参入を容易にしたことがネット経済圏の革命を推進した。

ブログと総表現社会

インターネット上で最近ブログが流行している。個人ホームページの簡易化であるが日記風に書き込んで意見が交換できることから爆発的に伸び日本でも500万を越えた。プロの表現者がメデイア依存で飯を食っているが、メデイアは本質的に受動的である。ブログは玉石混合ではあるが総表現社会を生みつつある。それは検索エンジン機能の自動秩序形成システムにより良質な情報が選択できるようになればいいのだが。まだ決定的なブレークスルーはない。

オープンソース現象とマス・コラボレーション

この問題はプログラマーの問題であり、私は関心がないので省略する。衆智を集めてすばらしいOSとソフトが短期間で出来れば、しかも無料で配布されれば良い事限りなしだが、まだまだ問題が多いだろう。ウイニーの問題でつまずいて立ち直るのが難しい。さらにマイクロソフトや配信会社の著作権問題などがあり既存メーカ側の反撃に遭うこと必死である。


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