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祖父江逸郎著 「長寿を科学する」

  岩波新書(2009年9月)

平均年齢90歳時代を迎える超高齢社会に、長寿科学は何を提案できるのか

医者の立場から老人問題を論じた書である。とはいえ著者は「臓器を見て人を見ず」式の専門的医者ではなく、いまや総合的に人生の質を語れる平成の「貝原益軒」である。以前「きんさん・ぎんさん」という元気な百歳をこす双生児姉妹が有名になった。当時は確かに100歳を超える百寿者は珍しかったが、2008年時点でなんと百寿者は3万人を超え、それほど珍しいことではなくなった。現在では「きんさん・ぎんさん」はニュース価値は無いのである。とはいえNHKが制作しているテレビ番組「百歳万歳」はなかなか好評である。65歳以上の高齢者率は2001年で18%、2020年には27%になろうとしている。日本は世界一の高齢化社会に突入している。高齢になれば個人差は大きいが、各種の生理機能が劣化してゆくいわゆる「老化」は避けられない。老化のメカニズムは複雑でさまざまな考えがあるが、一定のプログラムで進行するという遺伝子因子説や、ストレス・酸化物質という環境因子説が有名である。老化には病的老化が加わって医療野中で高齢者の占める比率が高くなってゆく。これは政府の財政を圧迫しているそうだ。三大死因であるガン・脳血管障害・心不全のリスクは高齢者ほど高い。認知症も最大の高齢者問題となってきた。高齢社会の構築にはこれらのさまざまな問題を考慮し対応できる環境づくりが求められている。高度経済成長後に急速に高齢化が進んだため、未解決な問題が山積されている。1987年から厚生省はシルバーサイエンス研究(著者が総括班長)を立ち上げて、身体医学からヘルスケアーシステムなどの社会的分野までの五つの分野での研究がスタートした。厚生省は1995年長寿医療研究センターを、2004年国立長寿医療センターを設立した。これらの厚生省の高齢者医療問題研究の中心が著者であった。本書には「プロダクティブ・エイジング」とか「サクセスフル・エイジング」とかいう外来語がいたるところに散りばめられているが、これは米国のバトラー博士の概念である。この概念は「より大きな社会と自分を取り巻く人たちとの関係において、可能な限り積極的である」ということだ。病人じみた老人・社会のお荷物というとらえ方ではなく、高齢者の存在自体が価値を生むという視点に変えてゆかなければならない。高齢者の有病率は5−10%で、まず元気な人は70−80%もいるのである。マイナスイメージばかりではなく、これらの高齢者の生活の質QOLを上げてゆくことで、社会が元気になるように視点を変えてゆこう。

著者祖父江逸郎氏のプロフィールを紹介する。彼の弟子によると、彼は戦艦大和の軍医であったが、当時の上層部の適切な判断(日本の将来を担う超優秀な人材であるためであろう。海軍兵学校を首席で卒業)により、最後の戦いの時には戦艦大和に乗船されなかったというエピソードがあって生き残った。1921年名古屋生まれで、1943年名古屋帝国大学医学部卒業後、海軍兵学校を卒業して終戦を迎えた。戦後名古屋大学医学部、国立療養所中部病院(現国立長寿医療センター長)、愛知医科大学学長などをへて退職。専攻は内科、神経内科である。2009年の今年で88歳になられている。凄いですね、88歳で著作を刊行できるとは。これこそ現役「エリート老人」です。日本に老人医学のメッカは東京都老人総合研究所と国立長寿医療研究センターの二つではなかろうか。祖父江氏は後者の国立長寿医療研究センター長を務められた日本の老人医学の草分けである。

1) 高齢化社会の到来

2000年公的介護保険が世界で始めて実施され、高齢者向け介護・福祉施設が全国で何千と作られたが、なお足らないという状況である。要介護度が4以上でなければ入所は難しい。そしてなお在宅で家族や介護保険を利用している人やひとり暮らし高齢者も多い。これまで経験したことがない「高齢社会」、「長寿社会」がさまざまな問題を抱えながら到来したのである。高齢化率は日本は世界一である。65歳以上の総人口に占める割合を高齢化率というが、1970年で7%、1994年で14%、2008年で22.1%となった。高齢化のスピードも世界一で15年で2倍になったのである。85歳以上の高齢者の2/3は女性となっている。高齢者の70%以上は一応健康だと考えられる。介助を必要とする高齢者は5%程度、寝たきりの高齢者は1.5%ほどである。85歳以上の高齢者区分では介助を必要とする率は20%程度となる。東京都老人総合研究所の研究では、自立能力は男性の方が高く、年齢とともに自立能力は低下してゆく。

100歳以上の長寿者を「百寿者」とも呼ぶ。百寿者の数は1963年にはわずか153人であったが、2002年に15475人、2003年には20561人、2008年には36276人となった。10万人あたりの百寿者を県別でみれば沖縄県が一番高い。男女別では女性が圧倒的に多い。百寿者は動脈硬化が少なく、高血圧、腎疾患も少ない。そして活動的で意欲的である。いまも90歳代の百寿者予備軍が大量に存在しており、百寿者の数もまだまだ増えそうである。いくつまで生きられるかという限界寿命は解明されていないが、現状では104歳で百寿者数の10%以下となり、114歳以上はいない。日本の百寿者の日常生活動作ADL調査結果は、41%は自立できるが、30%は劣悪な自立状況であった。百寿者の生活の質を問題にすると、元気で自立して仕事もしている現役の百寿者もおられ、こういう人を「エリート老人」と呼ぶ時代になった。現役の医師もおられる。こういう積極的な生き方をされる百寿者を「サクセスフルエイジング」というが、これには本人の健康もさることながら、家庭、経済の安定に加え、家族のサポートとくに優秀な介護者の存在が不可欠である。無為に過せば健康な体も心身機能は衰え、やがて廃用症候群に陥る。元気になんらかの社会貢献をしつつ齢を重ねる「プロダクティブ・エイジング」を全うすることがこれからの課題であろう。

我国の人口動態統計より、すでに2004年より人口は減少し始めている。65歳から75歳までの前期高齢者グループは2015年まで増加し続け、この時点から減少に転じる。第1次団塊の世代の影響である。逆に75歳以上の後期高齢者の数は増えつつけ2017年ごろに前期高齢者数を追い抜くと見られる。前期高齢者率が13%、後期高齢者率が13.7%になる。とくべつな予期しない死因がなければこの傾向は統計上の推計でかなり確かなことである。高齢化社会への対応は、加齢による疾患と障害、QOLの低下といういわゆる高齢化社会の陰の部分に「いかに対処するかということである。今、寝たきりから障害者まで約二百十万人の人がいるといわれる。介護保険が出来てから10年たったが、介護専門職の低賃金から離職が目立ち始め、在宅介護のスタッフ不足が深刻である。やむなく「老老介護」でしのいでいる有様であり、「保険あってサービスなし」という声がでている。福祉制度の自己負担制度は経済的な圧迫となりつつある。高齢者にやさしい社会とは、自助、公助、互助の協調が必要である。

2) 高齢者のQOL

高齢化社会の生活の質QOLはサービスの量と同等以上に大切である。人間の生物学的機能や疾病を扱う医学医療では、QOLの概念を適用することが多い。個人の主観的QOLには環境因子、健康関連要素、社会文化、個人的経歴背景といった客観的QOLに大きく影響される。主観的QOLは生活満足度、心理的良好感や社会的良好感のレベルが人それぞれであるため、QOLを標準化することはかなり問題がある。高齢者は身体的、精神的に脆弱であり、QOLがいつも脅かされるという不安が強い。どこでQOLの阻害要因を具体的にみてゆこう。高齢者を不安に陥れるのはまず病気である。脳血管障害は直接生命を脅かし、運動や知覚の障害をもたらす。ガン、多臓器不全、骨折、鬱病、パーキンソ病など神経変性疾患、視覚・聴覚・認知などの感覚障害、認知症の見られる広範な高次脳機能障害などは高齢者のQOLの阻害因子である。生活の質QOLを3つの分野、生命・生活・人生に分けて脳機能との関連を見る。生命の質とは生物学的生存レベルのQOLで体の構造や機能障害として理解され、生命維持に最も核心的なことは恒常性維持(ホメオタシス)機能である。これには間脳、脳幹、辺縁系などが関与し、ここをやられると生命を維持することが出来ない。医学的治療が必要となる。次に生活の質とは食事、排泄、運動などの日常的生活動作行動の能力障害のことである。脳の知覚・運動野、基底核、小脳などが関与している。リハビリでも回復しない能力障害が起きると代償的アプローチが必要となる。次に人生の質とは社会的障害でコミュニケーションなど高次脳機能が関連し、大脳皮質、連合野の問題である。もちろん社会側からの働きかけも大切であるが、その人の人生経験や価値観、生きがいに絡む人間の生き方の問題である。QOLを健全に維持するために普段から心がけることは、日常生活運動や判断思考など高次脳機能を絶えず刺戟しつつ維持を図ルことが必要である。社会問題やストレスにも対応することで、大脳とくに前頭前野といわれる部分の活性化が行われる。内に閉じこもったり、時代の流れから背をむけてはいけない。

高齢者の疾病は大変気になることである。昔は老衰という言葉があったが、今では診断技術が進歩しているので、高齢者の背後に潜む疾病がかなりわかるようになってきた。高齢者では循環器系疾患、心疾患が多い。心疾患の中では動脈硬化による心筋梗塞、狭心症など虚血性心疾患が注目されている。危険因子には食生活、運動、休養、喫煙などのライフスタイルがある。脳血管障害では脳梗塞、脳出血、硬膜下出血やクモ膜下出血が多い。高齢者は気がつかないようで軽症の無症状梗塞が進行している場合がある。CT、MRI画像診断で判明する場合が多い。脳血管障害による日常生活動作ADL阻害は寝たきりになる要因である。高齢者に多いのが肺炎による死亡である。口の中を不潔にしておくと最近が発生し気管支炎や肺炎の要因になり、脳梗塞障害などによる嚥下機能不全で食物が肺にはいり肺炎を起こす。後期高齢者に多いので注意が必要だ。パーキンソン病とその類縁疾患、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症ALSなどの神経変性疾患になると、日常生活動作が著しく阻害され介護が必要となる。パーキンソン病は中脳の神経細胞のドーパミン生産が減るために起こる運動障害で、抗パーキンソン薬が病気の進行を遅らせることが出来るが、完治は難しい。厚労省は難病に指定している。次に高齢者で注目されるのが骨粗しょう症である。これには老人性粗しょう症と、女性の閉経後の女性ホルモン欠乏からくる閉経後骨粗しょう症がある。高齢者の女性に骨粗しょう症が多いのはこのためである。骨粗しょう症マーカーによる診断があり、女性ホルモンなど治療法には女性ホルモンなどの骨吸収剤投与、ビタミンD投与などがある。運動、塩分控えめ、日光にあたる,タバコ・酒を控えるなど普段から心がける必要がある。高齢者にとって見過ごされがちなのが鬱病である。動脈硬化、脳血流の低下、脳神経細胞の代謝低下などによって鬱病は老人病になりつつある。特に脳卒中後の鬱病状態は注目されている。几帳面で仕事熱心だった高齢者の社会的な役割が減り、結果的に孤独感が増すと鬱病になりやすく(老人性欝)、さらに環境激変、配偶者死亡などを契機として鬱病になりやすいといわれている。さらに血圧降下剤や睡眠薬が鬱と関係しているという説もある。介護老人福祉・保健施設、療養型病院で高齢者がベットに寝かされている「寝かせきり」が「寝たきり」に転化する可能性が高い。施設ではリハビリを多く援用して寝かせきりにならないよう注意が必要である。身体障害を過剰に防衛することから悪循環的に二次障害を引き起こす、いわゆる廃用症候群が寝たきりを誘導する。身体障害で運動機能が落ちている人でも、脳機能や意欲は保たれている。知的、感情的、意欲的機能などは衰えないので、不自由を克服して生きがいを見つけることがQOLにとって重要である。

3) 長寿の科学

老化のメカニズムには、遺伝因子によるプログラム説と、紫外線・老化物質蓄積などによる環境因子説という非プログラム説がある。環境説は遺伝子の切断やタンパク質合成障害、紫外線による活性酸素発生が蛋白質変性をもたらして老化に至るというもので老化促進要因の重要な研究対象となっている。しかしながら医学的には、ウエルナー症候群という遺伝性早期老化症候群は全く遺伝要因によるもので、これらの研究が老化メカニズムの解明に与える影響は大きい。少女でありながら老婆というアニメ映画が有名であるが、あんな元気な外形的老婆はありえないし、早老症候群は肉体的精神的にも老化が進行するのである。生きられるのはながくとも40歳以下である。死因はガンや心筋梗塞である。普通の成人細胞の分裂回数は10−30回であるが、早老症の細胞は2回くらいで死に至る。また自然突然変異率が高い。筋緊張性ジストロフィーは常染色体優性遺伝であり早老症の1タイプである。老化は若年より現れ寿命も短い。ウエルナー症候群は第8常染色体短腕部の遺伝子異常でヘリカーゼ酵素が作れない。ヘリカーゼはDNA・RNAの修復・転写・翻訳に関るもので、これがないと老化やガン発生の要因となるので老化研究の重要な問題となっている。

長寿であるにはどのような要件が必要か。百寿者について遺伝と環境条件を組み合わせた総合的な検討がなされている。家系調査ではやはり疾病などの発生しにくい体質をもっているようだ。体質としては体温が低い、血中インスリン値が低い、長寿マーカーであるDHEA−S値が高いということが指摘された。DHEA−Sは性ホルモンの一種で抗老化作用がある。長寿者は女性が圧倒的に多いが、生活動作SDLは男性の方が良好である。つまり男性の長寿者には寝たきりが少ないということだ。長寿者の死因は肺炎・感染症が多く、ガンも多くなった。まさに長寿であるがゆえの疾病である。加齢によってしだいに精神神経活動は弱まる。記憶や計算といった流動性知能は加齢の影響を受けやすいが、思考・判断・創造性などの結晶性知能は高齢まで保たれているようだ。加齢による身体機能の低下を見て行くと、神経伝導速度や基礎代謝率や細胞内水分量は90才ごろまでは盛時の80%は維持されるが、腎血漿流量や最大呼吸容量などは盛時の50%以下に低下する。1997年より国立長寿医療研究センターで同じ人の集団(コホート)の時間的変化を追跡する研究が開始された。これによって加齢による身体的諸機能の変化が把握され年齢による臓器や組織の機能変化の実態が分るようになる。

年齢と共に認知症のリスクが高まるが、認知症とは曖昧な捉え方であったので総合すると、「慢性的進行をとって、高次大脳皮質機能である記憶・思考・見当識・計算・学習・判断機能が低下し、情動の統制や社会行動の低下が見られ、意識障害はないが、せん妄が共存することがある」とされる。65歳以上の高齢者の認知省の有病率は4−6%とされる。間もなく認知症老人は300万人を超すことが予想される。老人施設の入所者の80%は認知症である。認知症は脳血管性とアルツハイマー型に分けられる。今やアルツハイマー性の方が多くなっている。アルツハイマー型の特徴は大脳皮質の萎縮、組織所見でアミロイド蛋白(Aβ)老人斑、PHFτ蛋白神経原線維変化が見られる。アルツハイマー型認知症に一部は家族性遺伝があり染色体上の3種の遺伝子異常(APP、PS1、PS2)が発見された。またアポリポ蛋白質(ApoE)遺伝子の関与もあるという。アルツハイマーマーカーとして脳脊髄液中のリン酸化τたんぱく質の指標がある。アルツハイマーの治療は対症療法的なものが主で、なかでもアミロイド蛋白(Aβ)を免疫的に攻撃するワクチンが部分的に成果を挙げている。進行を抑制することが主で改善することは難しい。認知症を呈する神経線維変性疾病のなかでアルツハイマーについで多いのがレビー小体型認知症である。パーキンソン症に似たパーキンソニズムと認知症が主症状で、ビー小体という封入体が脳幹だけでなく大脳皮質、扁桃核に多数存在するという特徴がある。認知症の予備軍といわれる軽度認知障害MCIが最近注目されており、「もの忘れ外来」が各地に設置されている。65歳以上では約25%がMCIにあたり、程度の差こそあれ高齢者の誰もがこのような状態になる。

高齢者では転倒の危険性が高く、骨粗しょう症の女性で大腿骨骨折を起こしやすい。高齢者は足が上がっておらず、絨毯一枚の厚さでも転びやすい。又めまいや起立性低血圧でたちくらみが起こって転倒する。転倒の可能性はバランスの維持能力に関係するので、片足起立時間測定で予め自分の機能の衰えを知っておくことは重要である。65歳では40秒、70歳で30秒、75歳で20秒、80歳で10秒が目安である。高齢者は浴室での事故が多い。冬季は浴室暖房の対応が必要である。意識障害などで溺死することもある。すべって転倒のリスクも高いので手すりが必要だ。これらの住環境整備には地方によっては補助金が出るところもある(車椅子も含めて介護用品の本人負担は一割)。日常生活支援機器、健康支援機器、ベットなど医療介護支援機器の開発が盛んに行われている。

年齢別の生存率は時代とともに大きく高齢側まで100%近い状態が続くようになった。戦前までは乳幼児死亡率が高かったため10歳まで生きられるのは80%であったが、戦後医療科学の進歩と栄養状態の大幅改善によって乳幼児から幼年期の死亡は急減し、高度経済成長が終る1970年代には40歳まではほぼ平坦な生存率(99%)になった。それ以降はガンや難病克服、循環器脳血管疾病予防生活運動の成果により、50歳以降の生存率が改善され、1990年にほぼ現在の生存率曲線となった。60歳で生存率は98%、70歳で95%、80歳で80%、90歳で35%、100歳で5%である。こうして寿命の伸びとともに、生理的老化が比較的長く自然の状態に保たれ、病的老化の少ないライフスタイルが次第に浸透していった。人生は血管とともに老いるといわれるように生活習慣病が人生の長さをきめる時代となった。遺伝子の末端に長く続く「テロメア」が細胞分裂のたびに50−100塩基分短くなるといわれる。寿命の長さはこのテロメアの長さがきめているのではないかという運命説が囁かれている。がん細胞はテロメアを合成する酵素「テロメラーゼ」をもっており、寿命は無限である。抗ガン剤開発でこのテロメラーゼの働きを抑制する試みがなされている。

4) 長寿社会をどう生きてゆくか

日本では2000年から介護保険制度という世界初めての試みが開始された。介護保険制度を運営するには,医師かた看護師、介護師、保健師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ケアマネージャー、ホームヘルパー、介護用品福祉機器メーカーなど多くの職種が必要である。長寿社会には光と陰の部分がある。80−85%は光の部分のグループに相当するが、15−20%は陰の部分に居る。老化はメタボリックシンドロームつまり生活習慣病からやってくる。これが光の部分の割合を高める要因である。生理的に「生きている」から意欲的に「生きてゆく」という生活の質(人生の質)へ移ることで天と地の違いが生まれる。ストレスにめげず身体と精神的なバランスをとりながら、人生経験と知恵、老人力、慈悲という個人的価値に生きることこそ文化的生活というのではないか。社会貢献、社会への飽くなき好奇心、友達を大切にする心がコミュニケーションの基本である。WHOは健康についてこう定義している。「健康とは身体的、精神的、社会的にも良好な状態である」という。身体面の健康には運動、栄養、休養のバランスを取ることである。そして高齢者には「生きがい」というエネルギーを中心に持っていることだ。


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