筑西雨歇遠山横 筑西雨歇んで 遠山横たわり
風定煙収江水平 風定り煙収て 江水平なり
日射宿雲天上動 日射し宿雲 天上に動き
渡頭野鴨鏡中行 渡頭野鴨 鏡中に行く
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暑風雨歇緑成堆 暑風雨歇んで 緑堆を成し
杜若芳姿臨水開 杜若芳姿 水に臨んで開く
竹裡老鶯穿樹去 竹裡老鶯 樹を穿って去り
岸邊飛燕向江来 岸邊飛燕 江に向かって来る
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夏雨初過景物奇 夏雨初て過ぎ 景物奇に
遠山眉黛興無涯 遠山眉黛 興涯り無し
風江潮動水窮處 風江潮動し 水窮る處
南北東西麦熟時 南北東西 麦熟する時
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迎夏残紅花作塵 迎夏残紅 花は塵と作り
繊繊碧草暗愁新 繊繊たり碧草 暗愁新なり
柴門閑寂誰相問 柴門閑寂 誰か相い問う
空院図書獨可親 空院図書 獨り親しむ可し
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乱山五月踏青行 乱山五月 青を踏んで行く
花落游魂又一聲 花落ち游魂 又一聲
流水遶渓涼気漲 流水渓を遶りて 涼気漲り
蘚苔石瀬緑陰清 蘚苔石瀬 緑陰清し
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暮春滴血子規悲 暮春血を滴らせ 子規悲しみ
紅薬残花能幾時 紅薬残花 能く幾時ぞ
斗酒年年催老早 斗酒年年 老を催すは早く
窮通欲迫得遅 窮通迫らんと欲し 閧得るは遅し
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送春恨雨故人稀 春を送り雨を恨む 故人稀に
吾到頽齢百事非 吾頽齢に到り 百事非なり
老骨傾樽今日是 老骨樽を傾け 今日は是なり
不羞白髪幾時帰 白髪を羞ず 幾時か帰る
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桃杏園林新緑酣 桃杏の園林 新緑酣に
梅天江畔遠曳藍 梅天の江畔 遠く藍を曳く
白雲隆起湧滄海 白雲隆起して 滄海に湧き
遊艇任流横碧潭 遊艇流れに任せて 碧潭に横たわる
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若鮎何処問沙鴎 若鮎何処と 沙鴎に問えば
雲雀高天近麦秋 雲雀天高く 麦秋近し
滴翠梅黄紅薬老 滴翠梅は黄に 紅薬老い
濃陰筍長緑桑柔 濃陰筍長じ 緑桑柔らかなり
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薫風爽快麦秋天 薫風爽快なり 麦秋の天
新緑点紅榴火燃 新緑紅を点じて 榴火燃ゆ
春去芭蕉青展扇 春去て芭蕉 青扇を展べ
夏来蓮葉碧舗銭 夏来て蓮葉 碧銭を舗く
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宇治浄院紫藤驕 宇治浄院 紫藤驕り
逆水迢迢翠岫遥 逆水は迢迢 翠岫遥なり
対岸飄風蒼樹吼 対岸に飄風 蒼樹吼え
陽光赫赫赭山揺 陽光赫赫たり 赭山揺らぐ
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槐夏清陰暑気微 槐夏清陰 暑気は微に
麦秋乳燕掠軒飛 麦秋乳燕 軒を掠めて飛ぶ
風揺紫糸藤花老 風は紫糸を揺して 藤花老い
雨潤青珠梅子肥 雨は青珠を潤し 梅子肥ゆ
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南畝群蛙喚雨喧 南畝の群蛙 雨を喚んで喧し
残春無跡緑陰繁 残春跡無く 緑陰繁る
陽光照水難成酔 陽光水を照して 酔を成し難く
虚寂無情易断魂 虚寂無情 魂を断ち易し
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野行五月麦宣晴 野行五月 麦は晴れに宣しく
雲雀喧喧不惜聲 雲雀は喧喧と 聲を惜しまず
蝶粉翩翩翻碧欄 蝶粉は翩翩と 碧欄に翻り
傷春片片落紅英 春を傷んで片片と 紅英落つ
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眼随片片惜花愁 眼は片片に随て 惜花の愁い
恨満枝枝喚雨鳩 恨は枝枝に満て 雨を喚ぶ鳩
風舞黄塵無吠犬 風は黄塵を舞わせ 吠犬無く
日斜緑水有牛 日は緑水に斜に 闍漉Lり
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立夏江村翠已斉 立夏江村 翠已に斉く
遠山千黛路東西 遠山千黛 路東西
陰雲麦秀空花落 陰雲麦秀で 空く花落ち
愁雨春深自鳥啼 愁雨春深く 自ら鳥啼く
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首夏渓橋翠樹遮 首夏渓橋は 翠樹遮い
薫風吹送只鳴蛙 薫風吹き送て 只だ鳴蛙
紅飛暮雨帰流水 紅飛び暮雨 流水に帰る
紫散朝雲詠落花 紫散じ朝雲に 落花を詠ず
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緑水疎籬翠滴衣 緑水疎籬 翠衣に滴り
梨園日斜暮雲飛 梨園日斜めに 暮雲飛ぶ
荒城街路留春色 荒城の街路 春色を留め
千黛江山繋落暉 千黛の江山 落暉を繋ぐ
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残春昨夜雨兼風 残春昨夜 雨は風を兼ね
無念小園飄落花 無念小園に 落花飄る
深院含愁君似旧 深院愁を含んで 君旧に似て
幽庭故惜我為翁 幽庭故に惜む 我翁と為る
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晩春五月曳軽烟 晩春五月 軽烟を曳き
柳糸涙痕誰為憐 柳糸涙痕 誰が為に憐れむ
爛漫花王紅艶艶 爛漫たる花王 紅艶艶たり
夭夭柿葉翠娟娟 夭夭たる柿葉 翠娟娟たり
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江城一刻酔春宵 江城一刻 春宵に酔う
散入南風香暗飄 南風散入し 香暗に飄る
鶯老牽愁紅芍薬 鶯老い愁を惹く 紅の芍薬
花衰結恨夜蕭蕭 花衰え恨を結び 夜は蕭蕭
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断絶人喧江上村 人喧断絶す 江上の村
今宵携酒客敲門 今宵酒を携え 客門を敲く
傾樽吟詠春三夜 樽を傾け吟詠す 春三夜
窓外朧朧月一痕 窓外に朧朧と 月一痕
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宴莚微酔獨憑欄 宴莚微酔し 獨り欄に憑れば
緑吐軽陰春事闌 緑は軽陰を吐て 春事闌なり
潤露低垂花帯涙 露に潤って低垂 花は涙を帯び
更将紅燭夜窓寒 更に将に紅燭 夜窓寒なり
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淡紅桃李満山稠 淡紅の桃李 満山に稠し
新緑渓間禅院幽 新緑の渓間に 禅院幽なり
五重塔台林外聳 五重の塔台 林外に聳え
伽藍金殿鏡中浮 伽藍金殿 鏡中に浮かぶ
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清香欲放百花辰 清香放たんと欲す 百花の辰
国艶如燃悩殺神 国艶燃るが如く 神を悩殺す
夕刻酒醒窓下夢 夕刻酒醒め 窓下の夢
人生看得掌中春 人生看得す 掌中の春
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暖日尋芳野水涯 暖日芳を尋る 野水の涯
春風被押到旗家 春風に押され 旗家に到る
雅人賞飲村村酒 雅人賞飲す 村村の酒
酔客観遊處處花 酔客観遊す 處處の花
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暁紅軽拆踏青行 暁紅軽く拆け 青を踏んで行く
露滴潤衣香霧横 露滴り衣を潤し 香霧横わる
杜鵑転枝凝望眼 杜鵑枝を転じ 望眼を凝らし
夭桃冷艶動吟情 夭桃冷艶 吟情を動かす
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今朝雲去雨餘天 今朝雲去り 雨餘の天
暁露前庭春物妍 暁露の前庭に 春物妍なり
争艶朱欄花爛漫 朱欄に艶を争って 花爛漫と
吹風翠檻竹嬋娟 翠檻に風を吹いて 竹嬋娟たり
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霧雨濛濛未忍回 霧雨濛濛 未だ回るを忍びず
千株国艶満庭栽 千株の国艶 満庭に栽ゆ
楼台酔客思花発 楼台の酔客 花の発すを思い
憂色騒人待欝開 憂色の騒人 欝の開くを待つ
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