回想人生往時空 人生を回想すれば 往時空なり
豈知今日白頭翁 豈に知らんや今日 白頭翁
双垂流涙三更月 双垂流涙す 三更の月
寒雁連江一径風 寒雁江に連り 一径の風
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清夜登楼凍月浮 清夜楼に登れば 凍月浮かび
眼前一水枕寒流 眼前一水 寒流に枕す
身寧心泰応先喜 身寧心泰 応に先ず喜ぶべし
無力貧窮莫漫愁 無力貧窮 漫に愁う莫れ
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残夜雲収霜意酣 残夜雲収り 霜意酣に
稜稜寒迫我何堪 稜稜と寒迫り 我何ぞ堪えん
檐鈴不動風微北 檐鈴動かず 風微に北し
市井無聲月已南 市井聲なく 月已に南す
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寒林片片雪花軽 寒林に片片と 雪花軽く
霜岸唖唖鴉影驚 霜岸に唖唖と 鴉影驚く
粉萼灑天方満樹 粉萼天より灑いで 方に樹に満ち
白綿堆地稍沈城 白綿地に堆め 稍城を沈む
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寒威凛凛恐難勝 寒威凛凛 恐く勝え難く
袖手包裘待日升 手を袖にし裘に包って 日の升るを待つ
冽冽北風鳴柵鎖 冽冽たる北風 柵鎖を鳴らし
啜茶老病困侵陵 茶を啜る老病 侵陵に困む
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獨度長江渺夕波 獨り長江を度れば 夕波渺たり
紛紛白雪払寒蓑 紛紛たり白雪 寒蓑を払う
麗姿宿鷺沙邊久 麗姿宿鷺 沙邊に久しく
碧浪飢鴎水上多 碧浪に飢鴎 水上に多し
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黙釣不知生暮潮 黙釣 暮潮生じるを知らず
昏来艇主問帰橈 昏来りて艇主 帰橈を問う
双鴛波浪疑相蕩 双鴛波浪に 相蕩すかと疑い
孤雁哀聲勿自消 孤雁哀聲 勿ち自ら消ゆ
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寒侵貂褐酒微消 寒貂褐を侵し 酒微く消え
油凍青燈已正宵 青燈油凍て 已に正宵
市井無聲風淅淅 市井聲無く 風淅淅
白綿一尺雪蕭蕭 白綿一尺 雪蕭蕭
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昨夜紛紛若撒塩 昨夜紛紛と 塩を撒くが若く
今朝成雨已泥沾 今朝雨と成り 已に泥沾ず
声寒童子敲氷柱 声寒く童子 氷柱を敲き
門巷飢鴉就雪簾 門巷の飢鴉 雪簾に就く
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凍水糢糊風拂煙 凍水糢糊 風は煙を拂い
高楼浅酌放吟鞭 高楼浅酌 吟鞭を放つ
槍先銀色寒山頂 槍先銀色 寒山の頂
飛散紛紛積雪邊 飛散て紛紛 積雪の邊
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七十衰翁獨把竿 七十衰翁 獨り竿を把り
一双落雁渡江干 一双落雁 江干を渡る
狂風烈烈吹蒼浪 狂風烈烈 蒼浪を吹き
密雪冥蒙送大寒 密雪冥蒙 大寒を送る
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陰雲黯黯遂寒来 陰雲黯黯と 寒を遂て来り
千里稜稜雪意催 千里稜稜と 雪意催す
脉脉気凝銀世界 脉脉と気凝り 銀世界
玲玲江冷玉花台 玲玲と江冷に 玉花台
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愁吟獨老歳寒身 愁吟す獨老 歳寒の身
暮景蒼茫未上春 暮景蒼茫と 未だ春を上らず
急霰打簾始乱眼 急霰簾を打て 始て眼を乱し
銀花満地勿迷神 銀花地に満て 勿ち神を迷す
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如黛煙横暮色深 黛の如き煙横り 暮色深く
市聲寂寂夜沈沈 市聲寂寂と 夜沈沈たり
兎駆凍月出寒谷 兎は凍月を駆て 寒谷を出で
風遂霜雲度遠岑 風は霜雲を遂て 遠岑を度る
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五更過雁報暁聲 五更過雁 暁を報ずる聲
万里霜風寒意生 万里霜風 寒意生ず
東麓星疎晨却暗 東麓星疎に 晨却て暗く
西天月残夜還明 西天月残り 夜還て明なり
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東空紅焼曙鴉啼 東空紅に焼け 曙鴉啼き
玉井無聲送馬蹄 玉井聲無く 馬蹄を送る
開戸望西残月冷 戸を開け西を望めば 残月冷かに
疎林凍影暁風凄 疎林凍影 暁風凄たり
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残夜空窓孤月窺 残夜空窓に 孤月窺い
悄然対座未明時 悄然と対座す 未明の時
五庚炉冷寒無寝 五庚炉冷かに 寒して寝る無く
東白晨星睡已遅 東白晨星 睡已に遅し
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独夜燈残火失紅 独夜燈残るも 火は紅を失い
稜稜霜気満寒叢 稜稜たる霜気 寒叢に満つ
糢糊東白臨窓暁 糢糊として東白く 窓に臨んで暁け
曙色西山向月空 曙色の西山 月に向かって空し
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盡日雪聲重又重 盡日雪聲 重又重
長江山影臥蒼龍 長江山影 蒼龍臥す
銀花叢岸消寒翠 銀花叢岸 寒翠消え
白鷺玲瓏点浄容 白鷺玲瓏 浄容を点ず
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雲朱日短欲黄昏 雲朱に日短く 黄昏ならんと欲す
水凍天寒氷雪腸 水凍り天寒く 氷雪の腸
孤雁一聲茅屋月 孤雁一聲 茅屋の月
皚皚半夜板橋霜 皚皚たる半夜 板橋の霜
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春風送暖又晏然 春風暖を送って 又晏然
拈筆心機勝去年 筆を拈って心機 去年に勝る
共祝師兄来酒盞 共に祝ふ師兄 酒盞来る
相迎染翰潤吟箋 相迎え翰を染めて 吟箋を潤ふ
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如黛紅雲雁影低 黛の如く紅雲 雁影低し
春風薄暮月流西 春風薄暮 月は西に流る
禁宮寅丑青山臥 禁宮の寅丑に 青山臥し
賀茂沙洲白鷺栖 賀茂の沙洲に 白鷺栖む
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一月今宵迫小寒 一月今宵 小寒迫り
同袍嘉會酔顔丹 同袍嘉會 酔顔丹し
耽談豪飲囲炉座 談に耽り豪飲 炉を囲んで座し
払面飛綿袖手観 面を払って飛綿 手を袖にして観る
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煌煌旭日及新年 煌煌たる旭日 新年に及び
瑞色東風生凍煙 瑞色東風 凍煙を生ず
満腹野肴無冗食 腹を満たす野肴 冗食無く
沾喉家醸有余銭 喉を沾す家醸 余銭有り
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春風料峭泣窮途 春風料峭 窮途に泣く
活計人援半似愚 活計人に援く 半ば愚に似たり
白首繙書成底事 白首書を繙いて 底事を成す
紅顔鍛身亦何須 紅顔身を鍛えて 亦何ぞ須いん
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朔旦今朝賽土神 朔旦今朝 土神に賽し
玉階献酒答新春 玉階酒を献じて 新春に答ふ
庭前香骨猶応早 庭前の香骨 猶早かるべし
堂上欣然欲及辰 堂上に欣然と 辰に及ばんと欲す
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東都昔日最多情 東都昔日 最も多情
治教安寧表大平 治教安寧 大平を表す
築地競魚朝満市 築地に魚を競て 朝市に満ち
深川小艇夜喧城 深川に小艇 夜城に喧し
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禁門万客踏紅埃 禁門万客 紅埃を踏み
瑞色東都未緑開 瑞色東都 未だ緑開ず
献壽祝杯春酒熟 壽を献ず祝杯に 春酒熟し
賀聲接踵故人来 賀聲踵を接して 故人来る
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万里今晨春正帰 万里今晨 春正に帰り
一身去歳典朝衣 一身去歳 朝衣を典す
闥k明憶心無累 闥k明に憶う 心に累無しと
小飲微忘世有機 小飲微に忘る 世に機有るを
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律転鴻鈞淑気遅 律は鴻鈞を転じ 淑気遅く
前庭梅蕾遍南枝 前庭の梅蕾 南枝に遍し
白鬚加増詩情減 白鬚加増し 詩情減じ
祝賀今盛酒量衰 祝賀今盛りなれど 酒量衰う
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迎春萬戸慶雲中 萬戸春を迎え 慶雲の中
晨賀開莚笑語同 晨賀莚を開き 笑語同じくす
椒酒朱顔君似旧 椒酒朱顔 君旧に似たり
冠頭白髪我成翁 白髪を頭に冠りて 我翁と成る
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