江上陰雲愁殺人 江上陰雲 人を愁殺し
寒煙夜雨白頭新 寒煙夜雨 白頭新なり
高情多恨皆心火 高情多恨 皆な心火
幽趣詩書是眼塵 幽趣詩書 是れ眼塵
○●○○○●◎
○○●●●○◎
○○○●○○●
○●○○●●◎
碧水凄清山澤居 碧水凄清 山澤の居
紅楓揺落出無車 紅楓揺落し 出るに車無し
閉門沸鼎一壺酒 門を閉じ鼎沸く 一壺の酒
繙帙研思千巻書 帙を繙き思いを研ぐ 千巻の書
●●○○○●◎
○○○●●○◎
●○●●●○●
○●○○○●◎
千里幽煙紫翠間 千里幽煙 紫翠の間
三秋黄葉入空山 三秋黄葉 空山に入る
悲風惨憺愁為客 悲風惨憺 客と為るを愁い
落日蕭條笑未還 落日蕭條 未だ還ざるを笑う
○●○○●●◎
○○○●●○◎
○○○●○○●
●●○○●●◎
人生九十苦難中 人生九十 苦難の中
献慶蘭孫徳寿隆 慶を献す蘭孫 徳寿隆なり
老髪疎絲垂領白 老髪疎絲 領に垂れて白く
南天顆実亜枝紅 南天の顆実 枝に亜で紅なり
○○●●●○◎
●●○○●●◎
●●○○○●●
○○●●●○◎
北原山上鳥聲悲 北原山上に 鳥聲悲し
短命天乎不可追 短命天乎 追うべからず
亡姉麗人来入夢 亡姉麗人 来って夢に入る
潜潜涙堕哭君時 潜潜と涙を堕す 君を哭する時
●○○●●○◎
●●○○●●◎
○●●○○●●
○○●●●○◎
六十孜孜雪満鬚 六十にして孜孜 雪鬚に満ち
無才我執泣窮途 無才我執 窮途に泣く
洛陽親友莫嗟嘆 洛陽の親友 嗟嘆する莫れ
辞職還家一暇夫 職を辞して家に還れば 一暇夫
●●○○●●◎
○○●●●○◎
●○○●●○●
○●○○●●◎
青山淡淡白雲横 青山に淡淡と 白雲横たわり
古道寒林叩化城 古道寒林に 化城を叩く
零露無聲秋寂寂 零露聲無く 秋寂寂と
前渓禽鳥響丁丁 前渓の禽鳥 響丁丁たり
○○●●●○◎
●●○○●●◎
●●○○○●●
○○●●●○◎
空山獨居晩蕭蕭 空山獨居し 晩蕭蕭
黙座寒煙香自焼 黙座し寒煙 香自と焼く
露下凄涼憐蟋蟀 露下凄涼 蟋蟀を憐れみ
秋風颯颯笑芭蕉 秋風颯颯と 芭蕉を笑う
○○●●●○◎
●●○○●●◎
●●○○○●●
○○●●●○◎
秋風叫樹冷空房 秋風樹を叫び 空房冷かに
郷思綿綿夜偏長 郷思綿綿と 夜偏に長し
雲漢連天何EE 雲漢天に連り 何ぞEE
氷輪如水更蒼蒼 氷輪水の如く 更に蒼蒼
○○●●●○◎
○●○○●●◎
○●○○○●●
○○○●●○◎
疏燈自照一人 疏燈自と照す 一關l
寒夜無衣為酒貧 寒夜衣無く 酒の為に貧なり
雁影郷愁吾獨老 雁影に郷愁し 吾獨り老い
砧聲秋気月長新 砧聲秋気 月長く新なり
○○●●●○◎
○●○○●●◎
●●○○○●●
○○○●●○◎
猿聲切切豈堪聞 猿聲切切 豈に聞くに堪ん
帰雁連空復那云 帰雁空に連り 復那ぞ云ん
新月猶懸何寂漠 新月猶を懸りて 何ぞ寂漠
窮愁獨夜酔醺醺 窮愁獨夜 酔て醺醺
○○●●●○◎
●●○○●●◎
○●○○○●●
○○●●●○◎
菊花郁郁満江城 菊花郁郁と 江城に満ち
水閣蕭蕭対月明 水閣蕭蕭と 月明に対す
秋夜酒盃因病減 秋夜の酒盃 病に因て減じ
斑斑白髪為愁生 斑斑たる白髪 愁の為めに生ず
●○●●●○◎
●●○○●●◎
○●○○○●●
○○●●●○◎
江雲片片正中秋 江雲片片と 正に中秋
孤鹿空啼枕碧流 孤鹿空く啼いて 碧流に枕む
蒼落凄涼山骨痩 蒼落凄涼と 山骨痩せ
紅林露気水痕収 紅林露気 水痕収む
○○●●●○◎
○●○○●●◎
○●○○○●●
○○●●●○◎
三五中秋月上山 三五中秋 月山に上り
九重紅染暮雲還 九重に紅に染り 暮雲還る
孤燈寒枕柴薪貴 孤燈寒枕 柴薪貴く
寂夜更深砧杵 寂夜更に深く 砧杵閧ﾈり
○●○○●●◎
●○○●●○◎
○○○●○○●
●●○○○●◎
雲翳愁風吹髪毛 雲翳り愁風 髪毛を吹き
煙漂堤畔水滔滔 煙漂い堤畔 水滔滔
江山皎皎飛明鏡 江山は皎皎と 明鏡を飛ばし
濁酒啣盃折大刀 濁酒盃を啣んで 大刀を折る
○●○○○●◎
○○○●●○◎
○○●●○○●
●●○○●●◎
碧霄一鶴上寒空 碧霄一鶴 寒空に上り
僻巷飢鴉満桂叢 僻巷の飢鴉 桂叢に満つ
汀月溶溶香橘柚 汀月溶溶 橘柚香り
秋風淡淡老梧桐 秋風淡淡 梧桐老ゆ
●○●●●○◎
●●○○●●◎
○●○○○●●
○○●●●○◎
空庭蟋蟀数聲哀 空庭の蟋蟀 数聲哀し
月上人煙暮色催 月上り人煙 暮色催す
東野禾稼経雨倒 東野の禾稼 雨を経て倒れ
霜林敗葉為風摧 霜林の敗葉 風の為に摧く
○○●●●○◎
●●○○●●◎
○●○○○●●
○○●●●○◎
庭梧斜倒壊藩籬 庭梧斜倒し 藩籬を壊し
連日秋霖水溢池 連日秋霖 水は池を溢る
暴雨覆盆初破漏 暴雨盆を覆して 初めて破漏し
雄風打屋欲傾欹 雄風屋を打って 傾欹せんと欲す
○○○●●○◎
○●○○●●◎
●●●○○●●
○○●●●○◎
狂乱強風無幾何 狂乱強風に 幾何とも無く
柿実墜地晩滂沱 柿実地に墜ち 晩滂沱たり
江天流墨雲偏出 江天墨を流して 雲偏に出で
猶打残荷雨更多 猶残荷を打って 雨更に多し
○●○○○●◎
●○●●●○◎
○○○●○○●
○●○○●●◎
失職三年無一銭 失職三年 無一銭
別妻浪蕩酒家眠 妻に別れ浪蕩 酒家に眠る
助母子息今能否 母を助けて子息 今能や否や
悔悟此情誰為傳 悔悟す此情 誰が為に傳えん
●●○○○●◎
●○○●●○◎
●○●●○○●
●●●○○●◎
打荻窓風木葉飄 荻を打つ窓風 木葉飄り
侵階夜雨響蕭蕭 階を侵す夜雨 響蕭蕭
長安魚信三千隔 長安の魚信 三千隔り
白髪郷心万里遥 白髪の郷心 万里遥かなり
●●○○●●◎
○○●●●○◎
○○○●○○●
●●○○●●◎
江邊深夜雨凄凄 江邊深夜 雨凄凄
淅瀝長沙宿雁啼 淅瀝たる長沙に 宿雁啼く
切切哀蛩秋露滑 切切と哀蛩 秋露滑かに
昏昏霜菊晩煙迷 昏昏たり霜菊 晩煙迷う
○○○●●○◎
●●○○●●◎
●●○○○●●
○○○●●○◎
長江雲度雨聲寒 長江に雲度り 雨聲寒し
連日秋陰酒亦残 連日秋陰 酒亦残す
郷思不堪千里外 郷思堪えず 千里の外
家書無届十年間 家書届かず 十年の間
○○○●●○◎
○●○○●●◎
○●●○○●●
●○○●●○◎
秋風吹断碧梧枝 秋風吹断す 碧梧の枝
江上陰雲一葉衰 江上陰雲 一葉衰う
僻巷千家微雨湿 僻巷千家 微雨に湿い
客游万里涙雙垂 客游万里 涙雙垂
○○○●●○◎
○●○○●●◎
●●○○○●●
●○●●●○◎
黄垂稲穂暮雲還 黄垂の稲穂に 暮雲還り
白首蕎花月影 白首の蕎花に 月影閧ｽり
両岸薄飛風浩浩 両岸の薄飛び 風浩浩と
半江流麗水潺潺 半江流麗 水潺潺たり
○○●●●○◎
●●○○●●◎
●●●○○●●
●○○●●○◎
対月高楼詩酒催 月に対し高楼に 詩酒催し
良宵騒客抱琴来 良宵騒客 琴を抱いて来る
変調曲想難成酔 変調曲想 酔を成し難く
切切絃情易入哀 切切たる絃情 哀に入り易し
●●○○○●◎
○○○●●○◎
●○●●○○●
●●○○●●◎
秋霖績潦雨溟濛 秋霖績潦 雨溟濛
寂漠長江水接空 寂漠たる長江 水は空に接す
玉笛絃歌非我伴 玉笛絃歌 我伴に非ず
無奈吟酌興誰同 奈ともする無く吟酌 誰と同せん
○○●●●○◎
●●○○●●◎
●●○○○●●
○○○●●○◎
天高露下到長安 天高露下 長安に到り
秋色東山霜葉丹 秋色の東山 霜葉丹し
尋故新墳憔悴盡 故を尋ね新墳 憔悴盡き
可憐老小涙珊珊 憐む可し老小 涙珊珊
○○●●●○◎
○●○○○●◎
●●●○○●●
●○●●●○◎
