白波魚躍吐青煙 白波に魚躍り 青煙を吐き
萍葉無風泛碧漣 萍葉は風無く 碧漣に泛ぶ
両岸鳴蛙喧耳畦 両岸の鳴蛙 耳畦に喧し
孤亭乳燕簇窓前 孤亭の乳燕 窓前に簇る
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尋涼散歩夜三更 涼を尋ねて散歩す 夜三更
照水青燈翠靄生 水を照して青燈 翠靄を生ず
點點流光繊月仄 點點と流光 繊月仄き
露珠落扇巻荷傾 露珠扇より落ち 巻荷傾く
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榴火花開雨霽時 榴火花開き 雨霽る時
千林露滴碧参差 千林露滴って 碧参差す
夏雲峰出常遮搭 夏雲峰を出て 常に搭を遮り
恐日亀児自入池 日を恐れ亀児 自ら池に入る
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萍生湖上白蓮開 湖上に萍生じ 白蓮開き
稲長田郷夏景催 田郷に稲長じ 夏景催す
農叟荷鋤耕犢去 農叟鋤を荷って 耕犢去り
晴江担棹釣人回 晴江棹を担いで 釣人回る
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蘋生洲渚緑濛濛 蘋は洲渚に生じ 緑濛濛たり
梅熟園林榴火紅 梅は園林に熟し 榴火紅なり
連日満城蕉葉雨 連日満城 蕉葉の雨
南薫湿潤藕花風 南薫湿潤 藕花の風
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悠悠白鷺稲秧畦 悠悠と白鷺 稲秧の畦
閣閣青蛙喚雨啼 閣閣と青蛙 雨を喚んで啼く
欲咽長橋河水漲 長橋を咽まんと欲して 河水漲り
如蒙茅屋夕陽低 茅屋を蒙うが如く 夕陽低る
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烟雨濛濛湿気侵 烟雨濛濛と 湿気侵し
碧苔蓋屋易傷心 碧苔屋を蓋って 心を傷ましめ易し
闖D惆悵志難就 闖D惆悵 志就り難く
残夢依然恨尚深 残夢依然と 恨尚を深し
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草露幽香緑正斉 草露幽香 緑正に斉し
雲峰苔壁霧凄凄 雲峰苔壁 霧凄凄
柴門白蝶翅垂雨 柴門の白蝶 翅雨に垂れ
環屋青鳩飢啄泥 屋を環って青鳩 飢て泥を啄む
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首夏江村水溢田 首夏江村 水は田に溢れ
梅霖初歇吐青煙 梅霖初めて歇んで 青煙を吐く
東峯満月如懸鏡 東峯満月 懸鏡の如く
西渚蓮浮似列銭 西渚蓮浮んで 列銭に似たり
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玉波蕩漾緑煙生 玉波蕩漾 緑煙生じ
渡渚無風江水平 渡渚風無く 江水平らなり
六月黄梅千頃雨 六月黄梅 千頃の雨
乱蛙遠近一般聲 乱蛙遠近に 一般の聲
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妖雲変化夜涼生 妖雲変化し 夜涼生ず
一條飛光晩照明 一條の飛光 晩照明なり
舞砂奔狂風捲地 砂を舞い奔狂 風は地を捲き
驚心隠隠万雷轟 心を驚し隠隠と 万雷轟く
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梅霖未歇屐聲空 梅霖未だ歇まず 屐聲空し
風梟千林樹欝葱 風は千林に梟いて 樹欝葱たり
喚友笑談知酒力 友を喚んで笑談 酒力を知り
緑陰冷透見茶功 緑陰冷透り 茶功を見る
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満城連日雨凄凄 満城連日 雨凄凄
懶出老鶯何處啼 出ずるに懶く老鶯 何處にか啼く
泉石深苔青欲滴 泉石深苔 青滴らんと欲し
衣裾易湿緑堪迷 衣裾湿い易く 緑迷うに堪えたり
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梅霖榴火乱粉粉 梅霖榴火 乱れて粉粉
獨座關l看典墳 獨座して關l 典墳を看る
破寂双鳩啼入樹 寂を破って双鳩 啼いて樹に入り
上顔窓暗日将薫 顔を上れば窓暗く 日将に薫せんとす
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江山漠漠午蕭森 江山漠漠 午蕭森
梅熟園林烟雨深 梅園林に熟し 烟雨深し
白沙躍波青鳥没 白沙波を躍らせて 青鳥没し
水光瞬動緑萍沈 水光瞬動して 緑萍沈む
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黄梅都熟竹孫斉 黄梅都て熟し 竹孫斉し
水漲滋田緑満堤 水漲って田を滋し 緑堤に満つ
双燕回巣抛餌去 双燕巣を回り 餌を抛げて去り
喚親乳子就簷栖 親を喚ぶ乳子 簷に就て栖む
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疎疎梅雨長青苔 疎疎たる梅雨 青苔を長じ
水殿蕭條杜若開 水殿蕭條と 杜若開く
草露幽香蝸篆滑 草露幽香 蝸篆滑かに
深泥難歩蟻軍頽 深泥歩き難く 蟻軍頽る
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枇杷黄熟雨濛濛 枇杷黄熟し 雨濛濛
柳渚浪揺緑樹叢 柳渚浪揺ぐ 緑樹の叢
一日乗舟随釣侶 一日乗舟し 釣侶に随い
暮寒求酒喚茶翁 暮寒酒を求めて 茶翁を喚ぶ
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江村六月入梅初 江村六月 入梅の初め
寂寂桐陰緑浸裾 寂寂たる桐陰 緑裾を浸す
暗暗水天雲気合 暗暗たる水天に 雲気合し
溟濛細滴雨聲餘 溟濛たる細滴 雨聲餘る
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青山雲興午風軽 青山雲興り 午風軽く
暑雨初過江水平 暑雨初めて過ぎ 江水平なり
漠漠遠空帰鳥影 漠漠たる遠空 帰鳥の影
緑陰前蒲乱蛙聲 緑陰前蒲 乱蛙の聲
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南畝新泥水溢田 南畝新泥 水は田に溢れ
横塘草長碧涵天 横塘草長じ 碧は天を涵す
沙禽飲露青荷乱 沙禽露を飲んで 青荷乱れ
梅熟園林白雨懸 梅園林に熟して 白雨懸かる
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乱燕飄飄啼不停 乱燕飄飄 啼いて停まず
群蛙帯雨巡門庭 群蛙雨を帯び 門庭を巡る
繊繊垂柳当軒碧 繊繊たる垂柳 軒に当って碧に
点点流蛍入座青 点点と流蛍 座に入って青し
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門外榴紅夏色開 門外榴紅 夏色開き
東西南北緑成堆 東西南北 緑堆を成す
高低燕動微風起 高低燕動いて 微風起り
江畔蛙啼細雨来 江畔蛙啼いて 細雨来る
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大江渺渺水連天 大江渺渺 水天に連り
茅亭濛濛雨沛然 茅亭濛濛 雨沛然たり
岸上芭蕉青展扇 岸上の芭蕉 青扇を展べ
池邊荷葉碧鋪銭 池邊の荷葉 碧銭を鋪く
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緑荷風動露珠傾 緑荷風動いて 露珠傾き
江畔冥冥翠靄生 江畔冥冥 翠靄生ず
残月樹陰通冷気 残月樹陰に 冷気を通じ
暁雲杜宇送清聲 暁雲杜宇 清聲を送る
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江畔楊枝払水垂 江畔楊枝 水を払って垂れ
半天白日夏雲奇 半天白日 夏雲奇なり
橋西涼気風清處 橋西涼気 風清き處
岸角芳香梅熟時 岸角芳香 梅熟する時
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薫風六月曲江隈 薫風六月 曲江の隈
新茗清香入袖来 新茗清香 袖に入りて来る
躍水青蛙沙際去 水を躍せて青蛙 沙際に去り
菖蒲紫班柳陰開 菖蒲紫班に 柳陰に開く
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垂柳繊繊緑已新 垂柳繊繊 緑已に新なり
南風吹乱雨聲頻 南風吹き乱れ 雨聲頻なり
梅天終日客居寂 梅天終日 客居寂に
茅屋草深書冊親 茅屋草深く 書冊親しむ
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酒醒遊子睡難成 酒醒め遊子 睡成り難く
燈暗三更樹影傾 燈暗く三更 樹影傾く
遠望西山雲変幻 遠望すれば西山 雲変幻
江楼飄浪月朧明 江楼浪を飄して 月朧明
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東風垂柳乱如絲 東風垂柳 乱れて絲の如し
吟杖恨泥遊子悲 吟杖泥を恨み 遊子悲しむ
為惜紅飛花已老 為に惜む紅飛んで 花已に老い
陰雲燕舞雨応知 陰雲燕舞い 雨応に知るべし
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