南薫六月雨餘天 南薫六月 雨餘の天
新緑清晨染露鮮 新緑の清晨 露を染めて鮮なり
水面白蓮香冉冉 水面に白蓮 香は冉冉
風前荷葉碧田田 風前の荷葉 碧田田
○○●●●○◎
○●○○●●◎
●●●○○●●
○○○●●○◎
洛陽城外未明時 洛陽城外 未明の時
径道烟霞帯露滋 径道烟霞 露を帯びて滋し
涼味松風沿素壁 涼味松風 素壁に沿い
風荷麗質占清池 風荷麗質 清池を占む
○○○●●○◎
●●○○●●◎
○●○○○●●
○○●●●○◎
晴江渺渺水盈盈 晴江渺渺 水盈盈
遠近高低飛燕軽 遠近高低 飛燕軽し
軒檻雀聲依帳聽 軒檻に雀聲 帳に依りて聽き
緑陰斜日入窓明 緑陰に斜日 窓に入りて明なり
○○●●●○◎
●●○○○●◎
○●●○○●●
●○○●●○◎
木槿花開冉冉香 木槿花開き 冉冉と香る
時揺葉片午風涼 時に葉片を揺がして 午風涼し
横塘遊行心神爽 横塘遊行 心神爽かに
水漲連天眺望長 水漲り天に連り 眺望長し
●●○○●●◎
○○●●●○◎
○○●●○○●
●●○○●●◎
連日蛙聲聽冒心 連日蛙聲 聽いて心を冒す
梅天漠漠氣陰森 梅天漠漠として 氣は陰森たり
長菌屋漏床床濕 菌長じ屋漏れ 床床濕ひ
新緑竹林岸岸深 新緑の竹林 岸岸に深し
○●○○●●◎
○○●●●○◎
○○●●○○●
○●○○●●◎
細滴梅肥花幾叢 細滴梅肥え 花幾叢
幽庭草長緑濛濛 幽庭草長じ 緑蒙蒙たり
杜鵑去去三春盡 杜鵑去去 三春盡き
千里思帰一夢空 千里帰を思て 一夢空し
●●○○○●◎
○○●●●○◎
●○●●○○●
○●○○●●◎
江城夏至橘花香 江城夏至 橘花香る
雨歇蒸蒸畏日長 雨歇んで蒸蒸 畏日長し
寂寂林間風弄影 寂寂たる林間に 風影を弄し
枇杷未熟不知嘗 枇杷未だ熟さず 嘗を知らず
○○●●●○◎
●●○○●●◎
●●○○○●●
○○●●●○◎
梅霖苔蝕雨晴初 梅霖苔蝕ばみ 雨晴る初め
日午懐人倦読書 日午人を懐って 読書に倦む
破屋客稀身似隠 破屋に客稀に 身は隠に似たり
吟衣懶出室無儲 吟衣出ずるに懶く 室に儲無し
○○○●●○◎
●●○○●●◎
●●●○○●●
○○●●●○◎
日午冥冥雲不開 日午冥冥 雲開かず
庭陰草露長青苔 庭陰草露 青苔長ず
荷薫含湿微風起 荷薫湿を含んで 微風起り
梅熟園林細雨来 梅は園林に熟して 細雨来る
●●○○○●◎
○○●●●○◎
○○○●○○●
●●○○●●◎
連陰寂寂雨聲侵 連陰寂寂 雨聲侵す
六月梅黄三日霖 六月梅は黄に 三日の霖
南畝深泥迷燕影 南畝深泥 燕影迷い
江村閣閣噪蛙音 江村閣閣と 蛙音噪し
○○●●●○◎
●●○○○●◎
○●○○○●●
○○●●●○◎
長江渺渺水迢迢 長江渺渺 水迢迢
晴日暖風魚子跳 晴日暖風 魚子跳る
首夏陽光還耿耿 首夏の陽光 還た耿耿
落花散乱已蕭蕭 落花散乱 已に蕭蕭
○○●●●○◎
○●○○○●◎
●●○○○●●
●○●●●○◎
雨収葉際翠光浮 雨収まり葉際に 翠光浮かぶ
花落枝頭白日悠 花落ち枝頭に 白日悠なり
竹院堂前無吠犬 竹院の堂前に 吠ゆる犬無く
南風田家有牛 南風田家に 闍漉Lり
●○●●●○◎
○●○○●●◎
●●○○○●●
○○○●●○◎
雨歇山青暑気微 雨歇んで山青く 暑気は微なり
紅稀花謝翠成幃 紅稀に花は謝し 翠幃を成す
薫風首夏梅初熟 薫風の首夏 梅初めて熟し
庭陰苗苗猫子肥 庭陰に苗苗と 猫子肥ゆ
●●○○●●◎
○○○●●○◎
○○●●○○●
●●○○○●◎
雨余緑樹麦秋天 雨余の緑樹 麦秋の天
梅子薫風鴎鷺眠 梅子薫風 鴎鷺眠る
碧落下弦霞浦月 碧落の下弦 霞浦の月
黄昏水郷筑峰烟 黄昏水郷 筑峰の烟
●○●●●○◎
○●○○●●◎
●●●○○●●
○○●●●○◎
梅肥四面碧田田 梅肥え四面 碧田田
麦熟連陰雨沛然 麦熟し連陰 雨沛然
乳燕高低雲似墨 乳燕高低 雲墨に似る
鳴蛙遠近水如天 鳴蛙遠近 水天の如し
○○●●●○◎
○●○○●●◎
●●○○○●●
○○●●●○◎
宿雲覆水雨冥冥 宿雲水を覆い 雨冥冥たり
小燕雙雙啼不停 小燕雙雙 啼いて停まらず
江上孤鴎天寂寂 江上の孤鴎 天は寂寂
橋西両岸草青青 橋西の両岸 草は青青
●○●●●○◎
●●○○○●◎
○●○○○●●
○○●●●○◎
連日冥冥烟雨深 連日冥冥と 烟雨深く
梅霖細細易傷心 梅霖細細と 心を傷ましめ易し
無能鈍才貧為祟 無能鈍才 貧祟りを為し
白髪年来病不禁 白髪年来 病禁へず
●●○○○●◎
○○●●●○◎
○○●●○○●
●●○○●●◎
寂寂桐陰蒼翠堆 寂寂たる桐陰 蒼翠堆し
幽窓橘柚暗香来 幽窓の橘柚 暗香来る
昼昏冷透風吹筍 昼昏く冷透り 風筍を吹き
旦暮雷聲雨熟梅 旦暮雷聲 雨梅を熟す
●●○○●●◎
○○●●●○◎
●○●●○○●
●●○○●●◎
疎疎梅雨竹孫斉 疎疎たる梅雨 竹孫斉し
暗暗陰雲臨水低 暗暗たる陰雲 水に臨んで低し
沙岸双鴎飛漠漠 沙岸の双鴎 飛んで漠漠
幽庭芳草湿萋萋 幽庭の芳草 湿ひて萋萋
○○○●●○◎
●●○○○●◎
○●○○○●●
○○○●●○◎
江心白鷺雨疏疏 江心の白鷺 雨疏疏たり
岸上黄梅欲落初 岸上の黄梅 落んと欲する初め
鬱屈難開全廃酒 鬱屈開き難く 全く酒を廃し
寂寥懶出静繙書 寂寥出づるに懶く 静に書を繙く
○○●●●○◎
●●○○●●◎
●●○○○●●
●○●●●○◎
臨流撒網有漁翁 流れに臨んで網を撒じる 漁翁有り
釣客乗舟迹已空 釣客舟に乗て 迹已に空し
破土龍孫微雨後 土を破って龍孫 微雨の後
裂風燕子乱雲中 風を裂いて燕子 乱雲の中
○○●●●○◎
○●○○●●◎
●●○○○●●
●○●●●○◎
雨歇梅天積乱雲 雨歇み梅天に 積乱の雲
緑陰幽草絶塵氣 緑陰幽草 塵氣を絶す
薫風燕子隋波泛 薫風に燕子 波に隋って泛び
田畝蛙聲隔柳聞 田畝に蛙聲 柳を隔て聞く
●●○○●●◎
●○○●●○◎
○○●●○○●
○●○○●●◎
六月熟梅蛙乱鳴 六月熟梅 蛙乱れ鳴き
林間靄靄緑煙生 林間靄靄と 緑煙を生ず
江村雨歇自然楽 江村雨歇んで 自然の楽しみ
水殿西風無限情 水殿西風 無限の情
●●●○○●◎
○○●●●○◎
○○●●●○●
●●○○○●◎
梅天六月雨冥冥 梅天六月 雨冥冥
飢雀枝枝啼不停 飢雀枝枝に 啼いて停まず
鴎鷺捕魚沙岸白 鴎鷺魚を捕る 沙岸は白く
宿雲未去紫峰青 宿雲未だ去らず 紫峰は青し
○○●●●○◎
●●○○○●◎
○●●○○●●
●○●●●○◎
風江潮動碧涵天 風江潮動 碧天を涵し
千里濛濛雨沛然 千里濛濛 雨沛然
雲雀何方無麦隴 雲雀何方へ 麦隴無く
蛙聲閣閣有荷銭 蛙聲閣閣と 荷銭有り
○○○●●○◎
○●○○●●◎
○●○○○●●
○○●●●○◎
村村水漲大江隈 村村水漲る 大江の隈
橋畔蓮花香暗催 橋畔の蓮花 香暗に催す
南北東西梅雨裡 南北東西 梅雨の裡
不知柳渚杜鵑悲 知ず柳渚に 杜鵑悲しむ
○○●●●○◎
○●○○●●◎
○●●○○●●
●○●●●○◎
冷雨初過爽気清 冷雨初めて過ぎ 爽気清に
玉波蕩漾一江平 玉波蕩漾 一江平なり
青苗郁郁野田潤 青苗は郁郁と 野田潤い
首夏西風村墅晴 首夏西風 村墅晴る
●●○○●●◎
●○●●●○◎
○○●●●○●
●●○○○●◎
翠草竿頭弄釣絲 翠草竿頭に 釣絲を弄し
白波棹影出魚児 白波棹影に 魚児出る
客心旅恨晴偏好 客心の旅恨 晴偏に好く
遊子悠悠雨亦奇 遊子悠悠と 雨亦奇なり
●●○○●●◎
●○●●●○◎
●○●●○○●
○●○○●●◎
緑樹薫風寂四隣 緑樹薫風 四隣寂たり
江楼望月断蓬身 江楼月を望む 断蓬の身
子規聲過方迎夏 子規の聲過ぎ 方に夏を迎え
紅落魂迷已送春 紅落ち魂迷い 已に春を送る
●●○○●●◎
○○●●●○◎
●○●●○○●
○●○○●●◎
啼血滴花愁殺人 啼血滴花 人を愁殺す
断腸終日雨聲頻 断腸終日 雨聲頻なり
不才随夢他郷老 不才夢に随い 他郷に老ゆ
多病催帰幾度春 多病帰を催す 幾度の春
○●●○○●◎
●○○●●○◎
●○○●○○●
○●○○●●◎
