濃緑陰中聞子規 濃緑の陰中に 子規を聞く
繊繊碧草卯花籬 繊繊たる碧草 卯の花の籬
沈雲展轉風来後 沈雲展轉と 風来る後
啼去梅天雨到時 啼去り梅天に 雨到る時
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迎夏緑陰花影稀 夏を迎へ緑陰に 花影稀なり
送春清昼雨霏霏 春を送って清昼 雨霏霏たり
一聲滴血林中閙 一聲血を滴らせ 林中に閙しく
永遂悲風天際飛 永く悲風を遂って 天際に飛ぶ
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麦秋五月望江南 麦秋五月 江南を望む
雨過南風水漲潭 雨過ぎて南風 水は潭に漲る
樹暗草深新翠滴 樹暗く草深く 新翠滴る
初聞杜宇興堪耽 初めて杜宇を聞き 興耽しむに堪へたり
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緑陰午睡夢醒時 緑陰午睡 夢醒むる時
風急飛花冷透肌 風急に花を飛ばし 冷肌に透る
酔散牽愁雲漠漠 酔散じ愁を牽いて 雲漠漠たり
春帰結恨雨絲絲 春帰り恨を結びて 雨絲絲たり
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冷雨霏霏緑滴衣 冷雨霏霏と 緑衣に滴る
奈何季老送春帰 奈何せん季老い 春の帰るを送る
寥寥惜別鶯無語 寥寥と別れを惜んで 鶯語無く
恨満枝枝花乱飛 恨枝枝に満ちて 花乱れ飛ぶ
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江村五月熟梅天 江村五月 熟梅の天
三畝農忙水満田 三畝農忙しく 水は田に満つ
門外橘花青展扇 門外に橘花 青扇を展ぶ
黄金麦穂筑峰烟 黄金なる麦穂 筑峰の烟なり
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江城五月麦宜晴 江城五月 麦晴に宜し
雲雀天高不惜聲 雲雀天高く 聲を惜しまず
紅落傷春花寂寞 紅落ち春を傷んで 花寂寞
緑陰清気水縦横 緑陰清気 水縦横
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残花恨雨欲何求 残花雨を恨んで 何を求めんと欲す
無意愁衰共白頭 意無し衰を愁いて 共に白頭
幾日送春紅薬老 幾日春を送って 紅薬老い
東園迎夏緑桑柔 東園夏を迎へて 緑桑柔なり
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堪惜幽庭掃落花 惜しむに堪えたり幽庭に 落花を掃く
午風陌頭市塵遮 午風陌頭に 市塵遮る
紅稀翠積春応盡 紅稀に翠積り 春応に盡んとす
首夏光暉日不斜 首夏光暉き 日斜めならず
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五月江城緑已斉 五月江城 緑已に斉い
翩翩雙燕啄春泥 翩翩と雙燕 春泥を啄む
随風国艶空花落 風に随い国艶 空しく花落ち
閣閣蛙聲雨裡啼 閣閣蛙聲 雨裡に啼く
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江村寂夜雨聲侵 江村寂夜 雨聲侵す
満樹清晨緑更深 満樹清晨に 緑更に深く
漠漠空晴迷燕影 漠漠と空晴れ 迷燕の影
苗田水漲噪蛙音 苗田に水漲り 噪蛙の音
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吟魂和雨午風微 吟魂雨に和して 午風微なり
水満田頭早苗肥 水は田頭に満ち 早苗肥ゆ
鶯老青梅迎夏結 鶯老いて青梅 夏を迎えて結び
花衰紅薬送春飛 花衰え紅薬 春を送って飛ぶ
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農叟挿田春事闌 農叟田を挿え 春事闌なり
蛙聲南畝水漫漫 蛙聲の南畝に 水漫漫
千絲蝕地紫藤架 千絲地に蝕れる 紫藤の架
花吐軽陰紅薬欄 花は軽陰を吐く 紅薬の欄
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緑水疎籬花已空 緑水疎籬 花已に空し
青梅寂寂恨無窮 青梅寂寂と 恨窮り無し
老翁多病縁愁白 老翁多病 愁いに縁って白く
今夜傷心借酒紅 今夜傷心 酒を借りて紅なり
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暗雲群聚遂風旋 暗雲群聚し 風を遂って旋る
幾樹傾姿春可憐 幾樹姿を傾け 春憐む可し
紅苑夜来烟雨冷 紅苑夜来 烟雨冷なり
清香辰立落花前 清香辰に立つ 落花の前
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江城樹下酒旗飄 江城樹下に 酒旗飄る
春月薫香一刻宵 春月薫香 一刻の宵
霞彩朦朧花不語 霞彩朦朧と 花語らず
夜深沈沈気蕭條 夜深沈沈と 気は蕭條
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江城遠寺繞芳園 江城の遠寺 芳園を繞る
花吐軽陰日欲昏 花は軽陰を吐いて 日昏れんと欲す
寂寂紅塵疎影浸 寂寂たる紅塵 疎影浸し
春宵一刻暗香繁 春宵一刻 暗香繁し
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花王紅薬已爛珊 花王と紅薬 已に爛珊
千紫藤陰把盞看 千紫の藤陰 盞を把って看る
半夜傾樽忘老易 半夜樽を傾けて 老いを忘るは易く
南風両袖別春難 南風両袖に 春に別るは難し
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庭前爛漫百花辰 庭前は爛漫と 百花の辰
国艶紫藤遂勝春 国艶紫藤 勝を遂う春
朱檻佳人詩思健 朱檻の佳人 詩思健に
高楼酔客酒行頻 高楼の酔客 酒行頻なり
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国色濃紅富貴花 国色濃紅なり 富貴の花
満庭灼灼競相誇 満庭に灼灼と 競って相い誇る
鳥啼枝上風軽度 鳥啼き枝上に 風軽く度り
人酔欄前日半斜 人酔い欄前に 日半ば斜めなり
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