岸柳鶯啼物候新 岸柳鶯啼き 物候新たなり
江梅破蝋已開唇 江梅蝋を破って 已に唇を開く
寒消山遠天逾碧 寒消え山遠く 天逾碧に
暖日光浮水自春 暖日光浮び 水自から春なり
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寒冷未消花信遅 寒冷未だ消えず 花信遅し
今朝破蕾到南枝 今朝破蕾 南枝に到る
影開春雪含羞解 影開き春雪 羞を含んで解け
光動和風帯笑吹 光動き和風 笑を帯びて吹く
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芳梅馥郁百花魁 芳梅馥郁と 百花の魁
破蕾今朝紅白開 蕾を破って今朝 紅白開く
北樹凌寒残蝋去 北樹寒を凌いで 残蝋去り
南園暖律早春来 南園暖律 早春来る
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芳酒含杯酔瞼丹 芳酒杯を含んで 酔瞼丹し
高情試筆賦春寒 高情筆を試みて 春寒を賦す
新愁焦思残生事 新愁思を焦す 残生の事
白髪断腸行路難 白髪腸を断つ 行路の難
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狂風一番響空庭 狂風一番 空庭に響く
耳目驚天宿酒醒 耳目驚天し 宿酒醒む
如玉紅梅飛散乱 玉の如き紅梅 飛んで散乱
砂塵埃靄舞冥冥 砂塵埃靄 舞いて冥冥
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梅梢群雀遂風旋 梅梢の群雀 風を遂って旋り
郁郁香迎淑気先 郁郁と香を迎え 淑気先んず
暖日春畔含翠色 暖日の春畔 翠色を含み
紫峯野水帯軽煙 紫峯野水 軽煙を帯びる
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寒消暖日入新陽 寒消え暖日 新陽に入る
二月東風動暗香 二月の東風 暗香を動かす
白首終宵親筆硯 白首終宵 筆硯に親しみ
繙書半日謝壺觴 書を繙いて半日 壺觴を謝す
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嘉会春宵宴已闌 嘉会春宵 宴已に闌なり
同袍和気坐団欒 同袍和気 団欒に坐す
紅顔嬉笑十年旧 紅顔嬉笑 十年の旧
酣飲高歌一夕歓 酣飲高歌 一夕の歓
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雪影未消春峭然 雪影未だ消えず 春峭然
南窓暖日枕書眠 南窓に暖日 書を枕して眠る
風聲玉笛浮雲外 風聲玉笛 浮雲の外
梅蕾聞香落日邊 梅蕾香を聞く 落日の邊
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春宵妙舞雪翩翩 春宵妙舞す 雪翩翩
微酔清歌獨払紘 微酔し清歌 獨り紘を払う
緑髪夢中才一刻 緑髪夢の中 才に一刻
思君離恨殆三年 君を思って離恨 殆ど三年
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朝来眼前雪皚皚 朝来り眼前 雪皚皚
梅蕾凌寒春意催 梅蕾寒を凌いで 春意催す
北径三村無客訪 北径三村に 客の訪う無く
南枝一玉向誰開 南枝一玉 誰に向って開く
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枝枝凍雀近窓啼 枝枝の凍雀 窓に近づいて啼き
麦苗春寒緑未斉 麦苗は春寒くして 緑未だ斉しからず
樹木模糊疎雨外 樹木は模糊として 疎雨の外
東風料峭使人迷 東風は料峭として 人を迷わしむ
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冬夜漫漫酒禦寒 冬夜漫漫 酒は寒を禦ぐ
貧交粗野遇時難 貧交にして粗野 時に遇うは難し
痩杖老骨稀穿履 痩杖の老骨 履を穿つことは稀なり
短髪髯糸懶正冠 短髪髯糸 冠を正すに懶し
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寒風二月立庭隅 寒風二月 庭隅に立つ
春意鳥聲梅一株 春意鳥聲 梅一株
處處雪痕猶帯凍 處處雪痕 猶凍を帯び
園林草木尚含枯 園林草木 尚枯を含む
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今夜残寒冷透袍 今夜残寒 冷は袍を透る
猫啼破壊此風騒 猫啼いて破壊す 此の風騒
誰疑梅蕾花期近 誰か疑う梅蕾 花期近く
未信城間酒價高 未だ信ぜず城間 酒價高し
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帰鳥聲寒遠渡河 帰鳥聲寒く 遠く河を渡る
白鴎飛立水空波 白鴎飛び立ち 水空しく波だつ
扁舟寂漠霜侵鬢 扁舟寂漠として 霜は鬢を侵し
彼岸模糊雨満蓑 彼岸模糊として 雨は蓑に満つ
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吹恨悲風犬吠聲 恨を吹く悲風 犬吠ゆる聲
寄情落日照江城 情を寄す落日 江城を照らす
燈前孤枕人雙涙 燈前に孤枕 人は雙涙
月下疎鐘雁幾行 月下に疎鐘 雁幾行
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帰舟客路雨蒙蒙 帰舟客路 雨蒙蒙
豈料乱鴉西復東 豈に料らんや乱鴉 西復た東
白髪夢回詩句裡 白髪夢回る 詩句の裡
紅楼又緑酒杯中 紅楼又緑なり 酒杯の中
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烟霞黯淡紫雲壇 烟霞黯淡なり 紫雲の壇
峯雪香爐静処看 峯雪香爐 静処に看る
耕月採蕨塵世窄 月を耕し蕨を採る 塵世窄く
鐘鳴山晩洞天寒 鐘鳴り山晩れ 洞天寒し
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火宅捨身何処尋 火宅捨身を 何処に尋ねん
天台禅寂在山陰 天台の禅寂 山陰に在り
少年養志封候骨 少年志を養う 封候の骨
老
愚逃名退隠心 老愚名を逃れ 退隠の心
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一白孤鴎繞夢飛 一白の孤鴎 夢を繞って飛ぶ
寒沙碧水午風微 寒沙碧水 午風微なり
悠悠自適有衣食 悠悠自適 衣食有り
功業盛衰無是非 功業盛衰 是非も無し
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紫峰楼閣望長川 紫峰の楼閣 長川を望み
淡墨千山水連天 淡墨千山 水天に連る
人意神驚腸若雪 人意に神驚き 腸雪の若し
図工鬼哭骨皆仙 図工に鬼哭き 骨皆仙なり
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立春二月白頭新 立春二月 白頭新なり
寒雨連江愁殺人 寒雨江に連り 人を愁殺す
講究孜孜空感恵 講究孜孜 空しく恵を感じ
日時汲汲自憐貧 日時汲汲 自ら貧を憐む
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家遠弟兄音信疏 家遠く弟兄 音信疏なり
帰心千里出無車 帰心千里 出るに車無し
昨年止酒朝尋薬 昨年酒を止め 朝に薬を尋ね
今夜烹茶愛読書 今夜茶を烹れ 書を読むを愛す
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今朝急雪舞廻風 今朝急雪 廻風に舞う
四面銀花路不通 四面銀花 路通ぜず
玉粒打窓寒徹骨 玉粒窓を打ち 寒骨に徹す
老翁炙硯百書空 老翁硯を炙り 百書空し
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陰窮戸外雪皚皚 陰窮り戸外は 雪皚皚
落雁低回侵暁来 落雁低く回り 暁を侵して来る
百里玉山埋草径 百里玉山 草径を埋め
千林銀海絶塵埃 千林銀海 塵埃を絶す
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野犬黄昏叫遠林 野犬は黄昏に 遠林に叫び
山鴉飛去峭寒侵 山鴉飛び去りて 峭寒侵す
風霜淅淅低眉立 風霜淅淅 眉を低て立ち
雪片凄凄抱膝吟 雪片凄凄 膝を抱いて吟ず
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聲寒凍日望西川 聲寒く凍日に 西川を望む
影澹愁雲雪満頂 影澹く愁雲 雪頂に満つ
黯黯長江天似水 黯黯と長江 天は水に似て
皚皚山上月如弦 皚皚と山上に 月弦の如し
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詩壇故旧酔開顔 詩壇故旧 酔顔を開く
筆陣平生虎豹間 筆陣平生 虎豹の間
焦思騒章成白髪 思を焦す騒章 白髪と成り
潜心麗句自青山 心を潜め麗句 自ら青山
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