午天雲雨竟虚無　　　　　午天雲雨は　竟に虚無
赤日炎炎貌已痩　　　　　赤日炎炎と　貌已に痩す
矮屋溽蒸身解服　　　　　矮屋は溽蒸にして　身服を解き
如湯裸体汗凝珠　　　　　湯の如く裸体に　汗珠を凝らす
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院外驕陽赫赫焚　　　　　院外に驕陽　赫赫と焚く
江村十里日為群　　　　　江村十里　日群を為し
微風座甑生団扇　　　　　微風甑に座して　団扇に生じ
似火如峯聳夏雲　　　　　火に似て峯の如く　夏雲聳ゆ
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赫赫午天欲夕暉　　　　　赫赫たる午天　夕暉ならんと欲す
溽蒸無計汗沾衣　　　　　溽蒸計無く　汗衣を沾す
抛書夜熱惟思睡　　　　　書を抛ち夜熱に　惟だ睡を思う
吮血飢蚊亦懶飛　　　　　血を吮い飢蚊　亦た飛ぶに懶し
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白日紅爐釜甑中　　　　　白日紅爐　釜甑の中
扇頭能有幾多風　　　　　扇頭能く　幾多の風有りや
炎威爛石酔如酒　　　　　炎威石を爛らし　酔うこと酒の如し
酷暑煎沙欲燎空　　　　　酷暑沙を煎り　空を燎かんと欲す
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風吹烟雨霧冥冥　　　　　風は烟雨を吹き　霧冥冥
日落追涼月満庭　　　　　日は落ち涼を追って　月庭に満つ
水上孤亭天寂寂　　　　　水上の孤亭に　天寂寂
扁舟両岸草青青　　　　　扁舟は両岸に　草青青
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池亭雨歇晩涼天　　　　　池亭雨歇み　晩涼の天
燿燿流光漾水烟　　　　　燿燿たる流光　水烟に漾う
雲渡群蛙青草上　　　　　雲渡り群蛙　青草の上
月升波影白鴎眠　　　　　月升り波影に　白鴎眠る
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一陣軽風吹面涼　　　　　一陣の軽風　面を吹いて涼し
清晨暁露撲鴛鴦　　　　　清晨の暁露　鴛鴦を撲つ
豊肌含笑娟娟浄　　　　　豊肌は笑を含み　娟娟として浄く
弱骨 西施冉冉香　　　　　弱骨の西施は　冉冉として香し
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梅霖漠漠雨餘天　　　　　梅霖漠漠と　雨餘の天
風露青冥響冷泉　　　　　風露青冥に　冷泉響く
榴火紅粧蒼草上　　　　　榴火紅粧す　蒼草の上
池中緑蓋白蓮鮮　　　　　池中の緑蓋に　白蓮鮮やかなり
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青冥水碧未明時　　　　　青冥水碧に　未明の時
一陣南薫翠蓋披　　　　　一陣の南薫　翠蓋披く
荷動花陰清露滴　　　　　荷動き花陰に　清露滴り
魚游波面好風吹　　　　　魚游ぎ波面に　好風吹く
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暁星翻蓋白蓮開　　　　　暁星蓋を翻えし　白蓮開く
残月跳珠碧水隈　　　　　残月珠を跳らす　碧水の隈
池面鴛鴦排蒲渡　　　　　池面の鴛鴦　蒲を排して渡る
聲聲杜宇触荷来　　　　　聲聲と杜宇　荷に触れて来る
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波揺水漲有跳魚　　　　　波揺ぎ水漲り　跳魚有り
榴火風来叩草廬　　　　　榴火風来りて　草廬を叩く
天際前峰雲気合　　　　　天際の前峰に　雲気合し
沛然翻墨雨声餘　　　　　沛然と墨を翻して　雨声餘る
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梅霖絃緩雨疏疏　　　　　梅霖絃緩み　雨疏疏
散歩衣霑緑浸裾　　　　　散歩すれば衣霑い　緑裾を浸す
連日鬱陶全廃酒　　　　　連日鬱陶にして　全く酒を廃め
客稀獨坐静繙書　　　　　客稀に獨坐し　静に書を繙く
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梅天閣閣緑陰中　　　　　梅天に閣閣と　緑陰の中
破屋捲簾窓日紅　　　　　破屋簾を捲く　窓日紅なり
旦暮雲迷晴亦雨　　　　　旦暮雲迷い　晴れて亦た雨ふり
霏微未歇夜還風　　　　　霏微未だ歇まず　夜還た風ふく
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梅天水漲燕飛低　　　　　梅天水漲り　燕飛低し
草際蛙兒喚雨啼　　　　　草際の蛙兒　雨を喚んで啼く
遠樹沈雲蒼鬱鬱　　　　　遠樹沈雲　蒼鬱鬱たり
今宵室暗晩凄凄　　　　　今宵室暗く　晩凄凄たり
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破屋連陰湿碧苔　　　　　破屋連陰　碧苔を湿す
南薫梅子暗香来　　　　　南薫梅子　暗香来る
前庭榴火紅含露　　　　　前庭の榴火　紅露を含み
老樹蕭條緑照杯　　　　　老樹蕭條と　緑杯を照す
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溟濛細滴暗煙林　　　　　溟濛たる細滴　煙林暗し
懶出傷心不可禁　　　　　出るに懶く傷心　禁ずべからず
破屋前庭花外盡　　　　　破屋の前庭　花外に盡き
芭蕉碧蘚雨中深　　　　　芭蕉碧蘚　雨中に深し
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梅霖六月水生紋　　　　　梅霖の六月　水紋を生ず
残滴如糸隔壁聞　　　　　残滴糸の如く　壁を隔て聞く
連日窓昏終漠漠　　　　　連日窓昏く　終に漠漠
未乾衣湿已紛紛　　　　　未だ乾ず衣湿い　已に紛紛
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疎祖梅雨橘花香　　　　　疎祖たる梅雨　橘花香る
寂寂荷陰朝露涼　　　　　寂寂たる荷陰　朝露涼し
暁色紫峰風月地　　　　　暁色の紫峰　風月の地
臨流投釣水雲郷　　　　　流に臨んで釣を投ず　水雲の郷
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木槿花開畏日長　　　　　木槿花開き　日の長きを畏る
新荷含露暁風涼　　　　　新荷露を含んで　暁風涼し
波心水碧清無暑　　　　　波心水碧に　清して暑無く
頻雨苔衣潤有香　　　　　頻雨苔衣　潤して香有り
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草露幽香洗俗氛　　　　　草露幽香　俗氛を洗う
溟濛小雨水生紋　　　　　溟濛たる小雨　水紋を生ず
残花落盡庭前樹　　　　　残花落ち盡す　庭前の樹
六月青山嶺外雲　　　　　六月の青山　嶺外の雲
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浮水芙蓉欲暁天　　　　　水に浮ぶ芙蓉　暁ならんと欲する天
清香満袖浄娟娟　　　　　清香袖に満ち　浄娟娟なり
凝妝玉色花君子　　　　　妝を凝らす玉色　花の君子
風露青冥響冷泉　　　　　風露青冥　冷泉響く
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暗香荷動未明時　　　　　暗香荷動く　未明の時
波面魚游不忍池　　　　　波面魚游ぶ　不忍池
緑蓋跳珠清露滴　　　　　緑蓋珠を跳らし　清露滴り
紅衣貼水好風吹　　　　　紅衣水に貼し　好風吹く
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池心馥郁暗香催　　　　　池心馥郁と　暗香催す
泥裡青冥碧水隈　　　　　泥裡青冥と　碧水の隈
雨後陰雲駆暑去　　　　　雨後陰雲　暑を駆って去り
風前暁露遂涼来　　　　　風前の暁露　涼を遂って来る
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江村連日雨冥冥　　　　　江村連日　雨冥冥
山遠疎林満目青　　　　　山遠く疎林　満目青し
掠水流光無限趣　　　　　水を掠め流光　無限の趣き
蕭然獨座酔魂馨　　　　　蕭然と獨座し　酔魂馨し
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風江潮動水禽鳴　　　　　風江潮動　水禽鳴く
遠近田田鼓吹声　　　　　遠近の田田　鼓吹の声
暑雨初過涼気漲　　　　　暑雨初めて過ぎ　涼気漲ぎる
東西南北緑陰清　　　　　東西南北　緑陰清し
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乳燕高低水面連　　　　　乳燕高低に　水面に連なる
啼蛙閣閣緑秧田　　　　　啼蛙閣閣と　緑秧の田
江村首夏孤燈夜　　　　　江村の首夏　孤燈の夜
水殿西風細雨天　　　　　水殿西風　細雨の天
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水漲萍生夏色開　　　　　水漲り萍生じ　夏色開く
南風蒲長曲江隈　　　　　南風蒲長ず　曲江の隈
梅霖細細紅含露　　　　　梅霖細細と　紅露を含む
老樹冥冥緑照杯　　　　　老樹冥冥と　緑杯を照す
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