2007年1月の自作漢詩


窮亦楽

朝耕夕誦未為     朝に耕し夕に誦す 未だ貧と為さず
隠逸吟詩酒是     隠逸詩を吟じて 酒是れ耽る 
塵外酔郷窮亦楽     塵外酔郷 窮亦た楽し
捨身托鉢老難     捨身托鉢 老いて堪え難し

(赤い字は韻:十三覃   七言絶句平起式)


貧乏

陰風徹骨北山     陰風骨に徹し 北山尖る
寒雨老農冷不     寒雨老農 冷を厭わず 
貧苦可憐衣乏絮     貧苦憐むべし 衣絮に乏しく
年来止酒食無     年来酒止め 食に塩無し

(赤い字は韻:十四塩   七言絶句平起式)


帰郷

山晩帰郷一路     山晩れ帰郷す 一路遥かなり
鐘鳴塵外響蕭     鐘鳴り塵外に 響蕭蕭 
寒威冽冽梅枝痩     寒威冽冽 梅枝痩せ
夜色凄凄雪意     夜色凄凄 雪意驕る

(赤い字は韻:二蕭   七言絶句仄起式)


氷夜

玉樹疎疎月影     玉樹疎疎と 月影残す
銀花密蜜夜漫     銀花密蜜と 夜漫漫 
凄風凛凛地皮裂     凄風凛凛と 地皮裂け
宿鷺唖唖氷骨     宿鷺唖唖と 氷骨寒し

(赤い字は韻:十四寒   七言絶句仄起式)


江村雪景色

昨夜陰凝飛雪     昨夜陰凝り 飛雪の天
今朝銀界曲汀     今朝銀界 曲汀の邊り 
寒鴎水畔走留跡     寒鴎水畔に 走りて跡を留め
瓦凍飢鴉鳴乞     瓦凍り飢鴉 鳴いて憐れみを乞う

(赤い字は韻:一先   七言絶句仄起式)


春望

凍雀無声雪裡     凍雀声無く 雪裡に看る
寒燈有影思千     寒燈影有り 思い千般 
紅爐鼎沸知春近     紅爐鼎は沸き 春の近きを知る
日暮烟横耐歳     日暮烟は横り 歳寒に耐ゆ

(赤い字は韻:十四寒   七言絶句仄起式)


未有春

凛凛寒雲雪意     凛凛と寒雲 雪意を催し
凄凄散白曲江     凄凄と白を散ず 曲江の隈 
騒人一路尋梅去     騒人一路 梅を尋て去り
恐是千林凍不     恐くは是れ千林 凍て開かず

(赤い字は韻:十灰   七言絶句仄起式)


雪朝遠望

俄驚眼前総如     俄に驚く眼前 総て銀の如し
急雪朝来不見     急雪朝来り 人を見ず 
玉粒紛粉千里映     玉粒紛粉と 千里映ず
疎林白白四望     疎林白白と 四望新なり

(赤い字は韻:十一真   七言絶句平起式)


寒雨

江上軽舟待渡     江上の軽舟 渡頭に待ち
声無白鷺宿蘆     声無く白鷺 蘆州に宿す 
重雲凛凛飛寒雨     重雲凛凛と 寒雨飛び
短日稜稜急暮     短日稜稜と 暮流急なり

(赤い字は韻:十一尤   七言絶句仄起式)


孤釣

長堤遠樹映寒     長堤の遠樹 寒潭に映ず
空江扁舟釣濃     空江の扁舟 濃藍に釣す 
落日登楼風浪急     落日楼に登れば 風浪急なり
傾樽清興酒微     樽を傾け清興す 酒微く酣なり

(赤い字は韻:十三覃   七言絶句平起式)


暮江

寒沙両岸暮江     寒沙両岸に 暮江清く
凍月東峯照水     凍月東峯に 水を照して明なり 
宿雁声無飛稍重     宿雁声無く 飛ぶ稍を重く
飄飄枯葉散還     飄飄と枯葉 散ず還た軽し

(赤い字は韻:八庚   七言絶句平起式)


寒燈

孤舟遠巷碧波     孤舟遠巷 碧波清し
片月疎林夜気     片月疎林 夜気凝る 
浅水江魚翻夕浪     浅水江魚 夕浪を翻し
厳風透骨酒寒     厳風骨を透り 寒燈に酒ぐ

(赤い字は韻:十蒸   七言絶句平起式)


寒江

白鴎江上遂波     白鴎江上に 波を遂て飄る
碧水漫漫宿霧     碧水漫漫と 宿霧消す 
黙釣垂絲眠自久     黙釣絲を垂れ 眠自ら久し
斜陽岸影視還     斜陽岸影を 視れば還た遥かなり

(赤い字は韻:二蕭   七言絶句平起式)


長堤

四望睡鴎水上     四望すれば睡鴎 水上に多く
白蘆漠漠満長     白蘆漠漠と 長河に満つ 
陰凝氷柱霜枯草     陰凝り氷柱 霜草を枯す
江冷風寒日浴     江冷に風寒く 日波に浴す

(赤い字は韻:五歌   七言絶句仄起式)


読書

風急天寒犬吠     風急に天寒く 犬吠る声
擁炉夜長一瓶     炉を擁し夜長 一瓶烹る 
韋黯黯残燈暗     韋黯黯と 残燈暗く
満地皚皚月影     満地皚皚と 月影明なり

(赤い字は韻:八庚   七言絶句仄起式)


冬夜

隆冬破壁夜寒     隆冬破壁 夜寒侵す
孤坐看書獨自     孤坐し書を看 獨り自ら斟す
穿戸霰声風淅淅     戸を穿つ霰声 風淅淅
照窓凍月影沈     窓を照す凍月 影沈沈

(赤い字は韻:十二侵   七言絶句平起式)


大寒

北風冽冽拂窓     北風冽冽と 窓を拂って吹き
夜色凄凄凍月     夜色凄凄と 凍月移る
凛凛四山寒鬼隠     凛凛と四山に 寒鬼隠れ
唖唖三徑暮鴉     唖唖と三徑に 暮鴉飢ゆ

(赤い字は韻:四支   七言絶句平起式)


寒夜

獨夜未眠聴曙     獨夜未だ眠らず 曙鶏を聴く
幽庭水凍曉寒     幽庭水凍り 曉寒凄たり
研精一穂残燈暗     研精一穂 残燈暗く
回首西窓片月     首を回せば西窓に 片月低し

(赤い字は韻:八斉   七言絶句仄起式)


冬夜

寒宵月凍古江     寒宵月凍る 古江の東
白髪未眠燭影     白髪未だ眠らず 燭影紅なり
千巻詩材図書裡     千巻の詩材 図書の裡
一看獨夜酔吟     一看して獨夜 酔吟の中

(赤い字は韻:一東   七言絶句平起式)


寒月

月高風急臥蒼     月高く風急に 蒼龍を臥す
寒迫銀花白此     寒迫り銀花 此の峯を白す
暗暗凍林迷旧徑     暗暗たる凍林 旧徑に迷い
皚皚積雪失新     皚皚たる積雪 新蹤を失す

(赤い字は韻:二冬   七言絶句平起式)


哭友

寒消梅発訃報     寒消え梅発して 訃報傳わる
新墓無常奈何     新墓無常 天を奈何せん
往時青雲渾一夢     往時の青雲 渾べて一夢
杏花零落寺門     杏花零落す 寺門の前

(赤い字は韻:一先   七言絶句平起式)


尋訪禅寺

石逕泉声緑草     石逕泉声 緑草滋る
山林幽趣紫雲     山林幽趣 紫雲垂る
逃名帰休又千里     名を逃れ帰休す 又千里
養志老懶能幾     志を養う老懶 能く幾時ぞ

(赤い字は韻:四支   七言絶句仄起式)


遊南禅寺

逃塵問道正東     塵を逃れ道を問う 正に東峯
石逕山深紫閣     石逕山深く 紫閣重なる
禅寂聞鐘無客至     禅寂鐘を聞く 客の至る無く
蒼天屋上有雲     蒼天屋上に 雲の従う有り

(赤い字は韻:二冬   七言絶句平起式)


夜寒

寒侵衣褐雪皚     寒は衣褐を侵し 雪皚皚
清夜焚香酒一     清夜香を焚き 酒一盃
玉粒叩門無客訪     玉粒門を叩き 客の訪れる無し
北風閉戸向誰     北風戸を閉じ 誰に向かいて開かん

(赤い字は韻:十灰   七言絶句平起式)


新年

凍雪愁雲未上     凍雪愁雲 未だ春に上らず
寒燈短褐不憂     寒燈短褐 貧を憂へず
今朝鳳暦年還別     今朝鳳暦 年還た別に
白髪騒人老更     白髪の騒人 老更に新たなり

(赤い字は韻:十一真   七言絶句仄起式)


迎春

暖日青帝滄海     暖日青帝 滄海の東
千門万戸酔春     千門万戸 春風に酔う
郷書去歳多新鬼     郷書去歳 新鬼多し
椒酒今朝獨老     椒酒今朝 獨り老翁

(赤い字は韻:一東   七言絶句仄起式)


元日偶成

寒退鶯遷春已     寒退き鶯遷り 春已に帰る
暖回梅笑媚晴     暖は回り梅は笑い 晴暉に媚ぶ
吟情白髪方知命     吟情白髪 方に命を知る
酔味朱顔自覚     酔味朱顔 自ら非を覚る

(赤い字は韻:五微   七言絶句仄起式)


新春

旭日春風楽歳     旭日春風 歳豊を楽しむ
寿杯笑語較窮     寿杯笑語 窮通を較ぶ 
明年此会知誰健     明年此会 知る誰ぞ健なるを
歌舞新吟白髪     歌舞新吟 白髪の翁

(赤い字は韻:一東   七言絶句仄起式)


冬夜読書(三)

天高双眼臥蒼     天高双眼 蒼龍臥す
風吠千峰重又     風吠へ千峰 重又重
半夜辛吟愁筆老     半夜辛吟 筆の老いを愁う
一燈温瓶愛酒     一燈瓶を温め 酒の濃を愛す

(赤い字は韻:二冬   七言絶句平起式)


冬夜読書(二)

月凝凍影満寒     月凝り凍影 寒叢に満つ
老病誰憐往時     老病誰か憐れむ 往時空し
残火卷序図書裡     残火卷序す 図書の裡
敲窓風雪酔吟     窓を敲く風雪 酔吟の中

(赤い字は韻:一東   七言絶句平起式)


冬夜読書(一)

靜読詩書一病     静に読む詩書 一病の翁
誰憐寂莫夢魂     誰か憐れむ寂莫 夢魂通ず
低吟浅酌三更月     低吟浅酌 三更の月
白髪青春百慮     白髪青春 百慮空し

(赤い字は韻:一東   七言絶句仄起式)




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