2006年12月の自作漢詩


歳晩懐郷

我恨疎疎骨肉     我恨む疎疎たる 骨肉の縁
家貧親老正凄     家貧しく親老い 正に凄然
不眠歳晩思千里     眠らず歳晩 千里を思う
白髪明朝又一     白髪明朝 又一年

(赤い字は韻:一先   七言絶句仄起式)


歳晩書懐

寒宵炉火紙窓     寒宵炉火 紙窓の中
世路人忙歳已     世路人忙く 歳已に窮る
往時塵粉終白首     往時塵粉 白首に終わる
無功汲汲愧青     功無く汲々 青銅を愧ず

(赤い字は韻:一東   七言絶句平起式)


至日有閑

雲奔北樹転凄     雲奔り北樹 転た凄涼
風吼南枝動一     風吼え南枝 一陽動く
老懶不知冬欲半     老懶知らず 冬半ならんと欲す
闥温酒夜方     闥酒を温め 夜方に長し

(赤い字は韻:七陽   七言絶句平起式)


歳晩

詩材吟苦白頭     詩材吟苦す 白頭翁
酒債無心半酔     酒債心無く 半酔の中
燭尽奇寒燈欲凍     燭尽き奇寒 燈凍らんと欲す
鶏鳴月落年将     鶏鳴いて月落ち 年将に窮まらんとす

(赤い字は韻:一東  七言絶句平起式)


寒夜懐郷

禿木空林凍鳥     禿木空林に 凍鳥飢え
寒雲動處晩風     寒雲動く處 晩風飛ぶ
傍炉敲句無由寝     炉に傍い句を敲きて 寝るに由無し
温酒蔵機何日     酒を温め機を蔵して 何の日にか帰らん

(赤い字は韻:五微   七言絶句平起式)


小春日和

雲停雪後乱峰     雲停り雪後 乱峰に堆し
一路霜風草木     一路霜風 草木摧く
南至小春心自若     南至小春 心自若たり
陽回日月去還     陽回り日月 去りて還た来る

(赤い字は韻:十灰   七言絶句平起式)


郊村暖日

麦圃乗晴猿鳥     麦圃晴に乗じて 猿鳥親しむ
郊村負暖碧蕪     郊村暖を負いて 碧蕪新たなり
炉前故老寒衣少     炉前の故老 寒衣少く
温酒吟詩暁夢     酒を温め詩を吟じて 暁夢頻なり

(赤い字は韻:十一真   七言絶句仄起式)


冬至

寒鳥曝背在霜     寒鳥背を曝して 霜枝に在り
白老炉前得自     白老炉前に 自怡を得たり
負暖吟身三盞酒     暖を負い吟身 三盞の酒
愉闔鞄一年     閧愉しみ至日 一年の詩

(赤い字は韻:四支   七言絶句平起式)


冬夜雑感(一)

霜風颯颯苦寒     霜風颯颯 苦寒侵す
凍月沈沈坐夜     凍月沈沈 夜深に坐す
大業不知看晩節     大業知らず 晩節を看る
光陰懐古得初     光陰古を懐いて 初心を得

(赤い字は韻:十二侵   七言絶句平起式)


冬夜雑感(二)

燈寒黙坐冷衣     燈寒く黙坐し 衣襟冷かなり
硯凍千書惜寸     硯凍り千書 寸陰を惜しむ
今日老骨帰有命     今日老骨 有命に帰す
当年残夢遊無     当年残夢 無心に遊ぶ

(赤い字は韻:十二侵   七言絶句平起式)


慙愧

寒宵漏凍月窓     寒宵漏凍り 月窓に横たわる
侵暁孤燈犬吠     暁を侵す孤燈 犬吠える声
獨夜看書猶不倦     獨夜書を看て 猶倦きず
無名白髪愧吾     名無く白髪 吾生を愧ず

(赤い字は韻:八庚   七言絶句平起式)


暁寒

銀花数里暁寒     銀花数里 暁寒凄たり
鋭意一声聴曙     鋭意一声 曙鶏を聴く
苦吟酒醒眠未就     苦吟酒醒め 眠未だ就らず
空閨炉冷月斜西     空閨炉冷え 月西に斜めなり

(赤い字は韻:八斉   七言絶句平起式)


寒鬼

隆冬飛雪拂窓     隆冬飛雪 窓を拂って吹く
黯黯暁天凍月     黯黯たる暁天 凍月移る
満地霜威寒鬼隠     満地霜威 寒鬼隠る
無声戸外暮鴉     声無く戸外 暮鴉飢ゆ

(赤い字は韻:四支   七言絶句平起式)


初冬清談

寒山万象雨冥     寒山万象 雨冥冥
急景繁霜満戸     急景繁霜 戸庭に満つ
求句清談添旧卷     句を求め清談 旧卷を添える
囲炉共酔臥空     炉を囲み共に酔い 空瓶を臥す

(赤い字は韻:九青   七言絶句平起式)


初冬夕餉

橘柚帯黄已夕     橘柚黄を帯び 已に夕陽
北風結凍草堂     北風凍を結ぶ 草堂の霜
炉頭炒栗魚偏美     炉頭に栗を炒り 魚偏に美なり
乗暖弾琴酒倍     暖に乗じ琴を弾じ 酒倍す香し

(赤い字は韻:七陽   七言絶句仄起式)


冬夜吟詠

荒郊柿落乱飛     荒郊柿落ち 乱飛の鴉
犬睡南窓日欲     犬睡る南窓 日斜めならんと欲す
独座闍癡野興     独座闍瘁@野興を憐れむ
炉前温酒向誰     炉前酒を温め 誰に向かいて誇らん

(赤い字は韻:六麻   七言絶句平起式)


初冬

故老鋤園郭外     故老園を鋤く 郭外の村
晴寒風叩錦楓     晴寒風叩き 錦楓翻る
初冬地凍霜常薄     初冬地凍り 霜常に薄く
晩照木凋日易     晩照木凋み 日昏れ易し

(赤い字は韻:十三元   七言絶句仄起式)


初冬閑居

地凍霜辰冷透     地凍り霜の辰 冷肌を透す
飢鳥曝背老松     飢鳥背を曝す 老松の枝
新冬日短寒不寝     新冬日短く 寒くして寝られず
小雪窺窓病不     小雪窓を窺うも 病みて知らず

(赤い字は韻:四支   七言絶句仄起式)


初冬出遊

村落枯林凍雀     村落の枯林に 凍雀飛ぶ 
北風凛凛嘆無     北風凛凛 無衣を嘆く
荒郊出郭孤烟近     荒郊郭を出れば 孤烟近し 
晩照寒山衆葉     晩照の寒山 衆葉稀なり

(赤い字は韻:五微   七言絶句仄起式)



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