2006年10月の自作漢詩


秋夜

風度天光月更     風度り天光 月更に清し 
凄涼秋色満江     凄涼と秋色 江城に満つ
夢回多事丹心苦     夢は回る多事 丹心苦しむ 
望断老懐白髪     望は断ち老懐 白髪明らかなり

(赤い字は韻:八庚   七言絶句仄起式)


秋夜

天清菊散満庭     天清く菊散り 満徐に満つ 
霜落露凝事静     霜落ち露凝り 静虚を事とす
病骨回首秋已老     病骨首を回らせば 秋已に老ゆ 
孤燈屈指雁無     孤燈指を屈すれば 雁書無し

(赤い字は韻:六魚   七言絶句平起式)


秋日送友人

故国千山過白     故国千山 白雲過ぐ 
行人万里惜離     行人万里 離群を惜しむ
明年此会知誰健     明年此会 知る誰か健やかを 
去就留詩復那     去就詩を留め 復た那をか云わん

(赤い字は韻:十二文   七言絶句仄起式)


秋色

一天片雨水滔     一天片雨 水滔々 
千里陰雲冷透     千里陰雲 冷袍を透す
掻髪疎疎無限思     髪を掻けば疎疎と 無限の思い 
吟詩密密酔芳     詩を吟ずれば密密と 芳醪に酔う

(赤い字は韻:四豪   七言絶句平起式)


秋日懐郷

風急天高秋色     風急に天高く 秋色哀し 
江村波面鳥飛     江村の波面に 鳥飛び廻る
百年多病懐郷日     百年多病 郷を懐う日 
一夜新停濁酒    一夜新たに停む 濁酒の盃

(赤い字は韻:十灰   七言絶句仄起式)


秋日強風

玉露凋傷草樹     玉露凋傷と 草樹荒る 
風雲接地更凄     風雲地に接して 更に凄涼
江間波浪兼天湧     江間の波浪 天を兼ねて湧く 
老骨寒衣強挙     老骨の寒衣 強いて觴を挙ぐ

(赤い字は韻:七陽   七言絶句仄起式)


秋思江行

風雲掃地雨初     風雲地を掃いて 雨初めて乾く 
空外秋声到遠     空外秋声 遠巒に到る
遶野孤看荒径菊     野を遶り孤り看る 荒径の菊 
一天星斗大江     一天星斗 大江寒し

(赤い字は韻:十四寒   七言絶句平起式)


秋夜懐郷

秋霖寂寂雨声     秋霖寂寂と 雨声悲し 
夜半凄凄一葉     夜半凄凄 一葉衰う
離思母親腸欲断     離れて母親を思えば 腸断んと欲す 
郷愁帰夢老方     郷愁帰夢 老いて方に知る

(赤い字は韻:四支   七言絶句平起式)


斜陽

金色染雲正落     金色雲を染め 正に落暉 
黄昏漠漠暮烟     黄昏漠漠として 暮烟飛ぶ
蕭然双鬢無限思     蕭然と双鬢 無限の思い 
清露侵衾音信     清露衾を侵し 音信稀なり

(赤い字は韻:五微   七言絶句仄起式)


蕎麦畑

秋光如浪照蕎     秋光浪の如く 蕎花を照らす 
寂莫西郊隔暮     寂莫たる西郊 暮霞を隔つ
処処幽篁臨水映     処処幽篁 水に臨んで映ず 
騒人緩歩興無     騒人緩歩すれば 興涯り無し

(赤い字は韻:六麻   七言絶句平起式)


雨後江行

満目蒼蒼雨後     満目蒼蒼と 雨後の天 
雲竜千尺最翩     雲竜千尺 最も翩翩
江水流急波頭躍     江水流れ急にして 波頭躍る 
気爽探楓落葉     気爽に楓を探る 落葉の前

(赤い字は韻:一先   七言絶句仄起式)


秋雨

江上陰雲暮雨     江上の陰雲 暮雨過ぎる
秋霖滴滴打残     秋霖滴滴と 残荷を打つ
孤燈臥聞蕭蕭響     孤燈臥して聞く 蕭蕭の響 
郷思誰知奈老     郷思誰か知る 老いを何せん

(赤い字は韻:五歌   七言絶句仄起式)


秋夜

前峰後嶺暮天     前峰後嶺 暮天の雲
寂莫雁声静夜     寂莫と雁声 清夜に聴く
病骨老来多感慨     病骨老来りて 感慨多し
忘憂数盃酔醺     憂いを忘れ数盃 酔うて醺醺

(赤い字は韻:十二文   七言絶句平起式)


孤夜

前峰浩浩月如     前峰浩浩と 月霜の如し
秋老凄涼野景     秋老いて凄涼 野景荒る
露草蒼蒼虫切切     露草蒼蒼 虫切切
無言黙座夜方     言無く黙座す 夜方に長し

(赤い字は韻:七陽   七言絶句平起式)


秋思

露下天高秋水     露下天高く 秋水清し
寒燈夜色満江     寒燈夜色 江城に満つ
蘆花冷落身将老     蘆花冷落し 身将に老んとす
有酒焚香到五     酒有り香を焚きて 五更に到る

(赤い字は韻:八庚   七言絶句仄起式)


秋日江行

雨後西郊露菊     雨後の西郊 露菊香る
江天颯颯午風     江天颯颯として 午風涼し
連空碧水沙鴎静     空に連る碧水 沙鴎靜なり
秋色染雲橘半     秋色雲を染め 橘半ば黄なり

(赤い字は韻:七陽   七言絶句仄起式)


秋霖

秋霖不歇響蕭     秋霖歇まず 響き蕭蕭
連日江村細雨     連日江村に 細雨澆ぐ
獨座読書方丈室     獨座して書を読む 方丈の室
幽人陰陰意無     幽人陰陰と 意は無聊

(赤い字は韻:二蕭   七言絶句平起式)


冷雨

冷雨打窓日暮     冷雨窓を打つ 日暮の時
秋霖寂寂草虫     秋霖寂寂と 草虫悲し
哀心不歇弧衾裡     哀心歇まず 弧衾の裡
身老天涯莫我     身老い天涯 我を知る莫し

(赤い字は韻:四支   七言絶句仄起式)




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