2006年9月の自作漢詩


秋雨虫声

秋雨蕭蕭落葉     秋雨は蕭蕭と 落葉の前
暮寒寂寂暗江     暮寒寂寂と 江天暗し
新霜臥聴残燈下     新霜臥して聴く 残燈の下
切切虫声思悄     切切たる虫声 思い悄然たり

(赤い字は韻:一先   七言絶句仄起式)


秋夜吟詠

蕎花如雪夕陽     蕎花雪の如く 夕陽寒し
樹影蕭蕭木葉     樹影蕭蕭として 木葉残る
煖酒衰翁須痛飲     酒を煖め衰翁 須らく痛飲す
題詩詠嘆思漫     詩を題して詠嘆し 思い漫漫

(赤い字は韻:十四寒   七言絶句平起式)


秋夜焚香

切切蟲聲夜偏     切切たる蟲聲 夜偏に長し
秋光露気月如     秋光露気 月霜の如し
不知到暁眠難就     知らず暁に到る 眠就り難し
局裡焚香入酔     局裡香を焚いて 酔郷に入る

(赤い字は韻:七陽   七言絶句仄起式)


秋夜獨吟

夜色凄涼失意     夜色凄涼 失意の人
空階黙座寄吟     空階に黙座して 吟身を寄す
窮愁万感孤燈下     窮愁万感 孤燈の下
望断老狂為酒     望みは断つ 老狂酒の為に貧なり

(赤い字は韻:十一真   七言絶句仄起式)


中秋賞月

銀燭秋光冷露     銀燭の秋光 露叢を冷す
青天千里路西     青天千里 路西東す
桂花皎皎波頭躍     桂花皎皎として 波頭に躍る
清夜沈沈一葉     清夜沈沈と 一葉の桐

(赤い字は韻:一東   七言絶句仄起式)


秋興

叢菊両開帯夕     叢菊両開し 夕陽を帯びる
西風颯颯稲花     西風颯颯として 稲花香し
江村野興秋如錦     江村の野興  秋錦の如し
樹影凋傷露欲     樹影凋傷として 露霜ならんと欲す

(赤い字は韻:七陽   七言絶句仄起式)


江村秋事

老牛路遶雨声     老牛路を遶りて 雨声寒し
黄稲収禾野実     黄稲禾を収め 野実丹なり
秋色人煙村塢静     秋色人煙  村塢靜なり
衰翁乗興酒方     衰翁興に乗じて 酒方に闌わなり

(赤い字は韻:十四寒   七言絶句平起式)


秋夜小雨

秋宵滴滴雨声     秋宵滴滴と 雨声寒し
寂莫無人夜欲     寂莫として人無く 夜闌わならんと欲す
断雁誰知何処去     断雁誰か知らん  何処にか去る
回看不寝思漫     回看して寝ず 思漫漫

(赤い字は韻:十四寒   七言絶句平起式)


秋夜

霜草蒼蒼夜色     霜草蒼蒼として 夜色清し
城邊空院座深     城邊の空院 深更に座す
月明蕎麦花如雪     月明に蕎麦花 雪の如し
有酒幽人忘世     酒有り 幽人世情を忘る

(赤い字は韻:八庚   七言絶句仄起式)


干戈

四海干戈西復     四海の干戈 西復東
姦雄躍馬事戦     姦雄馬を躍らせて 戦攻を事とす
荒城白骨人何在     荒城に白骨 人何こにか在る
鉄石弦声耳欲     鉄石弦声 耳を聾せんと欲す

(赤い字は韻:一東   七言絶句仄起式)


鬼哭

百代忠兵為国     百代の忠兵 国の為に捐つ
三軍北伐幾人     三軍北伐して 幾人か全き
悲君死節真堪惜     君を悲しむ節に死すは 真に惜しむに堪え
猶想大材哭墓     猶想う大材 墓前に哭く

(赤い字は韻:一先   七言絶句仄起式)


秋雨小酌

書窓夜半雨凄     書窓夜半 雨凄凄たり
切切虫声野樹     切切たる虫声 野樹低し
更憶綿綿眠未就     更に憶う綿綿と 眠未だ就かず
誰知朽骨酔如     誰か知る朽骨 酔うて泥の如し

(赤い字は韻:八斎   七言絶句平起式)


秋雨懐郷

秋宵日落雨声     秋宵日落ち 雨声寒し
身老重衾独自     身老い衾を重ね 独り自ら嘆く 
旅雁念帰腸欲断     旅雁は帰るを念じて 腸断たんと欲す
郷心万感意悲     郷心万感なれど 意は悲惨

(赤い字は韻:十四寒   七言絶句平起式)


十五夜

小径斜陽照露     小径に斜陽 露叢を照らす
江天万里影冷     江天万里 影冷朧
中秋皎皎迎明月     中秋は皎皎として 明月を迎う
丹桂雲生一葉     丹桂は雲を生じ 一葉の風

(赤い字は韻:一東   七言絶句仄起式)


江村秋事

新稲豊穣晩節     新稲豊穣にして 晩節香し
帰牛一雁月蒼     帰牛一雁 月蒼蒼
君知秋社村村鼓     君知るや秋社 村村の鼓
煖酒衰翁枕席     酒を煖め衰翁 枕席涼し

(赤い字は韻:七陽   七言絶句仄起式)


柏梁体

柏梁体は漢の武帝が廷臣を柏梁台という館に集めて催した連句の形式であった。最後の言葉は韻を踏むが平仄は無視する古詩の形式である。数人の人が志を述べあう連句の会である。今回は私一人で十句を作った。韻は一先とし、必須ではないが詩形式の約束事は、同字相犯、二四不同、二六対、弧平禁止、下三連禁止を守った。詩の題は「秋」とした。

 1:山色風清雨後     山色風清く 雨後の天

 2:断雲梧落素秋     断雲梧落ち 素秋の天

 3:江村牛背雨綿綿     江村牛背に 雨綿綿たり

  4:村静秋郊萩風     村静にして秋郊 萩風の前

 5:茅葉落尽巳無     茅葉落尽し 巳に蝉無し

 6:碧水臨風月影     碧水風に臨み 月影鮮なり

 7:酣歌向月酔中     酣歌月に向いて 酔中の仙

 8:田神煖酒楽豊     田神酒を煖めて 豊年を楽しむ

 9:蕎花如雪冷風     蕎花雪の如く 風烟冷し

10:探勝行人月下     勝を探し行人 月下に眠る

(赤い字は韻:一先   七言)




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