艦上軍官帳殿開 艦上の軍官 帳殿を開く
計窮兵尽幾人回 計窮り兵尽き 幾人か回る
干戈不厭化為土 干戈 化して土と為るを厭わず
百代惜君柱石才 百代君を惜しむ 柱石の才
三門臥看絶塵機 三門より臥看すれば 塵機絶ゆ
深処禅房人跡稀 深処禅房 人跡稀なり
三十六峰秋巳到 三十六峰 秋巳に到る
松声風動白雲飛 松声風動き 白雲飛ぶ
断雲残暑昼猶長 断雲残暑 昼猶長し
一雨桐飛夜夜涼 一雨桐飛び 夜夜涼し
草露東籬鳴蟋蟀 草露の東籬 蟋蟀鳴く
先知爽気動清商 先ず知る爽気 清商動く
午炎俄爾黒雲回 午炎俄爾に 黒雲回る
一雨漲天忽驟来 一雨天に漲り 忽に驟来る
翻墨沛然兼洗熱 墨を翻して沛然 兼て熱を洗う
須臾乱噪晩涼催 須臾に乱噪 晩涼を催す
電掣雷轟雨覆盆 電掣雷轟 雨盆を覆す
煌煌一撃暗消魂 煌煌たる一撃 暗に魂を消す
風狂勢極千山動 風狂い勢極まり 千山動く
萬木溟濛屋漏痕 萬木溟濛 屋漏の痕
立秋残暑昼猶長 立秋残暑 昼猶長し
蓮謝雨餘夜夜涼 蓮は謝す雨餘 夜夜涼し
月白桐飛鳴蟋蟀 月白く桐飛んで 蟋蟀鳴く
捲簾颯颯動清商 簾を捲けば颯颯と 清商動く
素昊銀河月色清 素昊銀河 月色清し
今宵槐蔭聴蛩聲 今宵槐蔭に 蛩聲を聴く
郊墟暑退微涼動 郊墟暑退き 微涼動く
病骨吟鬢万感生 病骨の吟鬢 万感生ず
緑槐高処一蝉吟 緑槐高処 一蝉吟ず
渓路尋勝碧水深 渓路勝を尋ぬ 碧水深し
殷殷瀑聲流不盡 殷殷たる瀑聲 流れ盡ず
巌前洗却座清陰 巌前洗却し 清陰に座す
暑雨初過爽気清 暑雨初めて過ぎ 爽気清らかなり
玉波蕩漾洗俗情 玉波蕩漾として 俗情を洗う
穿簾渺渺薫風至 簾を穿ちて渺渺 薫風至る
臥看桐陰夢未成 臥して看る桐陰 夢未だ成らず
赤帝紅炉日正中 赤帝紅炉 日正に中なり
扇頭能有幾多風 扇頭 能く幾多の風有りや
炎塵溽暑酔如酒 炎塵の溽暑 酔うこと酒の如し
無計満身半病翁 計無し 満身半病の翁
幽亭草裡畏炎天 幽亭の草裡 炎天を畏る
簾外微風満樹蝉 簾外微風 満樹の蝉
夢到昼堂人不見 夢昼堂に到りて 人を見ず
葛衣酔臥枕書眠 葛衣酔臥 書を枕にして眠る
如峯如火復如軍 峯の如く火の如く復た軍の如し
赫赫龍文畏日雲 赫赫たる龍文 畏日の雲
大地炎塵乾欲死 大地の炎塵 乾いて死せんと欲す
午天爛石烈如焚 午天石を爛らし 烈として焚くが如し
炎炎赤日火雲? 炎炎たる赤日 火雲あぶる
熱極無聲半酔中 熱極り聲無く 半酔の中
閉戸抛書高枕臥 戸を閉め書を抛って 枕を高くして臥す
心頭欲盡病眠翁 心頭盡んと欲す 病眠の翁