2006年8月の自作漢詩


悼戦艦大和将官

艦上軍官帳殿     艦上の軍官 帳殿を開く
計窮兵尽幾人     計窮り兵尽き 幾人か回る
干戈不厭化為土     干戈 化して土と為るを厭わず
百代惜君柱石     百代君を惜しむ 柱石の才

(赤い字は韻:十灰   七言絶句仄起式)


京都臨済宗別格五山 南禅寺

三門臥看絶塵     三門より臥看すれば 塵機絶ゆ
深処禅房人跡     深処禅房 人跡稀なり
三十六峰秋巳到     三十六峰 秋巳に到る
松声風動白雲     松声風動き 白雲飛ぶ

(赤い字は韻:五微   七言絶句平起式)


残暑

断雲残暑昼猶     断雲残暑 昼猶長し
一雨桐飛夜夜     一雨桐飛び 夜夜涼し
草露東籬鳴蟋蟀     草露の東籬 蟋蟀鳴く
先知爽気動清     先ず知る爽気 清商動く

(赤い字は韻:七陽   七言絶句平起式)


驟雨

午炎俄爾黒雲     午炎俄爾に 黒雲回る
一雨漲天忽驟     一雨天に漲り 忽に驟来る
翻墨沛然兼洗熱     墨を翻して沛然 兼て熱を洗う
須臾乱噪晩涼     須臾に乱噪 晩涼を催す

(赤い字は韻:十灰   七言絶句平起式)


雷雨

電掣雷轟雨覆     電掣雷轟 雨盆を覆す
煌煌一撃暗消     煌煌たる一撃 暗に魂を消す
風狂勢極千山動     風狂い勢極まり 千山動く
萬木溟濛屋漏     萬木溟濛 屋漏の痕

(赤い字は韻:十三元   七言絶句仄起式)


始聴秋聲

立秋残暑昼猶     立秋残暑 昼猶長し
蓮謝雨餘夜夜     蓮は謝す雨餘 夜夜涼し
月白桐飛鳴蟋蟀     月白く桐飛んで 蟋蟀鳴く
捲簾颯颯動清     簾を捲けば颯颯と 清商動く

(赤い字は韻:七陽   七言絶句平起式)


初秋偶成

素昊銀河月色     素昊銀河 月色清し
今宵槐蔭聴蛩     今宵槐蔭に 蛩聲を聴く
郊墟暑退微涼動     郊墟暑退き 微涼動く
病骨吟鬢万感     病骨の吟鬢 万感生ず

(赤い字は韻:八庚   七言絶句仄起式)


避暑

緑槐高処一蝉     緑槐高処 一蝉吟ず
渓路尋勝碧水     渓路勝を尋ぬ 碧水深し
殷殷瀑聲流不盡     殷殷たる瀑聲 流れ盡ず
巌前洗却座清     巌前洗却し 清陰に座す

(赤い字は韻:十二侵   七言絶句平起式)


夏日江村

暑雨初過爽気     暑雨初めて過ぎ 爽気清らかなり
玉波蕩漾洗俗     玉波蕩漾として 俗情を洗う
穿簾渺渺薫風至     簾を穿ちて渺渺 薫風至る
臥看桐陰夢未     臥して看る桐陰 夢未だ成らず

(赤い字は韻:八庚   七言絶句仄起式)  


大暑

赤帝紅炉日正     赤帝紅炉 日正に中なり
扇頭能有幾多     扇頭 能く幾多の風有りや
炎塵溽暑酔如酒     炎塵の溽暑 酔うこと酒の如し
無計満身半病     計無し 満身半病の翁

(赤い字は韻:一東   七言絶句仄起式)


夏日昼寝

幽亭草裡畏炎     幽亭の草裡 炎天を畏る
簾外微風満樹     簾外微風 満樹の蝉
夢到昼堂人不見     夢昼堂に到りて 人を見ず
葛衣酔臥枕書     葛衣酔臥 書を枕にして眠る

(赤い字は韻:一先   七言絶句平起式)


積乱雲

如峯如火復如     峯の如く火の如く復た軍の如し
赫赫龍文畏日     赫赫たる龍文 畏日の雲
大地炎塵乾欲死     大地の炎塵 乾いて死せんと欲す
午天爛石烈如     午天石を爛らし 烈として焚くが如し

(赤い字は韻:十二文   七言絶句平起式)


苦熱

炎炎赤日火雲?      炎炎たる赤日 火雲あぶる
熱極無聲半酔     熱極り聲無く 半酔の中
閉戸抛書高枕臥     戸を閉め書を抛って 枕を高くして臥す
心頭欲盡病眠     心頭盡んと欲す 病眠の翁

(赤い字は韻:一東   七言絶句平起式)



漢詩へ戻る ホームに戻る
inserted by FC2 system