細雨送春草木栄　　　　 細雨春を送りて　草木栄え
幽庭満樹緑陰清　　　　　幽庭の満樹　緑陰清し　
牡丹玉貌無双艶　　　　　牡丹の玉貌　無双の艶
篁竹老鶯不惜聲　　　　　篁竹の老鶯　聲を惜しまず

江城爛漫桜花天　　　　　江城爛漫　桜花の天
歌管楼台一夕歓　　　　　歌管楼台　一夕の歓
香裡徘徊朧月夜　　　　　香裡徘徊す　朧月夜
遊人酌酒酔芳筵　　　　　遊人酒を酌み　芳筵に酔う

麗艶花王萬物春　　　　　麗艶なり花王　萬物は春
幽庭坐見是佳人　　　　　幽庭坐して見る　是れ佳人
半簾寂寂病窓夢　　　　　半簾寂寂として　病窓の夢
何日相携笑語親　　　　　何の日か相携して　笑語親しまん

灼灼牡丹富貴花　　　　　灼灼たり牡丹　富貴の花
千姿淑態向人誇　　　　　千姿の淑態　人に向かって誇る
満園爛漫香風度　　　　　満園爛漫　香風度たる
為惜遊人酔歩斜　　　　　為に惜しむ遊人　酔歩斜めなり

細雨霏霏燕双飛　　　　　細雨霏霏として　燕双飛ぶ
新麦磨鎌緑正肥　　　　　新麦鎌を磨くころ　緑正に肥ゆ
紅落舞風花不語　　　　　紅落ち風に舞い　花語らず
鶯声結恨送春帰　　　　　鶯声恨を結びて　春の帰るを送る

一夜春雷雨脚斜　　　　　一夜春雷　雨脚斜めなり
幽庭満樹乱如麻　　　　　幽庭の満樹　乱れて麻の如し
愁人為惜茫見夢　　　　　愁人為に惜む　茫として夢を見る
休問朝鶯啄落花　　　　　問うを休めよ　朝鶯落花を啄ばむ

青郊柳岸雨声連　　　　　青郊の柳岸　雨声連なる
五月江村水溢田　　　　　五月の江村　水は田に溢れ
里邑秧歌蛙鼓聒　　　　　里邑の秧歌　蛙鼓聒びすし
農夫植稲碧涵天　　　　　農夫稲を植えて　碧は天を涵す

訃到傷心徹肺肝　　　　　訃到り傷心　肺肝に徹す
佳人薄命幾辛酸　　　　　佳人薄命　辛酸幾ほどぞ
生涯是夢悲塵世　　　　　生涯是夢　塵世を悲しむ
君去何之涙不乾　　　　　君去り何に之くや　涙乾かず

埋骨無常葉落秋　　　　　骨を埋めて無常　葉落ちる秋
堪傷寂寂水空流　　　　　傷むに堪え　寂寂として水空しく流る
思君楚楚貞姿潔　　　　　君を思えば楚楚として　貞姿潔し
白老何時憶昔遊　　　　　白老何れの時か　昔遊びしを憶う

人事生涯存我愚　　　　　人事生涯　我愚を存す
光陰老到脱塵抱　　　　　光陰老到り　塵抱を脱す
功名慷慨邯鄲夢　　　　　功名も慷慨も　邯鄲の夢
欣喜休官詩酒娯　　　　　欣喜して官を休む　詩と酒の娯しみ