春浦翠微黄蝶飛 春浦は翠微に 黄蝶飛び
燦然紅日釣魚磯 燦然たる紅日 釣魚の磯
冷冷碧水沙鴎宿 冷冷たる碧水 沙鴎の宿
淡淡青山江燕帰 淡淡たる青山 江燕帰る
○●●○○●◎
●○○●●○◎
○○●●○○●
●●○○○●○
満目桃花墨水頭 満目桃花 墨水の頭
風流煙靄使人愁 風は煙靄を流し 人をして愁えしむ
碧川曲畔逍遥客 碧川の曲畔を 逍遥の客
白日悠悠浩蕩鴎 白日悠悠たり 浩蕩の鴎
●●○○●●◎
○○○●●○◎
●○●●○○●
●●○○●●○
蓬伸芽甲草青青 蓬は芽甲を伸し 草青々
淡淡黄花満柳汀 淡淡と黄花 柳汀に満つ
東畔軽舟人下釣 東畔の軽舟 人は釣を下し
春江水暖鷺梳羽 春江水暖く 鷺は羽を梳る
○○○●●○◎
●●○○●●◎
○●○○○●●
○○●●●○◎
青山極目満江春 青山極目 満江の春
竹外桃花悩殺人 竹外桃花 人を悩殺す
三月水天雲冉冉 三月水天 雲は冉冉
陽光返照浪清清 陽光返照 浪は清清
○○●●●○◎
●●○○●●◎
●●●○○●●
○○●●●○◎
晴江桃李百花洲 晴江桃李 百花の洲
東渚垂絲一葉舟 東渚に絲を垂る 一葉の舟
昨夜滴聲春水足 昨夜滴聲 春水足り
柳陰風暖午烟収 柳陰風暖に 午烟収まる
○○○●●○◎
○●○○●●◎
●●●○○●●
●○○●●○◎
東風吹暖菜花黄 東風暖を吹て 菜花は黄に
柳著軽煙苔蘚蒼 柳軽煙を著け 苔蘚は蒼に
春日田家鋤薬圃 春日田家 薬圃を鋤き
農婦南畝摘蚕桑 農婦は南畝に 蚕桑を摘む
○○○●●○◎
●●○○○●◎
○●○○○●●
○○○●●○◎
橋南扁船上旗亭 橋南扁船にて 旗亭に上がり
春浦鶯聲煙外聴 春浦鶯聲を 煙外に聴く
返照長江沙岸白 返照長江の 沙岸白く
風廻雲断畳峰青 風廻り雲断ち 畳峰青し
○○●●●○◎
○●○○○●◎
●●○○○●●
○○○●●○◎
花睡鶯眠寂四隣 花睡り鶯眠り 四隣寂たり
誰知我嬾艶陽春 誰か知る我嬾 艶陽の春
幽幽香骨紅猶在 幽幽たる香骨 紅猶を在り
短短菰蒲緑已新 短短たる菰蒲 緑已に新なり
○●○○●●◎
○○●●●○◎
○○○●○○●
●●○○●●○
乱點小杏紅満枝 乱點小杏 紅枝に満ち
湖邊新緑白鴎知 湖邊新緑 白鴎知る
梅花落地風来後 梅花地に落ち 風来る後
細細春江雨到時 細細と春江に 雨到る時
●●●○○●◎
○○○●●○◎
○○●●○○●
●●○○●●○
楼閣春風吹客衣 楼閣春風 客衣を吹き
池頭浅水暮煙微 池頭浅水に 暮煙微なり
悠悠浪上鴛鴦浴 悠悠と浪上に 鴛鴦浴し
片片花間黄蝶飛 片片と花間に 黄蝶飛ぶ
○●○○○●◎
○○●●●○◎
○○○●○○●
●●○○○●○
池畔旗亭坐斟杯 池畔旗亭に 坐して杯を斟み
前庭曳杖立徘徊 前庭に杖を曳て 立ちて徘徊す
濛濛春靄含煙緑 濛濛たる春靄 煙を含んで緑に
點點疎梅帯雨開 點點と疎梅は 雨を帯びて開く
○●○○●●◎
○○●●●○◎
○○○●○○●
●●○○●●○
北阜幽斎苔蘚蒼 北阜幽斎 苔蘚は蒼に
東風吹雨入池塘 東風雨を吹いて 池塘に入る
西江柳糸含情艶 西江の柳糸 情を含んで艶かに
南畔紅梅帯笑迎 南畔の紅梅 笑みを帯びて迎う
●●○○○●◎
○○○●●○◎
○○●●○○●
○●○○●●○
北国寒風雪尚堆 北国寒風 雪尚を堆く
南園老骨獨徘徊 南園に老骨 獨り徘徊す
三春料峭微聞雁 三春料峭 雁を聞くこと微く
八百花魁始破梅 八百花の魁 始めて梅を破る
●●○○●●◎
○○●●●○◎
○○●●○○●
●●○○●●○
尚不禁寒暖復消 尚を寒を禁ぜず 暖復た消え
疎林料峭木蕭蕭 疎林料峭 木は蕭蕭
痩梅三四迷帰雁 痩梅三四 帰雁迷い
肥胖鴛鴦隠暮潮 肥胖鴛鴦 暮潮に隠る
●●○○●●◎
○○●●●○◎
●○○●○○●
○●○○●●○
東風吹雨湿臙脂 東風雨を吹き 臙脂を湿らせ
柳著軽煙寒透帷 柳軽煙を著け 寒は帷を透る
細滴濛濛人到少 細滴濛濛 人到る少く
白梅不発燕帰遅 白梅発せず 燕帰る遅し
○○○●●○◎
●●○○○●◎
●●○○○●●
●○●●●○◎
柳糸霏霏煙雨中 柳糸は霏霏たる 煙雨の中
前園漠漠暗香通 前園漠漠 暗香通ず
紅梅妖艶濃如緋 紅梅妖艶 濃きこと緋の如く
白杏清夭淡似空 白杏清夭 淡きこと空に似る
●●○○○●◎
○○●●●○◎
○○○●○○●
●●○○●●○
紫岳筑西山水郷 紫岳筑西 山水の郷
絹堤橋北菜花黄 絹堤橋北 菜花黄なり
青昏薄暮酒難廃 青昏薄暮 酒廃め難く
有雨無詩春恨長 雨有り詩無し 春恨長し
●●○○○●◎
●○●●●○◎
○○●●●○●
●●○○○●○
柳睡帯長春未深 柳睡り帯長く 春未だ深からず
花眠自嬾気蕭森 花眠り自と嬾く 気蕭森たり
寒宵携酒誰敲戸 寒宵酒を携え 誰か戸を敲かん
樹影鶯愁梅可尋 樹影鶯愁え 梅尋ぬ可し
●●●○○●◎
○○●●●○◎
○○●●○○●
●●○○○●○
細雨霏霏杳靄間 細雨霏霏たり 杳靄の間
緑苔湿湿水潺渓 緑苔湿湿 水は潺渓
未還早燕双魚跳 早燕未だ還らず 双魚跳り
枝上残梅一鳥閑 残梅の枝上に 一鳥閑なり
●●○○●●◎
●○●●●○◎
●○●●○○●
○●○○●●○
陰雲吹雨洗芳芬 陰雲雨を吹き 芳芬を洗い
暖気催花風自薫 暖気花を催し 風自ら薫る
柳渚白沙纔漠漠 柳渚白沙 纔に漠漠
梅英鶯散已粉粉 梅英鶯散し 已に粉粉
○○○●●○◎
●●○○○●◎
●●●○○●●
○○○●●○◎
霏霏滋麦細於絲 霏霏と麦を滋し 絲より細く
漠漠湿花煙雨時 漠漠と花を湿す 煙雨の時
南畝林中鳩語閙 南畝林中に 鳩語閙し
江城軒内燕帰遅 江城軒内に 燕帰る遅し
○○○●●○◎
●●●○○●◎
○●○○○●●
○○○●●○◎
恵風催暖減春衣 恵風暖を催し 春衣を減じ
百草始生寸寸肥 百草始めて生じ 寸寸肥ゆ
麦隴煙沾山色静 麦隴煙沾い 山色静かに
梅花寂漠雨聲微 梅花寂漠 雨聲微なり
●○○●●○◎
●●○○●●◎
●●○○○●●
○○●●●○◎
春宵明月価千金 春宵明月 価千金
嘉会詩朋細細斟 嘉会詩朋 細細に斟む
堂上含杯留酔臥 堂上杯を含み 留て酔臥し
階前呵筆起行吟 階前筆を呵して 起きて行吟す
○○○●●○◎
○●○○●●◎
○●○○○●●
○○○●●○◎
江東三月已春風 江東三月 已に春風
黄鳥低飛心更雄 黄鳥低く飛び 心更に雄なり
柳絮入簾寒不力 柳絮簾に入り 寒力あらず
菜花濯葉雨聲窮 菜花葉を濯って 雨聲窮まる
○○○●●○◎
○●○○○●◎
●●●○○●●
●○●●●○◎
水畔青桜酒侶邀 水畔青桜に 酒侶邀え
闍瘟友酔春宵 闍瘟友 春宵に酔う
花魁香骨氷前液 花魁香骨 氷前に液い
始聴黄鶯雪裡嬌 始て聴く黄鶯 雪裡に嬌ぶ
●●○○●●◎
○○○●●○◎
○○○●○○●
●●○○●●○
白梅四五影槎牙 白梅四五 影は槎牙なり
未見萌芽冷気加 未だ萌芽を見ず 冷気加わる
闘草懶伸氷結玉 闘草伸びるに懶く 氷玉を結び
啼鶯無奈雪飛花 啼鶯奈ともする無く 雪は花を飛ばす
○○●●●○◎
●●○○●●◎
●●●○○●●
●○○●●○◎
筑西三月雪初融 筑西三月 雪初めて融け
散歩江東瑞気通 江東を散歩すれば 瑞気通ず
紅白梅凌林影外 紅白の梅は凌ぐ 林影の外
緑黄鶯出雨聲中 緑黄の鶯は出る 雨聲の中
●○○●●○◎
●●○○●●◎
○●○○○●●
●○○●●○◎
陰雲万里小寒来 陰雲万里 小寒催し
料峭東風雪意催 料峭と東風 雪意催す
片片長江先到柳 長江に片片と 先ず柳に到り
霏霏庭裡暗通梅 庭裡に霏霏と 暗に梅に通ず
○○●●●○◎
●●○○●●◎
●●○○○●●
○○○●●○◎
今朝四望浄無塵 今朝四望すれば 浄くして塵無く
眼界皚皚白似銀 眼界皚皚と 白きこと銀に似たり
三月江村猶傲雪 三月江村 猶雪に傲るも
南枝破蕾已矜春 南枝破蕾 已に春を矜る
○○●●●○◎
●●○○●●◎
○●○○○●●
○○●●●○◎
昨夜蒼芒急霰催 昨夜蒼芒と 急霰催し
庭前粉顎玉成堆 庭前粉顎と 玉堆を成す
騒人吟屋香中坐 騒人吟屋 香中に坐し
清影寒梅雪裡開 清影寒梅 雪裡に開く
●●○○●●◎
○○●●●○◎
○○○●○○●
○●○○●●○
雪裡寒梅且後時 雪裡寒梅 且つ時に後れ
北陰不発到南枝 北陰発せず 南枝に到る
弥生三月春風転 弥生三月 春風転じ
疎影横斜淑景移 疎影横斜 淑景移る
●●○○●●◎
○○●●●○◎
●○○●○○●
○●○○●●○