繙帙移時玉漏沈 帙を繙けば時を移して 玉漏沈み
残燈欲滅苦寒侵 残燈滅せんと欲して 苦寒侵す
烈風凛凛飛霜満 烈風凛凛と 飛霜満ち
眼界粉粉積雪深 眼界粉粉と 積雪深し
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馬蹄出発促残更 馬蹄出発 残更を促し
回首月斜天欲明 首を回せば月は斜めに 天明ならんと欲す
東白開門難弁色 東白く開門すれば 色を弁じ難く
早朝宿鳥易聞聲 早朝宿鳥 聲を聞き易し
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疎林冽冽凍禽啼 疎林冽冽 凍禽啼き
霜意凄凄寒暁閨 霜意凄凄 暁閨寒し
冷枕重袍眠未就 冷枕重袍 眠未だ就らず
西空孤獨月上下 西空孤獨に 月上下
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風怒雲流寒鬼窺 風怒り雲流れ 寒鬼窺い
雁行月白照書帷 雁行き月白く 書帷を照らす
誰憐寂莫魂銷夜 誰か憐ん寂莫と 魂銷る夜
戸外霜威春不知 戸外霜威 春知らず
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満地銀花上下同 満地銀花 上下同じ
庭前飢雀任東西 庭前の飢雀 東西に任せ
陽回暖律寒河増 陽回り暖律 寒河増し
香骨横斜暮雪空 香骨横斜し 暮雪空し
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満地碧煙冰雪容 満地碧煙 冰雪の容
遠山凝固臥蒼龍 遠山凝固 蒼龍臥す
四方漠漠霏微薄 四方漠漠 霏微薄く
一路霜風隠映重 一路霜風 隠映重なる
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垂釣長江漁父舟 長江に釣を垂れる 漁父の舟
伴鴎短笠素貂裘 鴎を伴う短笠 素貂裘
冥蒙凍浦飛寒雨 冥蒙たる凍浦 寒雨飛び
両岸疎林急暮流 両岸の疎林に 暮流急なり
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小江浪静酒旗南 小江浪静に 酒旗の南
獨棹投鉤亦足貧 獨り棹し鉤を投ず 亦貧に足る
夕日孤舟天上下 夕日に孤舟 天の上下
汀沙枯葦月東西 汀沙に枯葦 月の東西
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銀波砕渚又飛騰 銀波渚を砕て 又飛騰
峡際哀猿六出凝 峡際哀猿 六出凝る
対岸疎林如隔霧 対岸の疎林 霧を隔つる如く
稜稜寒気欲生氷 稜稜たる寒気 氷を生んと欲す
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白雪紛紛鴎不驚 白雪紛紛 鴎驚かず
長流砕玉暮江明 長流玉を砕て 暮江明なり
夕陽照水平沙影 夕陽水を照して 平沙の影
宿鷺唖唖寒過聲 宿鷺唖唖と 寒過の聲
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冽冽寒風千里波 冽冽たる寒風 千里の浪
凄凄凍雪満長江 凄凄たる凍雪 長江に満つ
疎林瑟縮霜枯草 疎林瑟縮 霜草を枯らし
岸景冥蒙飛絮多 岸景冥蒙 飛絮多し
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天寒江上浪漂揺 天寒く江上に 浪漂揺
凍浦渡頭停短橈 凍浦渡頭に 短橈を停む
霧裡落潮低度鳥 霧裡落潮に 度鳥低れ
扁舟斜日下中霄 扁舟は斜日に 中霄を下る
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眼前寒水素花飄 眼前の寒水に 素花飄り
客館残燈酒一瓢 客館残燈 酒一瓢
銀界蒼茫愁欝結 銀界蒼茫と 愁は欝結
不眠獨老恐蕭條 不眠の獨老 恐くは蕭條たり
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夜来雪雨絮泥沾 夜来雪雨 絮泥沾ふ
急霰凝花若撒塩 急霰凝花 塩を撒くが若し
紅色朝陽分暁砌 紅色朝陽 暁砌を分ち
玉光氷柱滴晴簷 玉光氷柱 晴簷に滴る
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袖手今朝披戸看 手を袖し今朝 戸を披て看れば
眼前銀界雪漫漫 眼前銀界 雪は漫漫
南枝梅蕾知春近 南枝梅蕾 春の近き知り
黄鳥稜稜耐歳寒 黄鳥稜稜 歳寒に耐ゆ
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墻竹騒騒風颯然 墻竹騒騒 風颯然たり
瓢樽無緑未成眠 瓢樽緑無く 未だ眠を成さず
千林悉黒横陳夜 千林悉黒 横陳の夜
一路銀粉盛凍天 一路銀粉 盛凍の天
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年来窮鬼典衣頻 年来窮鬼 衣を典する頻なり
怠惰人生未有春 怠惰人生 未だ春有らず
急雪廻風無月夜 急雪廻風 月無き夜
寒侵老体不眠人 寒は老体を侵して 眠らざる人
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銀界柴門冒雪開 銀界柴門 雪を冒して開き
山陰凍雀破寒来 山陰凍雀 寒を破て来る
紅顔養志人千里 紅顔志を養い 人千里
白髪逃名酒一盃 白髪名を逃れ 酒一盃
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風死雲収犬吠聲 風死に雲収り 犬吠る声
低吟浅酌夜三更 低吟浅酌 夜三更
蕭然対座残燈暗 蕭然対座 残燈暗く
破壁空窓月影明 破壁空窓に 月影明かなり
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松啼飛雪動霜林 松啼き飛雪 霜林を動かし
闇覆山堂小院深 闇は山堂を覆い 小院深し
竹陣銀花寒雀噪 竹陣銀花 寒雀噪ぎ
詩書熟読夜沈沈 詩書熟読 夜沈沈
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晨星皎皎照空閨 晨星皎皎と 空閨を照らし
竹屋厳霜結惨凄 竹屋厳霜 結びて惨凄
紫黛西山残月落 紫黛の西山に 残月落ち
江村東橋暁鴉啼 江村東橋に 暁鴉啼く
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冬夜読書鐘漏遅 冬夜読書 鐘漏遅く
如凝冷冷月明時 凝る如く冷冷と 月明の時
謗声易弭還多怨 謗声弭り易く 還た怨多し
凍影梅花春不知 凍影梅花 春知らず
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霜鬢新年淑気遅 霜鬢新年 淑気遅く
白鬚如雪立春時 白鬚雪の如く 立春の時
難民国破猶漂泊 難民国破れ 猶漂泊
老壮求官又別離 老壮官を求め 又別離
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百慮何窮一病翁 百慮何ぞ窮らん 一病の翁
寒宵廃寝五更風 寒宵寝を廃す 五更の風
残夢瓦上新霜結 残夢は瓦上に 新霜結び
暁望東窓愛日紅 暁望すれば東窓 愛日紅なり
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斜月蒼山重又重 斜月蒼山 重又重
暁天東白五更鐘 暁天東白く 五更の鐘
新年黒豆通宵煮 新年の黒豆 通宵煮て
祝寿蓬餅盡日舂 祝寿の蓬餅 盡日舂く
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今朝賀客在樽前 今朝賀客 樽前に在り
白髪欣然喜欲顛 白髪欣然 喜びて顛せんと欲す
富士霊峰呈臘雪 富士霊峰 臘雪を呈し
拝空称慶布新年 空を拝し慶を称し 新年を布く
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履端瑞色海雲生 履端瑞色 海雲生じ
一線陽光暮雪晴 一線の陽光 暮雪晴れる
池畔紅梅猶臘味 池畔の紅梅 猶を臘味
庭前黄鳥已春聲 庭前の黄鳥 已に春聲
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律動佳辰春信回 律は佳辰を動かし 春信回り
神前群衆踏紅埃 神前の群衆 紅埃を踏む
京師北野思花発 京師北野 花の発するを思い
筑紫西江待凍開 筑紫西江 凍の開くを待つ
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爆竹聲中歳欲新 爆竹聲中 歳新ならんと欲し
祝杯称慶献尊親 祝杯称慶 尊親に献ず
昇平賀宴人人酔 昇平賀宴 人人酔い
淑気東風處處春 淑気東風 處處春なり
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律転鴻鈞風歛威 律は鴻鈞を転じ 風は威を歛め
千門萬戸啓晨扉 千門萬戸 晨扉を啓く
暁霜鎖瓦寒猶壮 暁霜は瓦を鎖し 寒猶壮に
爆竹聲中春已帰 爆竹聲中 春已に帰る
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暮去朝来旭影紅 暮去り朝来て 旭影紅に
東君青眼報春風 東君青眼 春風を報ず
称觴白髪新年酒 觴を称げ白髪 新年の酒
鶯夢陰陽一気中 鶯夢陰陽 一気の中
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