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へレン・カルディコット著 「狂気の核武装大国アメリカ」

 岡野内正・ミグリアーチ慶子訳 集英社新書(2008年7月刊)

世界を宇宙核戦争に巻き込む軍需産業大統領ブッシュUと共和党政権

読書の楽しみは自分の目を確かなものに進歩させることであろうか。この年になっても人間は進歩するのだから面白い。いやこの年だからこそ積み上げた知識の上に立って見えるものがあるのだと思うと、ますます齢を重ねる意義が出てくる。「ニュートンの肩に乗ってみえる世界」を味わう事が読書の楽しみである。今回本屋でこの本の題名を見て、買うか買わないか迷った。恐らく曝露物だろう。読んでから味気ない思いがすると考えたが、ままよ「9.11謀略説」を読んだ後、ダメ押しに見ておこうと思った。するとまた色々な発見があった。アメリカの権力者の戦慄すべき意志を見た。自分はいままでなんと簡単にメディアに騙されていたのか。もうテレビや新聞だけが世界ではないぞ、もっと知ってもっと考えなくてはとの意を強くしたのが読後感です。アメリカの戦略については多くの本を読んできた。本「読書オートコーナ」でも多くの本を紹介した。米国の軍事戦略だけに限定すると、以下のような本である。
ノーム・チョムスキー著 「覇権か生存かーアメリカの世界戦略と人類の未来ー」   集英社新書 
酒井啓子著 「イラク 戦争と占領」  岩波新書
原田武夫著 「仕掛け、壊し、奪い去るアメリカの論理」 ブックマン社
広瀬隆著 「アメリカの巨大軍需産業」  集英社新書
デヴィッド・グリフィン著 「9.11事件は謀略か」  緑風出版
林英彦著 「9.11考えない日本人」 成甲書房

しかし今や何を論じてもアメリカ抜きに論じることは出来ない。経済問題はとくに米国金融資本やグローバリズム戦略は軍事戦略に密接に関係する。「見えざる市場の手は、見えざる鉄拳なしには機能しない」と云う人がいた。恐ろしい言葉である。自由を標榜する国際市場は軍隊が守っているというのだ。私は決してアメリカを前面的に否定する者ではない。科学技術のすばらしい発見はアメリカに負う所大である。特に医学の進歩はアメリカのお陰である。真に独創的な分野はいつもアメリカ人が切り開いてきた。日本人はその後追いに過ぎなかった。そのすばらしい頭脳が必然的に世界制覇に向うのも理解できる。科学技術や芸術に分野に限定して欲しいのだが、戦争は科学技術であるので彼らは究極の戦争を目指している。そこへ資本主義と云う利益を至上命題とする自己増殖生物が加わると、もう行き先はお決まりだ。資本が人間を殺しても非情とは思わない世界となる。

著者のへレン・カルディコット氏について、何も情報が無いので本書の末尾に書かれたことを紹介する。1938年オーストラリア生まれ 核政策研究所代表で反核運動では有名な人らしい。日本で云うと先ほど亡くなった市民科学運動家高木仁三郎氏のような存在だろうか。77年より渡米しハーバード大学小児科医となる。80年以降は反核運動に参加してきた。著書に「核文明の恐怖-原発と核兵器」(岩波現代選書)、「劣化ウラン弾ー湾岸戦争」(日本評論社)などがある。訳者の岡野内正氏は法政大学社会学教授である。岡野内教授のセミナーはこちらをクリックしてください。岡野先生の言葉を紹介します。「人権に関わるあらゆる問題を、けちな学問分野の縄張り意識にとらわれずに、専ら攻めているつもりです。研究対象は、もっと広くて、生きる喜びに関わるあらゆること。もちろん実践的にやっています」。ミグリアーチ慶子氏は翻訳業と大阪大学日本語日本文化教育センター勤務である。原書の初版は2002年であり、第2版は2004年である。したがって本書の記述は2001年までで、記述の中心は1990年代である。9.11事件やイラク戦争もこの書では触れられていない。多少古い内容ではあるが、核政策の本質は殆ど代わっていないし、ミサイル防衛システムの迎撃命中率も少しも向上していない。

アメリカの核兵器予算は2007年の60億ドル(6500億円)を計上した。9.11後に軍事予算の増額は480億ドル(約5兆円)となり、如何なる他国の年間軍事予算より高額であった。2001年の軍事予算約2800億ドル(約30兆円)から2006年には5200億ドル(55兆円)と増加していった。第2位は英国の483億ドル(約5兆円)であった。自国が持つ一万の核兵器をすべて「信頼性代替弾頭(RRW)」に変えた。そして多層型ミサイル防衛システム事業を開始した。専らロシアからの核攻撃に備えると云う。ミサイル防衛システムとはミサイル攻撃システムである。それが稼動する事がないことを祈りたい。日本は非核三原則を遵守すると歴代政府は唱えるが、駐留米軍に「思い遣り予算」として2007年度は2170億円を援助している。自衛隊の予算は年間443億円である。約5倍の予算を駐留米軍に差し出しているのだ。北朝鮮のミサイルが日本海で実験を繰り返すたびに、米国は日本に憲法改正と核兵器生産を合法化するよう圧力をかけた。日本は2004年に米国と協同でミサイル防衛システム開発に乗り出した。ミサイルは核弾頭を乗せて初めて兵器である。ところが日本への核兵器製造要求はきわめて不気味である。

日本は原子力発電から44トンの高純度再生プルトニウムを保有している(イギリスとフランスに保管されている)。青森県六箇所村の商業用再処理工場が稼動したので2020年には145トンのプルトニウムが蓄積される予定である。核兵器一つを作るには3-5kgのプルトニウムがあれば十分なので、45トンのプルトニウムから9000-10000の核兵器が出来る計算になる。そして日本の技術水準なら数ヶ月で核兵器を作ることが可能である。またには人口衛星打ち上げのロケット技術を持っている。北朝鮮なんぞ足元にも及ばない事実上の核兵器保有国である。これが北朝鮮、韓国、中国を苛立たせているのだ。日本は核兵器を使用可能にする最短距離にいる。イラン、北朝鮮、パキスタン、インド、中国などは桁違いの核拡散推進国に変身出来る。増殖炉「文殊」と六ヶ所村の「商業用再処理工場」が結託したら、世界有数の核保有国である。

アメリカの核政策を推進する科学者・国防総省・軍需産業

アメリカ政府の核政策をまとめてみよう。アメリカは現在2000の地上配備型大陸間弾道ミサイルICBMに搭載された水素爆弾、潜水艦に搭載された3456の核ミサイル、航空機に搭載された1750の核兵器をもつ。合計7206の核兵器のうち2500の核兵器がボタン一つで発射される形態態勢にある。そして核戦争に勝利するための計画がいつでも実行可能な状態にある。ロシアもほぼ同数の戦略核兵器を持っている。国防総省が攻撃目標を定める単一統合作戦計画SIOPは現在3000の核施設・政府首脳部・工場などを攻撃目標とし、そのうち2260はロシア国内である。2000年アメリカは中国に最恵国待遇を与える一方で、中国の地点をSIOPに含めた。SIOPにはイランやイラクなどの非核保有国も含まれている。エネルギー省の原子力研究所は第2次マンハッタン科学事業計画に着手した。向こう15年毎年6000億円をかけて現核兵器の安全生と信頼性を確認するというものだ。ブッシュ政権は国家ミサイル防衛NMDシステムを優先して推進する。

アメリカの国防上重大な潜在的脅威となりうるは、ロシアにある5000の戦略核兵器だけである。それも国家体制の復興がままならないロシアで機能しているかどうかは疑わしいにもかかわらず、これだけの巨大な軍事支出を行う理由は何処にあるのか。それは核兵器産業を潤おすためで、アメリカ国軍内の陸軍・海軍・空軍の軍拡競争と兵器製造族議員のためである。圧倒的な軍事的優位の下で世界中でグローバル企業のやりたい放題を保証しているのである。このアメリカの核弾頭で世界を何十回も滅亡させる事が出来る。若し核戦争となったら敵も見方も滅亡することは自明であり、勝者は無く文明は滅びる。数千年は地球は人類にとって棲息不可能な地となる。そのようなことをいくら予測しても気持ちが悪くなるだけである。しかし核戦争でノアーの箱舟に入ったアングロサクソン人数百名で宇宙の何処へ避難するのだろうか。まじめにアメリカの核政策を推進する科学者・国防総省・産業界の構造はどうなっているのだろうか。

核兵器製造者の精神構造はどうなっているのだろう。「巨大で抽象的な暴力に魅了されて中毒になった。巨大な権力を手に入れた感じだ。設計が上手くいけば、陶酔の世界。爆弾なんて野暮な呼び方はしない。ガジェット(便利なもの)さ」と元設計者はいうのである。技術者間では奇妙な抽象的な術語(隠語)で会話をし、核兵器を人体になぞらえ、人体を機械になぞらえて、人と機械の境界のない理性的な言葉を使う。爆弾つくりを少しでも矛盾に思えば思想・精神がおかしくなったと思われてカウンセリング室へ送られるのだ。核科学者はロスアラモス、サンディア、ローレンスリバーにある主要な三つの核研究所で活動し、エネルギー省DOEの運営で、監督はカルフォニア大学である。エネルギー省が核兵器研究を行っている事を認識している人は少ない。冷戦が終ると核科学者は失業を恐れて、「核兵器備蓄保全管理計画」SS&Mというメンテナンスのような隠れ蓑で仕事をした。

1989年に冷戦が終った時こそ軍縮の絶好の機会であった。ブッシュT大統領(父)は「単一統合作戦」SIOPの全面見直しを開始した。ところが民主党のクリントン大統領はこのブッシュT大統領の見直し路線を継承しなかった。クリントンは軍備の詳細について首をつっこみたくなかったので、アスピン国防長官ードイッチのもとで核態勢の見直しが行われたが、国防総省の抵抗・反対にあった。核政策を決定していたのは国防総省の下級職員で、「先制と防御」戦略が勝利した。米国の議会を動かしているのはグローバル企業のシンクタンクの宣伝とロビー活動である。企業は経済合理主義を貫き、あらゆる公共事業体を分解し乗っ取るため、規制緩和、法人税減税、組合潰しなどの法律を通過させるロビー活動を精力的に行っている。IMF、世銀、GATT、WTOさえもシンクタンクが誘導するのである。最も影響力あるシンクタンクの一つはヘリテージ財団である。軍産複合体シンクタンクには安全保障政策センターCSPがありスターウォーズ計画の中枢となっている。冷戦終了後の軍需産業の整理統合の時代を経てトップに躍り出たロッキード・マーティンのCEOで軍産のキーマンがノーマン・オーガスティンであった。彼はロビー活動と政党への献金を通じて共和・民主両党を動かして、総額数10億ドル(数千億円)の契約を政府から得た。また最近のNATO拡大という外交政策を決めているのも軍需産業である。旧東欧諸国、旧ソ連衛星国家の軍備水準を西欧のNATO加盟国家並みに引き揚げる事で膨大な受注を得るからだ。公式の美辞麗句とは裏腹に、NATO拡大は専ら兵器販売事業であった。アメリカの軍需産業に実態については、広瀬隆著 「アメリカの巨大軍需産業」  集英社新書を見てください。

第2次マンハッタン計画

クリントン大統領の下で、1995年エネルギー省は核拡散防止条約NPTの延長に同意するのと引き換えに、第2次マンハッタン計画へ巨額の財政支出の承認を得た。1996年包括的核実験禁止条約CTBTの遵守でも一致した。このような冷戦後の緊張緩和の世界情勢を横目に見て、アメリカの核兵器推進者は「核兵器備蓄保全管理計画」SS&Mを隠れ蓑にした、年間5500億円を15年にわたって支出する第2次マンハッタン計画を確保したのだ。水爆とはプルトニウムまたはウランの球体の周りを通常火薬で取り巻いたもので、一次メカニズムでは火薬を爆発させプルトニウムを圧縮して臨界質量になるとッ買う連鎖反応を引き起こすのである。一次メカニズムが発生する強力なガンマ線・X線が二次メカニズムに導かれて核融合の巨大なエネルギーを生むのである。水爆1個は広島型原爆の4000倍の爆発力をもつ。水爆の製造コストは安い。巨大な軍隊を維持するよりコストパフォーマンスははるかに優れて合理的である。

「核兵器備蓄保全管理計画」SS&Mは別に核兵器のメンテナンスをするのではなく、本当の狙いは新たな核兵器を開発する事である。B61-11 という地中貫通型の「バンカー・バスター」、飛行機から発射する「弾道効果最適化システム」BIOSや、潜水艦搭載の「トライデントミサイル核弾頭」などである。アメリカ軍は黙して語らないが、これら新型核兵器(バンカーバスター、中性子爆弾)はアフガニスタン戦争で早速使用されている。戦争が終って白血病や癌患者が発生すれば、核兵器が使用されたと思って間違いない。アメリカ軍がj攻撃した地域に「国境無き医師団」とかボランティアが出かけることは、原住民と同じく被爆するので極めて危険である。勿論、アメリカ軍の後始末に出かけるボランティやNGO、NPOは、そこに住む国民・民族からはアメリカ軍の手先とみなされて、歓迎されていないばかりか殺されるかもしれないという生命の危険がある。そして最期には被爆すると云う危険性も高いのである。アメリカの核兵器製造施設はローレンスリバモア研究所、サンディア研究所、ロスアラモス研究所、パンテックス工場、カンザスシティ工場、テキサスY12工場、サバンナリバー核施設、ネバダ実験場などである。

また核兵器研究に大学や世界中の留学生を動員する「学術戦略提携計画」ASAPが始まり、外国人に対しても核兵器設計データへのアクセスが許されている。カルフォニア工科大学、スタンフォード大学、シカゴ大学、イリノイ大学、ユタ大学が提携大学に指定された。核物質の生体への危険性は、プルトニウム以外にセシウム137、ストロンチウム90、RAヨウ素、トリチウムなどが危険視されるが、核廃棄物処理場の環境への影響は未来世代への半永久的課題である。放射性廃棄物への防御手段はない。過去核施設の火災による環境汚染も防ぎようは無かった。

国家防衛ミサイルシステムと宇宙戦争

スターウォーズ計画とはハリウッド俳優レーガン大統領が1983年に映画「スターウォーズ」にちなんで名付けたミサイル防衛計画のことである。それがクリントン大統領の時代には1992年「弾道ミサイル防衛機構」BMDOとなり、ブッシュU大統領の時代には「国家ミサイル防衛計画」NMDと云う風に衣替えした。1998年北朝鮮のテポドンミサイル発射事件でNMD推進派には一挙に神風が吹いた。クリントン大統領の個人的スキャンダル騒動に乗じて、コーエン国防長官は1999年ミサイル防衛予算を4年間7000億円に増額し、NMD配備を完了させるという。2000年ジョージ・W・ブッシュが大統領につくと、多層的で全面的なNMDシステムを支持した。NMDはロシア、中国、イラン、シリアイスラエルを刺戟しかえって核拡散を促進することが分った。そして2001年、9.11事件から21日後上院は約37兆円と云う巨額な防衛予算を可決し、その中にミサイル防衛関係支出は約9000億円が認められた。

ミサイル防衛とは二つの構成要素からなる。「戦域ミサイル防衛」TMDと「国家ミサイル防衛計画」NMDである。TMDは戦場での敵の戦術ミサイルを打ち落とすもので、NMDは核弾頭をつけた大陸間弾道弾ICBMを打ち落とすのが目的である。敵のICBMを打ち落とすには,三つの段階がある。@発射直後のブースト段階システム、大気圏を出るまでの5分間 A慣性飛行段階システムは、打ち上げロケットから弾頭が切り離され,慣性飛行する段階で打ち落とす B再突入段階システムは、弾頭が大気圏に再突入して着地するまでに打ち落とすものだ。多弾頭独立目標システム再突入ミサイルMIRVとか、デコイ(おとり)方式爆弾などには技術的に命中させるのが困難である。まとめて破壊するため宇宙空間で核兵器を爆発させる方式は強力な電磁パルスという「エキゾティック効果」により、北アメリカ全体の通信網が麻痺する。いままでの迎撃ミサイル試験は殆ど失敗か捏造か嘘であった。矛盾(矛と盾)の論理で、自分で考えた最高の防衛ステムを打ち破る弾頭ミサイル技術開発を同時にしているのだから、永久に終末はないのである。

1989年、議会の委託を受けてジョン・コリンズは「宇宙軍」と云う著書で宇宙で戦うと云う概念を深く探求した。それは地球と月という空間システムを制圧する刺激的ではあるが、ぞっとするほど恐ろしい。それは宇宙の軍事化に関するアメリカの政策の基礎となった。粒子ビーム兵器、月での戦争、生物化学兵器による基地攻撃、宇宙から地上・海上の標的を攻撃する、心理作戦などが描かれているが、コリンズは「遅れを取った諸国が、技術的に争う事も追いつくことも出来なくなった時、アメリカは無血で完全に勝利する」と結んでいる。アメリカの宇宙戦争計画は1970年までの宇宙技術開発に支えられ、1985年宇宙司令部を設置した。湾岸戦争では格好の演習場となった。1997年宇宙司令部は「2020年へのビジョン」で宇宙戦争の目標を明確にした。2000年には宇宙航空企業の連合が結成され、「宇宙主導宣言」が宣伝された。空軍を「宇宙空軍」に進化させるべきと云う結論となった。宇宙レーザー兵器、超音波宇宙飛行機AOV、対人工衛星用兵器、電子妨害装置、宇宙核兵器は既に製造段階にあるとされる。スパイ衛星で敵の会話や重要人物の追跡、施設監視などは実用化されているが、敵の人工衛星を破壊する「ナビゲーション戦争」や敵の衛星の中枢を攪乱する「サイバー戦争」は現実のことになった。殆どの人工衛星は軍事的・商業的を問わず、それらの破壊を目的とした攻撃には無防備である。防御設備を搭載すると極めて高価で超過重量になる。いずれにせよ中国が衛星撃破実験をやっているので宇宙軍拡競争は間近であろう。

太陽光の稀薄な宇宙で大きな動力を得るには太陽電池では物足りない。そこで過去にロシアは30以上の宇宙用原子炉を打ち上げた。ロシアの宇宙衛星事故発生率は15%である。アメリカNASAはプルトニウム238原子力発電システム装備の宇宙船をこの30年で25基打ち上げた。アポロ月探索計画、惑星間空間宇宙船や火星探索機、土星探索機にはプルトニウム238原子力発電システムを装備している。2015年までにさらに八つの原子力宇宙船の打ち上げを考えている。この原子力宇宙船はGEからロッキード・マーチン社が製造した。宇宙での推進力として原子熱ロケットNTRが研究されている。NTR計画はかって世論の反発から1973年に停止されたが、今再度研究が盛り上がっているようだ。

湾岸戦争とコソボ紛争での核戦争

1990年イラクのフセイン大統領は、イラク国境下の石油を掘っては法外な安値で販売していたクエートに対して、貧困にあえぐイラクはクエーとを懲らしめていいかと、グラスピーアメリカ大使に話を持ちかけた。イラク・イラン戦争ではアメリカはイラクを支援したのでアメリカの支持と援助を期待しての相談だった。グラスピーアメリカ大使はkゥエーとアメリカには相互防衛条約もなく、安全保障上の約束も無い、資金を期待している事は理解しているといって、イラクがクエートに侵攻する事を了解したような口ぶりであった。ところがグラスピーアメリカ大使の保証は全く偽りで、湾岸戦争で儲ける機会を数ヶ月前から計画し「砂漠の嵐作戦」が展開された。膨大な爆弾と劣化ウラン弾の試験場という市場が出現した。80500トンの爆弾、原子力発電用燃料棒の製造で発生する不純物ウラン238は「劣化ウラン」と呼ばれ、70万トン以上が貯蔵されていた。この無用の核廃棄物ウラン238は比重が鉛より1.7倍重く、普通の戦車鋼板なら簡単に射抜くことが出来る。ウラン鉱山での採掘労働者の被爆でさえ深刻なのに、純度の高いウラン238を使った砲弾「劣化ウラン弾」の放射線被害は甚大であろう事は想像に難くない。湾岸戦争ではアメリカ軍戦車は14000発の劣化ウラン弾を使用した。空軍も94万発の30ミリ劣化ウラン弾を発射した。そしてアメリカ軍の戦車645台はウラン製甲板を装備していた。作戦終了時には300−800トンのウラン238がイラク、クエート、サウジアラビアに散乱した。ウラン238の生物的半減期は300日で脳、腎臓、筋肉、脾臓、生殖器に蓄積する。ウラン238の危険性を知ったサウジアラビアは米軍に破壊された戦車・兵器の回収を要求し、友軍の要求でもあるので米軍は回収して米国内で保管されている。

ウラン238の生物的危険性については国防総省は知識を持っていたが、住民、米軍兵士、同盟軍関係者には如何なる警告も与えていなかった。湾岸戦争帰還米国退役軍人のうち5−8万人が戦争症候群で苦しんでおり、2400−5000人が死亡した。アメリカ軍とNATO同盟軍は、ボスニアとコソボで二つの「放射能」戦争を行った。1994年ボスニアで約10800発のウラン弾が発射され、1999年コソボで約31000発のウラン弾が使用された。欧州各国の同盟軍からウラン弾兵器の危険性に危惧の声が上がり調査を開始した。これらに対して世界保健機構WHOは調査もしなかった。国際原子力機関IAEAの同意が得られなかったからだ。


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