071216

勝間和代著 「お金は銀行に預けるなー金融リテラシーの基本と実践

 光文社新書(2007年11月)

リターンの変動は管理できない。管理出来るのはリスクだけ。分散投資が王道

1980年代にアメリカの経済は日本によって製造業が追い込まれ、金融資本主義に大きく舵を切った。あれから25年以上が経過し、いまや日本の製造業は中国など途上国から安値攻勢で太刀打ちできないところまで追い込まれている。日本の金融業は1990年代に金融ビッグバンの時代を迎え、M&Aなどアメリカ金融資本の前に未熟な姿を曝している。「前門の虎、後門の狼」で挟み撃ちにされている。日本の金融資本が成熟するには時間がかかるとしても、私達の生活は自分で守らなければならない。年金問題で将来の生活は安心できないし、確定拠出型年金では自分で運用先を選ぶことになる。預貯金の金利は限りなくゼロに近い。私達の生活はお金なしには成り立たないのが事実であるが、そこですこしでも金融の知識をもって財産運用を図りたいと云う気持ちはあっても、株などに投資するのは恐ろしい、さてどうしようかと云うときに読んだのが本書である。勝間和代著 「お金は銀行に預けるな」は、預貯金から投資信託へと云う薦めの本である。虎の子を博打に擦られてたまるかという気持ちで、だまされないように注意して読んだ。読後感は極めて良心的なリスク統計管理の本である。一攫千金の話ではなく、年5%ほどのリターンを目標にリスクを分散して毎月こつこつ積み立てることに尽きるようです。

著者は慶應義塾大学商学部卒業後、早稲田大学ファイナンスでMBAを取得した。19歳で公認会計士試験に合格(当時の最年少記録)。卒業後は太田昭和監査法人、アーサー・アンダーセン、チェース銀行、マッキンゼー、JPモルガンを経て、経済評論家として独立し、投資顧問会社を経営している。2005年にウォール・ストリート・ジャーナル「世界の最も注目すべき女性50人」に選ばれる。2006年には、エイボン女性大賞を歴代最年少で受賞している。独立した2007年から著作活動を活発化しているが、うち、2007年4月発売『無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法』(ディスカヴァー21)と2007年11月発売『お金は銀行に預けるな』(光文社)は、どちらも発売1ヶ月以内に10万部を突破した。離婚歴2回、子供三人の母親の経験から、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)の運動を進め、働く母親のための活動として「ムギ畑」というインターネットコミュニティをボランティアで運営している。

金融の知識に関しては、日本では「武士は食わねど高楊枝」というような、お金のことを話すのを恥とするような文化があります。著者は日本は同レベルの経済力を持つ国に較べると、金融の知識の浸透が遅れているらしいという。2012年には的確退職年金制度がなくなり確定拠出型年金(401k)の際には金融の知識がなくてはならないようになります。私達は資本主義社会に生きている限り、労働とその報酬たる賃金のみに依存して生活することは出来ません。自分が投資しているのだと云う自覚なしに、生命保険、年金、預貯金、住宅ローンに参加しているのです。これらは私達の掛け金をすべてプロが運用しています。自分が投資すると云う自覚を持つと、余りに利率の低い預貯金は当然得られるべきリスク資産の利益の機会を損失していることになる。本書は金融の基礎知識や商品知識を大体理解して、自分の意思で資産構成(ポートフォーリア)を決めてリスクを管理するところまで導くことが目的らしい。

1)金融リテラシー

金融リテラシーとは金融の情報や知識を主体的に判断できることだ。そのためには金融が持つリスク・リターンの関係、金融商品知識、正しい運用の仕方を学ぶ必要がある。この章ではリスク・リターンの関係を学ぶことになる。私達の資産と云うと現金・預金、保険、年金という「安全資産」と、株式、投資信託、債権など「リスク資産」に分けられるが、安全資産は日本では80%以上、アメリカでは40%、ドイツでは60%となっている。リスク資産は日本では15%、アメリカでは56%、ドイツでは37%である。日本では定期預金の年利率は0.6%、国債5年で1.2%であるが、リスク資産では年4−5%前後のリスクプレミアがつく。やはり日本人はリスクの少ない、元金保証型を選択する傾向にある。1998年から2007年の10年間のTOPIXのリターンは年率3.4%となっている。十年国債では1.5%のリターンである。この年リターン3.4%を一攫千金を夢見る人には小さすぎると云うかもしれないが、これが金融商品の統計的な期待値である。博打では常にマイナスです。日本人の金融リテラシーが低い理由は、学校及び家庭での教育を受けていないこと、そして仕事中心の長時間労働で金融を考える閑もないことです。自分が金融について知識がないと自覚している人は半数以上に及びます。

金融リテラシーの基本原則は「リスクに応じてリターンが生まれる」(競馬の話で恐縮だが、全員が下馬評の高い馬を買ったら配当は少なくなるということ)ことです。例えば会社の株投資において、会計利益が世間の期待値を上回った会社の株は上がることは疑いがない。企業業績にかんする「ファンダメンタル分析」に基づいた投資は、勝つ可能性が高い「投資(リスク)」ですが、「チャート分析」から上がるかもしれないと思って投資するのは「賭け(危険)」になる。貸し倒れのない商品は「リスクフリー」といい国債(0.5−1.8%)がその例だ。サラ金は貸し倒れを想定して18%の金利を取る。サブプライムローンも貸し倒れを想定して長期には高い利子となり、貸し倒れから回収不能となった。株価のリスクは平均して年率5%くらいのリターンとなる。なぜ5%くらいのリターンなのかと云うと、世界中の経済成長(GDP)率がそのくらいであるからだ。経済が成長する限り投資が必要で、成長率に応じたリターンが期待されるのである。それ以上の期待は普通の庶民には不可能で、インサイダーか権力者か有力政治家以外には期待できない。だからタンス貯金はこの経済成長に参加しないことで当然リターンがないのです。金融は博徒のものではなく、非常に公正なものである。(カネボーのように粉飾決算をすれば市場から追放される) 著者は金融は世界の経済成長と統計が支配する世界であるという。

2)金融商品別の視点

金融リテラシーを身につける第一歩としてアセット・アロケーション(資産の配分)の概念を理解することだ。何にどのくらいの割合で投資するかと云う判断である。ただむやみに日本株だけを持っていると日本経済ととともに沈没と云うことになりかねない。主な資産のリターン特性(幾何平均と偏差)を見ると、過去35年の結果は以下となる。なおインフレーション率は3.3%であった。
国内株式 (7.9%、19.5%)
外国株式 (7.5%。18.6%)
国内債権 (6.6%、3.8%)
外国債券 (3.6%、10.7%)
定期預金 (3.8%、0.8%)
定期預金の利率はインフレーション率に設定されているので、実質ゲインはない。国内株式だと定期預金に較べて4%高い、国内債権だと3%近く高いことになる。いかに定期預金が無意味かはこの本の副題でもあった。銀行は預金をインターバンクと云う銀行間市場に預けて国債などを買い、利ざやを抜いていたのである。自分で国債を買えば6.6%の利子が付いたのに、銀行に預けたためむざむざ銀行を儲けさせていたのである。

最近流行の「行動経済学」プロスペクト理論(リスクの判断、所有財へのこだわり )と云うものがある。投資の心理学といってもいい。つまり、人は価値の絶対値ではなく相対的変化に敏感に反応する。標準的経済学の効用関数についてはしたがって参照点(初期値)を原点とする価値関数と確率の重みつけをする確立加重関数によって補正するものである。即ち価値関数は参照点に依存し、かつ利得も損失も小さいうちは敏感だが大きくなると鈍ると言う性質をもつ。損失は同額の利得より強く評価される。感度は2から2.5倍大きいとされる。確率加重関数も確率が小さい時は過剰に評価し、確率が大きいと感度は低下する。これをまとめると確率が低い場合の行動は、利得に関してはリスク追求と損失回避に動き、確率が中から高い場合には、利得にはリスク回避と、損失にはリスク追求性が観察される。標準的ミクロ経済学では等価価値の無差別曲線ということが主張される。金銭に換算できる価値や取引に習熟している人については真である。ところが人は所有する財にこだわりを示し、参照点が何処なのかによって価値が違う場合がある。受け取り意思額WTAと支払い意思額WTPが乖離することである。これは公共政策決定のコストベネフィット分析や公正の判断にいつも付きまとう問題である。現状維持を公正と理解する傾向がある。 近年のゼロ金利政策は企業にとって安い金を借りられるので、不況対策の切り札として日銀が政策金利に定めてきた。このことが国、企業に油断を生み投資利益率(ROI)の低い投資が長々と続けられ企業の低成長につながり、国には過剰な借金を生むことになったのである。

定期預金と国債

銀行の5年定期の金利は、東京UFJ銀行の場合300万円以上預けて0.65%です。一方5年もの国債は2007年10月の新発債の利回りは1.25%です。銀行は私達の預金を国債に投資して0.65%のサヤを抜いているのです。銀行の儲けは定期預金と住宅ローンで、普通預金はサービスに過ぎません。「円の金利の標準は国債の金利で決まる」、「金利は通常期間が長くなるほど高くなる」、「リスクがある金利は国債金利より高い」と云うのが国内金融商品の原則です。銀行や証券会社がこの国債を積極的に売らないのは、一つは手数料が高くないことと、この利ざや抜きを消費者に覚られたくないからです。

株式

株は機関投資家が強く、個人投資家が損をすると云う構図が出来上がっている。それは機関投資家は常にリスク管理をしているからで、個人投資家は値が下って妬け売りをして損をします。株価の上がり下がりは短期的にはランダムウォークで予測出るものではない。「効率的市場仮説」と云うのは「市場は原則として効率的であり、個人が自分の力で割安な銘柄を探すのはかなり難しい」ということだ。とすれば私達が取れる立場は統計的立場(博徒的立場でなく)である。一つは株式に全財産をかけないで、株に賭ける割合をきめることです。これをポートフォーリアという。第2に株式のインデックス(市場平均値)に連動した投資信託や上場株式(ETF)を買うことである。株価に日常的なノイズ的乱れで勝負するのを「デイトレーディング」と云うが素人が出る幕ではない。株価チャートを見ると分るのだが、大きな周期曲線に短い周期のノイズがかぶさっている。周波数の違う波の合成曲線になっている。素人は高い周波数(短期的株価の上下)は無視して、長期的な株価の変化を見ていればいい(といっても曲線のうねりの予測は出来ない)。

為替

日本の金利は世界的に見て低い水準にある。今の日本経済は日本から金が逃げている状況にある。2年もので日本の金利は1%以下であるが、海外諸国では2.5−5%の金利が付くそうだ。これは国債の金利が支配しているからだ。金利とはインフレ率+実質金利のことなので、インフレ率を見ると日本はここ十年横ばいです。アメリカは3.2%、欧州は2.1%です。なんと各国の金利はインフレ率で説明が付くのです。「理論通り円高に向わない限り、円以外で運用したほうが通常レターンが高い」ということで、これが円安になったら金利差と為替差の2つで大きく儲かることになる。この原則を利用したのが2005年よりブームになった「グロソブ債」です。グロソブ債は日本より金利が高い世界各国の政府が発行した債券に分散投資を行う投資信託です。安定した成長をしているニュージランドやオーストラリアが有望だ。今世界各国の債権の格付けではオーストラリアなど欧米の国の格付けはAAAであるが日本はAA-です。日本の格付けがかくも低いのは、歳入に較べて 国債残高があまりに多いのと、債務不履行リスクが他国より高いと見られているからだ。失われた十年がいまだに尾を引いている。ただグロソブ債は手数料が高いし、外貨預金は二重に手数料を取られる。外国為替証拠金取引(FX)は梃子原理(レバレッジ)をきかせたギャンブル性の高い先物ですので素人はやらないほうがいい。

不動産@住宅

米国のサブプライムローン問題で話題になったので、分かりやすいのですが、住宅ローンを借り入れる人が返済してくれるリスクを考えて、金利は貸し倒れリスク分が上乗せされるので(消費者金融ほどではないが)高く設定されている。10年ローンで4.1%、20年ローンで5%ぐらいです。昔(1980年代)は土地価格が上昇していたので住宅ローンは借りるほうが得と云う感覚があったが、この20年以上土地価格は下がり続けている。住宅を持ちたいと云う事情と金があれば住宅を買うのはその人の価値観であるが、最も買ってはいけないのが新築マンションである。景気と云うものは如何に住宅を買わせ借金を背負わせるかによって決まるといって過言でない。国にとって、企業にとって一つの大きな集金システムになっているのです。私達は自分の意思で投資する感覚はなくとも、受動型の大きなリスク資産を背負っている。住宅ローン、生命保険、年金がそれです。これを「パッシブ型リスク資産」といい、信託投資や格式投資などは自分の意思で投資する「アクティブ型リスク資産」という。

不動産AREIT(不動産信託投資)

不動産に投資するとき、不動産信託投資(REIT)がある。2%から5%の利回りの商品があるが、いまやサブプライムローン問題で手を出す人はすくない。リスクに梃子原理(レバレッジ)をきかせたことがサブプライムローン問題の原点でした。

投資信託

投資信託とは、多数の投資家から集めた資金を、資産運用会社が預かり、その資金を株式や債券、或いは不動産に分散投資し、運用で得た利益を投資家に分配する金融商品のことだ。投資信託を積み立て式に毎月額を決めて投資することが重要である。額を決めているので、値が高い時は少しの株しか買えず、値が下っている時はたくさんの株を自動的に買うことが出る。これを「ドルコスト平均法」という。身近な例で言えば社員持株制度で毎月5万円自社株を何十年と買い続けることである。これにより有利な株の購入が自動的に出来ているのである。不動産に特化したのがREITで、海外国債に特化したのがグロソブである。資産運用に占める投資信託の比率は欧米では10%以上だが、日本では2%に過ぎない。日本では購入時の手数料が1−2%かかり、年間に1−2%の信託報酬がかかるので敬遠されている。また日本の銀行は手数料を取るため客に「回転売買」を頻繁にさせていることが嫌がられる原因になっている。金融機関の言いなりになってはいけない。最近は売買時に手数料がかからない信託投資「ノーロード」もある。1万円から投資できるのは魅力的である。利益率のいい貯金(ただし元金保証はない)と考えることが出来る。株式や債券の円貨や外貨ものを適度にパッケージされた「バランス型投資信託」が素人向けにはいい。しかし利益は低いが危険分散と云う意味では理想的である。投資行動が社会や企業を変える「エコファンド」、「ファミリーフレンドファンド」といった社会責任投資(SRI)がある。「日経225インデックスファンド」は日経新聞が225社の株を選んでその平均株価を指数化しているので、運用に人手がかからず手数料(0.4-0.8%)が極端に安い商品もある。資産を有利に安全に投資しうるには分散投資にすべきですが、国内株式、外国株式、国内債権、外国債券の四つに1/4づつ分けて運用することだ。これを「資産四分法」という。運用先もインデックス投信にすればなおいい。一日の株価の上下を読んで投資するデイ・トレーダーは危険すぎるので手を出さないように。

生命保険

生命保険会社は機関投資家であり、生命保険が投資信託の役目を果たしてきた。ただ千代田生命会社の破綻に見るように、運用先が不透明で私達が知らないうちに運用が困難になっている事がある。はたして金融商品として生命保険が魅力あるかどうか良く考えなければならない。

コモデティ(商品)

商品価格は2000年以降大きく高騰している。原油、穀物、金属類などの上昇は日夜報じられるところであるが、先物取引は怖いので絶対に素人はやってはいけない。プロでも一夜で財産をなくするのである。素人の財産は根こそぎ持っていかれるだろう。したがってこの分野の説明は止めとこう。

デリバティブ(先物・オプション)

金融派生商品に、先物およびオプションという、現物を取引するかわりに現物を売買する権利を取引する市場があるそうだ。証拠金でその何倍もの取引が可能となる恐ろしいゲームである。先物と云うことは私には理解できないので、この分野を覗くことさえしたくない。

3)実践

日本の株価は為替と極めて相関性が強いといわれている。1ドル何円という為替と日経平均株価の相関係数は0.89という。即ち円安になれば株価は上がるのである。なぜそうなるのかというと、車や家電に代表される日本の輸出産業は円安で利益が上がるからだ。逆に円高で利益が上がるのは輸入産業である。金利の変化が一般投資家の立場では予測できないように、為替相場についても個人投資家のレベルでは原則として予測は出来ない。為替相場も株式市場と同じように確率でしか当らない。何故当らないかというと、天気予報と同じで私達の情報収集能力や判断力(科学)ではすべての要因を考慮することが不可能だからだ。これを「カオス理論」という。為替も株価も「ランダムウォーク」で変動する。同じことは過去のデータを記録した「チャート分析」についてもいえます。これまで公開されたデータは既に株価や債権価格に反映されており、過去のチャートをいくら分析しても将来は分らないのです。したがってデイ・トレーダーは博打で「じゃんけん理論」といわれ。当り外れは半々です。統計的には「ファンダメンタル分析(財務・経済分析)」型投資が無難なのです。プロ以外にはデイ・トレーダーや短期売買は手を出さないほうが賢明だ。

金融商品投資の五つの原則
第1原則: 分散投資    (リスクを分散してリターンを安定化、資本資産評価モデルCAPM)
第2原則: 年間リターン(利率)は5%以上は望まない  (高望みはするな、投資で10%以上は夢)
第3原則: ただ飯はない   (リスクを避けるなら2%が限度、濡れ手に粟はない)
第4原則: 投資には資金と時間が必要    (手数料、税ははらう)
第5原則: 管理できるのはリスクのみ、リターンは管理できない   (妥当な投資額/全資産と投資配分ポートフォーリアをわきまえる、ハイリターン・ハイリスク)

金融リテラシーを身につけるための10ステップ
ステップ1: リスク資産への投資の意思を固める
ステップ2: リスク資産に投資する予算とゴールをきめる  (労働収入の10%から30%となるような、貯金と同じように毎月5万円なり10万円の投資予算と年月とゴールを決める)
ステップ3: 証券会社に口座を開く   (ノーロード、インデックス投信、4分割投資を心がける)
ステップ4: インデックス型投資信託の積み立て式投資を始める   (インデックス分散投資、4分割投資、定額積み立て)
ステップ5: 半年ほどながら勉強をする
ステップ6: アクティブ型投資信託を始める   (REIT、グロソブ投信、BRICsなど、値動きにあたふたせず気長に観察)
ステップ7: リスク管理を学ぶ     (分散投資とドルコスト平均法)
ステップ8: リターンが安定したら、投資信託以外の商品にチャレンジ   (TOPIX連動商品、株価指数連動型EFT)
ステップ9: 応用的な勉強をする
ステップ10: ポートフォーリアのリバランス(再構成)の習慣を身につける   (値上がりした株から安い株価へ移す)

4)金融を通じた社会的責任(SR)

資本主義の二つのほころびとして、格差拡大(階級の発生、地域間、国家間)と不正拡大(競争激化で法律無視、談合、汚職)が挙げられる。階層格差の大きな国にはアメリカ、オーストラリア、カナダ、フランスがある。日本では1996年以降橋本内閣から小泉内閣で規制緩和と改革で格差が広がり、セーフティネットの破壊が進み、さまざまな商品偽装事件、決算粉飾事件が後を断たない。企業間では仁義なき戦いに陥っている。土地価格下落や銀行破たん、年金の管理の杜撰さで資産危機が生じている。

金融には政治と同じように社会を変えうる力があると著者は訴える。「社会責任投資SRI」とは財政状態やリターンだけでなく、投資の基準を企業の社会的責任CSRを考慮することです。「ネガティブスクリーニング」、「ポジティブスクリーニング」で企業を選別して投資することが始まった。イギリスではスチュワードトラスト投資信託がある。全世界で300兆円の資金がSRIファンドに集まっている。環境ファンドも始まった。投資によって企業の動きを誘導することが出来る。


随筆・雑感・書評に戻る  ホームに戻る
inserted by FC2 system