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寺園敦史著 「同和中毒都市」同和と手を切れない京都市の病根

 講談社+α文庫(2006年3月)



 2006年8月30日「大阪市社協の裏金、総額は1億4千万円」という見出しで 「大阪市の同和対策の医療拠点だった旧芦原病院に対する同市のヤミ貸し付け問題で、一時的に返済資金の一部に充てられた「市社会福祉協議会」の裏金の総額が約1億4100万円に上る。」という記事が朝日新聞に出た。さらに1年以上病気を偽って休職を続けている環境局の職員のことが新聞紙上に連日書かれ、どうして首にならないのかと思えばこの職員は部落民だったことが分った。世間の常識では通用しないアウトローの世界が行政を蝕んでいることが改めて白日の下に曝された。
 そこであまりに非常識な同和と行政の腐敗について考えるに至った。暴力団、部落民、廃棄物処理業者という三位一体の無法者世界の横暴がいかに行政を歪めているかを改めて勉強するため本書を読んだ。将に仰天の世界である。脅し、暴力、覚醒剤、欠勤、家賃滞納、カラ事業による裏金つくりで肥える部落解放同盟組織、建設業談合、公金詐欺、奨学金返済不要などなど特権と優遇政策に胡坐をかいた同和問題はまさに腐臭あふれる闇の社会であった。
 この33年間国は同和問題解決のために税金を大量につぎ込んできた。勿論この同和政策で多くの部落民が救われたことは言うまでもなく、殆どの部落民はまじめに努力してきたと思う。しかし部落開放同盟などの組織幹部の腐敗は想像を絶するものがあり、様々な権益を独占して豪邸に住み公金を貪った。またこの悪癖に染まった部落民の一部はやくざと組んで悪の限りを尽くしてきたことも事実である。
 2002年3月をもって国の同和対策事業特別法が終焉した。1997年ごろより各自治体の同和対策事業は年年大幅に縮小され事業は終結した。多くの自治体は同和問題から立ち直ることが出来たが、京都市だけは部落解放運動の発祥の地(知恩院に故末川博立命館総長の書による解放運動の碑がある)であることから、部落解放同盟との因縁が深くいまだに部落問題から解放されていない。腐れ縁が陰に続いている。
 本書は同和対策特別事業終結にあたって、1999年〜2002年の三年間京都市と同和問題をルポしたものである。この本を読んで実にいやな気分になった。恥部をこれでもか言わんばかりに描写するような悪趣味な本かと思って、本を伏せてしまう場合もあった。しかし関西特に京都は部落民が多いことで知られている。避けて通れない問題であり、正しく解決しなければ市民にとっても、旧部落民にとっても不幸極まりない。いやな気分を圧してこの本を紹介する。なおこの文中で不適切な表現があったとしても「差別だ」といって騒がないでください。過去の社会的事実であったのです。

 著者の寺園敦史氏は京都民報記者を経て現フリージャーナリストである。他に「誰も書かなかった部落1・2・3」、「同和利権の真相」、「京都の懲りない面々」などがある。これだけ同和問題を追及して命を狙われなかったは不幸中の幸いであった。

1) 京都市職員(環境局の同和職員)の暴力等不祥事続発の理由

京都市環境局職員(ごみ収集員)によるあいつぐ市民や職員や上司への暴力事件、そして警官襲撃事件(1997年)、覚醒剤で逮捕者続出(2001年6人、6年で16人)、無断欠勤の常態化(70日以上欠勤しても首にならない)などの事態が頻発してきた。職員への暴力事件でも京都市の甘い処置(包丁で威嚇しても停職5日)が問題になった。当然刑事事件にすべき事項でも停職で済ます甘い処置では同和職員は京都市を舐めている。その背景にあるのが同和「選考採用」制度である。市の技能・労務職(ごみ収集員や学校用務員など)職員の採用権を事実上同和運動団体(部落解放同盟・全解連)に委ねた制度である。採用枠(年に数十人)に応じて、運動団体の推薦を受けたものがフリーパスで採用される。事務職へ転任するときは普通は中級や上級行政職試験を受験しなければなれない。ところが同和職員に限って「軽易な事務職」特別指定職に容易になれる道が用意されている。(この「特別指定職制度と「同和選考採用制度」と「同和職免制度」は批判を受けて2001年に廃止された)ゴミ収集職員採用は同和組織にとって利権になっている。これだけ質の悪い職員を大量に抱えている環境局と京都市職員の不祥事は同和「選考採用」制度が根源にある。

2) 同和奨学金返済不要問題と同和住宅家賃滞納

同和就学奨励金制度(月学9万円)は一般の育英会奨学金(月学5万円)よりはるかに優遇された制度である。それと学用品の給付制度とあわせて常識を超える優遇策である。そしてこの同和奨学金は「自立促進援助金」制度により奨学金の返済を京都市が肩代わりしてくれる。奨学金を貸与されたひとは誰も返却していない。つまり返済不要だそうだ。国の同和奨学金制度は2002年3月に廃止されたが、京都市は2002年度以降もこの同和就学奨励金制度を市の予算で継続している。同和市民を一様に生活力がなくて自立できないものとして保護する制度では同和者の自立を阻害することにほかならない。2000年の同和地区実態調査では500万円以上の収入のある世帯数は23%を超えている。しかも30%以上は京都市職員である。京都市職員が自立できない下層民なのだろうか。
同和住宅(改良住宅)家賃の滞納者は36ヶ月以上の滞納者が196件(一般の市営住宅入居者は3件)、しかも家賃滞納者の14%は市職員だった。市職員には毎月1万円の住宅手当が支給されていた。氏職員が家賃を払えないわけはない。同和民に対するこのアンタッチャブルな扱いはどうだ。常識から遠く離れた市の放置は批判されてしかるべきだ。

3) カラ事業と慰安旅行水増し請求による公金濫費

市は隣保館と言うコミュニティーセンターを通じて同和地区住民に対して様々な「事業」(サービス)を行っている。これは国の補助事業であった。(2002年度で国の同和対策事業は廃止された)盆踊り教室、ゲートボール、料理教室、スポーツ、文化教室などで挙げ出したら切りがない。また学習会と称する温泉旅行である。実はこれらの殆どが実体がないカラ事業か水増し請求であることが判明した。これらの同和対策事業に京都市が黙認した「カラ事業」、「水増し請求」により巨額の補助金が全解連や解放同盟に支出されていた。95年度2600万円、96年度3110万円、97年度2035万円、98年度2153万円、99年度2130万円である。

4) 同和施設建設バブル、同和住宅、持ち家分譲など優遇政策の継続

神戸市では早くから市民の常識の目で同和対策を見直し、全解連も1989年に同和対策完了を宣言した。然るに大阪市では今回問題になった同和系病院に対する闇融資や塩付け土地のもんだいを隠し続けている。京都市は2002年以降も同和対策予算を逆に増加させている。国の同和対策特別法の期限切れ1997年以降も京都市では隣保館(9億円)やカラオケ施設(4億円)などの建設ラッシュが続いている。これは同和建設企業もからんでいわゆる「同和バブル」といわれた。まさに部落解放が目的なのか同和対策事業が目的なのか本末転倒の構図である。同和運動組織維持と幹部の利権が絡んだ事業に成り下がった。さらに同和地区には格安(民間駐車場の半分以下)の駐車場の建設、一般市営住宅の半分以下の家賃の同和住宅の建設、土地代がただの(市の所有地)分譲改良住宅の建設など目に余る優遇策(特権)をつづける京都市には市民の常識が届かないようだ。

5) 違法企業や同和融資制度をつかった暴力団の詐欺事件に見る同和腐敗

京都市は長年にわたって行政機構の隅々にまで侵食した同和の弊害が内部で生き続けるのか。公正、民主といった行政の原則が通用しない現実はおそらく長く続いた京都の革新府政・市政があまりに同和に迎合した弊害といえる。自治体そのものが慣らされて政治が歪んでしまったようだ。市民のスポーツ施設を作るといって開発した同和関連企業が焼肉店やカラオケを作っても行政指導できない、同和と名がつけばたいていの理不尽が素通りする市政のひずみは救いがたい。「同和地区産業振興融資制度」をつかった暴力団関係者の詐欺事件が明るみにでた。部落民になりすました暴力団が所定の事業申請をして融資を騙し取り返さない事件である。あまりに杜撰な市の審査と暴力団と部落とのつながりには目を覆いたくなる。「暴力団より同和のほうが儲かる」という暴力団関係者の発言もある。腐臭に群がるハイエナにようだ。

6) 同和補助金の裏金つくり、京都市と同和幹部の癒着

情報公開制度が出来たので2000年京都地裁で同和助成金関連の公文書公開要求が勝訴した。京都市は隠し続けた同和資料を公開せざるを得なくなって、カラ事業、水増し請求の実態が曝露された。これに基づいて1997年〜1999年に解放同盟の事業に支出した約5400万円を市に返還させる請求がなされ、翌年市は3700万円が損害額だとして解放同盟に全額返還を求め同盟は返還に応じた。問題はカラ事業だけではなく京都市の長年にわたる同和幹部対策費のための裏金作りも表面に出た。市は昭和20年以降同和行政遂行のため予算外の資金を作ってきた。その手口は同和事業費を水増して保有するもので、資金は同和団体の反対運動を抑えたり懐柔するためであった。この資金は解放同盟のみでなく全解連にも渡っていた。(一人当たり数百万円)


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