随筆  061212

母の介護日記(8)と介護社会



 先月「母の介護日記7で次のように結んだ。「母を東山サナトリウムに入所できることになった。ようやく介護する側の私たちにも長いトンネルを抜け出せた感じがする。母を姥捨て山に送り出したというより、2年半に及ぶ兄弟姉妹(3人)の24時間介護で各自は納得と限界を味わい、お互いの生活の尊重と母には快適な生活のサービスを提供できたと理解している。これでいいのではないか。」 ここで日本の高齢者介護システムについて振りかえっておくことも意義がある。そして12月に起きた母の病棟移転の話を添えておきたい。

日本の介護保険と高齢者介護システム(資料は朝日新聞2006年2月19日オピニオンと 京都市発行高齢者ガイドブック「健やか進行中」から)

2000年4月に「介護の社会化」をうたった介護保険制度が始まった。この制度は恐らく世界でも最高水準のものだろうと思うがなにせその財政基盤が覚束なくて、安定し落ち着いたシステムになるには時間は必要だ。最近福祉切り捨てを目論んだ自立支援で、ベット数の削減という企みが2010年に予定されているというので心配な要因は否定できない。利用対象は原則65歳以上で、介護を必要と思ったらまず市役所福祉課に申請を行う。要介護認定で軽い人には要支援1,2というグループへ、比較的重い人は要介護1〜5のグループに認定される。要支援者には保健師がケアプランを作り介護予防メニュー(筋力トレーニング、栄養指導、予防訪問介護など)が用意される。要介護者にはケアーマネージャ(民間病院の在宅介護支援センター)が介護メニュー(ホームヘルプ、訪問入浴、デイサービス、ショートステイなど)を策定する。要支援、要介護利用者は現在350万人で公的負担は6兆円である。支援、介護サービスの内分けは自宅サービスが250万人、グループホームが10万人、有料老人ケア-ハウスが5万人、施設サービスが合計80万人でさらにその内訳は医療型医療施設が13万人、特別擁護老人ホームが38万人、老人保健施設が29万人である。私の母がいま入所している東山サナトリウムは医療型医療施設である。医療型医療施設に入所できるのは要介護度4以上でないと難しいことは先に書いた。特別擁護老人ホームに入所するには2-3年待つ必要がある。京都市には在宅介護支援センターが94箇所、老人福祉センターが18箇所、老人憩いの家が7箇所、グループホームが32箇所、有料老人ホームが6箇所、ケアハウスが11箇所、介護老人福祉施設(特別擁護老人ホーム)が53箇所、介護路偉人披見施設が32箇所、介護医療型医療施設が32箇所ある。(公立、私立含めて) デイケアーなどを利用する在宅介護費用についても高額負担限度額が設定され月当たり2万5千円を超えるときは差額が支給される。介護保険、健康保険でも高額負担補助金が出て老人の自己負担が公的年金などでまかなえる程度に収めることが可能である。

母の介護日記(8)

11月20日に母が東山サナトリウムの介護施設に入所できたことは介護日記(7)に書いたとおりであるが、一安心できたと思いきや、入所10日も経たないのにナトリウムの医師から電話があり、認知症に進行度が予測以上で、問題行動(便の擦り付け、徘徊、シーツやパジャマを引き裂く)がおおくて他の入所者へ迷惑になるのでこの病棟では預かれない。そこで重度認知症向けの精神病棟へ移って欲しいといわれた。そのためには家庭裁判所に保護者選任申し立てをすることが必要だといわれて、12月2日再び京都へ向かった。病棟の入り口には施錠がなされるが、患者をベットに縛ったり薬による沈静化処置は原則しないという説明を精神保健指定医から受けた。患者の意志では外へは出られないが、保護者同伴での病棟外への散歩・飲食などは許される。入所手続きや家裁への申請も終わって12月9日に病棟を移った。ここで使われる保険は健康保険であるが高額負担補助申請も終わっているのでかかる費用は月当たり約5万円と介護保険並みである。

今回の病棟の移送騒動で、小林篤子著「高齢者虐待」中公新書、小宮英美著「痴呆性高齢者ケアー」中公新書を勉強したので書評に感想を記す。併せてご覧ください。


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