随筆  060408

母の介護日記(4)

2006年1〜3月
 

なんとか今年の冬は乗越えた

昨年12月より異常な寒さで冬を迎えた。12月に大雪が降るなど京都の寒さは大変だったそうだ。12月3日より私は茨城県の自宅に戻っていたが、姉たちが母の介護に当っていた。年末に母がデイケアーで運動をすると苦しそうにぜいぜいしているので、医者に見てもらったところ心臓肥大と太りすぎで心臓への負担が大きいことが原因だとわかった。それと血圧も少し高かったので、体から水分をとる利尿剤と高血圧降下剤を服用することになった。という連絡を受けたので私は年が明けた1月15日に介護のためまた京都へ向かった。今回は4月2日の法事まで約75日間(2ヵ月半)の滞在になった。利尿剤の服用のため失禁が多く、おむつ交換は頻繁におこなわなければならないのだが、母はなかなかオムツを換えるのに抵抗するので、ヘルパーさんに週一度の交換と、デイケア-時(週に月、水、木、金、土曜日の5回、その中でお風呂に入れるのは月、水、金曜日の3回)に一日二回の交換を依頼した。そうこうする内にまた便漏れ騒動も1月にあり、なかなか大変な介護生活が始まった。母は多少太り気味なので、おやつは決して与えず、朝食や夕食の量と質を落として粗食にしたことが効果あったのか、多少スリムになって見違えるように心臓の負担が減ってきた。もう歩いても「ぜいぜい はーはー」言わなくなったので薬は2月より投与しなくした。別に足腰が良くなったわけではなく、手を引いて歩けばよたよたしていて、少し歩けば「あーしんど」ということに変化はない。2月より失禁と便漏れは殆ど収まり、ひどいオムツの濡れはなく、自分でおまるや便所へいって用を足すまでの早漏はなくなった。その間部屋の暖房と加湿、および寝る時の湯たんぽは欠かしたことはない。母が寝静まった夜9時ごろに消灯とあわせて暖房と加湿は切る。朝7時から暖房と加湿は再会する。特にエアコンでの暖房では咳き込むことが多かったのでこれは湿度不足だと判断して急遽加湿器を買いに走った。ところが今年の冬は暖房関係の電気製品は品切れで、4軒目の小さな電器屋さんでやっと旧式の加湿器を買うことが出来た。これでドンぴしゃりと母の咳き込みがなくなったのには感激した。こうして2月〜3月の母の介護は順調に推移した。問題はまだら認知症が益々烈しくなっていることに気がついた。2分前のことは忘れているし、何度も何十回も同じことを繰り返し聞いてくるのには閉口するだけでなく、私の神経も磨り減って行くようだ。幸い食事をしたかどうかでもめたことはないが、みかんなどを前に置いておくと、食べ続けるのでまいった。止めることが出来なくなっているようだ。満腹感の機能が働いてないようだ。今後これには注意が必要で、間違ってもおやつを置いておくことは避け、1個だけお皿に入れて与える様にしなければいけない。今回の介護で身にしみて分かったことは、
(1)足腰の筋肉はもうなくなりつつあり、現在デイケアーには車椅子に乗って送り迎えしているが、いずれ全面的に車椅子生活になるだろう。いつごろかは分からないが今年の夏から秋ごろではないだろうか。
(2)心臓の弱り方が気になる。これから季節がよくなるので冬ほど心配はないと思うが、今度の冬が到来するころには気をつけなければならない。
(3)口はしっかりしているようだが、話の内容が昔のパターンの繰り返しである。テレビを見ているときの母の話はどうもピンボケで内容の理解がまだらになっている。朝青龍と白鵬の区別が不能である。しだいに認知症が進行するのはやむをえない。もっと若い人がぼけていることに比べれば母はしっかりしているとも言えるが、しかし確実に昨日よりは今日と認知症は進行している。

医療型介護施設申し込み

2月中頃になって私は母の介護の限界を感じ、今年の秋までには介護施設に入所すべきではないかと考えるようになった。介護は私が1年のうち半分以上を担当し、京都にいる姉と神戸にいる姉と横須賀にいる姉の三人があとを見ている配分である。京都にはあと妹と弟がいるがまだ商売や仕事が現役なので母を見るわけには行かない。介護生活は2年になろうとしているが、私自身の生活も疲れてきている。あと何ヶ月という期日があればまだがんばり得るのだが、際限のない精神的な緊張にはこちらの精神が持たない。母が完全な寝たきりになることは母の歳(92歳)からすれば時間の問題だが、何時かは断言できない。結局介護とは介護する側が健康(精神的も含めて)を維持できるかどうかできまる。まして他の兄弟に義務的に強制することはできない。とくに姉妹は人の家に嫁いでいるのだから。他人をあまり巻き込んでもおかしなことになる。

そこで母が通っているデイケア-施設のケアーマネージャに相談してところ、2,3の施設を紹介してもらったが、特別擁護老人ホームは入所待ち数が多く1年以内にはいることが難しいため、医療型介護施設に入所申し込みをすることになった。病院の医師に書類を書いてもらって施設に申し込みにいった。施設は十全会の経営になり立派な建築物であるが、サービス内容は見学のみではどうもよく分からない。しかしサービス内容は国の指針で決まっているのだから何処でも似たり寄ったりであろう。かかる費用は月10万円である。これは母の年金額とほぼ同じなので安心した。やはり半年ぐらいの待ち期間は覚悟しなければならない。今年の秋までには何とか入所できそうだ。問題は母の理解と了承であるが、母には私からじっくりと話をしたつもりであるが、はたして何処まで分かってもらえたのかどうも不安である。そのときになって錯乱されてはつらい。兄弟には私から電話や直接あって話をし了解(どうせ私に任せているのだから反対の仕様もない)を得た。どこかの時点で涙をのんで母を送り出すことになる。其処までの間、親孝行を尽くして悔いのないようにしたいところだ。


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