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近藤誠 著作集

 1)  「患者よ がんと闘うな」(文春文庫 2000年12月)
2) 「成人病の真実」(文春文庫 2004年8月)
3) 「がん治療総決算」(文春文庫 2007年9月)
4) 「がん放置療法のすすめ」(文春新書 2012年4月)
5) 「医者に殺されない47の心得」(アスコム 2012年12月) 


医療界の常識を破るがん論争異論! 医療ムラの利益か患者の生活の質QOL重視か 

2013年3月のある民放テレビ番組で「医者に殺されない47の心得」が取り上げられ、近藤誠氏へのインタビューを見て、その論調の明快さと斬新さに魅せられてたが、テレビで紹介された近藤氏の現歴を聞いて氏が慶応大学医学部放射線科講師とあるのは不自然と思われた。初老の白髪の風貌は教授であるはずなのに、講師というのはいわゆる出世を止められた異端児・革命児に違いないと直感した。余計に氏に対する興味が倍増して近藤誠氏の著作を読みたくなった。本屋にもっと多くの著作を注文したのだが、絶版で入手できない本も多く、まず5冊を読んでみた。これらをざっと読んでみて感じたことは、36兆円/年の医療費に群がる医療ムラ(医師・医師会、厚生省、地方自治体、大学・病院、製薬業界、医療機器メーカー、保険業界など)は、原子力発電ムラに共通するような病根を抱えている。医者はけっして患者の味方ではないという絶望的な印象を受けた。人の命を扱うという点からして原発よりももっと深刻な問題を孕んでいる。かって「医療崩壊」というメディアの論調においては、患者と医師は厚生省や政府に対して共闘関係を築かなければと感じたが、それはとんでもない誤解で、医療崩壊はでっち上げのいびつな医療体制に過ぎないと感じるようになった。医者が足らないのではなく、看護婦やメディカルスタッフが足りないのであって、医者・医療機関・製薬業界は利益を上げているようである。近藤氏の言い分は的を得ているのかどうかは、素人の私には残念ながら確信が持てるわけではない。そこで同業者の医者で比較的好意的な人の評価を聞いてみよう。長尾医師の評価は朝日デジタルapital「制癌剤の止めどき」において、賛意7割・不同意3割であるという。長尾医師はこう評価する。
『近藤氏の抗がん剤への主張は一貫しています。「患者よ、がんと闘うな」ではじまり、「あなたのがんは、がんもどき」、「抗がん剤は効かない」、ときて、「がん放置療法のすすめ」、で一応、完結しています。
「がんと闘うな」で、日本中がハッとさせられ、「がんもどき理論」に、大きな議論がおきました。氏の抗がん剤に関する主張は、あまりにも有名になりました。本当のがんは、転移して死ぬもの。だからがん検診はまったく意味がない、放っておいても死なないのは、がんもどき、といった主張です。
多くのメディアで議論が行われ、臨床現場は大混乱しました。その間、先生を攻撃する医師は大勢いても、擁護する医師は最近までは一人もいなかったように、記憶しています。』
そして長尾医師は近藤氏の功績を次の5点にまとめました。
1 コペルニクス的反証
近藤先生の主張は、まさにコペルニクス的反証です。当然、すべてのがん医療に携わる医者を敵にまわしました。それでも発信を続けられる先生の勇気と気力に敬服します。最近、中村仁一先生という強力な賛同者を得ました。あれだけ多くの市民に受け入れられること自体、市民感覚では認められているといえますが、医療界ではまだ完全に異端です。
2 がんもどき理論の本質
「がんもどき理論」の本質を私なりに解釈すると、「治らないものは治らない」に尽きると思います。すなわち医学・医療の全否定ということになります。しかし、本物のがんとがんもどきに完全に二分できません。現実はそんなに単純ではなく、現実との乖離がありすぎます。
3 抗がん剤への警鐘
抗がん剤への警鐘を鳴らし続けたことが、一番の功績であるかと思います。近藤先生のおかげで、抗がん剤治療は良くなったと思います。
4 放置療法の提唱
がんに手を加えず、様子を見るだけということは決して珍しいことではありませんが、面白い言葉を使いました。ただ「放置療法」という意味を正しく啓発する必要があります。
5 慶応大学の懐の深さ
これだけの反論本を書き続けながら、先生を追い出さない慶応大学には不思議というか、むしろ懐の深さを感じます。どこか京都大学の小出先生を連想してしますが、いい大学です。

近藤医師の本からは、がん治療の花形は外科医だとすると、制癌剤治療は内科医、外科手術が無力な転移がんや症状緩和という末期療法を担当する放射線科医の三つ巴のバトルが読み取れます。がん治療で発言力の弱い放射線医が花形の外科医を「血に飢えたドラキュラ」と呼ぶ姿にはちょっと医学界の権力闘争を見るようだ。近藤医師は慶応大学医学部放射線医師です。略歴を記すと、1948年生まれ、1973年慶應義塾大学医学部卒業、同大学医学部放射線科入局、79−80年米国に留学し、83年より同大学医学部放射線科講師、がんの放射線治療を専門とし、乳房温存療法のパイオニアとして知られた。ここでがんの放射線治療の現状を記した三橋紀夫著 「ガンをどう考えるかー放射線治療医からの提言」(新潮新書 2009年)が参考となる。三橋氏はがんの放射線治療の役割を、「内科や外科医の専門分野が臓器別に高度に細分化されているのに、放射線腫瘍医は間口が一つですべてのガンを見なければならない。それは放射線科が外科や内科の補助機関的にみられ、オーダ通りに画像を取ったり、放射線を当てるだけの道具に過ぎなかった。放射線治療の有効性が次第に明らかになるにつれ、技術も高度化してガン総合医では勤まらなくなった。放射線腫瘍医も高度化細分化の時代になったのである。ガン治療法には、外科的手術、化学療法、放射線治療法の3つがある。原発性ガンは出来たら切り取れば治癒率は高いのだが、リンパ節転移や遠隔転移のガンは外科的には始末に負えない。そこで化学療法や放射線療法と組み合わされた集学的治療が求められる。根治できないガンとはQOLの観点から共生しなければならない。そこで威力を発揮するのが放射線治療である。根治できるガンのほうが少ないかもしれない。ガン細胞を最期の1個まで排除(叩き殺す)するのは、そもそも出来ない相談かもしれない。老年ともなると、体中にがん細胞は発生していると考えられ、結局人間の寿命内で宿主を殺さなければ共存共栄でいいのではないか。 」と総括する。最後のところは近藤氏の見解にも近い。がん治療の現状として、三橋氏はこうまとめる。「3つの方法のメリット・デメリットを考えることが重要である。外科的手術では、ガンは治ったが胃袋はなくなったという状態を覚悟するかどうかの問題がある。大きな侵襲性をさける手術法も色々開発されている。放射線療法のデメリットは皮膚が線維化してぼろぼろになり易いことである。従って手術も局所、放射線も局所治療を目指す。化学療法は血液に入れる場合は全身療法になり、臓器に集中して入れる場合は局所療法である。局所療法としては、外科的治療、放射線治療、その他の治療がある。手術療法と放射線療法の併用は、照射の時期によって@術前照射、A術中照射、B術後照射に分けられる。@術前照射の目的は手術中に散る危険性のあるガン細胞の活性を弱める事、腫瘍を少しでも小さくして手術をやりやすくする、免疫能を高めるためである。人は全身に一回5グレイの強度の放射線を被爆すると60日以内に半数が死亡する線量である。照射治療は患部に数回に分け積算で30−40グレイを照射する。A術中照射とは外科的に腫瘍の減量を行い、開いたまま照射室に患者を運んで臓器に1回で20−30グレイを照射する。まわりに臓器が密集していて切除不能のすい臓がん、胃がんリンパ節転移、膀胱ガン、脳腫瘍などに効果抜群である。B術後照射は取り残した腫瘍や、原発ガンは手術でとり転移巣は放射線で役割を分担する療法である。脳腫瘍、肺がん、食道ガン乳がんなどで行われている。化学療法と放射線療法の併用の目的は、化学療法で転移を抑制し放射線で局所治療する、放射線の効き目を上げるために増感剤として使用する(分子標的薬)、有害事象(副作用)を軽減するためである。固形ガンにたいする化学療法の効果判定として奏効率という定義がある。完全にガンが消えたCRと部分的に減少したPRの合計を全体の%で表したものであるが、「効く抗がん剤」とはせいぜい30%程度である。治癒というには程遠い数値である。それが制癌剤の現状なのだ。」 要するに固形がんでも手術ありきではなく、いろいろな療法の組み合わせがあり、患者はセカンドオピニオンを聞いて選択することである。決して医者に脅されてはいけない。誤診もあり、切る必要性のないポリープまがいも切られている現状は正さなければならないという。


1) 近藤誠著「患者よ がんと闘うな」(文春文庫 2000年12月 単行本は文芸春秋社より1996年3月刊行)

1996年春に文芸春秋社より同名の単行本が発刊されて以来、専門家たちから反論があって「がん論争」が生じたという。本書は次の4点の論点(テーマ)がある。
@ 抗がん剤治療に意味があるがんは全体の1割
A 手術はほとんど役に立たない
B がん検診は百害あって一利なし
C がんは本物のがんとがんもどきに分かれる
「がん論争」は主としてBの「がん検診」とCの「がんもどき」について闘わされた。最近近藤氏の主張には「専門家」のなかで賛同者がでていており、新潟大学名誉教授の岡田正彦氏は「ほどほど養生訓実践編」(日本評論社)において「がん検診は受けてはいけない」と言っておられる。京都の老人ホームの医師中村仁一氏は「大往生したけりゃ医療とかかわるな」)(幻冬舎新書)において、高齢者のがん放置を説いておられる。

@ 抗がん剤治療に意味があるがんは全体の1割

近藤氏は抗がん剤の治療・延命効果として4つのグループを検討する。@顕著な効果がみられる急性白血病、悪性リンパ腫、睾丸腫瘍、子宮繊毛腫瘍、多くの小児がん、A治療効果は疑問だが延命効果を認めるのは乳がん、B治療効果はないが若干の延命効果を認めるのは進行した卵巣がん、小細胞型肺がん、臓器転移のある乳がん、C治療効果も延命効果もない脳腫瘍、胃がんをはじめとする上記以外のすべてのがん。抗がん剤の効果として学会では腫瘍縮小効果をいうが、近藤氏は治療・延命ではないのでこれを退ける。ありふれた固形がんのほとんどには抗がん剤は無意味であるという。抗がん剤に意味があるのは血液のがん、小児がんなどでそれはがん全体の1割に過ぎないという。抗がん剤のメリットを治療・延命効果とすれば、デメリットは恐ろしい副作用である。この劇性の副作用に耐えることをもって「がんと闘う」と称するのはあまりにも患者の体力と生活の質を無視した見解である。抗がん剤は基本的に細胞毒性化学物質であり、発癌誘発剤である。がん治療では積極的にがんと闘うという姿勢が残りの人生を悲惨にする場合がある。治療を受けない・抗がん剤治療を拒否する選択肢を検討する必要性を近藤氏は強調するのである。私はこの見解には高齢者のがんには無条件で納得できるが、若い人のがんについては疑問符をつけておこう。抗がん剤の副作用が解決できない原理的な理由は、正常細胞とがん細胞の細胞生物学的要素がそれほど差異がないためで、抗がん剤が無差別に生体を痛めつけるからだ。抗がん剤は命を縮める薬で、患者を生と死の限界にまで追い詰めるのである。1999年名古屋地裁は医療法人を相手取った訴訟において、死亡に至った患者の遺族に6700円の支払いを命じた。判決文は「早期のがんには抗がん剤は不必要で、副作用の害があるのに漫然と投与し続けたのは重大なミスで、白血球が減少しているのに常識では考えられないほどの量を投与したのは重大な注意義務を欠いた行為」といいました。これには医療機関の営利体質(必要以上の医療行為)も絡んでいる。入院・検査・点滴が過剰な医療機関は要注意である。

A 手術はほとんど役に立たない

本書の半分くらいの分量ががん手術批判に充てられている。放射線医から外科医への執念のようなものが感じられる。がん治療においてまず手術ありきから始まる「手術万能神話」を疑うことが本書の革命的なところである。「原発安全神話」が嘘であったことが3.11で白日の下に明らかになったように、近藤氏はがん手術偏重に異議を唱えるのである。手術のリスクは非常に高い。食道がんでは手術を原因とする死亡は2割程度あって、手術は危険な選択であることは事実である。日本では手術の危険性から最近は内視鏡的治療が流行していますが、世界では食道がんの手術は避けられており、大多数は放射線によって治療されている。食道がんがリンパ節に転移して反回神経を圧迫する状態(声がかすれる)はもはや手術不可の兆候なのだという。がんの進行度によって治療法を変えることは、子宮頸がんでもみられる。日本では1期と2期は手術、3期と4期は放射線治療でという慣行があるが、世界では1期から4期まで全部が放射線治療の対象となっている。日本の常識は世界の常識ではないのである。子宮頸がんの場合骨盤の中にあるリンパ節を広く切除しますが、その影響でいろんな合併症・後遺症が生じる。前立腺がんの手術にも疑問がある。初期のがんであれば放射線療法にするか、それとも何もしないで様子を見るという、進行がんであれば手術はむしろ禁じられており放射線治療にするのが国際常識である。つまり前立腺がんで手術をする必要はないのである。日本のがん治療の医師やその頂点に立つ国立がんセンターでは「手術偏重」体質があると言わざるを得ない。欧米では乳がんについては乳房全体を取り去る「ハルスレッド術法」はすたれ、「乳房温存療法」に変わっています。日本でも1993年にはハルステッド術法は全体の9%になった。温存療法はハルステッド術法との比較試験で、転移が現れる確率や生存率が変わらないことが確かめられたので今や国際的な標準治療となっている。にも拘わらず日本では今では少なくなってはいるが、乳房全摘という蛮行が行われていることは憂慮に堪えない。同じことは胃がんのついてもいえる。国際的には胃がん手術では胃の周りのリンパ節を中心に切除(D1手術)しているが、日本では広くリンパ節を切除する(D2手術)が主流である。オランダでD1手術とD2手術の効果比較試験が行われ、この試験には日本の第1人者も参加したが、両者の術法に転移や生存率の差はなかったという結果であった。D1よりもD2手術のほうがより合併症が多く、かつ手術による死亡率が高いという結果であった。すなわち日本では思い込みによる無意味な手術をがおこなわれているのである。これには外科医師過剰による手術偏重体質が影響しているようで、患者はセカンドオピニオンを聞いて賢い選択肢を持たなければならない。

医師やメディアはがん死の恐怖やタブーを煽っているが、高齢者のがん死は寿命(老死)と同じであり逃げられるものではない。達観して死を迎えるという「自分の死に方」を選ぶ権利を持つ。スパゲティ死ではなく、誰もが立派に死ぬことができる。痛みは3段階の鎮痛剤(最後は麻薬)で除くことができる。今では老衰死という分類はないが、1955年の統計では死亡原因の第3位を占めていた。高齢者の死には痛みもなくがんによる衰弱死が多く含まれていたようだ。ホスピスでは末期患者にモルヒネや骨転移に対する放射線の除痛処置を行っている。医療産業が成長分野として注目している在宅治療は要注意であるという。点滴をつけて患者を家に帰す計画のようだ。そこで患者が手術を拒否すると病院を追い出されるというパターンに反論するには、手術の生存率効果を検証して手術が本当に有効なのかどうかを考えなければならない。手術の意義を調べる最良の方法は、がんを手術しないで自然の経過に任せた場合と比較することである。英国の古い文献(1962年)に1803年ー1933年の無治療の乳がん患者250人の生存率曲線を求めた報告がある。5年生存率は18%、10年生存率は4%であった。一方ハルステッド乳房全摘手術の420人の生存率論文(1932年)では、手術による死亡率は4%で5年生存率は18%、10年生存率は6%であったという。手術による病巣の除去とは原発病巣の増大を防ぐことにあるのだが、局所再発率は33%であった。手術の第2の意味は遠隔転移の予防にある。原発病巣を取り除いてもその時点ですでに医者に見えない転移が始まっていたとみられる。がんは除去すれば治るという考えとがんを放置すればすぐに死ぬという思い込みが医師と患者にあった。欧米ではハルステッド手術は姿を消したが、日本ではなお手術をする外科医師がまだ10−15%もいる。子宮頸がんについても日本では子宮全摘とリンパ節切除による深刻な合併症・後遺症の苦しむ女性が多い。それでも局所再発や転移がある点は乳がんと変わらない。早期の子宮頸がんには膣から子宮頚部だけの部分切除手術、それ以上に進行したがんには放射線治療とい方法があり、開腹手術を避けることができる。しかしいまなお子宮全摘手術が主流(70%以上)である。子宮頸がんのリンパ節切除は子宮摘出以上に合併症や後遺症に苦しむことになる。後遺症は死ぬよりましだろうという論理は成り立たない。手術をしてみもしなくても生存率や転移率に変わりがないなら、より深刻な後遺症に苦しむ選択はあり得ないのだから。

1987年9月昭和天皇のすい臓がん手術が行われましたが、切除手術をせずにバイパス手術を選択したのは正解だとしても、なぜかバイパス手術のあと放射線治療が行われなかった。そもそもバイアス手術と切除手術では5年生存率が変わらないのは、バイパス手術に放射線照射を併用した場合の成績なのだ。放射線治療による延命効果があったはずなのに悔やまれる。近藤氏はこの理由を日本の外科医の放射線嫌いの体質にあるのではないかと推測している。乳房温存治療というのは、「くりぬき法」といわれしこりをくり抜いて乳房を温存し、放射線を照射するものです。乳房温存法が日本で実施されてからも、放射線治療を行わない外科医が多くて、その場合再発率が高くなる。膀胱がんにおいても日本の標準治療は膀胱の全摘出ですが、人口膀胱と尿バックの生活の質の低下は歴然です。欧米では原則的に放射線治療を先にして、効かない場合にだけ膀胱切除を行う。放射線治療のリスクとは、脊髄症、腸閉塞、肺炎、膀胱萎縮、肝不全などがある。その原因のほとんどは医師の過線量によるものだ。時間がたつと治る場合があり、それほど放射線障害を恐れて採用をためらうことはない。日本では放射線治療が手術や抗がん剤治療に対して劣位におかれてきたことが、放射線医師の不足やトレーニングと経験不足となってきた。正しく使われれば、放射線治療のほうが手術よりはるかに利点が多いと近藤医師は力説する。抗がん剤の臨床試験(治験)の第1相試験は患者が死ぬか回復しない副作用がみられるまでの投与量を求めることです。つまり人体実験です。第2相試験は単独使用でがんが縮小するかどうかと副作用を調べるものです。抗がん剤が効果があるとされる血液がんでは多剤併用療法が基本ですが、単独使用の第2相試験ではがんが治ることはあり得ません。固形がんのがん縮小と血液がんのがん消滅は別問題です。ほとんどの患者のがんは縮小すらせず、寿命短縮効果しかありません。抗がん剤は毒物です。即死の可能性があります。抗がん剤新薬は第2相試験が終わると市販されます。第3相試験は比較試験で従来の多剤併用療法と新薬の多剤併用療法の生存率効果を比べるものです。治療において新薬が効果あるかどうかは病院で治験を積み重ねることになるのです。こうして効かない抗がん剤がいつまでも製薬会社のドル箱となり、治療現場でむやみに使用され続けるのです。

B がん検診は百害あって一利なし

早期発見が有効という証拠は実はどこにもなくて、医者の思い込みかがん検診業界の思惑に過ぎないようだ。1998年厚生省が「がん検診の有効性に関する研究」報告において、肺がんや乳がんの検診には有効性が証明できなかったことを認めた。そして国は98年よりがん検診への補助金を打ち切り、地方の判断に任せたという。検診の無効性がはっきり否定された比較試験がある。1991年「メイヨー肺がん試験」(9000人、11年)、1988年のスウェーデンの「マラルメ乳がん試験」(4万人、10年)、1993年の「ミネソタ大腸がん試験」(4万6000人、13年)、1996年の英国「大腸がん検診」では、総死亡数に変わりはなかったか、むしろ検診群の死亡数のほうが多かった。胃がんや子宮頸がんの検診については検診群と非検診群の比較試験は存在しない。にも拘わらず日本の医療専門家たちは率先して早期発見・早期治療のスローガンを掲げている。がん検診をすれば長生きできることは証明されていません。それより医療被曝による発がんのほうが心配になります。1992年のカナダの乳がんマンモ検診の比較試験では、非検診群との総死亡数には変化はなかったが、乳がん死亡率が検診群で60%も多くなった。マンモ乳がん検診、肺がん検診、大腸がん検診にはX線照射を行うので発がんの心配が増えます。内視鏡検査は腸壁を破るリスクと細菌感染のリスクがあります。どこの病院も人間ドックを経営の柱としていますが、有効性や意義に乏しいがん検診は避けるべきだというのが近藤医師の主張です。

C がんは本物のがんとがんもどきに分かれる

このテーマは細胞生物学的に難しい問題で、特に近藤氏が言う「がんもどき」細胞については細胞学的特徴や概念が実証されたわけではない。つまり仮説に過ぎない概念ですが、一般にはわかりやすい概念で、治るがん(がんもどき)と治らないがん(本物のがん)が存在することを言っている。医師は治るがんを自分の功績にするが、「切らなくてもいいがんを切っただけで治ったという」と近藤氏は主張しています。まさにがん治療のコペルニクス的転回です。天動説を地動説に言い換えているのです。だから近藤氏は医療の世界から猛反発を受け、つまはじき(村八分)にされたのです。しかしここは重要なので(本書の一番大切な仮説なので)よく考えてみよう。がん細胞の定義(基本的な性質)には3つある。第1はほっておくといつかは人の命を奪う。第2は原発病巣のがん細胞は無限に増殖す能力を持つ。第3は原発病巣は他の臓器に転移することです。がん細胞の増殖速度は意外に遅いものです。がんは恐ろしい速度で増殖すると専門家は脅かしますが、がんと分かる1pほどの大きさに成長するのに3年から6年はかかります。通常の体細胞(新陳代謝の激しい臓器細胞・表皮細胞)のほうががん細胞より増殖が速い。だから抗がん剤は効かないという本質的宿命を持つか、あるいは正常細胞にダメージを与えるのです。特に前立腺がんや甲状腺がんの細胞増殖速度は遅いことで有名ですが、他の病気で死亡した人を調べると前立腺がんを持っていた人が40%、甲状腺がんを持っていた人が10%もいました。ところが前立腺がんで死ぬ率は1%以下であり、甲状腺がんで死ぬ人は0.1%以下です。これらの性質を「潜伏がん」と呼びます。がん細胞の倍化時間は2−3か月ですが、スキルスがんは特別に早く5−10日ほどです。がんが増殖するだけなら症状が出てからその段階で治療しても手遅れになるわけではない。がん細胞が浸潤して血管内に入り多臓器に達して血管から臓器細胞内に入る転移というがん細胞の性質を獲得することが恐ろしいのです。そしてこの転移能はがん細胞が生まれつき持っているもので、原発病巣がん細胞がかなり大きくなってから獲得するものではないのです。「早期発見ー早期治療」というスローガンは原発病巣が大きくなってから転移を始めるという誤解に基づいています。ところががんの転移は(がんはすべて転移するものではないというのが近藤仮説理論の重大な点です)初発がん細胞の発見の前にすでに起きていると考えなければなりません。原発病巣治療の1−3年後に転移が見つかり場合が多いのですが、治療の時点でがんの転移は始まっていますが、目に見えないだけです。

「がんもどき」という概念は1955年カナダの統計学者マッキノンが気付いて、がん細胞には2つの異なった性質のものが含まれると言い出しました。1920年代から1950年代まで乳がんによる死亡率はアメリカ各州で変わらないことを言ったのです。死亡に至ったがんを「本物のがん」とすると、がん死亡率が一定であることから早期発見早期治療の前提は崩れます。アメリカコネクチカット州の1950年代から1980年代の統計を見ると、10万人あたりの乳がん発見数はうなぎのぼりに増加していますが、乳がん死亡数は一定でした。するとがんもどきが増えたのか、発見技術の向上(見間違い?)で発見数が増えているだけなのかという疑問が生じます。いまのところ細胞生物学的顕微鏡診断では「がんもどき」の発見はできませんし、転移能の有無も判断できません。「非浸潤がん」、「上皮内がん」、「粘膜内がん」は局所にとどまるので転移能はありません。早期胃がんでも同じです。転移能がなければがんという定義から外れるので、これらの「粘膜内がん」は存在があいまいで、検査映像技術の発展で見つけられるようになり、外科医は見つけ次第「がん」だといって切除手術を行い、がんを治療したと称するのです。良性の「粘膜内がん」はあらゆる臓器の固形がんについてみられます。良性のポリープでもほっておくとがんになると脅かす医者がいますが、誰にでもある大腸ポリープは老化現象と言えるもので、放っておいても何の悪さもしないのです。つまり検査技術の発展が大量の「がん」の増加となり、医療機関は潤っているといえます。血液中の腫瘍マーカーとしてPSAが前立腺がんに関係しているとされますが、この検査によって米国では前立腺がん手術が4倍になりましたが、前立腺がんによる死亡数は減少していません。意味のない手術が行われているのです。超鋭敏な診断・検査技術が大量の患者を生み出し、それが医療界の仕事を増やし、結論として何の役にも立っていないという構図が描けます。そして患者は意義のない手術によって生活の質が大幅に低下し、後遺症に苦しんでいるのです。だから近藤氏はPSA診断を受けないようにして暮らすことを勧めます。早期発見ー早期治療理論はこのように証拠のないデマゴギーに基づいています。外科医が手術で治療できたというのは、もともと良性で切る必要のない「がんもどき」といわれるものです。「本当のがん」は切除する前にすでに転移しており、切除という外科手術で治療できるものではありません。早期発見理論の論理は「早期がんはほっておくと進行がんに変化する」という脅かしです。しかしがん細胞の転移成立時期については専門家にとって重大なタブーとなって、口を閉ざしています。原発がんと転移がんは全く検出できない時期にある時間遅れで発生しているものです。これを言うと専門家たち(医師、医療界の利害関係者・ステークホルダー)からは村八分にされます。業界の利益に反するからです。関係者はしゃにむに早期発見理論を信じ込んでいます。原発ムラで「原発安全神話」が信じ込まれていた構図と同じです。業界は「早期発見すれば助かる、したがってがん検診は正しい」と信じ込ませる大キャンペーンを国をあげて推進してきました。専門家の言うことは嘘だらけでいざというときには何の役にも立たないことは3.11原発事故で国民はいやというほど見せつけられました。がん検診ー早期発見・早期治療というのは虚構なのかどうか、それは業界の収益につながる専門家のデマなのか、私たちは自分の頭でしっかり考える時に来ていると近藤氏は訴えています。


2) 近藤誠著「成人病の真実」(文春文庫 2004年8月 単行本は文芸春秋社より2002年8月刊行)

本書は、@成人病(生活習慣病)検診のからくり、A医療事故・薬害、Bがん検診についての3部立てになっています。といってもBがん検診については前書「患者よ がんと闘うな」の部分的な繰り返しなので、本書の主題ではありません。検診との関係で述べるにとどめます。本書の結論は高血圧、高コレステロール血症、糖尿病などの大部分は治療の必要がないか、病気とみなす必要のないものです。ポリープはがんにはならないということです。成人病といわれるものは総じて、無症状であるのに、職場健診や人間ドックで発見されものは、治療の必要はありません。治療によって逆に命が縮む可能性が高い。「成人病は節制や治療が必要」と思い込んできた原因は専門医の言動にある。成人病検診は医師がお客さんを呼び込むためのからくりなのです。検査値が高いと治療が必要という「基準値」は根拠もなく恣意的に学会が決めています。少し基準値を下げるだけで、「病人」が何千万人も増えるからです。日本人は1980年代のバブル以来、急に変な自信と偏見が増えました。医療内容や医薬品開発能力の絶対的不足にもかかわらず、日本の医療は世界一と思い込むようになり、ガラパゴス的変容をきたしています。そして医療事故と薬害事件が急増しています。ついには医療崩壊を医師不足のせいだとして、さらに無能な医師の大量生産を企てているのです。経済不況の時代に税金と自己負担でまかなわれる医療部門の自己増殖だけが目立っています。その急成長分野が成人病検診なのです。人の命に係わるだけに、医療界の腐敗はたちが悪いのです。

第1部 成人病検診のからくり

 高血圧、高コレステロール、糖尿病、脳卒中脳ドックについて述べられています。1998年厚生省調査によると、これまでの基準値(160/95mmHg以上)を当てはめると1600万人が該当しました。ところが2000年に日本高血圧学会が高血圧の基準値を140/90mmHgに引き下げました。すると高血圧とみられる人は3700万人に相当します。一挙に患者が2倍以上になる仕組みです。この新基準では成人の4割、60歳以上の高齢者では6割が高血圧者という計算になります。これまでの基準についても根拠が薄いのに、さらに基準値を引き下げる理由が見当たりません。本態的高血圧という原因不明の有症状患者は別にして(インシュリン依存1型糖尿病と高血糖値の2型糖尿病の関係と同じですが)、高血圧には老化現象としての側面があり、高血圧は血管の拡張性の減少(血管の硬直性や詰まり)のため、同一血流を維持するには血圧を上げるしか手がないからです。これは体が欲しているからそうなるのであって、体細胞に必要な酸素と栄養を届けるために必要な生体の自動制御なのです。水を送るポンプシステムや電流を送る電気回路と同じ仕組みです。水量や電流一定の条件では、抵抗が大きくなるとポンプ圧力や電圧を上げる必要があります。血圧降下剤で心臓収縮能をさげると(圧力一定条件)血流が減少します。すると意欲の低下やふらつき、そして脳梗塞の原因となります。血圧を重視するか、血流を重視するかという選択で生体は血流を重視し血圧を上げたのです。これを薬で血圧を下げると生体の要求とは逆の効果になります。さてどちらが長生きできるでしょうか。血圧の高い日本人は世界で最長寿国です。もちろん高血圧は老化現象ですので、血圧の高い人には心血管病が多く、総死亡率が高いのは当然です。血圧降下剤で血圧を下げた場合に心血管病や総死亡率を下げることができるというデータが示されなければ、治療する意味はありません。高血圧学会のガイドラインには基準値をなぜ下げるのかという根拠が何も示されていません。この基準では欧米人のほとんどが高血圧となるため、欧米の学界からは強い批判が日本に向けられています。血圧降下剤の市場は1998年の統計で9851億円(全医薬品市場は5兆4200億円)でした。全医薬品市場の20%が降圧薬です。新基準で一挙に2000万人の患者が増えるのです。だから高血圧治療ガイドライン作成委員会に群がる権威という専門学者12人のうち11名が医薬品企業の宣伝費を貰っていました。高血圧症でも2種類に分類して考えられます。2割は危険な「高血圧緊急症」で、あとの8割は年相応の「高血圧」であるに過ぎません。むろん減量、塩分制限、禁煙、アルコール制限などで血圧を下げることは有効です。心臓に負担をかけないことが肝要です。1997年の欧州の論文では、80歳以上の高齢者の5年生存率は最高血圧140−180mmHgグループ(50%)のほうが、120mmHg以下のグループ(40%)よりも高かった。高齢者にとって血圧が下がることは死の前触れというべき「老人性活力低下」現象なのです。少なくとも高齢者は降圧剤は飲まないほうがいい。50−60歳代の人で最高血圧が200mmHgを超える人は降圧剤に意味があるでしょうという。

コレステロール値を下げる薬「スタンチン剤」系の市場は1850億円(1999年)、リボパスが600億円、ローコールが162億円、セルタ80億円で、全体で年間約400万人が服用している計算になる。「冠動脈疾患」(心筋梗塞など)に関係するといわれる総コレステロールの基準値は、高脂血症診察ガイドラインによると220mg/lとされる。この基準値によると高コレステロール血症者は2200万人といわれ、成人の1−2割がこれに相当する。コレステロールの密度によって善玉(HDL)、悪玉(LDL)に分けられるが、総じてコレステロールはあらゆる細胞の膜を構成する成分で、ホルモンの原料となるなくてはならないものである。コレステロール値が低いと、@脳血管がもろくなり脳出血のリスクが高まる、Aがん死亡率が高くなる、B呼吸器系や消化器系疾患が増えるといわれ、コレステロール値は240mg/l以上あったほうがいいといわれています。男性ではコレステロール値が高くなるにつれ総死亡率は低下することが1997年福井市の調査報告で示されました。コレステロール値は高いほうが寿命が長いのに、降下剤を飲まされる必要はないといえる。米国の試験(1998年)では冠動脈疾患発生率(実験群5000人以上、6年観察)は降下剤投与群で3%、非投与群で5%でした。これを効果ありということもできますが、僅少差で社会的出費も入れた有用性があるとも思えません。ところが総死亡数は降下剤投与群の方が多かったのです。これを薬物が有効であっても無用であることの見本です。いや無用であるよりリスクを生じたといえます。欧米での冠動脈疾患率は日本の5−7倍であるが、米国ガイドラインは240mg/lである。冠疾患発症率が高い例は家族性の高コレステロール血症です。この場合は治療するする必要があります。2001年のメディカルトリビューンの論文(J-LIT研究)によると、4万2000人を対象としてスタチン剤服用と総死亡率の関係を見たデーターがあります。コレステロール値を200mg/l以下に下げるると総死亡率が上がり、280mg/l以上でも総死亡率が上がりますが、200−280mg/lの範囲でおおむね総死亡率は一定です。コレステロール低値グループではがんによる死亡が目立ちます。これは低コレステロールががん発生機構を促進するのか、スタチン自身が発癌剤なのかと疑われます。近藤氏は260mg/lを診断の基準とし、280mg/l以上を治療の開始基準とする提案をされている。

日本の糖尿病人口は約690万人と推定されている。血糖調節を行うのはすい臓から分泌されるインシュリンというホルモンです。インシュリンの作用が低下するので高血糖になるが、インシュリン投与が多すぎると低血糖値となり昏睡になります。現在の基準は空腹時の血糖値が140mg/l以上、「ブドウ糖負荷試験」で2時間後の血糖値が200mg/l以上であれば糖尿病といいます。糖尿病には2種類あり、T型糖尿病はインシュリンが分泌されない場合に起きるんで、強化インシュリン投与によって長生きできるようになった。T型糖尿病は合併症の予防に最大の注意が必要です。しかし糖尿病といわれる大部分はU型糖尿病です。肥満体の人は脂肪が付きすぎているので、普通の分泌インシュリンでは糖の分解が少なくなっているのです。だから無症状の肥満体には食物の節制が一番の治療法です。それにまがまがしい「糖尿病」となずけるのはどうかと思う。「ブドウ糖負荷試験」で糖投与量を体重や男女の違いを無視して一律に75g投与というのは解せません。そして2時間後の血糖値が一律に200mg/lという判定基準も根拠がありません。それ以上に不可解なのは、血糖値コントロール剤の投与により寿命が延びるとか合併症を防止できるというデータがないことが最大の問題です。糖尿病専門医師の談合体質から基準が決められたといっても過言ではありません。英国で1998年にU型糖尿病に関する重要な論文が出ました。無症状で血糖値が110-270mg/lの3800人を対象に、10年間観察治療群(食事療法だけとし、症状のあるときのみ治療)と強化治療群の死亡者や合併症発生率を調べた。両群とも死亡率は1000人・年あたり18,9人でほとんど変わらなかった。脳卒中や腎不全、心筋梗塞、網膜症の失明などの合併症は両群とも同程度であったといいます。結局2型糖尿病の治療の効果は不明かメリットが得られませんでした。ここに2型糖尿病予備軍治療に関する医師の心理的策略があります。2型糖尿病の高血糖値者を捕まえて、1型糖尿病患者の場合を引き合いに出し脅しをかけるという構図です。また血糖降下剤にはデメリットがあります。腸閉塞、肝機能障害、心不全などの副作用が起き死亡にいたる事故がありました。さらに追い打ちをかけるように1999年には空腹時血糖値が126mg/l以上を糖尿病と診断するという基準値の引き下げが行われたのです。基準値を下げて患者を呼び込む構図は患者の命を考えるよりは業界の営業戦略から決めているようにしか見えません。

脳出血やくも膜下出血などの脳卒中で毎年14万人がなくなっています。くも膜下出血の予防として登場したのが「脳ドック」(核磁気共鳴画像診断法MRI)です。1988年頃から始まりましたが、20世紀末には1000施設で実施されている模様で、料金は平均6万円です。超高価な施設ですが日本はMRI大国といわれています。それだけ投資しても元が取れるようです。MRI診断で脳梗塞や動脈瘤が発見される頻度が高いといわれています。ところが問題は無症状脳梗塞は死亡者の13%にみられます。高齢者の脳にはどこかに脳梗塞の空洞が存在してます。直径3mm以上の空洞が見つかれば「ラクナ梗塞」と呼びます。無症状脳梗塞の人の年間脳卒中発症率は1.71%で脳梗塞のない人の約6倍のリスクを抱えていることになりますが、はたして無症状脳梗塞は治療したほうがいいのでしょうか。通常は血液の凝固を防ぐためアスピリンを継続して服用する。1994年の研究によるとアスピリン投与群と放置群の脳卒中発症率は変わらないかむしろ投与群で少し増加しました。また1993年のJATE研究によると、70歳以上の無症状脳梗塞群の人に血圧降下剤を投与すると、がん発症や脳卒中再発が多かった。脳ドックで見つかる別の病気は動脈瘤です。成人では5%に何らかの動脈瘤は存在します。脳ドックで動脈瘤が見つかった場合、医者は開頭手術か血管内治療を勧めます。動脈瘤の破裂確率を年1-2%とすると、70歳の男性の残りの寿命10年とすると、死ぬリスクは10-20%高まる計算になるから手術を勧めるのです。医者は未破裂脳動脈瘤クリップ手術のリスクをよく説明しません。310人を対象とした手術結果は、死亡1人、自力生活不能状態が不可能が17人(5.5%)、言語障害・視力障害・半身不随など重篤な後遺症が30人(9.7%)、後遺症なしが262人(84.5%)でした。後遺症が残るリスクは併せて15%になります。また未破裂動脈瘤の破裂率の算定にも重大な嘘があります。1998年に欧米の53施設での調査結果が公表されました。2621人の未破裂動脈瘤の年間破裂率はわずか0.05%で、20年間生きたとして破裂率は1%に過ぎません。医者はかくもウソをいう。これでは手術の危険性のほうが恐ろしいことになります。それは医者は手術に持ち込んで、数億円という設備費を回収しなければなりません。医者の都合で悲惨な余生を送りたくなければ、手術を拒否して病院を逃げ出すことです。

第2部 医療事故・薬害

一昔前には「医療崩壊」がよく取り上げられた。2001年から始まるブッシュジュニアーの戦争政策と小泉政権の「予算削減」が期を同じくして、「新自由主義的小さな政府政策」を推進し、公共事業・福祉予算の削減に邁進した結果、医師不足や医療事故などが連日報道されていた。現在この状況をよく考えると、はたして医師不足だったのだろうか、医療崩壊は医師側の流したデマだったのではないかと疑われる。そして今日、医師の営利主義が先鋭化した時代が到来した。我々は医師側からいのちを人質にして医師側の主張を飲まされていただけなのかと反省する。もう私は医師側の主張をうのみにはしないと覚悟した。医師という専門家は官僚と同じ無誤謬神話に守られてきたが、実際「医師という馬鹿に付ける薬はない」とまで考えなければ、自分の命を守ることはできないようである。医学論文も読まず、マニュアルだけが頼りで注射も打てない医師の数が不足しているのではなく、殺人的な忙しさに追いまくられる看護婦や技師というコメディカル(医療スタッフ)が不足しているため病院内で医療事故が多発しているのである。そして医療裁判では同業者の専門家の強力な援護を受けて、いつも患者には不利で医師側には有利な判決が下されている。この不透明さは原発裁判と同じである。病院内のマニュアルとは、官僚の文書主義と同じで、事態をやたら煩雑化するだけである。医療費削減のため厚労省は在院日数の短縮(20日以内)をしなければ儲からないシステムに変えた。だからナースセンターはよけいに忙しくなった。回転数を上げないと儲からない外食産業と同じ構造になった。病院内の衛生環境の悪さから手術後までも抗生物質の点滴を続けるため、多剤耐性菌MRSAが異常に繁殖しているのは日本だけである。病院の利益はベット数に比例するように仕組んだのは厚労省であるが、看護師の数を規則以下にして荒稼ぎをしているのは病院側である。日本看護師の数は人口当たりにすると欧米とそう引けはとらないが、ベット1床当たりの看護師の数が少ないのは日本の病床数が多すぎるためです。人口当たりのベット数は欧米の4倍もあります。医療事故の最大の根源は医者が無駄な検査や治療をするからです。それは医者・病院が多すぎるからです。医院のコンビニ化は患者のわがままで起きたのではなく、医院がコンビニ程度に多すぎるからです。

厚生省は2000年に「インフルエンザ脳症の患者に対する一部解熱剤の使用を禁止する」と発表しました。ここで、脳症の原因がインフルエンザの熱にあるのか、解熱剤の副作用なのかという疑問があります。日本では少なくとも年間200-300人が発症し、100人以上が死亡しています。解熱剤アスピリンとライ症候群(熱病)の間に因果関係があるという統計的有意差を認める論文があります。米国では1986年にインフルエンザでアスピリンの使用を控えるよう警告を出すと、ライ症候群の発生は劇的に少なくなり、今ではほぼゼロとなりました。解熱剤と脳症のメカニズムは複雑で確定していませんが、何らの原因でい「血液・脳関門」を破壊し、サイトカインという細胞伝達物質が脳に流れ込むメカニズムが考えられています。アスピリンよりはるかに強いある種の解熱剤(ジクロロ薬剤ボンタレン系)を使用する群は解熱剤を使用しなかった群に対して、死亡率が25-67%も増加するという。そしてインフルエンザ解熱剤による脳症事故が異常に多いのは、米国がアスピリンからより安全な解熱剤に乗り換えたとき、日本の医者はアスピリンより強力で(副作用が)危険な解熱剤を採用した結果である。厚生症はこの事態を見て、因果関係は不明だがジクロフェナクの使用に警告を出しました。ところがなぜかメフェナム酸という強力な解熱剤が使用禁止対象から外れていました。厚生行政のミスと言わざるを得ません。インフルエンザは自然に治るのに、強力な解熱剤は不要です。抗ウイルス剤も投与する必要はありません。発熱性の感染症で生じる急性脳症はすべて薬害です。この種の薬害事件の根源には、ほっておいても治る病気にも危険で強力な薬剤を多数投与して薬漬けにするわが国の悪しき診療慣行があります。発熱はウイルスが出しているのではなく、ウイルスに対する生体側の防衛反応です。解熱剤で体温を下げるとウイルスは生き残って治るのに余計な時間がかかります。欧米では41度を超える体温をげるため、冷水で体をふくことを奨励します。2003年英国の著名な医学雑誌(Lancet)にインフルエンザ脳症が薬害であることを指摘した論文が掲載されました。インフルエンザでは解熱剤が危険だということがわかりつつあるとき、ワクチンで対処しようとする流れがあります。インフルエンザでパニックになる国民性はワクチンの品切れ騒ぎを起こしました。インフルエンザワクチンの効用については議論の多いところです。同じ型のウイルスに対してはワクチンは確かに有効なのですが、自然に感染しているほうが免疫力が高いのです。インフルエンザ感染率が前者は20%、後者は2%です。これでは有効であっても有用ではないことになります。ワクチンの免疫力は弱く、かつどんどん目減りしてゆきます(毎年打たなければならない)。さらに累積発症率は非接種群と変わらないのでは打つ必要はありません。前橋市はインフルエンザワクチン接種を取りやめました。なぜなら流行期の児童の欠席率や発症率がワクチン接種と関係がないからです。学童のワクチン接種を義務としている国は日本しかありません。感染予防の役には立たないワクチンを勧奨する理由として医師は重症化予防ということを言い出しています。インフルエンザに対する不安や恐怖をあおる戦術です。抗ウイルス剤の薬害のほうがもっと恐ろしいのに、どうしてこのような根拠のない医師の言動が繰り返されるのでしょうか。それはワクチン製造メーカーはほとんど国営に近い会社であり手厚い保護を受けているからです。

第3部 がん検診

毎年病院に行って、胃・大腸・胆嚢のポリープを切除している人が多い。ポリープは切除して病理検査をすると良性の場合がほとんどです。特に胆嚢がんはポリープが悪化してがんになるのではという憶測が強かったようですが、エコー診断が発達するとなんと女性の4%、男性の6%に胆のうポリープが見つかっています。今ではさらに診断技術が進歩し、被検査者の13%にポリープが見つかります。1996年日本の研究で、胆嚢ポリープを発見された109人のポリープを5年間観察した結果があります。ポリープはほっておいても悪性化(がん)したものは一つもありませんでした。胃についてもポリープがん化説のほかに潰瘍がん化説がありました。がんが潰瘍化することがあっても潰瘍ががん化することはありません。今では潰瘍で手術する人はいません。次いで早期胃がんの診断と手術は日本のお家芸といわれますが、早期胃がんは6−7年何の変化もないことが常識です。そのまま縮小して消滅するものもあります。様子見が一番の回答であるべき早期胃がんを、ほっておけば進行がんになると脅かして手術し、治ったと自分の手柄にする外科医はまさに詐欺師です。胃のポリープの代表は「過形成性ポリープ」という良性ポリープです。異型性がないポリープはとる必要がないのです。こうして胃のポリープがん化説はすでに勢いを失いました。ではなぜ医者はポリープを取りたがるのでしょうか。それは手技料で稼ぎたいからです。良性と宣言するよりあいまいな言明で切除に持ち込みたいからです。医は算術なりの言葉どおりです。大腸ポリープには過形成性腫瘍様ポリープと良性の腺腫「腫傷」ポリープに分類されます。腺腫から進行がんに移行するという説には無理があります。細胞の顔が全く違うのにどうしてがんになるのか疑問です。そして腺腫はほっておいても大きくはなりません。1993年東京都がん検診センターの報告は、99人の腺腫を10年間観察した結果、ほとんどが縮小消失し、がんになったものは一つもなかったということです。こうしてポリープを発見切除することは意味がないことが歴然としています。ポリープを切除する内視鏡の事故も増えています。出血、穿孔、ショック死、感染事故などです。職場健診や人間ドックで見つけられた「がん」を放置したらどうなるのでしょうか。検出率が3.5%と高い甲状腺がんに疑問を抱いた医師が10人を放置して様子を見ました。6-12mmのがんが増大したのは2人で、10人は縮小しました。そこでこの医師は10mm以上のものだけを精査の対象としました。すると発見率は1%以下に下がりました。10mm以上の甲状腺がんを放置しても縮小しました。こういった「潜在がん」、「無害がん」はほかの臓器がんでも存在し、10-30% ほどが存在します。つまり早期がんはほっておくと進行がんになるというがん理論は破たんしています。神経芽腫という小児がんが幼児の尿検診で見つけられますが、尿検診の感度がいいのか擬陽性が多いのか、日本の医師が26人を73か月間放置して観察を始めました。2000年の論文では腫瘍が増大したものが7人、尿検査値が減少したものが19人で、途中親の希望で手術したものが10人いましたが良性で手術の必要はなかったと報告しました。新検査手法に飛びついて神経芽腫の尿検査をはじめたのがそもそも間違いです。進行した神経芽腫を防げないばかりか、手術・抗がん剤・放射線で少なからず幼児を一段と苦しめただけでした。

胃がんに関して、手術をした人としない人の余後の比較試験の論文は存在しません。肺がんや大腸がん、乳がんを調べる比較試験結果は存在します。はいがんでは1986年の米国メイヨー病院の結果が有名です。発見された肺がんの数は検診群の方が多かったが(検査病)、しかし肺がんによる死亡者は放置群の方が少なかったという結果でした。また総死亡数には両群に差はありませんでした。検診の積極的意義は存在しませんでした。チェコの1990年の論文でも喫煙男性を放置する群とレントゲンと細胞診を繰り返す群に分けて比較試験した結果、メイヨー病院と同じ結果を発表しました。乳がんについては有名なマルメ乳がん試験とカナダ乳がん試験(2000年)という2つの方法論的にしっかりした報告があります。二つの報告はマンモグラフィ検診群と放置群の総死亡数には変わりはないという結果です。大腸がんについては、潜血検査ー内視鏡精査ー手術という検診治療群と放置群に分けた比較試験を行ったミネソタ大腸がん試験(1993年、4万人)、デンマーク大腸がん試験(1996年、6万人)、絵英国大腸がん試験(1996年、15万人)の3つの報告があります。3つの報告において総死亡数に全く違いはありませんでした。以上を総括すると、無症状なのに検査で見つかるがんを手術したほうが寿命が長くなるというデーターは存在しません。検査と手術の有用性は社会的費用を考慮に入れなくても、証明されていません。近年種痘マーカーの検診がおおはやりです。臓器別の検診に比べて血液だけで簡単に検診できますが、はたしてその検査は有効なのでしょうか。絨毛がんを検査するhCGというホルモンは言うまでもなく妊娠期間中だけに有効です。肝がんの検査で「アルファ・フェトプロテインAFP」マーカーでは、実際肝がんである確率は陽性者の1%に過ぎないとあれば、この検査法の有効性が疑われます。さらに一般的ながん検査に「がん胎児性抗原CEA」というマーカーでは初期がんはほとんど見逃されます。前立腺がんの検査にPSAマーカーが用いられますが、近年前立腺がんの発見数だけはうなぎのぼりに増加していますが、前立腺がんによる死亡者は1968−1995年まで増加していません。腫瘍マーカーには基準値があるので、健常人でも5%の擬似陽性が出ます。集団検診では9種類以上のマーカーを測っているとすると、一つでも陽性となる確率は45%以上となります。これでは「命をもてあそぶ霊感商法」と大して違わないのではなかろうかと近藤氏は指摘する。検診は人を不幸にします。人の不幸を商売にする医学とはなんて嫌な商売なのでしょうか。定期検診を受ける人は毎年1000万人、職場健診を受ける人は毎年5000万人、人間ドックを受ける人は毎年200万人とまさに検診は医事業界のドル箱です。そのうち何割かを病人にして治療をして稼ぐ構図はアリ地獄ではないでしょうか。米国、英国で定期検診の比較試験が行われ、検診群の総死亡率のほうが高いという結果は皮肉というより他ありません。そして「科学的、倫理的、経済的見地からして、中年における多項目検診はもはや推奨されてはならないと信じる」という結論を出しました。


3) 近藤誠著「がん治療総決算」(文春文庫 2007年9月 単行本は文芸春秋社より2004年9月刊行)

社会においてがんに関する通念は以下のようなものでしょう。@がんは放っておくと、すぐに増大して死んでしまう Aがんは放っておくと転移する Bだから早期がんでもすぐに治療すべき C手術は徹底的に(全摘・拡大手術) D抗がん剤は副作用はあるが寿命を延ばす Eがんで死ぬのは苦しい というものですが、こういった見方は誤っていますと近藤氏は冒頭に宣言します。近藤誠著「患者よ がんと闘うな」の出版後すでに8年経過しても依然として拡大手術が行われいますし、無用な抗がん剤で苦しむ人は後を絶ちません。がんに対する誤解だけが問題ではなく、患者や家族のがんに対する恐怖・不安も治療法の選択に影響を与えています。「患者よ賢くなれ」というように、努めて冷静になるための精神力も重要になります。そのためにはがんに対する正しい理解に立って、選択するだけの力を患者側がつけなければなりません。本書の構成は10章からなるが、大きくは第1部 がん細胞の性質 第2部 がんの治療法(手術、抗がん剤、放射線、その他の療法)、3部 がん患者の心得と治療法の選択からなる。

第1部  がんの性質

がんの細胞生物学的の簡単な説明である。まず最初に「がんは恐ろしい速度で大きくなり、あっという間に人の命を奪う」という迷信を打破するために、がん細胞の成長速度(増殖速度、倍化速度)に関する経験値を明らかにすることが目的である。大腸菌などの細菌の増殖速度は速いもので15分程度である。ではがん細胞が2倍に増える時間はどの程度かということを検討しよう。そこでがん細胞の大きさとして、肉眼的にみる直径測定法が使われる。現代ではがんはすぐに切られてしなうためデーターは少ないが、昔のレントゲン写真による肺がん観察結果のデータが少しある。1977年の論文によると、がんの直径倍増時間は平均して、頭頸部がんの肺転移では6か月、大腸がんの肺転移では9か月、腎臓がんの肺転移では6か月、乳がんの肺転移では7か月、子宮がんの肺転移では8か月であった。日本の論文1981年の乳がん肺転移患者44人のデータでは、直径倍増時間は平均値9か月の正規分布を示し、上下値をカットすると3か月から4年で分布している。胃がんについて1978年の論文に直径倍増時間を求めたデータがあります。事例は少ないものの直径倍増期間は4.5年〜6.6年となり最長で25年でした。中には初期がんが消えてしまう場合もあります。なんとがん細胞の倍化時間の長いことだろう。がん細胞の組織培養ができないので正確な倍化時間は求められないが、そこで簡単ながん細胞増殖時間を計算してみよう。本書では理解できなかったので自分なりに計算した。がん細胞の増大機構を直線モデル、平面モデル、球形モデルと区別して考えると、直線モデルはあり得ないとして、臓器内がん細胞は球形モデル、上皮性がんは平面モデルで考えると近いかもしれない。球形モデルの体積をV、直径をDとすると、V=πDの3乗 増殖後はV'=πD'の3乗 体積が2倍となるとV'/V=(D'/D)の3乗 =2 その時の直径の比はD'/D=2の1/3乗=1.25となる。平面モデルでは面積S=Dの2乗 面積が2倍となる辺の比はD'/D=√2=1.41、直線モデルでは長さの比は2である。径が2倍となるには何回(n回)増殖する必要があるかというと、球モデルではD'/D=(1.25)のn乗=2より、n=ln2/ln1.25≒3回となり、平面モデルではn=ln2/ln1.41≒2回、直線モデルではn=1回である。以降はがん細胞は塊は球形モデルで話を進める。細胞のがん化が1個の細胞の遺伝子変化から始まると仮定し、そしてがん細胞1個を通常細胞の大きさと同じ10μとして、初期がんとして認識できるがん細胞の塊の大きさを5mmとすると、直径比は5000/10=500=(1.25)のn乗よりn=ln500/ln1.25≒28回分裂しなければならない。論文のデーターより直径が2倍になる時間が上に書いたように判明したとして、細胞分裂で2倍化すると体積も2倍化するので、球形モデルではV'/V=2となるには3回分裂しなければならない。直径倍化時間がデーターより6〜9か月ならば、細胞倍化時間(体積倍化時間)は(6〜9)/3=2〜3ヶ月で、初期がんとして認識できる5mm程度となるには28回分裂する必要があるので、28×(2〜3)ヶ月=56〜84ヶ月すなわち4年〜7年の期間が必要となる。転移がんの増殖速度も通常のがん細胞と同じなら、病巣がんの全摘後2〜3年で転移がんが見つかる場合あるということは、病巣がんの全摘手術の3〜4年前に転移は始まっていたとみるべきである。早期病巣がんを放置すると転移するというのは誤解に過ぎない。病巣がんが早期に発見できるときにはすでに転移がんは増殖しているのである。小さくて発見できないだけのことである。この見解に対する反論として、がん病巣の初期は増殖度が遅く、がんが大きくなるにつれて増殖速度は速くなるとか、転移がんの増殖速度は異常に早いという見解があるが、ご都合主義で根拠のある話ではない。むしろ固形がんが進行すれば物質供給が律速となり増殖速度は遅くなると考えるのが妥当である。モノー増殖曲線は(細菌の場合であるが)S字型で対数増殖期をへて増殖は停止する。

がんがどのようにして人を死に導くのでしょうか。人の生命維持に関係の深い部位の初期病巣固形がんとしては、脳腫瘍、肺がん、肝臓がん、胆がんなどがありますが、乳がんは生命維持に関係なく、転移がんで死亡します。初発病巣を原因として死亡する場合は苦痛は生じない場合が多いが、肺がんや大腸がんは苦痛が生じやすい。転移がんの場合は苦痛があることが多いとされている。転移がんは初発病巣を治療してから2〜3年のうちに出現するケースが多い。5年生存すれば転移はなかったとみなされます。肺転移がんの直径倍化速度は6〜9ヶ月です。手術から2年たって直径1cmの転移がんが見つかった場合、初発病巣手術時には転移がんは0.6mmであったはずですが、これでは発見することは不可能です。ですが細胞数にすれば、ln(600/10)/ln1.25≒18の分裂回数となり、2の18乗すなわち約26万個の細胞数と計算される。初期病巣の手術時にはすでに26万個の転移がん細胞数がある計算である。がん細胞の性質から、正常細胞ががん化したときの遺伝子変異がおおよその余後(転移を含めて 運命)を決めていると考えなければならない。転移能力は環境で決まるのではなく細胞のがん化時に持つべきものは持っているとみられる。そして変異遺伝子は一つではなくがん化には複数の遺伝子が絡んでおり、転移能力もその一つである。がん細胞の定義は死なないこと(不死)、周囲組織へ侵入すること(浸潤)、転移するという3点である。正常細胞ではこれらの働き(遺伝子発現)が抑制されており、がん化とはその抑制が取れることと考えられる。がん細胞の増殖速度が正常細胞に比べて大きいということではない。むしろ正常細胞の部位によっては新陳代謝による増殖のほうがはるかに速い。消化管の粘膜細胞(上皮細胞)は1−2週間で入れ替わります。白血球はもっと活発に分裂します。しかし正常細胞は死ぬように運命つけられています。そこでがん細胞の定義を「増殖して人を殺す細胞塊」と定義すると、良性腫瘍やいぼ、ポリープなどはがんではありません。腫瘍があっても大きくならないもの、縮小するもの、共存できるものは、がんというよりは「がんもどき」(仮称)もしくは老化現象といってもいいのではないかということを近藤誠氏は主張します。近藤氏のいう「がんもどき」は、残念ながらその細胞学的特徴づけははっきりしないので、医師から猛反対を受けている。ほとんどの医師はこれに不同意かこれを攻撃します。ウイルス(子宮頸がんの原因とみられるパピローマウイルスなど)や細菌(特にピロリ菌が引き起こすMALTリンパ腫)などが引き起こすがんはむしろ炎症性病変、感染症というべきです。これらの病変を切除手術したり、放射線治療したり、抗がん剤治療をする必要はない。治療によって命を落とす人が多いのは痛恨の極みであるという。今日がん治療は一般患者のがんに対する恐怖や不安があることで医者が絶対支配権を持って進められています。だから医者の思い込みや無知がまかり通るのです。医者を誤謬なき専門家と思い込む必要はありません。誤謬なき官僚制神話と同じです。自分の頭でがんに関する知識を身につける必要があります。医者が定義するものががん細胞となっている。医者は余命いくらとかいって患者や家族を脅かし手術に持ち込んで営業するのである。

第2部  がんの治療法
1) 手術

手術には「合併症」や「後遺症」がつきものです。その最たるものは死亡です。術後30日以内の死亡は「術死」または「直死」と呼んでいます。全国の病院のアンケート調査によると、術死率は食道がん2,2%、胃がん0.5%-1.7% 、結腸癌1.3%、肝臓がん1.5%、食道がん3.4%、すい臓がん5.8%、肺がん10.7% などで、米国では術死率はさらに高い。国立がんセンター病院での胃がん切除手術の年齢別死亡率は、50-69歳では0.8%であるが。50-69歳では0.8%となっている。これが術後3か月までに死亡率にすると、50-69歳では2.5%、80歳以上では8%となる。食道がんの手術は胸と腹を開けるため体力が必要で1年以内の死亡率は30-50% である。がん手術による合併症、後遺症の発生率は国立がんセンターの報告によると、50-69歳では30%、80歳以上では35%である。また腹腔内感染症の発生率は50-69歳では11%、50-69歳では7.1%である。メチシリチン耐性黄色ブドウ球菌MRSAの感染は日本と韓国がダントツに分離率が高い。病院の70-80%にMRSAが検出されている。合併症や後遺症が出るのは臓器切除手術だけではなく、臓器周辺のリンパ節切除によって、感染症から敗血症、リンパ浮腫、部位によって神経を切ることによって排尿障害や性機能障害、下痢などが現れる。切除部位による合併症や後遺症をまとめると、喉頭全摘によって発声不能、誤飲などが起こる。肺手術によって呼吸困難、食道全摘によって肺機能低下、食物通過障害、胃切除によってダンピング現象といわれる腹痛。動悸、食事制限による激ヤセ、食物通過障害、大腸切除によって人工肛門となるため生活の質が大きく落ちる、性機能障害・排尿障害、肝臓部分切除によって肝機能低下、膀胱全摘によって人工膀胱による生活の質低下、子宮全摘によって更年期障害、排尿排便障害、前立腺全摘によって尿漏れ、性機能障害、乳房全摘によってリンパ浮腫、身体不全、すい臓全摘によって術死率40%、糖尿病が起きます。がんを原因とする症状が出た場合がん部位を取ることで身体的精神的負担が軽減されることがあり意味のある手術と言えます。日本のお家芸といわれるリンパ郭清は転移の予防のためといわれますが、胃がんについて胃の切除手術後のリンパ郭清の有無によって、臓器転移の予防には関係ないことが証明されました。また内視鏡下手術は経験の浅い医師によると、出血や誤切除などの事故が増えます。

2) 抗がん剤治療

抗がん剤治療(化学療法)を受けるかどうかは、@薬の副作用、A効果の程度、B年齢を考慮して選択しなければならない。そこで@の抗がん剤の副作用、毒性について考察しよう。吐き気や脱毛・口内炎・下痢・鬱状態・胃潰瘍など回復可能なものを「副作用」と呼び、白血球減少・心不全・腎不全・臭覚喪失・神経麻痺・聴力低下・肺障害など回復不能か困難なものを「毒性」と呼ぼう。毒性は正常細胞が抗がん剤で破壊されることから起きます。抗がん剤による毒性死の確率は、臨床試験によると小児急性リンパ性白血病で3%、非ホジキンリンパ腫で1%、非小細胞肺がんで1.6%、卵巣がんで2-3%、乳がんで0.4%ですが、体力・高年齢によってはさらに死亡率は高くなります。「高用量化学療法」では造血細胞が破壊されますのであらかじめ保存しておいた本人の造血幹細胞を入れます。抗がん剤は毒性の強い特殊な薬です。アドリアマイシン累積投与量と心不全発生率は比例します。またBCNU累積投与量と肺毒性発生率は直線的な関係にあり100%発生するといえます。副作用を防止するためにステロイドが多用されます。副作用を抑える薬は毒性を抑えるものではありません。体調が改善されたといえ抗がん剤の毒性が蓄積されてゆくことは阻止できません。Aの効果をみると、化学療法で治るがんがあります。急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、睾丸腫瘍、子宮繊毛がん、小児がんです。小児の急性リンパ性白血病は5年生存率は80%以上です。成人の白血病はまだ成績はよくありません。反対に言えばほかの代表的な固形がんに抗がん剤は効かないし、延命効果もありません。体を痛めつけるだけです。抗がん剤治療は普通「多剤併用療法」が使われます。たとえば非ホジキンリンパ腫には4剤からなるCHOP療法があり、「高用量化学療法」との比較試験が行われましたが、結果はまちまちで治療による死亡率が問題になります。化学療法の奏効率で効果を4段階で評価します。がん細胞が消えたとされる「完全反応」でも臨床上のことで、完全にがん細胞がなくなったわけではなく再増殖してくる場合がある。がんが縮小したという段階でも、がん細胞数は膨大に残存しており、転移防止とか延命効果があることにはなりません。比較的化学療法が効果があるとされる唯一のがんである乳がんでも、生存率という点からみると放置グループと抗がん剤投与グループに違いはないのです。がんが縮小したとしても生存率は変わりません。抗がん剤のがん抑制効果を抗がん剤の毒性が打ち消しているという皮肉な見方も成り立ちます。化学療法に効果が少ない固形がんには、脳しゅよう、頭頸部がん、甲状腺がん、食道がん、大腸がん、胃がん、肝がん、胆道がん、膵がん、腎がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮体がん、前立腺がんなどがあります。固形がんに抗がん剤が効きにくい理由の一つには、血液から抗がん剤が運ばれるのですががん細胞の小血管がすくないことです。むしろ正常細胞が抗がん剤にさらされ、増殖速度の早い正常細胞への毒性・副作用が甚大になるという本質的な問題が残ります。

3) 放射線治療

日本の放射線治療は、進行期のがんや転移がんが主たる対象であった。外科医が取れるがんはとってしまい、あとh放射線に任せるという手術が主で放射線は従という関係でした。近年放射線治療は初期がんにも使われるようになりましたが、放射線医師及び放射線物理士が不足しています。経験不足から過照射といった事故も発生していますが、臓器を残すというメリットは大きいと認識されるようになりました。昔はコバルト?線照射装置が用いられましたが、現在は「直線加速器リニアック」(X線)が使われています。体の外からあてるので1回の線量は2グレイ、総線量は50-60グレイが限度です。高エネルギーの電磁波をあてると、正常細胞もがん細胞も傷つきますが、修復能力は正常細胞のほうが高いので生き残ることが放射線治療の原理です。抗がん剤治療は血液の運搬によりますので副作用は全身に及びますが、放射線治療は照射した焦点にしか生じないのが特徴です。放射線治療で一番の注意点は照射総線量の限度を守ることです放射線治療の副作用にはあてる部位によって、脳梗塞、脱毛、口内乾燥感、肺炎など肺障害、白内症、骨壊死、潰瘍や穿孔、臓器の炎症などです。これらの50グレイ照射の副作用率(5年以内)は5%です。50グレイを越すと高い頻度で副作用が起きます。総線量管理が重要になります。抗がん剤と放射線治療は併用すると副作用が大きくなります。放射線も抗がん剤と同じく発癌物質です。小児白血病の化学療法だけの発がん率は1%ですが、放射線を併用すると発がん率は13%でした。放射線治療の対象となる初発がん治療では、術後照射がよく行われます。臓器転移防止と生存率向上が目的ですが、多くは期待でないのが実情です。化学放射線療法では、放射線治療の効果を高めるため抗がん剤が同時に使われます。頭頸がん、非小細胞肺がん、食道がん、子宮頸がんで化学放射線療法がおこなわれています。最新の放射線照射装置や療法については、三橋紀夫著 「ガンをどう考えるかー放射線治療医からの提言」(新潮新書 2009年)にくわしい。

4) 種々の治療法

手術・化学治療・放射線治療以外のがん治療の概略を以下に箇条書きでみてゆこう。
@内視鏡的粘膜切除術: 食道・胃・大腸のポリープや初期がんを切除する方法で負担の少ない方法として注目されています。臓器をそっくり残せる利点がありますが、出血・穿孔などの危険性があります。胃壁の手術では2%ほどに穿孔があく事故があります。熟練した医師を見極めることが重要です。
Aラジオ波焼灼療法: 患部に刺した電極の先から発信させる熱凝固法で肝臓がんでよく使用されます。開腹手術をしないという利点がありますが、アルコール変性法より合併症の危険性が高い欠点があります。肺がんにも用いられています。超音波やCTで病変部を見ながら針を刺し通電します。実験段階のようです。
B凍結療法: 液体窒素、アルゴンガスなどを用いて、患部を凍結死滅させます。皮膚がんの治療で実績があります。前立腺がん、膀胱がん、肺がんに応用が試みられています。 C超音波療法: 超音波を1点に集中させがん患部の熱凝固を行う方法で前手法に似ています。体の深部にある前立腺がん、乳がん、腎がんなどに試されています。
D血管内治療: カテーテルを送り込んでがん細胞に至る血管に栓をして、栄養などを遮断しがん細胞を死滅させる方法です。これを「動脈塞栓術」といい、さらに抗がん剤を動脈内にいれる方法は「動脈注入化学療法」といわれます。がん病巣部の縮小効果はありますが、完治は難しく延命効果も不明です。
Eホルモン療法: 乳がんと前立腺がんに対する療法です。乳がんでは一番端的な卵巣摘出で女性ホルモンの分泌を阻止します。卵巣への放射線照射も同じことです。前立腺がんのホルモン療法とは睾丸摘出です。反対のホルモンを投与する方法h副作用が大きく、がん発生率が高くなるという危険性があります。
F分子標的薬: 普通の抗がん剤が無差別攻撃だとすれば、がん細胞にだけ攻撃する分子標的薬の開発が試みられています。慢性骨髄性白血病に対してイマチニア(商品名グリベック)は夢の薬といわれ大成功しました。標的とするタンパク質が特異性が高いために劇的な効果を生みました。乳がんに対するハーセプチン、肺がんに対するイレッサは副作用や毒性が強く効果はそれほどでもありません。死亡者が続出して社会問題になりました。
Gステント療法: 食道や胆道にステントという広げる器具を入れます。がん症状を緩和する対症療法ですが患者はずいぶん楽になります。いわば緩和療法です。
H疼痛緩和法: がん細胞増殖による神経圧迫の痛みを取る療法です。アセトアミノフェンのような非麻薬系鎮痛剤、モルヒネのような麻薬系鎮痛剤、神経ブロックや放射線治療も疼痛緩和法です。
I在宅医療: 入院日数の制限のため、手術が終わればすぐに病院を追い出されます。訪問看護ステーションも整備され、終末期を在宅で迎えることが今後の主流となることでしょう。
J緩和ケア病棟: 治療はせず痛みだけを緩和するいわゆるホスピスです。在宅医療とホスピスのどちらが終末を迎える場所としてふさわしいかの選択となります。
K免疫療法: リンパ球の活性化と称する免疫療法は、丸山ワクチンをはじめ多くの療法がありますが、そもそも人間の免疫系をパスしてきたがん細胞を攻撃できる系を作れるとも思えません。治療できたという実証があるわけでもないので、高価な治療費を取る割に効果は不明です。人間の弱みにつけこんだ詐欺行為といってもいいでしょう。
L食事療法: 環境因子としてがん予防はよく言われます。タバコや塩分などは控えるべきです。ただがんを食事で治療できるとは思えません。

第3部  がん患者の心得と治療法の選択

医者からがんを宣告されたら、まずできるだけ早くパニック状態から冷静さを取り戻すことです。最初から「余命」を言う医者がいたら、それは虚偽か酷いことをいうと考えましょう。そしてがんの成長速度が遅いことを思い浮かべましょう。がんはすでに数年から10年前に誕生したことを考えれば冷静になれます。入院してから医者の言うことを聞いてはいけません。入院する間に医者の説明を詳しく聞きましょう。入院してからだと医者の思い通りに手術へもっていかれます。抵抗することが難しくなります。合併症や予後の話を聞いたら、セカンドっピニオンを求めましょう。できたらセカンドっピニオン先はその医者の出身校の病院は避けましょう。同じことを言う可能性が高いからです。彼らは人的に情報としてつながっています。電話で連絡をされればダメ押しをされるようなものです。患者の囲い込みをするからです。地方では難しいでしょうが東京ではほかの大学系列の病院を求めることは容易です。検査入院も避けましょう。がんに持ち込まれる場合が多いからです。医者の言うことはメモを取りましょう。これに対して外科医が手術を勧めないといい、腫瘍内科が抗がん剤療法を勧めないなら、その医者は信用できます。そして放射線科の意見も聞きましょう。「学会認定専門医」とか「名医リスト」や手術件数、手術成績とかはあまり信用しないことです。数値には嘘や落とし穴が多いからです。医者の選択の次は治療法の選択です。医者と治療法は分かちがた繋がっていますので、どちらが先ということはありません。つぎに手術が選択肢に入っている代表的ながんについて部位別の治療法を考えましょう。
@脳転移: 肺がんや大腸がんでは脳に転移する。転移病巣が一つだけの手術がよく行われてきました。しかし他への転移があったりして手術の効果は期待できません。これには放射線治療が適用可能で手術する意味がほとんどなくなりました。
A喉頭がん: 声門がんの発生率が高いのですが、進行段階第1期と第2期のには放射線が有効です。喉頭全摘手術では声を失います。3期と4期のがんに対して化学放射線併用療法と喉頭全摘手術の比較試験が行われました。化学放射線療法では喉頭を残すため、その部位での再発率は高くなりますが、生存期間という点ではどちらの方法も差はありません。
B下咽頭がん: 喉頭がんより転移率が高いため、治癒率は低い。2期から4期の患者を対象に、喉頭がんと同様に喉頭と咽喉全摘手術と化学放射線併用療法が比較されました。両者の生存率は同じだったので、化学放射線療法が一番に選べるべき療法となりました。
C舌がん: 舌がんの手術は広範囲に舌の半分を切除し、リンパ節郭清が行われます。舌の再建術を施しても、飲み込みや会話能力は低下し機能障害は著しい。舌がんには小線源療法で治療できます。生活の質確保から放射線療法は優れています。なお手術と放射線療法の比較試験はデーターがありません。
D食道がん: 初期の食道がんでは内視鏡的粘膜切除手術を行います。しかし食道全摘手術の死亡率や合併症の高さ、生活の質の低下は著しい。米国で化学放射線治療の有効性が実証されています。それでも化学放射線治療の副作用や合併症は5-10%は覚悟しなければなりません。それでも手術よりはベターな選択です。
E非小細胞肺がん: できれば手術して切除するのが日本のやり方ですが、欧米では進行期のがんについては手術をしません。他の臓器への転移の確率が高く手術の意義がないからです。直径3p以下のがんでしたら定位放射線療法が可能です。進行期のがんは手術よりも放射線療法が妥当です。
F肺転移: 肺転移はほかの臓器転移がないなら、胸腔鏡下手術が可能ですが、圧倒的多数の患者は肺転移の再発があります。1個取っても肺転移はとりきれません。手術は意味がありません。肺を切り刻まれるだけです。そこで定位放射線治療が選択肢になります。
G胃がん: 胃がんに対しては、初期がんには内視鏡的粘膜切除術、胃の2/3切除や全摘が行われます。胃がんに対しては放射線の効果は期待できないため、手術以外に方法はありません。あるとすれば無治療放置だけです。手術不能だった胃がんの99%は転移しています。放射線で病変を縮小させてから切除手術を医師が提案したら断りましょう。
H肝がん: 肝がんは手術できる場合は手術されてきましたが、肝硬変を伴うものは再発してきます。そこでラジオ波焼灼法や放射線療法も行われるようになりました。
I肝転移: 胃がんや乳がんからの肝転移はほとんどが多発病巣です。ただ大腸がんからの転移は単発転移があります。手術で切除すれば30%程度は治っています。
J膀胱がん: 膀胱全摘手術が行われてきました。しかし生活の質低下は著しいので、欧州では化学放射線療法がおこなわれています。米国の大学病院で進行期の膀胱がんに対して、化学放射線療法が有効な結果でこれで十分だといっています。膀胱全摘手術一辺倒が否定されたことになります。
K前立腺がん:  前立腺全摘手術が行われてきましたが、生活の質低下は著しく、かつ患者の30-40 %は再発しています。放射線療法が試験されていますがまだ実験段階です。もう一つの選択は無治療・様子見です。
L子宮頸がん: 日本では1期と2期のがんには子宮全摘手術と骨盤放射線照射、3期と4期のがんには放射線治療とされてきました。術後の生活の質低下ははなはだしい。子宮広汎全摘手術と放射線療法の比較試験では両群の生存期間は同じでした。したがって1−4期まですべて放射線で治療すべきだと筆者は言います。

がん治療は極めて危険な行為であるため医療事故も多発しています。医者が「早く手術をしなければ死ぬ」とか「いうことを聞かなければ出て行け」と脅迫してきます。ガンから身を守る前に、医者から身を守ることを考えなければなりません。いま静かに「がんとの共生」という概念が社会的な広がりを見せています。治療を放棄することではなく、治る可能性が高いなら治療を受けるのが妥当です。しかし高齢者や手術で体力をなくした患者にさらに追い打ちのような過酷な治療を施す医者は避けなければなりません。彼らの生活や名誉や権威のために、自分の命を犠牲にされるのは御免こうむりたいものです。ガンとの共生概念は人生の最後において悲惨な目に逢うことがないように、無茶な治療に突っ走らないように患者や家族が冷静さを取り戻すためのブレーキ装置です。成人のがんのほとんどは加齢とともに発生頻度が高まります。がんの原因は老化です。ガンで老衰死することが理想的な死に方かもしれません。「ピンコロ」は空想です。衰弱で死を悟るのが自然です。ガンであることがわかっても、そっとしておいてできることならがんで死ぬという方針もありうるのです。「がんと闘う」ということは自然に反します。それは医療ムラの利益の源泉であっても、人間らしい死に方ではありません。高齢になったらがん検診や人間ドックは避けましょう。「検診・人間ドックは寿命を延ばす」というデータはありません。検診は大量の半病人を生産するという社会現象(心理)や経済的行為(病院のドル箱)に過ぎません。免疫療法にすがる姿は新興宗教です。「人は死すべき存在」ならいつかの段階で死を運命として受け入れることが必要です。無治療・様子見も立派な選択肢です。


4) 近藤誠著「がん放置療法のすすめ」(文春新書 2012年4月)

本書のあとがきによると、近藤誠氏は2004年以来筆を折っていたらしい。がん患者のその後を見極めてから2012年4月本書を刊行したそうである。1996年発行の近藤誠著「患者よ がんと闘うな」が真実であることを確信したという。そして2014年に著者が慶応大学を定年退職する予定で、大学病院を去るにあたってそれまでの診療記録をまとめておく必要を感じたという。定年後診療活動をしないつもりなので、患者のめんどうをみていられないので、患者の自立を願って本書をまとめたという。がんの恐怖や不安という感情に対抗できるのは、知性や理性以外にないからです。西欧人なら宗教があるのですが、日本では下手なことを言うと新興宗教と間違われるので宗教についてはノーコメントにした。患者一人ひとりが選び取った治療法(乳房温存療法)が外科世界を打ち破った経験は大きい。著者は「乳房温存療法」と「がん放置療法」が普及するかどうかを比べています。筆者が慶応大学病院にいた時の150人以上の患者さんの放置療法の実績を紹介するのが本書の目的です。がんは積極的に治療することが常に正しいとは限らないのです。抗がん剤による患者の苦しみが筆舌に尽くしがたいという疑問が筆者の出発点になりました。がん治療法の基本である手術、化学療法、放射線療法の論文を読み直して、最も患者さんの苦しみの少ない無理のない最善の治療法を考えぬいた結果が本書の「がん放置療法」です。医者不要論ではありませんが、がんで食っている医者の数は減らさないと無意味な治療が続けられています。医者ムラがいつの間にか巨大なモンスターになって、患者の苦しみに目が届かなくなっている。原子力ムラと同じ構図が再現されています。人間の視線を失ったブルドーザーに化しているのです。
「がんをほっておいたら、どんどん増大し進行して死に至る。早期がんもほっておくと進行がんから転移して死に至る」という社会通念ははたして妥当なのでしょうか。これまでがんは発見され次第治療されてきましたが、がんに関する知識が普及するにつれて、「がんの治療を受けたくない」という人も増えてきています。著者が大学病院で診察の結果治療を受ける必要がないと思われる患者の経過を診て、がんによる痛みなどの症状が出て、生活の質の低下がみられる場合には治療してきた様々なケーススタディから著者は本書を刊行する気になったようです。そして近藤誠著「がん治療総決算」で述べられているように、「がん発見時において転移がないもどきがんは放置しておいて転移は見られない」という確信を得たという。前立腺がんの一部では泌尿器科でも「監視療法」という方法が標準療法になりつつある。近藤氏の診療方針は「がんが発見された時点では、早期がんでも転移がんでも治療を開始しない。症状が出てきて治療開始を検討する」というものである。本書が対象とするがんはいわゆる「固形がん」である。白血病など血液リンパ系のがんは抗がん剤で効果があるので対象外であり、また固形がんでも小児がん、子宮絨毛がん、睾丸腫瘍も抗がん剤治療が効果があるので対象外です。固形がんでは初発の肝臓がんは無症状で命に危険が生じるので対象外です。本書の主張は抗がん剤や分子標的薬が固形がんに効かないことを前提にしています。
がんイコール死というイメージで語られると、認知イコール廃人というような恐怖心に襲われます。ガンも認知症も人間の細胞の老化現象で遅い早いの個人差があるだけだと認識すれば冷静になれます。がん告知によって奪われた心の余裕を取り戻すことが必要です。そしてセカンドオピニオンを求めて、よりましな療法を考えるべきです。ガンが老化現象であるからして進行は比較的緩やかなのです。ただ本物のがんはいずれは死を招きます。しかし自然の摂理にしたがって粛々と人生を完結する準備をしましょう。緩和の医学は確立しています。手術や抗がん剤でがんと闘う場合の不利益を考えましょう。本物のがんは無症状でもほぼすべてに転移があるため、治療しても苦しむだけです。無神経な医者に人格と生活を蹂躙されることは避けましょう。「がんと闘う」という言葉から脱却すべきです。「がんを放置する」は患者だけで実行できる合理的な療法かもしれません。(だが医者はそれを許しません。自分たちの商売が成り立たないからです。) そこでがん患者150人のケーススタディからがん放置療法をみてゆこう。

1) 前立腺がん

中高年の男性に「前立腺特異抗原(PSA)」を測定すると、高値の出る人がいて、精密検査を行うとがん組織がかなりの頻度で発見されるという。これが「PSA発見前立腺がん」です。PSA検診体制は医療機関の経営や医者の経済的利益のヒット商品なのです。つまり金を持った団塊世代の男性を誘い込むために作られた「偽がん」なのです。その理由を解き明かすのが本章の目的です。近藤医師のところに来た患者の放置例のケーススタディをしましょう。
[ケース1]: 2004年 53歳 PSA値4.3→12.4→7 7年間経過観察
職場健診でPSA値が4.3で微妙に高いといわれ、泌尿器科で針生検を受けるとがんだといわれた。直腸診(前立腺にしこりがあるかどうか肛門から指を入れて調べる)ではっきりしなかった。核磁気画像診断MRIではがん病巣は発見できなかった。医者はステージ2aとして手術を勧めた。患者は慌ててセコンドオピニオンをもとめて慶応大学の近藤医師を訪れたという。近藤医師はこの段階はステージ1cとみて放置観察を勧めた。本物のがん化良性のもどきかは細胞の形では判断できない。「PSA発見前立腺がん」の9割以上は「もどき」だという。前立腺がんの最も進んだ段階とは臓器転移(主に骨転移)がある場合でこれは本物のがんです。第2の段階は臓器転移はないがMRIで前立腺に腫瘤が認めらる場合、これをステージ2aという。第3の軽い段階は生検でしか発見できないがんで95%は「もどき」である。これをステージ1aという。本ケースはこれにあたる。何年観察してもPSA値が低値(本ケースでは10以下)では99.9%以上「もどき」である。「心配ない、がんを忘れなさい」と近藤医師はアドバイスした。
[ケース2]: 1999年 61歳 PSA値8.5→70  12年間経過観察 
市の健診でPSA値8.5で針生検をうけたががんはなかった。翌年PSA値10となり、グリーソンスコア‐が9(慶応大学での見積もりはスコア‐7であり中程度の悪性度と判断された)といわれ手術を勧められた。まずホルモン療法をやるとPSA値は2.2に下がったが、気分がよくないのでやめて、近藤医師のもとに来た。それ以来12年間放置したが(現在73歳)、自覚症状もなく普通に生活している。PSA値は毎年測定しているが直線的に上昇しており現在は70くらいである。病理検査には誤診が多いので、臓器切除手術といわれたら別の病院で再検査を行う慎重さが必要ですという。「監視療法」は、PSA値が20以下で針生検でしかわからないものをステージ1cとし、グリーソンスコア‐が6以下を基準とする。PSA値が20(医師によっては30)以上になると治療を始める。これに対して近藤医師の「放置療法」はグリーソンスコア‐が最高値の10でも対象とし、PSA値は参考としない(100でも200でも)。したがって本ケースは監視療法ではとっくに治療されています。PSA値で治療開始を判断する明確な根拠はありません。放置療法で経過観察を打ち切る基準は、がんに由来する症状の出現です。初診時に転移のない人は初発巣の増大もありません。骨転移がある場合治療開始を迫られます。
[ケース3]: 2001年 60歳 PSA値10→160 10年間経過観察
職場健診でPSA値10で異常といわれ、針生検でがんと診断された。泌尿器科ですぐ手術といわれたという。慶応大学の近藤医師を訪れ、当分は様子見という話になった。その後PSA値は3年で倍化し今では160くらいである。一番高い値のケースである。多少上下しながらPSA値が上昇するのは「もどき」の可能性が高い。本物のがんであれば直線的に上昇する。前立腺がんの症状が出てQOLが落ちてから治療を始める方針なら、「PSA発見前立腺がん」の90%以上は、一生治療を受けずに寿命を全う(ほかの病気で死ぬ)することができます。骨に転移がある本物の前立腺がんの治療法は、鎮痛剤、放射線治療、ホルモン療法から選ぶ。抗がん剤治療はやってはいけない。前立腺肥大による排尿困難程度は圧倒的多数は良性です。間違っても医者に行かないことです。直腸診やMRI精密検査でもはっきりしない場合は悪性度は低いのでほっておいても症状はありません。病巣が大きくなることによる尿道閉塞の局所症状には、手術か放射線療法となる。放射線でも手術でも生存期間は同じですので、放射線療法にほうが合併症が少なくてベターであるという。ホルモン療法で男性ホルモンを抑制すると、局所症状を緩和することができるが、LH-RHアナログ剤は高価で副作用が大きいので、近藤医師は勧められないという。それに対して睾丸除去術の効果は顕著で症状はすぐに緩和されPSA値も落ちます。前立腺がんは50歳以上の男性の約半数に発見できる「潜在がん」、「ラテントがん」といわれ、前立腺がんで死ぬ男性は1%に過ぎない。2011年10月米国の予防医学作業部会は、PSA検査が死亡率を下げたという証拠は見いだせないとして「PSA検査は勧められない」という勧告案をまとめた。日本では反省もなく、医療ムラの検査推進体制は健在です。原発推進ムラと同じ構造です。

2) 子宮頸がん

[ケース1]: 2005年 31歳 上皮内がん 高度異形成(良性) 細胞診で3b 
1年ほどは2か月に一度細胞診を受けていたが、上皮内がんで腺がんと宣告された。円錐切除手術を勧められたので、慶応大学の近藤医師を尋ねた。欧米では慢性炎症とみており、上皮内がんはがんではない。おできみたいなものと近藤医師は診断し放置して6年目となった。半年に1回受診し経過観察だけである。上皮内がんは放っておけば消えてしまうのが原則です。1963年アメリカの研究で67人を経過観察したところ、ゼロ期からT期に進行したもの4名、浸潤した可能性があるが不明なもの5名で、後のものは17名が自然消滅したか、41名は上皮内にとどまっていた。子宮頚部の上皮内がんとはほとんどがウイルスなどによる慢性炎症と考えられる。したがって性活動の盛んな30-40代に多く、60代以降は発症頻度は低い。高度異形成(良性)は上皮内にとどまって扁平である限りがんではなく、腫瘤を作って初めてがんといわれる。不要な治療はするべきではなく、妊娠出産を望むなら「円錐切除」も「放射線治療」も避けるべきです。「円錐切除」から「広汎子宮全摘」へ進む医者が多いので危険です。
[ケース2]: 2008年 40歳 異形成で8か月経過観察後子宮頸がんと診断され手術を勧められた。ガン研では子宮摘出か円錐切除術を推奨
近藤医師も腺がんと診断し放射線治療を勧めたが、患者の希望で2年間様子見となった。2011年にはがん段階は1bU期に近づいた。本人の希望で治療はしない。近藤医師は、1b段階でも治療が必要な場合があり、他臓器転移がなくとも出血と腎不全で死亡する可能があるという。1b〜2期の日本の治療スタンダードは広汎子宮全摘術ですが、世界的スタンダードは放射線(単独)治療です。外から骨盤に照射すると同時に、子宮内部に線源w入れる治療法で、2か月近くかかるが、外来通院でできる。広汎子宮全摘術では子宮・卵巣・卵管・膣・靭帯・リンパ節など広く切除するもので合併症は甚大です。リンパ浮腫、腸閉塞、排尿困難・性交不能などです。1997年のイタリアでの比較試験では、1b〜2期の治療法として広範囲子宮全摘手術と放射線治療の生存期間や再発率は同じで、合併症は放射線治療のほうが少ないという結果でした。

3) 乳がん

[ケース1]: 1990年 46歳 マンモグラフィーで左乳房乳腺に微小石灰化発見
生検で病理検査の結果「がんの芽」があるといわれ、乳房全摘術を勧められる。全摘手術も乳房温存手術も拒否して来診。「非浸潤性乳管がん」で3cmの範囲で腫瘍内石灰化を認めたが、「がんもどき」と近藤医師は判断した。半年に1回受診して様子見になった。そして何も起こらないので年に1回の受診も廃止して20年となる。しこりや腫瘤がなく、マンモグラフィーでしか見つからなかったがんは「もどき」(良性)です。2009年11月米国予防医学作業部会は「マンモグラフィーによる乳がん検診は40台の女性には勧められない」と勧告しました。マンモグラフィーで「非浸潤がん」と診断された人に、近藤医師は「がんを忘れて生活しなさい」と助言します。そして「2度とマンモグラフィーを受けてはいけない」ともいいます。石灰化は老化現象で死ぬまで残るからです。
[ケース2]: 1994年 40歳 超音波で5mmのしこりを発見 6年間様子見
2000年慶応大学で受診 がんは4cmに成長しリンパ節に転移していたので乳房温存療法の治療開始。2009年に骨、肺、肝臓への転移が発見され、放射線治療を受けた。現在なお健在しておられる。同じ患者で初発巣と転移巣の両方を放置観察したケースがあり、両者のがんの成長速度は同じであることが示されています。本患者のケースでは、骨転移がんの倍化に9か月を要しています。逆算すると転移したのは1985年(24年前)になります。5mmの初発がん巣が発見された1994年の9年前にすでに転移していたことになる。初発がん巣がごく小さい時点(発見不能)でも転移は起きていた計算になります。この計算方法は近藤誠著「がん治療総決算」にも書いてあります。普通の転移肺がんの直径倍化時間は5か月以上で、最頻値は8か月にありました。乳がん初発巣の成長速度の統計(232人、1981年)によると、直径倍化時間は3か月から1年に最頻値があり、1割以上は大きくなりませんでした。

4) 肺がん

[ケース1]: 2006年 CTで初発の肺がん発見  勧められた肺切除、胸腔鏡手術を拒否 
血管外科の病院では胸腔鏡による手術を勧められたが、手術を拒否した。前立腺がんの定期診察で慶応病院に通っているので、近藤医師に受診した。前立腺がんの転移ではなく初発性がんといわれ、半年に1回の割合でPSA測定と胸部CT撮影を行う。2009年の胸部CT画像は3年前と変わらなかった。 すりガラス状陰影の肺がんは、CT検査でのみ発見される特殊な腺がんです。胸部レントゲン撮影では直径10ミリ以上のサイズにがんが成長しないと映らない。CTでしか映らないすりガラス状陰影は肺胞の壁に沿って成長するいわば普通の細胞で転移がん化することはないという。
[ケース2]: 2008年 64歳 気管支鏡検査で「浸潤性腺がん」と宣告され、直径3cmで4期で手術不能、抗がん剤か放射線しかないといわれた。
近藤医師は1か月に1回通院して様子見とした。2回放射線を照射した。2009年肋骨に転移しを発見した。そこで10回計20グレイの放射線をあてた。放射線は肋骨には効いたが、肺がんには効かなかった。3年たって生存確率10%はクリアーしたが、2011年多臓器転移で死亡された。本件は本物のがんの典型です。3期・4期の肺がんの抗がん剤治療の生存曲線は、1年で30%、2年で10%、3年では数%です。しかしこの生存曲線(毒性曲線)は抗がん剤の副作用の恐ろしさを表現しているもので、肺がんで放置しておいても通常1年以内に死ぬことはありません。抗がん剤を使わなかったなら多くの患者は3年から5年は生きられるはずだと近藤医師は主張する。

5) 胃がん

[ケース1]: 2003年 53歳 レントゲン撮影と胃カメラで3cmの胃がんを発見、2c段階で胃の全摘手術を勧められた。近藤医師は様子見、1年に1回内視鏡検査をしている。
数年後がん細胞クレーターは消えたしまったが、最初から8年たってまたがん細胞クレーターが出てきた。本件は隆起型でなくへこんだタイプです。「腺がん」で「未分化がん」でした。高分化腺ガンはたちがよく、未分化がんは「スキルス胃がん」のようにたちが悪いといわれるが、本件はスキルス胃がんに進行するのではなく、何年も進行しない(消える場合もある)がんの例です。腹膜転移は多臓器転移と同義で治らないのが常識です。早期胃がんは「もどき」の場合が多い。ガンが胃粘膜上皮にとどまるときは「もどき」です。良性の「異形成」と診断される。日本の医師はそれをガンだといって切りまくるのである。
[ケース2]: 1996年 31歳 吐血して内視鏡検査をすると2cで未分化型の(スキルスに進展する)胃がんだと宣告され、早急の胃全摘手術を勧められた。
近藤医師は、未分化型でも「もどき」の可能性がある、本物のがんなら転移を伴うスキルスガンであり治療不可能、本物のがんでもすぐには死なないが、手術を受けると急死する可能性があるという。近藤医師はまず様子見を主張。本件は本物のがんと判明したのは、1998年に内視鏡検査で進行性胃がんと診断されたからである。2年間は普通の日常生活ができたが、99年よりスキルス胃がんの症状が出て、出血、幽門閉塞、周囲のリンパ節、腹膜に転移した。2000年緩和療法で安らかに息を引き取られた。本物のがんでも無治療で5年生存されたことになる。
[ケース3]: 1999年 62歳 健診で直径5cmの大彎部の胃がんを発見。粘膜下層にとどまる2cの早期がんと診断された。直ちに手術をすれば助かると手術を勧められた。
2cの未分化がんでも大彎部の胃がんは、手術しても必ず再発して2,3年以内に死亡するというたちの悪いものです。手術は勧められないので様子見となった。2001年粘膜下層から筋層へ浸潤し、2002年腹膜まで浸潤したが発見後3年間普通通りに元気に仕事ができた。2006年には腫瘍は直径9cmに増大し腹膜への転移もあると診断された。すなわちスキルス胃ガンに進行したことになる。それでも日常生活を妨げる症状は見られなかった。発見後9年目の2008年になって便秘となり大腸への転移が疑われ、末期緩和療法に移った。翌年(10年目)に亡くなられた。手術をしていたら余命は1−2年だったに違いない。スキルス胃がんの手術統計では5年生存確率はゼロです。
[ケース4]: 2007年 65歳 胃の幽門の直径18mmの「中分化型管状腺がん」と診断され、筋層に達するステージ2の進行性胃がんに相当した。胃の2/3切除手術を勧められた。
患者さんは手術を拒否し近藤医師を訪ねた。3か月に1回の割で受診されたが、2008年には胃がんが13mmまで縮小し、明確な隆起がなくなっていたという。発見後4年たったが患者さんはすこぶる元気でいかなる症状もない。胃の幽門部を切除すると、食物がすぐに腸へ落下する「ダンピング症状」で苦しむ患者さんが多い。近藤医師は、そもそも胃がんで胃を全摘したり、大きく切除するのは原則として間違いであると考える。さらに問題なのは日本の外科手術はリンパ節郭清(D2手術)をスタンダードとしていることです。外国ではリンパ節郭清は生存率向上には寄与しないという結果を公表しています。

6) 腎がん

[ケース1]: 2003年 60歳 血尿が出て直径6cmの腎がんが発見された。手術を勧められたが拒否。
近藤医師は腎がんは進行が遅く、直径3cmまでは手術をしなくてもいいという。様子見をすることになり、3か月後にCT撮影をすると65mmに拡大していた。2005年(2年後)には70mmに、2007年(4年後)では変化はなかった。2008年(5年後)には80mmに拡大したので背部痛みを懸念した近藤医師は、片方の腎を全摘してもQOLは低下しなし、腫瘍に転移がなかったので手術を勧めた。そこで慶応大学で左腎臓全摘手術を受けたが、手術直後に肺にも転移が見つかった。手術後に転移が見つかるのがガンの宿命です。原発がん発生と同時に転移するガンは転移しているのです。腎がんを放置した例は外国の文献にみられる。大きさが不変または縮小した例が26%もあった。腎がんは放置しても差し支えないと考える泌尿器科医が少なくない。8年後の2011年で無症状なので、無治療が一番いい選択と考えられる。たとえ再発・転移してもがん放置というのは有力な選択肢です。問題は検査をすべきかどうかです。レントゲンによる発がんリスクも考えなければなりません。

7) 膀胱がん

[ケース1]: 2002年 72歳 血尿で複数個の膀胱がん(最大40mm)を発見、「浸潤性膀胱がん」と診断された。泌尿器科医は浸潤性を疑って膀胱全摘術を推奨します。
膀胱は一つしかない臓器で全摘すると生活の質QOLの低下は深刻です(尿袋をつけて生活する)。本物のがんであれば膀胱を切除しても転移のために命を落とします。多臓器へ転移がなければ膀胱初発がんの対処は可能です。本件は患者の希望で無治療を方針としました。発見後8年が経過して、膀胱がんへの放射線治療を始めたのは2010年のことです。膀胱初発がんからの出血がみられたからです。腫瘍の大きさは43mmでそれほど進行していなかったのですが、本人の希望で放射線治療を開始した。6週間放射線をあてて腫瘍は消失し、再発の兆候はない。欧米では膀胱がんの治療は放射線が主流です。放射線と抗がん剤(放射線感度を上げるため)を併用するケースもあります。とかく日本では膀胱全摘術が主流で、放射線治療は5%に過ぎません。


5) 近藤誠著「医者に殺されない47の心得」 医療と薬を遠ざけて、元気に長生きする方法(アスコム 2012年12月)

本書は近藤氏が慶応病院を定年で引退する日をまじかにして、再び診療行為をしない決意によって、我々に贈る医師人生の総決算と教訓である。著者は2005年から一度筆を折っているが、2012年より執筆活動を再開した。今後は医療組織を離れて(大学病院から自由になって)、言いたいことを自由に言える立場に身を置くことができるという決意の表れであろう。医療活動で飯を食っている以上、どこかで医療組織と折り合いをつけなければならない。そういった桎梏を離れると見えてくることがたくさんあろう。そんな喜びが伝わってくる書物である。本書は「第60回菊池寛賞」を受賞した。その受賞の弁がそのまま「まえがき」になっている。近藤医師はこれまで「がんは切らずに治る」、「抗がん剤は効かない」、「健診は百害あって一利なし」、「がんは原則として放置する選択肢がある」というものであって、医療業界が嫌がることばかりである。だから近藤氏は医療業界から激しいパッシングやニグレクトを受けてきたらしい。本来患者さんが選択する権利がある治療法を専門家という医師機構が奪ってしまった。パターナリズムという押しつけがましい脅迫や誘導によって、サプライヤーである医療側に有利なようにインフォームドコンセント・情報公開・リスクコミュニケーション・セコンドオピニオンが歪められてきた。聞こえのいい言葉は形式化し形骸化している。医療側の責任逃れに使用されているのが現状である。著者らが開拓した「乳房温存療法」が乳がんの標準治療法になったのは、患者さんが切りたがる外科医に反乱し勝ち取ったからである。「がん放置療法」が次第に広まりつつあることは前著の 近藤誠著「がん放置療法のすすめ」(文春新書 2012年4月)に記した。これも切ろうとする医師に抗して、治療しないという患者さんの革命的な決意と選択と実績のおかげである。その背景には、「人はいつかは死ぬべき運命ある」死の遅い早いは人生の価値には関係しないということを身をもって悟りつつあるからである。欲望ばかりが爆発するバブル型都市文明から価値観の転換が起こりつつある。(第2次安部政権は夢よ再びというバブル経済政策を打ち出したが、その安っぽいたくらみは早晩破たんすることは目に見えている) 昔の武士道は死に淡々と臨んだ。要は限られた人生をいかに有意義に過ごすかに尽きるのである。ガンだと脅かされて手術をし、大量に抗がん剤を投与されて、親からもらった体を痛めつけて死を早める愚から卒業しようという患者さんの革命が起きようとしている。男の平均寿命が78歳とすれば、60歳以上になってがんを宣告されても無治療という選択肢を取るほうが利口である。そのほうが治療するよりはるかにQOLの高い生活を暮せるし、統計的にも治療するかしないかの生存曲線に変わりがないことをこれまでの著者の著作集が語っている。

「はじめに」には著者が自由な立場から医療界を斬りつける言葉が満載されている。たとえば箇条書きにすると
@医者が大好きな日本人: 「飛んで火にいる夏の虫」よろしく、医者に自ら近づいて命を落としたり縮めたりする人が多すぎます。先進国の2倍以上病院に通っているのが日本人。健診で病気に分類され医者のカモにされ、効きもしないインフルエンザワクチンを受けに走る日本人の愚かさ。
A風邪薬も抗がん剤も効かない: 風邪、高血圧、高コレステロール、不整脈、がんなど病気の9割は医者にかかったといって治るわけでもなく、自分の体が治しているのです。無症状で異変もないのに、医者が「定義」する病気で苦しむことはないはずです。
B高血圧のガイドライン操作で薬の売り上げが6倍になった: 高血圧患者が4千万人、高コレステロール患者が3千万人、糖尿病予備軍が2300万人と医者は病人を作り出します。これで彼らの生活は安泰です。基準値を少し下げてまた大量の患者を創出します。薬の害で寿命が縮まることは隠したままで。
C日本人のがんの9割は、治療するほど寿命を縮める: がんの9割は放置しておく方が長生きできます。また抗がん剤は猛毒です。抗がん剤の効果というのは一時的にがんの大きさを抑えるだけのことで、延命に役立つというわけではありません。それよりも抗がん剤の猛毒で命を縮める効果が絶大です。
D医者はやくざや強盗よりもたちが悪い: 医者は科学者で信頼のおける専門家であるというのは神話です。治療で死亡したりしても病気のせいにします。これ裁判に持ち込んで反証するのが困難で、証人に立つ医者も同業者で利益に反する発言はしません。患者を殺して金をとるのは強盗殺人よりたちが悪いといえます。
E僕も薬害で足を引きずった: マラリアの治療で抗生物質を打たれて「筋拘縮症」になりかけた経験があります。医者になったいきさつは、「なんとかして医療からプラス面だけを引き出し、危険を避ける方法を見つけたい」という一心からです。
F近藤理論の原点は「切り取られるおっぱいを救え」: 欧米では「乳房温存療法」がスタンダードだった時代に、日本では乳房を全摘するだけでなく胸の筋肉まで切除する無残な術法がまかり通っていました。現在日本の女性は6割までが乳房温存療法を選択しています。これが近藤医師の出発点で、「がんもどき」仮説や「放置療法」は学界に論争を引き起こし、いまなお医療界の利益を損なうものとして無視され続けています。
G患者よ、病気と無駄に闘うな: 最近「予防医学」が盛んですが、これも患者を呼ぼうとする医療界の戦略です。ガンで苦しんで死ななければならないのは、ガンのせいではなくガンの治療のせいです。医者は特別に優秀で人格者と思わせるのは神話です。学会のガイドラインに頼って文献を読まない医者が多すぎます。まず医者は疑ってかからなければなりません。自分で調べることが重要です。
本書の構成は第1章「どんな時に病院へゆくべきか」、第2章「患者よ、病気と闘うな、第3章「検診、治療の真赤なウソ」、第4章「100歳まで元気に生きる食の心得」、第5章「100歳まで元気に生きる暮らしの心得」、第6章「死が恐ろしくなくなる老い方」に分かれます。そして合計47の心得が書かれています。章立ては参考程度にして、心得1から心得47までの要点をまとめておきましょう。

心得1 「とりあえず病院へは医者のおいしいお客様」

日本の公的医療保険制度は、WHOから「総合世界一」とされ、OECDの評価も先進国のトップレベルという折り紙付きである。また医療費のGDP比はOECD加盟国中34位という安さです。欧米の医者が一日に診察する患者の数は普通10−20人程度ですが、日本では40−50人と信じられないほどの忙しさです。診察3分で薬を出す速さも超人的です。本当に医者は患者を診ているのだろうか疑わしくなります。総合医は事故被害者のトリアージと同じ感覚で、患者の仕分けをしているに過ぎないと思われます。ほとんど考えていないのではないだろうか。国民は健診、ワクチンを疑わずに律儀に受け入れ、がんと診断されると患者は「手術、抗がん剤、放射線」という流れを素直に受け入れる。この従順な国民性は医者のおいしいお客様となっている。人口あたりの医者の数は、日本と欧米に差異はないが、医者不足が叫ばれているのは医者にかかる国民が多すぎるからで、医者にとってはドル箱となっている。

心得2 「老化現象ですよという医者は信用できる」

今の成人病(生活習慣病)健診で引っかかる病気はたいていは老化現象で、医者にかかって薬を飲んで治るものではないのです。この健診制度は実に医者にとってよくできたからくりで、何年か経つと基準値がたいした根拠もなく切り下げられて、また大量の病人を生み出す仕掛けになっている。多少の痛みや体が言うことを聞かないのは年のせいだととらえて、仲良く体をいたわって生きることが一番です。高血圧、高コレステロールや高血糖値などの指標を不用意に薬で下げてはいけません。老化した体が要求しているからです。すこし高めの血圧は体中の血液を送り出すためです。コレステロールは細胞を活性化するために必要です。長寿やがんの予防には少し小太りで活動的な方がいいことが証明されています。

心得3 「医者によく行く人ほど早死にする」

2012年アメリカの医師会雑誌に「満足の代償」という記事が話題になりました。医療に満足している階層(たいてい金持ち階級)は碌に医療を受けられない階層に比べて死亡率が26%も高かったのです。病院によく行く人ほど薬や治療で命を縮めやすいといえます。医者をお友達にしはていけないのです。臓器を切り取ってもがんは治りません。抗がん剤は苦しむだけです。医者の言うことをそのまま信じないで、自分の頭で合理的に考えることが必要です。

心得4 「血圧130で病気なんてありえない」

健診で取りざたされる基準値はまったくあてにならいものです。たとえば高血圧の基準値は1998年厚生省調査によると160/95以上で該当者1600万人でしたが、2000年に140/90以上にに引き下げられ該当者は3700万人となり、2008年にはさらに血圧130/80以上が治療目標となりました。高血圧の9割以上は原因不明です。血圧を下げることによって死亡率が下がるというデータの証明はありません。ましていくらの血圧が治療目標かというのは全く恣意的に決められているとしか言いようがありません。フィンランドの調査では高齢者の血圧が180以上の人の生存率が最も高く、140以下の最高血圧の人の生存率は落ちています。高齢者の高血圧には理由があります。体中に血液を送り出してボケ防止や体のふらつきを防ぐためです。では何のために血圧130が危険信号と設定されたのでしょうか。これには製薬業界の戦略が見え隠れしています。1998年の血圧降下剤の売り上げは2000億円だったのが、2008年には1兆円を超えました。基準値を操作して薬の売り上げが6倍になったのです。それが証拠に、基準値作成委員会の先生方全員が製薬業界から巨額の寄付金を受け取っています。原発の審議会の先生方が電力会社から巨額の寄付金を受け取っているのと同じ構造です。

心得5 「血糖値は薬で下げても無意味で、副作用がひどい」

日本の糖尿病の95%は2型糖尿病でインシュリン型ではありません。これを糖尿病といって脅かす医者の戦術に乗せられるいわれはないのです。百歩譲っても「高血糖値症」というべきです。高血圧と同じことでこれらは病気ではなく、数値に過ぎません。日本糖尿病学会のの診療基準によると、血糖値110mg/dl以上で糖負荷試験後140mg/dl以上から糖尿病予備軍と呼び、血糖値126mg/dl以上で糖負荷試験後200mg/dl以上から糖尿病と呼ぶ。糖尿病予備軍は2000万人いるともいわれます。糖尿病が怖いのは血管がもろくなって心筋梗塞、失明、腎症、神経障害という重い合併症を引き起こしやすいからです。イギリスで行われた比較実験で、薬で血糖値を110以下に下げた実験区と食事療法だけの実験区の10年間の結果は、死亡や合併症発生に有意差なく、薬治療区では低血糖値による発作が3倍になったということです。だるい、いらつく、ふらつく、認知症がでたら薬害を疑って十分です。血糖値は有酸素運動で下げることができる。

心得6 「世界中で売れているコレステロール薬の効果は宝くじ以下」

コレステロール値が高いと動脈硬化を引き起こし、脳卒中や心臓病の要因となるといわれています。コレステロールを下げる薬であるスタンチンの効き目は大いに疑問です。治療必要例数NNTは100以上で(有効率1%以下)、カナダの教授はスタンチン類は女性には無効で男性では悪玉コレステロールを減少させたが死亡数の減少につながらなかったとして、ほとんどの人に効果がないばかりか健康を害する恐れがあると結論しました。抗がん剤の効果と同じで、がんを縮小させるか増大を抑制する効果だけを見て、死亡率やガンの完治を見ないやり方である。治せないばかりか副作用が甚大というしろものです。結局、高血圧、高コレステロール、糖尿病などの大部分は治療の必要がないか、病気と考えないほうがいいのです。数値だけを下げても、恐ろしい心筋梗塞や脳卒中の予防にはつながらないのです。人の体のメカニズムは医者が考えるほどに単純ではないのです。薬の売り上げは右上がりですが、心筋梗塞や脳卒中による死亡数は一定です。これを社会的には無用な投資といいます。対策が効果を生んでいないからです。

心得7 「ガンほど誤診の多い病気はない」

そもそも本当にガンだったのかという疑問は臓器を切り取られてからでは遅すぎる。ガンほど紛らわしく誤診の多い病気はないのです。細胞を取ってきて病理検査しても、細胞の顔つきからだけでは粘膜の中にとどまるか、浸潤や転移をして人を殺す本当のがんなのか判別することは難しいのです。2005年米国の医学誌はガンの初期診断の誤診率は12%になると発表しました。また同じ病変が日本ではガンといい、海外では良性腫瘍ということが多いのです。乳がんでは皮膚を破って浸潤してくるが転移のない「がんもどき」がある。菌やウイルスによる腫瘍はこれはがんと呼ぶより「慢性炎症」というべきです。がん検診の合間に出現するガンはたちの悪いものが多くこれを「中間期ガン」と呼びます。この間の健診でOKだったのに、突然ガンが出てくるケースです。

心得8 「早期発見は実はラッキーではない」

「早期発見早期治療でガンは治る時代に入った」といううたい文句で医学界はがん検診マーケットを拡大してきた。で検診体制の普及で、一番肝心なガンで亡くなる人は減ってきているのだろうか。この50年ガンで死ぬ人の数は全く減っていません。検診が何の役にも立っていないからです。最新鋭機器を使うほどガンの発見数は増えていますが、それは本当のガンではないのです。中高年の男性の半分以上は別の要因で亡くなった後、解剖すると「前立腺ガン」が見つかるといいます。それは潜在性ガンでほっておいても悪さをしません。検診で前立腺ガンを発見されると自覚症状もないまま手術されて、生活の質を落とし放射線治療で大腸に穴が穿くという事故のリスクもあります。欧米では乳がん、大腸がん、肺がんのくじ引き試験が多数行われ、「検診をしてもしなくてもその後の死亡率はおなじ」と実証された。1989年に胃がん検診を廃止した信州泰阜村では、胃がんによる死亡率が半分に低下したといいます。不必要な治療・手術の結果多くの人が命を奪われてきたからです。早期発見でガン患者にされ治療過程で命を縮めたわけです。「早期発見・早期治療」は医者が患者を創出する戦略なのです。

心得9 「ガンだったらしかたないと考えてはいけない」

海外では1期の喉頭がんは放射線治療を行うので喉頭をのこすことができますが、日本では使命感に燃えた外科医がどんどん喉頭を切り取り人を「おし」にしてしいます。2期の舌ガンでは8割も手術が行われ半分舌を失います。子宮頸がんも手術の必要はないのに、7割ほどは子宮からリンパまで大きく切り取ります。乳がんのハルステッド術法(拡大切除)は欧米では50年前に行われなくなったのも関わらず、日本では改革が遅れひどい手術が10年目まで行われてきました。患者は検体ではないはずなのに若い医師の練習用に不必要な手術が行われています。ガンは切り取って手術は成功したといいますが、その後の障害で死亡するリスクが非常に高いのです。本当にこの手術が必要なのか患者自身が声を上げなければなりません。

心得10 「健康な人は1回のCTでも発がんのリスクを高める」

日本のCT装置の台数は世界一で、世界の1/3以上が日本に存在します。イギリスの研究で「日本人のガン死亡の3.2%(約2万人)は医療被曝が原因」と指摘しました。中高年の30年間CT検査を1年に1回受け続けると、1.9%被ばくによる発がん死亡すると推定されます。福島原発事故で年間の被ばく線量は20ミリシーベルトを非難の目安としましたが、胸部CTを1回受けるだけでその半分の被ばく量になります。むやみにレントゲン撮影検診は受けないことです。特に検診車の場合は被ばく量が10倍になることもあります。

心得11 「医者の健康指導は心臓病を招く」

「きちんと定期健康診断を受け、病気や異常が見つかったらライフスタイルを改善し、検査値に異常があったら医者の治療をうける」という典型的な官僚言葉(自己矛盾のない論理誘導)に従ったら、かえって病気を招くことがフィンランドの研究からわかりました。中年の心臓病になりやすい因子を持つ1200人をくじ引きで半分づつ「医師介入群」、「放置群」に分け5年間経過を追跡した研究です。介入群の心臓疾患死は放置群の倍以上となり、事故を含めた総死亡数も医者の介入群で多いという結果でした。仕事熱心な医師がむやみに不必要な指導を行うことが心臓病を招来してしまったのです。熟慮しない下手な鉄砲式の医者の指導や診察には間違いが多いのです。アホな医者には近づかないことが必要です。

心得12 「一度に3種以上の薬を出す医者は信用するな」

薬の副作用というのは間違いで、すべて薬の作用は主作用です。つまり毒だということです。病気を治すと同時に、別の病気にさせ悪化させ死に至らしめる危険なものと理解すべきです。アメリカの「ドクターズルール425」という本には、できる限り薬をやめよ、4種類以上の薬を飲んでいると想像を超えた危険な状態になる、高齢者のほとんどは薬をやめると体調は良くなるといったことなどが書かれている。WHOは薬は270種類もあれば十分と言っているのに、日本では1万種類もの薬が認可されている。総医療費36兆円の約24%は薬が占めている。国民1人当たり先進国の2倍以上の薬を消費している。

心得13 「軽い風邪で抗生物質を出す医者を信用するな」

風邪を治す薬はないといわれているが、対処療法の風邪薬には必ず不必要な抗生物質が入っている。ウイルスに抗生物質は無能であることはわかっているのに抗生物質を処方する医者には近づかないことです。風邪にかかるとウイルスを免疫でやつけるために体温は上がります。それを解熱剤で体温を下げたらウイルスは無くならない。風邪をひいたら暖かくしてゆっくり休むのが一番です。欧州では風邪をひいたら1週間家で安静にといって薬は出さない。40度の熱が出ても脳症になることはない。物理的に冷水で体を冷やすことを勧めます。むしろ風邪薬のせいでSJS症候群などの皮膚炎、タミフル、リレンザによる脳症や死亡事故のほうが怖いのです。

心得14 「抗がん剤で寿命が延びるという医者を信用するな」

医者の余命判断が全くあてにならない理由は、がんの成長速度が人によって全く違うことと、がん病巣が人の命を奪うまでには意外と時間がかかること、そしてがんは大きくなるにつれて成長がスピードダウンすることによります。転移が見つかっても自覚症状も機能不全もないならずっと長生きできます。肝臓・肺・脳といった重要臓器がガンによる圧迫を受けて機能不全の症候が出るとある程度余命は分かります。「抗がん剤を使わないなら余命何ヶ月というような医者からはすぐ逃げ出さなければなりません。抗がん剤であっという間に殺されることが予想されるからです。

心得15 「ガンの9割は治療するほど命を縮める。放置が一番」

「治療しないとガンはどんどん進行して死ぬ」という通説は誤っています。これまでガンは見つけ次第治療されてきたので、早期がんや進行がんを治療しない場合の経過観察がないだけのことです。本当のがんであれば発見時にすでに転移しています。抗がん剤の効果はガンの大きさを一時的に抑えるだけのことで、ガンを治療しているわけではありません。この抗がん剤の効果は無意味であり延命効果は認められないうえに、患者の体を衰弱させ、生活の質を悪化させます。放置しても痛くないガンは、胃ガン、食道ガン、肝臓ガン、子宮ガンなど少なくありません。ガンを恐れて闘っても無意味です。治療しないという選択肢もあり、普通通り生活し3年から9年生きられた人もいます。

心得16 「医者から薬を貰うを習慣づけてはいけない」

日本に医療はフリーアクセスといって健康保険があればどの医療機関へも行けます。欧米は家庭医に最初見てもらって必要があれば専門医を紹介するというシステムです。薬はなるべく出さない方針です。これに対して日本ではどんどん薬を出します。まるで薬屋と共謀しているかのようです。また薬を貰わないと納得しない患者さんも問題です。日本ではやたら抗生物質を出すものですから、耐性菌MRSA感染も日本が世界最高で医療機関院内感染の70−80%を占めています。「医療が発達しているから日本人は長寿世界一」という我田引水式のウソがまかり通っていますが、戦後の栄養・衛生状態の改善によって感染症が激減したことにより寿命が延びたのです。薬漬けから早く足を洗うことです。

心得17 「痛みは怖くない、モルヒネを正しく使えば安心」

ガン末期に出る痛みはがんの増殖によるもので、3段階(非麻薬系鎮痛剤、弱い麻薬系鎮痛剤、モルヒネ)の鎮痛剤でコントロールされます。モルヒネで中毒したり、死期を早めることはありません。価格も比較的安く1年間で50万円ほどです。骨転移が1か所なら放射線照射で痛みを軽くすることができます。

心得18 「ガンの痛みは完璧にコントロールできる」

末期がんの治療をしなければ、ホスピスで痛みのコントロールは完璧にできるし、死の間際まで穏やかに意識もはっきりしています。治療による苦しみやや意識障害も起こりません。昔老衰死という言葉がありましたが、その多くはがんによる自然死だった可能性があります。老人は病院で死ぬようになって、がんを発見され無理な理療を施されガン死とされたのです。腫瘍が「がんもどき」なら転移の心配はないし、本物のがんなら治療をしてもしなくても死亡率には差がなく、治療の延命効果もありません。ガンで自然に死ぬことができます。それほど恐怖しても何も始まりません。

心得19 「安らかに逝くとは自然に死ねるということ」

放置しても痛くないガンは、胃ガン、食道ガン、肝臓ガン、子宮ガンなど少なくありません。緩和ケアーで痛みはコントロールできます。家で点滴もしないで安らかに枯れ木の朽ちるように死ぬのが一番理想です。ところが「在宅医療」に活路を求める病院は患者を点滴のチューブをつけたまま家に帰そうとしています。無理矢理植物状態でも生かそうとする「延命治療」はお断りしなければなりません。食べ物が入らなくなれば枯れるように餓死するのが自然です。点滴で栄養補給をすることは寿命を終えようとする人を苦しめるだけです。

心得20 「がん検診はやればやるほど死者を増やす」

がん検診はまさにやぶへびで、「ガン患者」を増やすのみで、同時にガン死を増やしています。その理由は、欧米ではガンとみなされない病変の8−9割を日本の医者はガンというからです。そしてすべてを治療の対象として手術、抗がん剤の投与が行われ、患者が副作用・後遺症などで体力をなくして死亡すると「がん死」と呼ぶからです。また手術した病変が本当のガンであったとしても、本当のガンならすでに転移してはずで、これを救う医療技術はまだ存在しません。したがって手術は無意味であるばかりか患者の余命を短縮し、本来長生きするはずの「ガン自然死」を、急速に死亡する「ガン手術死」に変えています。最近はやりのCTスキャンに加えてPET(ポジトロンエミッショントモグラフィー)の放射線被ばく量は莫大で、1回の検査だけでも発がんリスクを大きく高めます。そしてがん検診が画像技術の進歩で精密になればなるほど、今後どう展開するかわからない小さな腫瘍を医者はガンと宣告して無意味な手術をするからです。

心得21 「乳がん検診の結果はすべて忘れなさい」

日本では10月を「乳がん月間」とよび「ピンクリボンキャンペーン」を派手に展開しています。しかしこの医療界、装置業界、行政を挙げた派手な大キャンペーンにかかわらず、乳がんはこの10年間激増しています。食生活や環境が激変したわけでもないのに、この増加ぶりはやはり医者が創出した「乳がん」です。その主役を演じているのがレントゲンマンモグラフィーという画像技術の進歩です。近藤医師は乳管内ガンが縮小・消失した例を多く見てきました。そしてこれはガンではなく「乳腺症」に過ぎないと結論しました。マンモグラフィーでしか発見できないがんは99%以上が「がんもどき」病変です。良性の病変なのに乳房を切り取られる危険を避けるには、自発的にマンモグラフィー検診から遠ざかることです。また子宮頸がんワクチンも無意味です。パピローマウイルスがガンを触発するのではなく、これは性行為感染症に過ぎません。スエーデンでは子宮ガン検診で発見されるゼロ期のがんは99%以上が良性の炎症であることを明らかにしました。がん遺伝子の発現を厳密に検査する技術が細胞診に加えられるなら、病変ががん細胞と断定できますが、画像処理技術の進歩は内容に踏み込まず大きさと透過度だけの判断です。もしCTスキャンで全身をくまなく撮影したら、健常人でも多くのしこりや小さな粒状痕はいくらでも発見できるはずです。何の症状もないなら、もうマンモのことは忘れなさい。

心得22 「胃を切り取る前に知っておきたいこと」

早期がんが見つかったら医者は胃の2/3切除を勧めたが、納得できないのでセカンドオピニオンを求め、放置しておいたら「がん」は消えていたという例があります。日本の胃がん手術法はリンパ節郭清をおこなう「D2胃切除」が主流ですが、欧州では「D2胃切除」は生存率の向上には寄与しないという結論を出しました。基本的に一つしかない臓器は温存すべきで、いたずらな拡大手術は生存率の向上にならないし、放置という選択肢もあるのです。

心得23 「1cm未満の動脈瘤の破裂の年間確率は0.05%以下」

脳卒中で亡くなる人は、ガン、心臓病、肺炎に次いで4位です。そこでMRIによる脳ドック検診を受ける人が増えてきています。未破裂の動脈瘤を発見して処置できたら脳卒中を防げるとみたのですが、欧米の医療機関が1998年に、1cm未満の動脈瘤の破裂の年間確率は0.05%以下で20年間の積算リスクは1%に過ぎないと発表しました。これでは危険な開頭手術を受ける意味はありません。手術のリスクのほうが恐ろしいのです。信州大学の結果では、310人の手術で死亡1人、ひどい障害のため自立生活不能が17人、神経障害があるが自立生活はできるが30人、後遺症なし262人(85%)でした。リスク比較では手術はしない方がよいという結果です。

心得24 「断食、野菜ジュース、免疫療法は医者の詐欺行為」

「がんを治す」といった怪しい療法が世の中にあふれています。医者までもこの詐欺に手を貸す発言をする人がいます。まるで奈良・平安時代の密教僧の加持祈祷に近い詐欺行為です。

心得25 「免疫力でガンは防げない」

欧米の医学界ではがんに対して免疫力を強化しても無意味で効果なしと結論しています。なぜならヒトの免疫システムではナチュラルキラーNK細胞はがん細胞を敵(非自己)とみなしていないからです。分子細胞学の進歩により、がんは最初から転移能力を持ち、ガンが大きくなってから転移するというのは間違いと判明しました。胃がんを手術しなかった人の5年生存率は50%、抗がん剤治療をした人、免疫療法をやった人の生存率は20%以下という結果があります。また免疫療法の治療費は保険がきかないため、数十万円から数百万円と高額です。

心得26 「よくある医療被害 ケーススタディ」

@胆管とすい臓の検査(ERCP)を受けて急性膵炎になった、A乳がんだといわれて乳房全摘手術を受けた。術後再検査でクラス2、繊維腫といわれ裁判になっている。乳房を返せ! B急性喉頭炎で鎮静剤坐薬を挿入されて、意識を失い植物状態に、裁判となっている。 C手術後MRSAに感染し、関節リュウマチが悪化下半身不随になった。

心得27 「体重、コレステロールを減らさない健康法」

食事療法に熱中するがん患者がいますが、これには全く根拠がないばかりか、体力が落ちて死期を早めます。激ヤセするとコレステロールが減り、脳出血、感染症、鬱症の原因となります。脂質であるコレステロールが減ると、正常細胞膜がもろくなり、がん細胞の増殖を招くことにもなります。2012年米国のNIAは23年間の研究からダイエットしてもしなくとも寿命には関係しないという結論を出しました。菜食主義ではなく、肉・魚でも何でも食べて小太りのほうが長生きするようです。

心得28 「100歳への体力つくりは毎日卵と牛乳から」

この心得28から33までは栄養学・食品学なので近藤医師の言っていることは果たして正しいのかどうか自信はない。そこで簡単に通り過ぎよう。サプリで栄養補給するより食品から栄養を取るちうのは常識です。卵と牛乳は栄養価が高いことは疑いがありませんが、それだけでいいかどうかは分かりません。名古屋のきんさん・ぎんさんのお子様方が90歳以上でもお肉が大好きというのは有名です。70歳過ぎて脂っこいものを食べると、コレステロールが増え元気になり寿命が延びるという仮説は近藤医師の自説です。

心得29 「ビールは一日1リッターなら百薬の長」

タバコは確かに止めた方がいいが、お酒は量がほどほどなら百薬の長だという。米国癌学会が「虚血性心疾患の危険度は、酒を飲まない人より酒を飲む人のほうが低い」と発表しています。お酒はストレスを散じ、血行を良くします。ほどほどが一番です。

心得30 「昆布やわかめを食べすぎるとガンになる」

ビタミン・ミネラルをサプリで補うのは邪道です。黄緑野菜のベーターカロチンが健康にいいというのは曲者です。フィンランドの栄養介入試験(2万9000人)でベーターカロチンを与える群とブラセボ群を比べると8年間に肺がんになる人の数はベーターカロチン群で18%増加し、総死亡率も8%増加したといいます。食物繊維摂取は大腸がん予防には結びつかないという研究結果もあります。米国がんセンターでは「野菜、果物、食物繊維が多く、極端に脂肪分の少ない食事は、女性の乳がん再発リスクを減らさない。生存期間も変わらない」という結果を発表しました。福島原発事故後国立がんセンターは「海藻に含まれるヨウ素は摂りすぎると甲状腺がんのリスクを上げる」といいます。乳頭がんリスクも上がるようです。

心得31 「コラーゲンやグルコサミンは効かない」

近年テレビのサプリや特保コマーシャルが盛んにいう「お肌ぷりぷりコラーゲン」は果たして効果があるのでしょうか。コラーゲンのような高分子物質は飲んでも胃腸で分解されて、コラーゲンそのものがお肌に届くわけがありません。コンドロイチンやヒアルロン酸など食べても飲んでも胃腸で分解されるので、そのまま血液によって運ばれるものではありません。

心得32 「高血圧に塩はだめはウソ、精製塩なら安心」

日本高血圧学会は2012年「高血圧の予防のため1日6グラム以下の食塩制限を推奨する」といいました。ところが米国では「塩分の少ない人は脳卒中や心筋梗塞になりやすい。世界の先進国中最長寿国の日本人の塩分摂取量が一番多い」と発表しました。「高血圧に塩はだめ」はウソだったのです。青木博士は「日本人の高血圧の98%以上は塩とは関係ない。腎臓やホルモン、血管の問題である。」と言っています。ナトリウムは細胞膜の情報伝達物質で、生命維持になくてはならないものです。また精製塩を嫌う人がいますが、これには全く根拠がない。白を嫌うという心理表現に過ぎない。黒又は有色類には栄養分が豊富という思い込みからきているのでしょうか。

心得33 「コーヒーはガン予防や長寿に効く」

国立がんセンターの研究で9万人を対象とし10年間追跡調査しコーヒーとがんの関係を調べました。そして1日に5杯以上コーヒーを飲む人は飲まない人に比べて肝臓がんのは勝率が25%に下がると発表しました。岐阜大学は女性の大腸がんとコーヒーの関係を調べ、毎日1杯以上コーヒーを飲む女性の大腸がん発症率は飲まない人の半分以下と発表しました。米国NIHはコーヒーは心臓病、脳卒中、糖尿病による死亡リスクを減少させるといいました。フィンランドの研究では中高年のコーヒーを飲むグループは認知症やアルツハイマー発症リスクを半分以下に下げるといいます。紅茶にはその効果はなかったといいます。

心得34 「早寝早起き健康法」

睡眠は頭の中の整理整頓の役目があります。体内時計によって一番レム睡眠が深い時期とは太陽が一番遠い時間帯です。丑三つ時にどっぷり眠ると翌朝すっきり起きられます。起きたら朝日を浴びましょう。体の隅々まで目覚めてきます。神経だけでなく、細胞の新陳代謝を促す成長ホルモンの分泌が多いのも24時前後だといわれます。お肌ぷるぷるやけがの回復、風邪の回復には睡眠が欠かせません。

心得35 「石鹸シャンプーを使わないほど髪や肌は健康を保つ」

神経質なほど清潔に気を使い、洗髪洗顔をすると肌が荒れてきます。食器洗いに手袋をはめてする女性が洗顔洗髪でお肌を痛めつけているのです。清潔無臭も度が過ぎると考え物です。

心得36 「大病院にとってあなたは患者ではなく被験者」

大病院は避けた方がいい理由として次の3つが挙げられます。一つは患者でごった返している大病院では、一人一人の患者の扱いがぞんざいとなり、診察3分の回転率重視の経営になっています。2つはガンとなるとインフォームドコンセントに熱心になります。患者を被験者にして抗がん剤の薬効試験に使いたいからです。製薬会社からお金が入ってきます。第3に大病院のメンツにかけて何か病気を発見しようとして徹底的に検査をするからです。8割が多くの項目の一つが異常値の病人にされます。そしてそれがガンならたくさんの治療メニューをオファーしてくるのです。医者を選ぶ心得は自分自身が勉強すること、患者個人をみないで治療を押し付けてくる医者を敬遠し、リスク面の質問を繰り返し、セカンドオピニオンを求め、検査データーは患者自身のものだから遠慮しないでもらうことです。決して医者にお任せしないことです。自分の命だからです。

心得37 「手当でストレスを癒す」

手当とは患部に手を当てる行為のことで、それにより痛みも苦しみもずいぶん和らぐます。北欧で認知症の緩和ケア療法「タクティールケア」とは触れるという行為が皮膚を通じたコミュニケーションとなって、認知症患者の暴力や攻撃性が弱まることを目的としています。ハグや手をつなぐことで家族や友人との距離が一挙に縮まります。

心得38 「しゃべって笑って食べて口を動かす人は元気になる」

口を動かしたり声を出すことはストレスを解消し、脳の活性化や五感・情動の刺激となります。また笑いは良薬です。免疫力を高めるという説もあり、胃腸を刺激したり、神経とホルモンバランスを高めるようです。歌や食べる行為もたいせつな働きです。

心得39 「よく歩く人ほどボケない」

使わない筋肉は退化します。鬱、ボケなど「廃用症候群」とならないように体を動かし続け、使い続けることです。体の筋肉は神経によって脳幹につながっています。脳幹を刺激し続けることがボケ防止となります。だから歩けなくなることは脳が働かなくなることと同意味です。寝込んではいけない、痛くても動かし続けることです。

心得40 「インフルエンザワクチンは打ってはいけない」

ウイルスは激しく遺伝子を変異させています。ヒトのような恒常性がないのが特徴です。ですからインフルエンザワクチンを作ることは本来不可能で無意味なのです。ワクチンの副作用のほうが怖いのです。WHOも厚労省も「インフルエンザワクチンで感染を抑える効果は期待できない」と表明しています。海外の研究者はタミフルの効果は疑わしいとか、抗ウイルス作用はほとんど認められないと発表しました。タミフルの副作用は、突然死、意識朦朧など深刻なもので社会問題となりました。インフルエンザを予防する唯一の方法は「流行時に人ごみに出ない、病院へゆかない」ことです。

心得41 「ほっときゃ治るをいつも心に」

南米やアメリカ、イスラエルで医者のストライキがあり、すると全体の死亡率が大きく低下(50%−18%)して、皮肉な結果になりました。行く必要もない病院にいって命を縮めているようです。命が惜しければ病院には近づくな。病気の80%は医者にかかる必要がない。10%はかかったほうがよかった、10%はかかったために悪化したという名言があります。

心得42 「ぽっくり逝く技術を身につける」

ピンピンコロリとかぽっくりさん信仰などという言葉があります。誰しも長患いはしたくないものです。ガン、心臓病、脳卒中など案外すぐ死ねるものでもない。厚生労働省がいう「健康寿命」とは自立して生活できる年齢のことで、男性が70歳、女性が74歳です。そして平均寿命は男性が80歳、女性が86歳です。健康寿命と平均寿命のギャップが問題なのです。介護なしで暮らせない期間が平均10年間もあります。元気に長生きするのイは、第1に救急以外では病院へゆかないこと、リビングウイルを書くこと、転倒骨折をしないことを心がける、ボケを防ぐことに尽きます。

心得43 「喜怒哀楽が強い人ほどボケない」

サミエル・ウルマンの言葉に「年をかさねただけで人は老いない。夢を失ったときはじめて老いる」といいます。常に何らかの意欲をもっていないと人はみるみるボケます。いくつになっても泣きなさい・怒りなさい。好奇心を持ち続けると脳が活性化されていつまでも若々しく過ごせます。

心得44 「100歳まで生きる人生設計をする」

2052年には日本の100歳以上の人口は70万人になると予想されています。定年後から100歳までの人生設計を考えておかないといけません。それには健康、時代に合ったスキルを持つ、自分の人的資産を次世代に還元する、会社時代のことは忘れることです。

心得45 「いきなり進行ガンが見つかったらどうするか」

高年齢でいきなり進行がんが見つかったら、治そうと思わないことです。切除手術はお断りしましょう。抗がん剤治療も受けないことが肝要です。しかしバイパス手術など生活するための最低限の治療は受けましょう。

心得46 「ろうそくが消えるような転移ガンの自然死」

いっさい治療しなかった患者さんの自然死は、衰弱死というか餓死というか消えゆくような死に方でした。末期においても穏やかな「自然死」の最期を迎えるか、がんと闘って苦しみの上「がん死」するかでは天と地の差があります。

心得47 「リビングウイルを書いてみよう」

そのためには意識がなくなった状態でも延命治療を拒否するリビングウイルを書いて置きましょう。


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