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大島堅一著 「原発のコスト」 

 岩波新書 (2011年12月)

原発コストの嘘を暴いて、脱原発シナリオを提言

本書でいう「原発コスト」とは狭い意味での「原発発電コスト」ではない。本書では@福島第1原発事故損害賠償費用、A原発発電コスト、B立地対策費などの原発推進行政費用、Cリサイクル費用、放射性廃棄物処理費用などを俎上に上げ総合的な原発コストを考察している。ほかと比べて安いといわれてきた原発の発電コストには、立地対策費や使用済み核燃料の処理処分費用、さらにMOX燃料などのリサイクル費用さらに事故対策費用などが含まれておらず、いわゆる「社会的コスト」、「インフラコスト」はすべて政府(国民の税金)に押し付ける身勝手な「総括原価方式」であった。電力会社は政府の原発政策に乗って電力の安定供給に務めて利益だけを受け取り、リスクや社会的コストは国民の税金に依存するというスタンスで原発事業が推進されてきた。東電が官僚以上に官僚的といわれる本質はこの仕組みにあった。福島第1原発事故の膨大な損害賠償を考えると、純粋に経済行為として原発が成り立たない事はもはや明確となった。原発事業は市場原理を超えた安全保障といった国策の上に立った政治的行為である。また原発を廃止すると発電コストが上がるという脅かしを電力筋がおこなうが、これも原発維持コストのほうがやめた場合のコスト上昇を遥かに上回ることを隠している。原発を止めた場合の方がメリットが大きいのである。

福島第一原子力発電所事故を受け、著者大島氏は2011年9月、枝野幸男経済産業大臣により、資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会基本問題委員会委員に任命され、会合で「原発を止めるとコストがかかるというが、利益の方が大きい。」と主張した。同年10月には内閣官房国家戦略室 エネルギー・環境会議コスト等検証委員会委員に就任。初会合で電力会社の有価証券報告書をもとに試算した発電単価が、政府試算の約2倍の11円から12円となることを発表した。大島堅一氏のプロフィールを紹介する。1967年福井県に生まれ、1997年一橋大学経済研究所博士課程終了、現在立命館大学国際関係学部教授である。専攻は環境経済学、環境エネルギー政策論である。主な著書には「再生可能エネルギーの政治経済学」(東洋経済新報社 2010年)、共著には (飯田哲也・古賀茂明)「原発がなくても電力は足りる!―検証!電力不足キャンペーン5つのウソ」(宝島社  2011年)、 「環境の政治経済学」(ミネルヴァ書房)などがある。

1) 日本が初めて経験した福島第1原発事故の影響

福島第1原発事故の経過については、政府がIAEA に提出した報告書によると、地震の津波の高さが15メートルに達し、すべてのデーゼル発電機が水没し全電源喪失に陥ったとされる。電源車の用意をしたが接続点が水没しており連結できず、消防車による注水はうまくゆかなった。原子炉の圧力が上がったのでベントを開けて放出した。このとき放射性物質が大量に出たものと考えあられる。そして冷却に失敗した原子炉では水素爆発がおき、燃料棒が破壊されて核燃料が溶け落ちるメルトダウンが発生した。チェルノブイリ事故を上回る大規模な水蒸気爆発という大惨事だけは免れた。福島第1原発の特徴を次の5つに整理できる。
@ 世界で始めて地震や津波によって起きた大事故である。2007年新潟県中越沖地震のときには刈羽原発の事故では電源の復旧がうまくいって幸いメルトダウンは起きなかった。
A 事故を起こした原子炉の数が複数に及んでいること。スリーマイルズ島原発事故やチェルノブイリ原発事故と違って、第1−第3号機の原子炉がメルトダウンし、4つの原子炉の使用済み燃料プールの冷却機能が失われた。
B 事故の収束に一定の非常に長い時間を要している。2001年12月になって9ヵ月後にようやく冷温停止宣言が出された。スリーマイルズ島原発事故では数日で収束し、チェルノブイリ原発事故では2週間で収束し7ヵ月後に原子炉全体が石棺で封じ込められた。
C 被害地域が広範であること。
D 汚染は不可逆的である事。避難地域では長期間にわたって戻ることは出来ない。12月になって避難地域の見直しが始まったばかりである。

福島第1原発事故の環境汚染は深刻である。2011年4月12日原子力委員会が発表した大気への放射性物質の放出量はヨウ素換算63京ベクレルで、チェルノブイリ事故では520京ベクレルであった。放射性物質による地表面汚染では、半径30Kmの警戒地域と計画的避難地域及び緊急時避難準備地域では140万ベクレル/m2でチェルノブイリ級の汚染であり、30万ベクレル/m2以下の高汚染地域は福島市、郡山市、白河市、栃木県北部である。濃度が高いホットスポットは飛び地のように、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県に及んでいる。国際原子力・放射線事象評価尺度INESによるとレベル7(チェルノブイリ級)と判定され、ちなみにJOC事故はレベル4、スリーマイルズ島事故はレベル5であった。また海洋への放射性高濃度汚染水の放出は2号機で4月2−6日に、3号機では5月10−11日に行われ周辺海域を汚染し、外国からの非難を招いた。5月23日の原子力安全保安院によると、海域への放出量はあわせて4720兆ベクレルと発表された。放射線による人体への確定的影響は出なかった模様だが、確率的影響はガン発症という形となるため数年後でなければわからない。

重大な問題は原発労働者の被爆である。被爆量の基準値は放射線従事者で5年間で100ミリシーベルトを超えず、年間50ミリシーベルトを超えないこととなっている。緊急時については年間100ミリシーベルトを超えないことであった。しかし政府は3月15日、原発収束作業のため特例として年間250ミリシーベルトとするように緩和した。東京電力によると、原発労働者の被爆状況は3月ー9月で250ミリシーベルトを超える人が6名、250−100ミリシーベルトの人が93名、100−50ミリシーベルトの人が306名、50ミリシーベルト以下の人が3300名であるという。そして住民の生活への影響は計り知れない。20Km以内の地域は警戒区域、30Km以内では計画的避難区域と緊急時避難準備地域に居住して強制避難させられた人々は、各々7万8000人、1万人、5.万8500人で合計約15万人が避難した。国際放射線防護委員会ICRPの定める居住地の1年間の被爆量の目安は1−20ミリシーベルトで、1ミリシーベルトに限りなく近い事を推奨している。居住民が原発労働者並の被爆量では帰宅することはできない。あわせて飲料水、食品の放射線基準値も根拠のある数値はないので、いたずらに不安が増している。汚染地表面の除染については2011年8月に「放射線物質汚染対処特措法」が成立した。しかしその費用は莫大で原子力損害賠償紛争審査会の中間指針では東電に請求できるかどうは不明である。そして除染放射線廃棄物の最終処分地が決まっていない。

2) 被害補償はどうなるか

原発事故による被害を総体として捉えるには、経済的被害と金銭で評価できない部分を補償する必要がある。故郷を負われた人々の辛苦は金で簡単には置き換えられないとしてもこれを償うことが事故の再発防止にもつながるのである。金銭で評価できる事故費用だけでも膨大である。これを次の4つで検討する。
@ 損害賠償費用: 住民の被害に直接係る費用である。人への被害、営業被害、就労被害、財産価値の損失・減少被害のことで、5兆8860億円と見られる。
A 事故収束・廃炉費用: 原子炉冷却、汚染防止、モニタリング、原子炉除染、労働者環境の改善、核燃料の取り出しなどである。2011年7月に原子炉の安定的冷却、12月に冷温停止の第2ステップが完了したが、廃炉までの工程は30年かかると言われ、原子炉110万キロワット1基あたり630億円と放射性廃棄物処理費で1号機から6号機の合計廃炉費用は1兆6839億円と見積もられているが、チェルノブイリ事故の廃炉費用が約19兆円とされるので、この算定は過小評価ではないだろうか。
B 原状回復費用: 原発周辺地域の除染や原状回復費用で算定はなされていない。
C 行政費用: 自治体が行なう防災対策と汚染対策、検査費用、汚染食品買取費用などであるが、2001年補正予算と2012年度予算概算では9340億円である。

原発事故の損害は「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」によって行なわれるが、原賠法によって「原子力損害賠償紛争審査会」が設置され、「損害賠償に関する指針」中間報告が2011年8月にまとめられた。政府および自治体の指示に関する被害として、避難指示、交通制限や就労不能による被害、農林水産物の出荷制限により被害が補償され、そのほかにも風評被害、間接被害(就労不能)、放射線被爆による損害が補償される。ところがこの中間指針には次のような点には言及されていない問題がある。@自主避難者の費用、A避難区域の線引きによる切り捨て地域、B生活再建費用などである。原賠法は、賠償責任の厳格化(無過失責任)、責任集中性(電力会社のみ)、賠償措置(無限責任)、事業者に対する国の援助の4つの原則にもとに構成されている。事故直後枝野官房長官は福島第1原発事故が「異常に巨大な天災異変」に当たらないとして東電は免責されないと繰り返し述べた。事故当時事実上の東電の国有化論が出されたが、財界にとってデメリットが大きすぎるという反論が出された。2011年12月27日枝野経産大臣は国有化論も選択肢の一つであると主張した。

2011年8月10日「原子力損害賠償支援機構法」が公布された。支援機構法の問題として、第1にその目的が損害賠償と原子炉の運転にある点である。原発からの脱却にあるのではなく原発の推進姿勢は変わらないのだ。第2の問題は原子力損害賠償は国の責任で行なうべきであると云う点だ。経済的には成り立たない原発事業という国策に協力した電力事業者というスタンスで、莫大な損害賠償は国の責任でという産業界の主張が通っている。政府が国債を支援機構に公布し、支援機構はこれを換金して東電に資金援助を行なう。これは貸付という形ではなく返済の義務もあいまいなまま、一般負担金を東電および電力会社が支援機構に納めるという形をとる。支援機構法は東電に対して「特別事業計画」を国に提出するという義務を負う。資金援助を受ける電力会社に負って経営合理化が国債交付の条件となっており、運営によっては事実上の国営化とも言えるし、保有資産の買取(送電網・株・不動産など)による賠償資金の調達は電力会社のあり方を根本的に変える可能性を持っている。東電は12月末電力料金の値上げを経産省と協議したが、枝野大臣は国有化も選択肢であると述べた。東電の債務超過回避策として支援機構が発足し、返済する義務を持たない援助という形になるため、この援助を東電は損益計算書の特別利益に計上し、賠償資金の支払いを特別損失として計上する。したがって帳簿上は負債とはならない。この支援機構法の「特別事業計画」への国民の関与が全くなく、結局国民負担(国債発行)で東電の経営責任が免除された。また東電は「原子力損害賠償紛争審査会」の指針を待って本格的な損害賠償を行なうこととなり、東電の損害賠償仮払いは遅延したまま放置されている。東電は損害賠償交渉の窓口業務も国に預けた形で消極的姿勢に徹している。

3) 原発発電コストー原発は安くない

2004年「総合エネルギー調査会電力事業コストなど検討小委員会」がまとめ「エネルギー白書」に掲載されている発電コスト(円/Kwh)は、太陽光発電49円、風力10−14円、水力8−13円、火力7−8円、原子力5−6円、地熱8−22円だという。この発電コスト試算根拠は不明なので、情報公開法で資料請求をしても殆どが真っ黒に塗りつぶされていたという。長谷川公一著 「脱原子力社会へー電力をグリーン化する」(岩波新書 2011年9月)に明らかにされているように、 出力調整が出来ない原発ではフル運転が宿命つけられ、火力や水力発電がその出力調整役を担っている現状では下の表のような電源構成と稼働率となっている。

2010 年日本の電力電源構成
(発電量9762億kWh)
電源構成構成割合%稼働率
水力8.720.7
原子力30.870
火力
 天然ガス
 石炭
 石油
59.3
 27.2
 23.8
 8.3
44.8
 48.5
 68.2
 20.1
再生可能1.4-
このような恣意的な条件での発電コストでは、コスト比較計算モデルの妥当性の検証は不可能であるので、2011年10月より国家戦略会議の下にコスト検証委員会が設置され、筆者らも参画してモデル計算の全面的なやり直しが行なわれた。発電コストに含まれるべき項目には「発電事業に直接要するコスト」つまり「私的企業コスト」と、「政策コスト」(技術開発コストや立地コスト)および「環境コスト」などを含まなければならない。高速増殖炉研究開発およびウラン再処理技術開発に膨大な国家投資がなされ、その成果無しには現在のMOX燃料を使う「プルサーマル」事業はありえない。私企業でいえば事業の中枢たる研究開発部門および公害対策環境部門が国営に依存しているのである。頭と尻を切り離してコストを計算しても製品の原価計算にはならない。これが原発の「総括原価方式」で経産省が認可している計算方式である。これでは原発で電力会社が儲かる仕組みであり、原発に傾かざるを得ないように誘導された原価計算である。国家戦略室では「発電事業に直接要するコスト」として9電力会社の1970−2010年までの41年間の実績に基づいた計算で、1Kwhあたり原発で8.53円、火力で9.87円、水力で7.1円(原発の調整役である揚水発電を除いた一般水力で3.8円)であった。原発が一番安いというこれまでの政府の宣伝は嘘である事が分かった。政策コストで最大の電源三法交付金(原発1基あたり廃炉までに1240億円の地方交付金)と技術開発費を考慮すると、原発は技術開発費に1.46円、立地対策コストに0.26円を加算する必要がある。火力や水力ではこの加算は微々たるものである。下表に実際の発電コスト試算結果を示す。なんてことは無い一番高いのが原発であった。
発電の実際コスト(1970−2010年平均)(円/Kwh)
電源発電の直接コスト政策コスト
(研究開発+立地対策)
合計
原子力8.531.7210.25
火力9.870.049.91
一般水力3.860.053.91

福島第1原発事故で発生する被害賠償コストが膨大である事は予想されることであるが、では原子力事故は発電コストとして考えるべきなのであろうか。ところが先に述べたように金銭評価できる部分はむしろ小さく、被害は金銭的に表せない部分が大きいのが、原子力被害の本質である。2011年11月に原子力委員会は福島原発事故を踏まえて事故リスクコストの評価が行なわれた。事故リスクコスト=損害賠償想定額×発生頻度÷総発電量であるが、損害想定額を約5兆円とし(そもそもこれは過小評価である)、発生頻度をIAEAの安全目標である1/10万炉年とした。これによれば発電コストのアップ分は0.006円/Kwhとなるとした。しかしこのリスク評価は、日本では40年で大事故が起きたのであり発生頻度は1/約500炉年とすべきであろう。すると発電コストは約1.2円アップする。このような高額の事故発生と発生頻度ではそもそも事業化する企業はないはずである。つぎに核燃料の使用後に発生する処理費用、いわゆるバックエンドコストを当然考えるのは当然であるが、現在技術的にも解決法は不明であり、バックエンドコストは全く考慮されていない。処理法には@直接処分(ワンスルー)とA核燃料サイクル処理とがある。核燃料サイクル処理とは使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、使用済みウランに混合して再利用するのである。したがって余計に再処理コストが発生する。そして再処理工程からは高レベル放射性廃棄物廃液と超ウラン廃棄物が発生する。日本の原子力行政は使用済み核燃料の全量再処理を国策として採用し推進するつもりである。総合エネルギー調査会は2004年より六ヵ所村での再処理工場の再処理コストのみを試算した。総額18兆円8000億円とされた。この試算は原発の放射性廃棄物すべての処理費用ではない。またMOX燃料の使用済み核燃料処理コストは含まれていないし、高速増殖炉サイクルコストも含まれていない。そしてウラン燃料製造工程で発生するウラン廃棄物の処理コストも含まれていない。それ以上に重要なことは高レベル放射性廃棄物も超ウラン廃棄物も処分地も決まっていないし具体的計画もない。そんな段階で見積もることは難しいはずだ。再処理費用にこれだけ膨大な費用がかかることから、欧米では核燃料リサイクルは放棄しワンスルー処理という方針に変更した。核燃料リサイクルに拘っているのは世界では日本のみである。プルトニウムを巡る国際的監視の中で日本がリサイクルに拘る理由が逆に疑惑を招いている。

4) 原子力複合体による原発政策

相次いで起った事故・トラブルや不正疑惑によって国民の信頼は薄らいだ事を受けて、2005年に原子力委員会が定める「原子力政策大綱」が改定されたのだが、あいかわらず「安全確保の仕組みは万全である」し、「十分な改善がなされた」と自画自賛が述べられているに過ぎない。そのような仕組みの中で福島第1原発の事故が起きたのである。2006年総合資源エネルギー調査会原子力部会は「原子力立国計画」を作成し、2007年の閣議決定「エネルギー基本計画」に盛り込まれて。基本計画には安全性の文字はなく、ただ推進一辺倒の内容であった。元原子力安全委員長の佐藤一雄氏のまとめた「原子力発電の多重防護の考え方」には次の七つの原則がある。@施設立地にあたっての防御、A建設・設計・運転にあたっての防御、B顕在化を防止する対策、C影響を緩和する対策、D設計を超えた場合の対策、E施設と周辺社会との隔離、F防災対策の整備である。そもそも地震多発地帯の日本列島の原発を設置してもいいのだろうか。欧州やアメリカ内陸部などでは地震は殆どないが、日本は世界の20%の地震が集中する多発地帯である。また東北三陸沿岸は宿命的な津波常襲地帯であった。地震津波によって全電源が喪失する心配は地震学の石橋克彦氏によって指摘されており、国会でも質問されている。したがって津波による全電源喪失は想定外であったというのは嘘であり、問題は対策をおこなわなかったことである。そしてシビアクシデント(深刻な事故)に対する備えは、原子力安全委員会の決定には「シビアアクシデントは工学的には現実的では無いほど発生確率は低い」と、ありえない事象として無視されている。こうして原子力安全委員会は自らの指針を放棄し安全対策の実施を怠った。また防災対策は中央防災会議と原子力施設の防災対策指針はチェルノブイリ級の原発事故を最初から無視したため、福島原発事故の被害はさらに大きくなったと考えられる。

福島第1原発事故後、菅首相は立地自治体の不信を払拭するため休止中の原発運転再開に際しては「ストレステスト」を実施するようにもとめた。しかしストレステストに係る主体が電力会社、保安院、原子力安全委員会という事故を防げなかったというより、安全神話を作り出してきた組織ではそのテスト結果には信頼が置けない。どうせ時期がきたらOKを出すに決まっているのだ。原発に批判的な学者を入れた第3者委員会がストレステストを評価しなければならない。いわゆる「原子力村」(原子力複合体)という利益共同体は、学識経験者という専門集団、政治家、経産省と資源エネルギー庁、地方自治体、電力会社、プラントメーカーから構成され、「原発の安全神話」に乗っかって原発を強引に推進してきた。原発批判派、反対派は審議会などから徹底的に排除され御用学者だけの政策決定が行なわれ、地方政界でも反対派には暴力を含む徹底した村八分が実施されてきた。この原子力複合体を解体することが、原発に依存しない社会形成や原発推進を阻止する有効な手立てとなる。そのためには発送電力分離方式で電力会社の独占体制をゆるがすこと、電力自由化により電力の選択肢をふやすこと、原発開発に関する組織の改廃が必要である。安全性を担保するために保安院と原子力安全委員会を経産省から分離し、第3者である環境省へ移転することも必要である。2012年度から原子力安全庁が環境の外局に設けられることで、権力の分散(推進と規制の分離)が行なわれる予定である。


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