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森岡孝二著 「就職とは何か」 

 岩波新書 (2011年11月)

労働環境の崩壊のなか、まともな働き方の条件とは

ここ数年、新聞・テレビ上で「偽装請負」、「ニート・フリーター」、「派遣切り」、「ハローワーク」、「正規労働者と非正規労働者」、「製造業派遣」、「名ばかり管理職」、「残業代ゼロ」、「過労死問題」が話題にならない日は無いぐらいだ。またそういった労働問題と格差社会を取り上げた書は多い。下にこれまでに私が読んだ関連書を示す。
@ 朝日新聞特別報道チーム著 「偽装請負ー格差社会の労働現場」 朝日新書
A 門倉貴史著 「派遣の実態」 宝島社新書
B 中野麻美著 「労働ダンピングー雇用の多様化の果てに」 岩波新書
C 橘木俊詔 「格差社会」  岩波新書
これらの書物は、問題の本質を新自由主義による企業側の労働規制緩和要求ととらえ、それに反対して労働規制強化の昔に戻そうという図式で、それはそれで理論的には完結する闘争である。自民党から民主党に政権が交代すればある程度はゆり戻しでバランスが傾くことはあるだろう。また上記の労働問題は一人日本だけの現象ではなく、EUでも「派遣」問題は存在するのである。むしろ欧州の方が派遣問題の歴史は長い。小泉元首相の規制緩和路線によって、富の分配は大きく企業側に傾いていることは確かである。労働側の格差や中流社会の崩壊、若年労働者の貧困化は目に見えて顕著である。また労働問題は企業と労働の賃金問題だけではなく、政府の福祉政策とペアーで考えなければならない。さらに職業教育(キャリアー)という点では厚生労働省だけの問題ではなく、これまで職業教育に全く無関心であった文部省の政策も長期的に関係している。これまで政府は健康保険・失業保険・年金などの福祉政策や職業教育、扶養家族手当てや子育て・教育費などの生活賃金、さらに源泉徴収など税制面などを企業側に押し付けてきた。企業と政府の負担のバランスは日本的に歪んでいたといえる。そこでグローバル競争の激化から企業側からの負担返上の要求が、「経済財政諮問会議」において労働側の代表がいないまま企業側が一方的に内閣へ提出された。 こうしてグローバル経済危機を背景に日本の労働環境の破壊が一方的に進行した。このような状況を比較的見通しよくまとめた本として次の本がある。

D 濱口桂一郎著 「新しい労働社会ー雇用システムの再構築へ」 岩波新書
著者濱口氏は厚生労働省のシンクタンク独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILT)の労使関係・労使コミュニケーション部門統括研究員である。労働省の政策担当者である。1990年代の新自由主義による規制緩和政策(小さな政府路線、サッチャー・レーガン主義)が日本の労働事情を破壊し、混乱に貶めるまで、日本の経済や生産力は日本独自の労働事情が支えていたのだという世界的な評価もあった。「多様化する労働事情」という言葉は働いたことがない学者たちが好んで使う言葉である。少なくとも当事者(利益関係者)の使う言葉ではない。当事者は事情は単純なほうを好むものである。多様性を喜んでいるの部外者である。複雑で混乱している方が部外者が口を挟みやすいのであろうし、それが自分の立場を誇示することにもなるのだろう。日本では労働情勢は「三者構成原則」というもので運営されてきた。政府の審議会などの政策審議は、政府・使用者・労働者の三者の合意で諮られてきたのが、小泉元首相の「経済財政審議会」がこの伝統を破壊した。「失われた15年」で失われたのは日本の労働社会システムではないだろうか。そして到来したのが西欧流新自由主義の格差社会であり金融資本の格差・貧困ビジネスであった。その金融資本も倒れた今日、日本を再建するために知恵を出し合って考えてゆく一つのきっかけになればいい。濱口氏は@命と健康を守る視点から労働時間規制 、A非正規労働者の派遣問題 、B賃金と社会保障の連環 、C労働組合と産業民主主義 と章を分けて見事に現状を説明しているが、やはり処方箋が「EUを参考に」というのは現状承認の上で成り立つ論理であればいただけない。

これらの労働環境関係の書物の上に本書 森岡孝二著 「就職とは何か」を位置づけるとしたら、これは「新就職氷河期」のただ中、就職を控えた学生に対して学生課(キャリアーセンター)の先生による「最低これぐらいの労働事情を知っておかないとまずいよ」というような「学生に与うる書」(警告の書)であろうかと思う。就活ビジネス、例えばリクルートなどの「・・ナビ」が出している情報誌のように差し迫ったハウツーものでは、就職の大義名分と現状の困難さを個人のテクニックとして切り抜けることが述べられているが、運よく就職できても待ち構える労働環境の劣悪さには殆ど触れていない。職を求めるということは飯を食うためであって、自己実現などということは2の次のことである。1人の人間が飯を食えても家族を養うに足る給料は不可能であると云う現状は隠されている。悪くすると過労で殺されるかもしれないということは絶対に述べられてはいない。まして会社の門をくぐると民主主義は無くなるということもタブーとされている。女性差別、奴隷労働が待っているということは建前上ないことになっている。これらのことを教えないで学生を就職に導く学校の先生たちも共犯者と言われかねない。イギリスのフランシスコ・ベーコンは「知識は力なり」といった。「知らないと損をする」というのはハウツーものである。人間にとって就職は人生ライフスコースの入り口である(すべてだという人もいるが)。就職と労働事情を知る事で人間らしい豊かな人生を考えるのが本書の目的である。

森岡孝二氏のプロフィールを紹介する。森岡氏は1944年大分県生まれ、香川大学卒業、京都大学博士課程を経て、1983年関西大学経済学部教授となる。専門は理論経済学、企業社会論、労働時間論である。学問の師は香川大学山崎怜氏、京都大学池上恂氏だそうだ。教授職のほか、株主オンブズマン代表、大阪過労死問題連絡会長、働き方ネットワーク大阪会長を務めている。主な著書には、『独占資本主義の解明―予備的研究』(新評論, 1979年/増補新版, 1987年) 、『現代資本主義分析と独占理論』(青木書店, 1982年) 、『企業中心社会の時間構造――生活摩擦の経済学』(青木書店, 1995年) 、『粉飾決算』(岩波ブックレット, 2000年) 、『日本経済の選択――企業のあり方を問う』(桜井書店, 2000年) 、『働きすぎの時代』(岩波新書、2005年)、『貧困化するホワイトカラー』(ちくま新書、2009年5月)、『強欲資本主義の時代とその終焉』(桜井書店、2010年) などがある。

1) 新就職氷河期の就職事情

2010年の労働省調査によると、15−24歳の若年雇用者は1992年の750万人から460万人に激減し、非正社員化は全体で39%に増加した。なかでも15−19歳(中卒、高卒)の非正社員化は91%である。若者の人口減少と大学進学率の増加(51%)によるものと思われる。高度経済成長期には金の卵ともてはやされた若年労働者は今ではごみ扱いである。大学卒業者の就職率は約6割で、大学院進学・海外留学などを除いた就職未定者は約2割を占める。2011年3月での就職内定率91%という数値は、就職を諦めた大学生を母数から除いているために高く見えるだけである。企業の採用活動開始時期が早期化するにつれ学生の就職活動開始時期も早期化し、大学教育が成り立たなくなると心配されるほどである。近年の大学生の就職活動は早期化・長期化している。著者に勤務する関西大学経済学部を例にとると、普通3年生の4月には就職・進路ガイダンスが開催され、これは丁寧にも9月、12月の3回も行なわれる。夏休みにはインターンシップ(職場体験実習)に参加する。10月になると資料請求とエントリー(登録)と企業説明会が開催され4年生の春まで続く。企業の採用情報の公開は12月からである。1人平均の説明会参加企業数は80−100社あまりと見られ、そのうち数十社にエントリーシートや履歴書を提出し、20−30社の面接を受けるのである。面接回数は1社3,4回ほどの選考を受ける。こうして長い活動を行なって、1,2社の内定を受けるには半年から8ヶ月を要するようだ。就職が出来ない場合、就職留年を願い出る学生も多い。面接で選考された者だけが筆記試験を受けることが出来る。筆記試験の種類には@SPI(リクルート社の開発になる総合適正試験)、AGAB・CAB(コンピュータ職の採用試験)、B一般常識、C小論文がある。

この長い辛い就活でうまく行かない学生の自殺が増えている。2010年には就活活動の失敗が原因と見られる大学生の自殺者は46人であった。幸い就職できたとしても、若い人ほど失業率が高い。失業率は15−24歳で10%、25−34歳で6%である。求職活動をしなかったものは非労働力人口に編入されるため、実際はこれ以上に失業率は高いと見られる。完全失業者より非労働力中の就職希望者の方が多い。経済学でいう「産業予備軍」は、若年者の完全失業者52万人、非正規雇用者213万人、非労働力人口中の就業希望者120万人を加えると、385万人となる。若者にとって非常に厳しい雇用環境にあるといえる。学校の新卒者の3年内離職率は高卒44%、大卒が34%である。やめる理由の60%は会社側に理不尽な働き方を要求するなどの違法性があったからだ。2011年3月時点での内定率は大学理系で93.1%(国立96%,私立91%)、文系で91%(国立92%、私立90%)、短大で84%であった。ところが実際は就職希望者の内定率は90%を割っているのではいだろうか。大卒者の進路を見ると、文科省の2011年調査では就職者62%、大学院進学者13%、留学など2%、アルバイトなど一時的な就業者3.5%、進学も就職もしていないもの16%である。問題はこの進学も就職もしていない者でほんとうの遊び者は少なく殆どが就職が出来なかったものであるとすれば、内定率91%という数字は80%に減少するのでは無いだろうか。

就職活動を行なう学生を支援する「就活ビジネス」をリクルート社が始め、「リクナビ」や「マイナビ」、「日経ナビ」の就職情報サイトが知られる。大規模な合同企業説明会には数万人の学生が参加し、地方からは「就活バスツアー」が組まれる。メッセで行なわれるモーターショーのような合同企業説明会は、じっくり聞けないので実効性はあまり期待できない。またインターンシップも実習期間が数日−1週間程度では短すぎて、学生側・企業側のどちらもよく分からないままに終っている。それが就職に反映されるわけでもないし、学生の67%はアルバイトを継続的にしているのに比べても、インターンシップの意義は不明である。日本独特の就職制度として「定期一括採用」という制度がある。これが企業の予算編成時期によって左右され就職活動の早期化につながっている。日本では学生の88%が卒業までに就活を行い内定を得ているが、欧州では平均39%(フランス10%、ノルウエー61%)に過ぎない。企業の採用活動の早期化は好景気も不景気にも関係なしに進行した。現在3年生の10月からエントリーシートを提出し、12月から1月に面接などの選考が始まり、3月から4月には「内々定」をだし、10月1日に「内定」が出るスケジュールである。企業の就職協定(紳士協定)はなきに等しく、「仁義なき」協定破りが日常化した。この就活の早期化には就職活動支援ビジネスと情報通信技術も与って影響があった。就職活動がマス化し、大量の企業情報と大量の応募者が飛び交っている。日本学術会議の政策提言や経団連の2011年倫理憲章もはたして守られるかどうかはなはだ怪しい。

2) 雇用と労働時間の現状

学生が企業を選択する基準や、企業が学生を選考する基準のアンケートは建前と本音は異なるので、アンケート結果はそう信用できるものではない。2009年の日本政府が行なった「世界青年意識調査」では、日本の企業選択の第1位は70%が「仕事内容」であるが、米国、韓国、イギリス、フランスの第1位は80%以上が「収入」であった。日本では労働条件を表立って問題視することを避ける傾向にある。筆者は社会人として働こうとする学生の第1の関心事はやはり「賃金」と「労働時間」の労働条件であると見ている。特に就職情報誌に書いてある「初任給」には注意が必要である。一見高い初任給に残業を含んでいたり、勤務地手当てや住宅手当などを含むかどうか見る必要がある。2011年度大学卒業者の上場企業の初任給は、総合職で21万円程度、一般職で18万円程度であった。この初任給は1995年以降ほぼ一定で飽和している。日本の雇用者報酬総額は2010年度で253兆円で2000年以降だらだらと下がり気味である。国税庁の「民間給与実態」では1人平均給与は2009年は406万円であった。男性の給与の落ち込みは著しく1997年に577万円であったが、2009年に499万円に下がった。OECD加盟国主要国で年間賃金が長期的に下降しているのは日本のみであった。韓国では10年間で50%も増加し、イギリス・フランス・アメリカでは20%以上上昇している。雇用とは「賃金や労働時間が法定の基準を満たし、働く権利が保障され安定していて、健康保険・雇用保険・労災保険などの社会的保護が加えられるもので、労働者が使用者の指揮命令下で働き、その対価として賃金を受け取る関係」と定義すれば、日本の雇用は既に崩壊している。それは正社員の絞込みと非正社員化が進んだ結果である。

最低賃金法により2010年都道府県審議会が決めた1時間あたりの賃金は、東京で837円、大阪で786円、福岡695円、岩手などの地方では645円以上である。また法定労働時間は1日8時間、1周40時間と定め、労働者の働き方に一定のルールを設けている。しかし現実にはこれに当てはまらない場合が多い。特に非正規雇用者では、低賃金で有期雇用、社会的保障が殆どない。2007年の非正規雇用者1700万人のうち雇用保険未加入者は1000万人を超えている。全失業者の77%は失業保険をうけていないのである。2004年「ワーキングプア」という言葉がアメリカで生まれた。企業の減量経営のため、かって男性片稼ぎモデルを支えた正社員の比率は急速に減少した。そして賃金の安いパートへ移行した。日本の賃金の男女格差とフルタイムとパートの自給格差は世界的にも類を見ないほど大きい。男性正社員の時給を100とすると、女性正規社員は67%、男性パートは44%、女性パートは40%である。まるでかってのアメリカの人種差別をはるかに超えている。正社員が減ると当然日本の企業別組合の組織率は一層低下し、1980年以降ストライキは全く影を潜めた。1970年代35%であった労働組合組織率は2000年以降20%をきり、2009年では18.5%となった。派権労働については多くの本で語られているので省く。2007年の派遣労働者145万人のうち若年労働者15−24歳は14%、25−34歳が39%、35−44歳が21%を占めている。1985年に労働者派遣法が成立し、専門職の派遣を中心に議論されたが実はじわじわと単純労働に浸透し、2003年小泉内閣のときに原則自由となって製造業の派遣が「規制緩和」され一挙に派遣労働が拡大した。極めて乱暴に不況時に解雇される「派遣切り」が横行した。

年間1800時間、1日8時間という労働時間はほんとうに守られているのだろうか。そして20日の年次有給休暇はほんとうに取れているのだろう。厚労省の毎月勤労調査によると1980年から2010年の間に2100時間から1800時間の減少したという。これにはからくりがあって、一般労働者と全労働者(一般労働者+パート)に分けると、一般労働者の労働時間は1993年以来2100時間と少しも減少していない。全労働者の労働時間が減少したのはパート労働者が増加し、かつパート労働時間が短縮されたためであった。総務省の「労働力調査」は賃金不払い労働を含めた全労働時間は、1993年に2500時間で2010年には2300時間であった。パート労働者数は1990年から15%も増加した(特に女性パート労働者の増加率は20%以上)。男性正社員に限ると年間で2700時間の労働時間であり少しも改善されていないのだ。週平均労働時間は56時間に及ぶ。年次有給休暇の取得は2004年には46%に下がっている。欧米では90%を超えているので隔世の感がある。若者の過労死の労災申請が増加している。脳・心臓疾患と精神障害による過労死の統計は乏しいが、労災申請で見ると2010年には1983件もあった。過労死ラインは月平均80時間の時間外労働といわれているが、労災認定と会社を相手取った遺族の提訴判決は最近「殺人的給与体系」をとる会社(外食産業が多い)に対して厳しくなった。労働基準法がありながらなぜこのような殺人的労働が放置されているのだろうか。それは基準法第36条によって、例外規定があるからで「労働組合と36協定を結び、労働j基準監督署に届ければ時間外労働の制限は免れる」となっているからだ。ブレーキ役の労働組合と基準局が機能を果たしていないためである。運よく正社員として就職できた大学生には、「このように過酷な労働現場が待っているのである。「前門の虎、後門の狼」とはよく言ったもので、「進むも地獄、退くも地獄」の企業戦士の労働環境である。

3) まともな働き方とは

近年大学では就職部を「キャリアーセンター」に改め、就職活動支援、職業意識教育に努めている。就職支援には「人生の職業設計」という意味があり、キャリアー職歴の形成に努めている。しかし大学ではこれまでキャリアー教育は定着していなかった。理科系の専門職は別にしても、文系の一般職ではキャリアー意識が確立していないと「潰しが利く何でも屋」に流されやすい。若者のフリーター化や離職傾向を懸念して、中教審でもキャリアー教育を重視する傾向にある。教育の職業的意義として@労働に関する基本的知識、A職業分野の知識とスキルという観点が欠かせない。企業が選考に当たって重視する能力はアンケートにはさすがに学力・有名大学とは書けないので、第1にコミュニケーション、第2に主体性,第3に協調性となっている。これらはつかみどころの無い総合的人間力である。ただ労働の多様性を個人の嗜好や考えのせいにするには半分は間違っている。若者の雇用・失業問題の主な原因は定職につかない若者が増えているからではなく、定職に就けないからである。お役所が書く「若者サポートガイド」、「社会人としての心構え」などのパンフレット類は厳しい労働環境を取り上げずに個人の意識にすり替えている。これがいわゆる小泉内閣以来の「自己責任論」であり、「必死に努力しない人間は負け組」という切り捨て論に繋がる。さらに酷い扱い方は「心理カウンセラーに相談」というような若者を病人扱いすることである。うまく行かなければうつ状態になるのは人間らしい当たり前のことである。精神安定剤を飲んで世の中がよくなるわけはない。ただ働き方をめぐる神話は棄てる必要がある。@大企業は安定していて労働条件はいい、A公務員は民間より安定している、B女性は子育てをおこなうべきといった迷信は棄てなければならない。

ILOが唱える”decent work"とはまともな人間らしい生き方のできる労働である。それは労働基準法第1条にいう「労働者が人たるに価する生活を営むための必要を充たす」働き方である。「働きすぎの時代」はグローバル化、情報化、消費社会化、雇用の非正規化という要因がもたらした。ではどうしたら働きすぎを防止できるのだろうか。旗rき方が改善されないのは、政治と政府がこの課題に取り組んでこなかっただけでなく、一連の規制緩和策によってブレーキを加えるのではなく財界の要請に従ってアクセルを踏む役割を担ったからである。「変形労働時間制」「事業所外みなし労働時間」、「裁量労働制」、「名ばかり管理職、「ホワイトカラーエグゼンブション」などの言葉に代表される、表面上はもっともらしいきれいなごまかし言葉で「残業ただ働き」を合法化してきたからである。過労死の犠牲者は年間1万人を超えるという人もいる。有効な対策を打つどころか企業のただ働きを基準局が是認してきたからである。36協定という抜け道を用意し、過労死ライン週80時間労働が常態化した。2011年5月日本学術会議は提言のなかで、「過重労働対策基本法」の制定を促している。結局「まともな働き方」とは次の4条件である事を最後に確認しておこう。
@ まともな労働時間
A まともな賃金
B まともな雇用
C まともな社会保障
いわばサービス残業に相当する労働時間を1000万人をこえる産業予備軍に「ワークシェアリング」することである。総労働量が変わらないかぎり、サービス残業をなくすれば400万人を超える雇用が生まれる。しかし産業界は減量経営で雇用者を減らし、現雇用者に無制限のただ働き労働を強要することで利益を上げてきた。企業にとってこんなうまい話はない。恐らく絶対に産業界は承服しないであろう。それなら日本から脱出すると言って脅しをかけるだろう。産業界にお願いしてできる相談でないならこれはもう革命である。


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