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丸山茂徳著 「科学者の9割は地球温暖化炭酸ガス犯人説はウソだと知っている」

 宝島社新書(2008年8月)

人為的炭酸ガスによる地球温暖化説はウソ、
地球は寒冷期を迎え、人口爆発で石油は枯渇する事態こそ文明の最大課題だ

丸山重徳氏は岩波新書 丸山茂徳・磯崎行雄 著 「生命と地球の歴史」(1998年刊)の著者である。読書ノートコーナーで取り上げて紹介したが、先ず簡単な著者紹介をしておこう。氏は1972年徳島大学教育学部卒、金沢大学大学院修士課程を経て1977年に名古屋大学大学院博士課程修了。同年より米スタンフォード大学客員研究員。富山大学助手を経て1989年より東京大学教養学部、1993年より東京工業大学理学部教授。地球の表面に存在するプレート(厚さ約100km)の変動(テクトニクス)を扱うプレートテクトニクスに対し、深さ2,900kmに達するマントル全体の動き(対流運動)を仮説し、これらの運動をプルームテクトニクスと命名し、1994年に発表、当時の地質学界に衝撃を与えた。元々は変成岩岩石学を専門に地質学・地球科学の研究を行っていたが、次第に学際的な研究に興味を移し近年は惑星の地殻変動と生物進化の歴史を関連付ける試みを行っている。

その丸山重徳氏が専門領域を超えて地球温暖化問題に首を突っ込んできた。 「地球温暖化」論に騙されるな!」 講談社(2008年5月刊)などの著書があるが、地質学からの地球環境問題を取り上げ、氷河期と温暖化問題を論じている。あるインタビューに答えて丸山重徳氏は地質考古学より次のような温暖化にたいする見解を述べている。
「今はみんな、気温が異様に上がることを心配している。 その理由の一つは、スーパーコンピューターの過信ですよ。僕はあんなものは予測にも何にも役に立っていないと思う。数値実験よりも、古気候の解析の方が、遙かに精度がいいんですよ。 何故かと言うとね、大気の運動とか海流とかは、ほんの小さな熱容量で運動が大きく変わってしまうんです。パラメーターの数も何百もある。それらが相互作用している。それをきちんと計算して動きを予測するなんてことは不可能ですよ。いまようやく大気結合モデルとかやってるけど、あんな幼稚なものでは予測はできません。科学的とみなせるような相互作用もパラメーターの中に入っていないしね。今のモデルだと、単に今のサイクルが激しくなりますよ、ということを言っているに過ぎないわけです。・・・・・・・地球の表層の気温は、非常に高温であった時代から、基本的には冷却してきたわけですが、人類が誕生した500万年前くらいから氷河期に入ったわけです。で、その時代から4回くらい気温が落ちている。これが氷河期です。現在は、最後にいったん下がったあとの一瞬の小春日和なわけです。つかの間の間氷期です。でも基本的には氷河期なんですよ。いつ寒冷化するか、それが問題なわけです。どんなことをしても、地球は寒冷化するんです。ところが、いまみんなが問題にしているのは温暖化です。僕は、狂っていると思いますね。いいですか、暖かくなるっていうのは「良い」んですよ。寒くなると、膨大なエネルギーが必要ですけどね。それはですね、過去のデータを見ると歴然としているんです。 ・・・・・この1万年の間の小さな温度変化を観察すると、6000年前にピークを向かえ、その後冷却してきている。もっと小さな周期を含めて予想すると、そろそろ氷河期に入ってもよい時期に来ている。  ところがたまたま産業革命が起こり、人類は化石燃料をせっせと炊いてしまった。それでほんの少しだけ寒冷化に対抗している、というのが現状なんですね。で、そうであるとしたら、何もしなくなったら、いきなり気温は急降下ですよ。そういう微妙な位置に我々はいるわけね。」という。(NetScience Interview Mail 1998/06/18 Vol.008)
丸山重徳氏は最近の文明論に対しても、文明は人間の脳が造りだしたという観念論が主流であるが、とんでもない文明は気候の産物であると主張する。超長いスパンで物を見ると、人間は地球環境歴史上の極めて特異な生存物かもしれない。

さて本書に入ろう。本書が著わされた動機は2008年5月25日−29日に開催された「地球惑星科学連合学会」の「地球温暖化の真相シンポジウム」において、「過去50年の地球温暖化が人為起源なのか、自然起源なのか、さらにIPCCの云う一方的温暖化なのか、寒冷化なのか」というアンケートをとった時のことである。「アンケートが特定の人間に悪用される恐れがあるから反対」と云う意見が飛び出した。結局非公開という形でアンケートがおこなわれ、「21世紀が一方的温暖化である」と主張する科学者は10人に1人で、「21世紀は寒冷化する」と主張する科学者は10人に2人、残りの7人は「分らない」と考えている。日本の科学者でICPPの予測に同意するのは1割に過ぎないという本書の題名が生まれた。これだけ科学者の異論が多い中で、メディアや政府筋は2008年7月の洞爺湖サミットに向けて地球温暖化狂騒曲を連日流していた。そこで著者は考えたのである。科学者は同意していないのになぜ政府の温暖化防止政策に反対しないのか。それは科学者が政府から戦略的研究資金を貰っているからだと云うことに気がついた。政府は地球気候研究や温暖化防止対策研究に膨大な研究資金を投入している。この研究資金を得て成り立っている研究者は反対できないのである。著者はここでキレタ!、アンケート結果を公表してしまった。同調する、節操のない研究者も悪いと考えるようになった。「地球温暖化」論に騙されるな!」 講談社(2008年5月刊)や「科学者の9割は地球温暖化炭酸ガス犯人説はウソだと知っている」 宝島社新書(2008年8月刊)を矢継ぎ早に著わして、声高に「地球温暖化」論はウソだというようになった。

私は地球環境問題は紛れもなく地球資源問題であり、石油エネルギー資源や食糧資源問題に直結していると思う。1988年の地球温暖化防止枠組機構と1997年の京都議定書(COP3)はいわば経済の軍縮会議であり、石油使用割り当て会議である。そこで何時まで日本政府と環境省のバカ役人はドンキホーテを演じ続けているのだろうか。炭酸ガス削減数値目標は戦前の軍艦比率と同じであり、縛りを受けたくないアメリカは即地球温暖化防止枠組機構から脱退した。福田首相は分っているのか無知なのか、洞爺湖サミットで優等生振りを発揮したいために「2050年までに50%削減を目標としよう」と主張した。結局7月の洞爺湖サミットは同意はなく、「認識を共有し、議論だけは続けましょう」というう官僚言葉でお茶を濁さざるを得なかった。石油高騰問題と穀物高騰問題が地球温暖化問題を吹き飛ばしたのである。グローバル金融資本の目先の利益優先が勝ったといえる。欧州は日本を先ず縛る事に全力を挙げている。地球温暖化目標と石油高騰で日本を追い込みたいのである。日本は何時までも馬鹿をやっている余裕はないはずだ。

本書は著者の地質学・地球科学の研究の専門的知識で21世紀の地球の気候を予測する第1章:「地球温暖化」炭酸ガス犯人説のウソと「寒冷化」の予兆、第2章:「成長の限界」と人類の危機、第3章:人口減少時代の日本の政策 からなる。ICPPの地球温暖化予測を検証する第1章は、ICPPがこれまで「異論」として無視してきた理論・仮説をとりあげて科学的に著者が反論し、むしろ地球は寒冷化するという予測を出している。第2章と第3章は著者が政治論や文明論を振りかざして、政府の政策の誤りを追及するところである。私には納得できない論点や主張の違いがある。この本を読んで読者がどう思われるかは、読者にお任せしたい。そこで第1章を中心に紹介することにして、第2,3章は要点のみとしたい。

第1章:「地球温暖化」炭酸ガス犯人説のウソと「寒冷化」の予兆

地球温暖化問題が社会問題化するようになったのは、1988年アメリカ航空宇宙局(NASA)のハンセンの上院での発言が基になって、地球温暖化に関する科学的な研究を検討するため「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が組織された。入射する太陽エネルギーの収支は、26%は雲で反射され、4%は地面と海面で反射され宇宙へ逃げる。50%は地面と海水を温め、20%は大気を暖めるのである。地球の熱の放射による冷却の収支は温室効果による保温は50%で50%は宇宙へ輻射されている。ただし温室効果ガスの90%は水蒸気で、炭酸ガスは10%に過ぎない。金星の場合、大気の炭酸ガスは90気圧であり、気温は500度である。火星の場合炭酸ガス濃度も稀薄で、大気温度は−43度である。アメリカのスクリップス海洋研究所のキーリングは大気中の炭酸ガス濃度は徐々に高まってきている明らかにして、炭酸ガス温室効果説に傾いた。1800年には炭酸ガス濃度は280ppmであったが、1850年ごろからの産業革命により化石燃料の使用量が増え、かつ大気中の炭酸ガス濃度も上昇し始めた。化石燃料の使用量からすると現在の炭酸ガス濃度は480ppmとなるはずだが、100ppm分は海洋と植物に吸収されたようだ。そして1992年リオデジャネイロでおこなわれた地球環境サミットで「気候変動枠組み条約」採決され、1997年京都でおこなわれたCOP3 で「京都議定書」が採択され温室効果ガス排出削減が義務図けらた。2000年最初に騒ぎに火をつけたアメリカは削減義務に難色を示して枠組み条約から脱退した。欧州の戦略にまんまと日本は乗せられたことは、皆さん十分にご承知の事実である。

ICPPが主張する炭酸ガス犯人説を検証しよう。確かに20世紀後半から地球の気温は上昇しており、温暖化が進んでいるようである。ICPPの人為的温暖化論の根拠となったのは、2004年古気候学者マイケル・マンの過去の気候を年輪の幅から推定した研究によるところが大である。気温が高い時は木の成長が盛んで年輪の幅が広いことに注目した。マンは過去1000年の気温変化を推定し、20世紀から気温が上昇したという「ホッケースティック曲線」を提案した。しかし年輪の幅をその樹木が生息していた場所や局所条件が不明では信憑性は薄い。日当たりの良い地なのか、北向きの地や他の木に覆われていたかどうかで生育条件はかなり異なるはずだ。もうひとつのIPCCの根拠はコンピュータシュミレーションであった。過去百年の気温の実測グラフと「自然条件+人間活動」のシュミレーション結果のグラフが一致し、「自然活動」のみのシュミレーションでは気温は上がらないという結果であった。この結果に気を強くしたICPPは「90%以上の確率で人間の活動に由来する温室効果ガスの増加が原因だ」という第4次報告を2,007年に出した。しかしICPPが温暖化シュミレーションで用いたとされる「大気海洋結合大循環モデルGCM」をスーパーコンピュータで計算したと鳴り物入りで宣伝しているが,はたしてこのモデルは信頼していいのだろうか。著者のインタビューでの発言にもあるように、パラメータをいじくればどうにでもなる計算ではなかったか。厚生省や経済産業省や国土交通省などが審議会で御用学者に出させているデータ−も、新橋付近の御用シンクタンクが計算したものであって、審議会に出す前に何回も役所とやり取りした結果をさも尤もらしくコンピューターで計算しましたというだけのことに似ている。役所の出すコンピュータ計算結果をそのまま信用する人はおめでたい。コンピューター神話を上手く利用しているだけである。ICPPで計算に織り込んだという気象因子から脱落している重要なものはないだろうか。

さてここからが本書の「炭酸学原因説への反論」となる。考古学・気候学・地質学・地球科学の立場からの異論である。ICPPがあえて無視しているのか、少数意見として排除しているのかは知らないが、これまで地球温暖化説の異論は多多あった。これから有力な反証を取り上げてゆく。1998年スべンマークは太陽活動と宇宙線の関係から温暖化が進んだという見解を発表した。黒点が増えて太陽活動が活発になると太陽風(プラズマ)が地球に吹いて、新星爆発による宇宙線を吹き飛ばすのである。宇宙線は大気中の分子をイオン化させ、それが凝結核となって雲を発生させ、太陽光を反射し気温が下がるという仮説である。1980年から1995年の宇宙線量と雲量の関係は低層雲で極めてよい相関を示す。地球に降り注ぐ宇宙線は窒素原子を炭素原子放射性同位体(14C)に変化させる。14C(または10Be)を測定して宇宙線量や温度との関係が求められる。温度が高いと植物の炭酸同化作用は活発化する。この時植物は選択的に同位体炭素12(12C)と体内に取り込むため、相対的に大気中の13Cは増加する。1995年名古屋大学の北川教授は縄文杉の炭素13同位体の推移を調べたが、1600年から2000年間の気温と宇宙線量曲線とぴったり相関していたのである。

世界の平均気温の観測が可能になったのは1870年からである。それより以前の気温は炭素13同位体気温計を用いることになる。相対黒体数と炭素14から宇宙線量を調べたスベンスマークの研究による太陽活動衰退期「マウンダ−18世紀」、「シュペーラ16世紀」、「ウォルフ14世紀」と炭素13同位体気温計の気温低下パターンはDC1000年から2000年間ぴったり一致した。それによると鎌倉時代から明治初めまでは基本的に寒冷期で、明治時代以降温暖化した事が分った。ということで過去50年の気温上昇は自然起源であって人為起源でないことは明らかであると著者は主張する。東京工業大学の生駒助教授の理論計算でも温室効果ガスのうち水蒸気の効果が極めて大きい。炭酸ガスの濃度上昇を受けてBCMモデルでは水蒸気濃度が上昇しその温室効果によって気温が上がるという計算経過となる。なんだ、気温を上げているのは計算上も炭酸ガスではなく水蒸気だったのだ。このように水蒸気の保温効果は著しいが、逆に水蒸気が凝結して雲となると太陽光を遮断する。このように水蒸気の影響を定量的に評価する事は難しい。ICPPの水蒸気の取り扱いは片手落ちだったのだ。ICPPの計算結果は信用ならないことは肝に銘じておく必要がある。

著者の奉職している東京工業大学では、惑星科学者や物理学者の専門家が集まり「理学研究流動機構」を新設して、気候変動原理の解明と21世紀の気候予測を目指して過去2年間研究を進めてきた。地球の気温に影響を与えるさまざまな要素を、影響度の大きいと予測される順に並べると、
@太陽の活動(入射強度、太陽風と宇宙線と雲)
A地久磁場(核の対流)
B火山活動(マントルの対流)
Cミランコビッチの周期(公転軌道の揺らぎ)
D温室効果ガス(炭酸ガス、水蒸気)
の5つである。それぞれを検証してゆこう。地球の温暖な気候は太陽からもたらされる熱エネルギーによって維持されている。金星ほど近くなく、火星ほど遠くない、絶妙の地球の位置関係で今日の地球があるという、この幸運と偶然の上に存在する地球生命の危さを十分に認識すべきではないか。

まず@太陽活動である。2007年カークビィーらは文献上から17世紀以降の太陽の黒点数を精しく調べ、周期的に黒点数が変化しており、それが炭素13同位体温度計の示す気温低下パターンと一致することをサイエンス誌に発表した。東京大学の吉村教授は約11年周期の小周期と、約55年周期の大周期が現れると指摘した。現在は1980年から始まる大周期Yのピークを過ぎて太陽活動が徐々に弱まる時期に入った。小周期では太陽活動の最低期にある。小周期の周期では海洋の熱容量が大きいため太陽活動は気温には反映せず、数年遅れで気温が下がってくるだろう。大周期の太陽活動と気温変化のパターンはよい相関を与える。太陽活動が弱まれば地球が受け取る太陽エネルギーが減少するだけでなく、宇宙線を吹き飛ばす太陽風も弱まる。したがって雲量が増えて地球は寒冷化に向うだろう。宇宙線量の減少傾向は別の10Be(ベリリウム同位体)の測定からも明らかである。

次にA地磁気の強さである。地磁気は外核の鉄とニッケル溶融金属の対流によって生じるという「ダイナモ説」が有力である。地磁気は地球に降り注ぐ太陽風と宇宙線の両方を遮断する効果がある。数億年の規模で見ると地磁気は失われたり逆転する事も明らかにされた。京都大学地磁気センターのデーターによると、1600年以来地磁気は弱まっており2000年で16%も減少した。地磁気の強さが1/3になると、宇宙線量は10倍にまで増加するという。過去400年間は地磁気の減少より太陽活動が優勢であったため放射線量が減少傾向にあった。これが将来は太陽活動が弱まり、地磁気の減少とあいまって放射線量の増加に転じるのである。地球は過去数回(23億年前と6−8億年前)「スノーボール」(全球凍結仮説)になったという学説がある。スターバースト(新星爆発)によって宇宙線が地球を覆ったのが原因とされる説である。生物は絶滅すると同時に、大量の宇宙線を浴びた生物の爆発的進化があった可能性がある。100億年かかる動物への進化が50億年で可能になったという説である。なんとこれは著者丸山茂徳氏の最近の説である。「生命と地球の歴史」(1998年刊)岩波新書では述べられていなかった。(核戦争で地球の人類が絶滅したあと、生き延びた人類は又爆発的に進化する可能性もあるのかな??)

さらにB火山活動である。雲が太陽光を反射して気温に影響するなら、火山活動によるエアロゾルの変化も考慮すべきだ。しかし中国の大気汚染による黒い粒子は太陽熱を吸収するので、どっちに転がるかは難しい予測になる。1991年のピナツボ火山噴火で硫酸200エアロゾルが増加して気温が4年間低下したことは記憶に新しい。しかし火山エアロゾルが成層圏まで達する事が必要で、こんな大きな火山爆発の予測は出来ない。

Cのミランコビッチの周期も予測は難しい。公転軌道の揺らぎによって太陽との距離が増減して、10万年周期と40万年周期の周期的な日射量の変化が生じる。これをミランコビッチの周期という。また歳差運動(独楽運動の自転軸の変動)によって陸の多い北半球と海の多い南半球への日射量の比率が4万年周期で変化する。こんな長い周期の変化はICPPの予測計算に組み入れる事は不可能である。ティーデマンらは1990年に、過去40万年間の深海堆積物の有孔虫化石の酸素同位体比分析から予測される気温変化を報告した。10万年周期で現在の気温をゼロとすると+4℃から−8℃まで変化していた。21世紀は最高の気温状態から既に気温低下期に入っているようだ。

Dの温室効果ガスであるが、炭酸ガスは1ppm高まって気温は0.004℃上昇するのである。以上結果を総合して東京工業大学「理学研究流動機構」がおこなった21世紀の気温予測では、ICPPの予測とは大きく異なリ気温は低下する結果となった。2035年までは気温は低下し1900年当時の気温に戻る。2100年にはシナリオによって2℃から4.5℃気温が高まるとするICPPの予測が正しいか、寒冷化に向う「理学研究流動機構」の予測が正しいかは、5−10年後には決着がでる。異常気象をもたらす、インド洋で温められた高温海水が東へ移動する「エルニーニョ」、太平洋で温められた高温海水が西へ移動する「ラニャーニャ」は、地球温暖化減少ではない。また太陽活動の11年周期は短期的には気温変化とはタイムラグを持つことの二つは明確に識別しておく事が議論の混乱を防ぐ事になるだろう。温暖化は農業の発展と文明の興隆をもたらしてきた。テレビで流されている地球温暖化恐怖映像はすべて作られたデマである。寒冷化こそ食糧危機と文明の衰退と大動乱をもたらしたのだ。恐るべきは寒冷化であるというのが本書の結論である。

第2章:「成長の限界」と人類の危機

人口の増加と資源の枯渇に着目したローマクラブのドネラ・メドウズらが1972年に「成長の限界」を発表した。2050年には世界人口は100億人に達すると予測し、資源や食糧との均衡が破れるのは2020年に訪れるとした。所謂2020年問題である。当時の人口は38億人で、36年後の2008年には世界人口は68億人に達した。倍化したのである。中国・インド・パキスタンなどの人口爆発を見ていると、2050年には世界人口が100億人を超えるという予測は妙に現実味がある。そして石油枯渇は待ったなしで進行している。可採年数はあと37年、枯渇年数はあと68年という。既に原油は湯水のように出ているのではなく、乾いた雑巾(砂層)から搾り出しているのである。石油価格はうなぎのぼりで上昇し2008年の先物取引では金融資本のたくらみもあって原油価格はバレル150ドルにもなった。八月段階では沈静化して110ドルぐらいになったとはいえ、基本的に原油価格は高値を維持するだろう。本格的脱石油時代にはいったのだ。欧米では2020年問題に真剣に取り組んでいるようだが、日本の政治家官僚は2020年問題には一向に対応せず、炭酸ガス排出量削減目標という自縛政策にうつつを抜かしているのはSMものである。寒冷化が来て食糧危機になると日本には中国難民が何百万人と押し寄せるだろう。飛鳥時代の渡来人の比ではない。世界中が大動乱になって戦争と飢饉で数十億人が死ぬ事になるだろう。ローマクラブはこの大動乱で21世紀後半には100億人の人口は40億人に減少すると予測している。恐ろしい阿鼻叫喚地獄が待っている。ここまでは石油枯渇と人口爆発のもたらす近未来予測である。アメリカ、ロシアは必死に石油を確保しようとしている。世界最終戦争に勝つためである。石油がなければ戦争は出来ないのである。爆撃機は飛ばない、戦車は走らないでは戦争は負けるのである。太平洋戦争の短期決戦、竹やり精神では戦争は出来ない。本書のこれ以降40ページは、2020年問題に対応するための著者の政治論となる。著者の政治音痴がもろ出しになるので、読むに耐えない。したがって私は省略する。

第3章:人口減少時代の日本の政策

この章では著者は人口抑制政策を打ち出せと主張しているが、既に日本は2006年より人口減少社会になっており、21世紀末には確実に日本の人口は6000万人に減少する。厚生省人口問題研究所の所長であった河野稠果著 「人口学への招待」中公新書の結論はこう述べている。「日本の人口の行方を国社人研の2006年度推計より結果だけ示す。1950年から2005年までが実測であり、それ以降2055年までは推計である。合計特殊出産率は2013年まで1.213まで下がり、2055年までに僅か1.264に上がるとと仮設している。2007年より日本の人口は減少傾向になり2055年には総人口は9000万人をきる。65歳以上の高齢化人口は2040年まで上昇し、14歳までの未就業人口は一貫して減少し続ける。100年後には日本の人口は4000万人以下となる。何らかの人口抑制策を講じて2025年にもし人口置き換え水準に恢復したとしても、2080年に人口は8000万人に一定化するが、2050年に人口置き換え水準に恢復した場合は2100年に人口は6000万人で一定化する。」というものだ。イギリス並みの人口6000 万人で工業文明を謳歌できればいいのではないかというのが著者の提案である。そのとおりである。そうなるように日本は全力を挙げて対応しなければならない。それでも今の政治家官僚に任させて置くと、世界中から金をむしりとられて、一文無しになるのが心配だ。


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