安井至 著 「市民のための環境学入門」  丸善ライブラリ(1998年)



東京大学生産技術研究所 安井教授のプロフィール


セラミック(ガラス)の材料設計がご専攻であるが、最近は全国産学連携センタ協議会会長、国際産学協同研究センタ長などを歴任された。またAGS (地球規模持続的発展協同研究)でライフサイクルアセスメント(LCA)を展開中である。さらに個人的には「市民のための環境学」というホームページを開いてユニークな環境論で健筆ぶりを発揮されている。本書はこのホームページと同名、同形式であるが、本書は文部省科学研究費重点領域研究「人間地球系」の研究者10数名による「環境総体把握」を目的とした討論の成果である。


環境問題とは総体として「人類の健全なる持続」をめざす政治


環境問題の定義から始まり、生物多様性ではなくあくまで人類を対象とする立場を堅持してその持続を図る政策と位置付ける。しかし単なる健康問題、リスクゼロではなくLCA分析などによりトータルリスクミニマムを目指す。人類が生存できる条件として地球温暖化問題を取り上げその政治性を強く指摘する。本書より引用。
『国際社会ではわざとやっているのではないかと考えられる部分もある。炭酸ガスを除く温暖化ガスを規制することは、政治的にあまり意味を持たないが、二酸化炭素排出規制は、まさに化石燃料の使用量規制ということになる。先進国の経済的な成長を分析してみると、エネルギーの使用量とほぼ比例しているので、使用エネルギーを制限すれば、経済成長もある程度制限されることになる。このような状況だから、温暖化ガスを二酸化炭素だけであると思い込ませて、環境を政治の道具として使おうという訳だ。』
まさにエネルギー問題はパワーポリティークである。したがって環境問題は当事者の環境倫理が問われる由縁である。




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