rossrisksense

ジョン・F・ロス 著 佐和紀子訳  「リスクセンス」

 
集英社新書(2001年)


        

「リスクは数値がなければ恐怖となり、数値化して比較できれば選択になる。」が本書の主題である。リスクの数学と毒物学の歴史をたどり、リスクセンスを養う新しいリスク管理の方法を提案した。


1)リスクの数値化と相対化(リスクの数学)

リスク:損失や損害を伴う可能性のある行動や出来事(シェイクスピア)
*危険への恐怖
*確率論・・・・・パスカル、フェルマー 17世紀中頃
・・・・・・・・・・神の存在とゲームの損失計算
*数値化・・・・・確率論(数学)はリスクを数値化する手段  
*リスクの比較・・・・ジョン グランド 17世紀後半
*リスクの相対化・・・他のリスクとの比較 (死因表など)
*統計学
平均への回帰・・・・・フランシス・ゴールトン 19世紀後半
母集団と正規分布・・・・・アブラハム・ド・モワブル 
                           

                                  
「リスク構造の解明からリスクの選択へ」の科学的認識の時代


2)リスクの線引き(毒物学)
 

パラケルクス(15世紀)・・・「総ての物質は毒だ。投与量が正しいかどうかで毒になるか薬になる。」
*用量関係曲線・・・・食品の安全性と毒性試験 「連邦食品医薬品法」 1906
*リスクゼロ方針・・・・・・不検出が原則・・・・・検出技術の進歩
*1950 デラニー委員会「発ガン物質には閾値がない直線型」  
     発ガンモデルの開発   1970年代
  少量投与で閾値を外挿して求める

3)リスクゼロ神話の崩壊とリスクセンスの養成

1995年 サイエンス誌 「限界に直面する疫学」:ゼロに近いリスク低減は新たなリスクを生み出す。
「毒蛇は殺す」:リスクゼロ思想は生態系の破壊、エネルギーの無駄使いになる。


リスクセンスの養成

リスクを判断するのは専門家ではなく、自分にとってなにが重要であるかという価値判断を行なうリスクセンスを養うことである。そのためには判断に必要な情報を自分で集め(知る権利を十分に行使し)、人の話は半分に聞いて総合的に判断することが肝要である。




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