三橋規宏著「ゼロエミッションと日本経済」


岩波新書(1997年)


日本経済新聞社論説主幹 三橋規宏氏のプロフィール

三橋氏は経済記者から日経ビジネス編集長などを歴任され、経済問題・環境問題を担当された。しかし本書は経済理論を述べたものではなく、廃棄物ゼロをめざす取り組みを新聞記者の目で取材した報告である。「百の説法よりも、ひとつの実行を」をスローガンに環境に挑む人、企業、地域の姿をルポした。


環境に挑む人、企業、地域

世界自然遺産に登録された屋久島の自然共生の道、未利用材から集成材を開発し省エネ住宅にこだわる北海道の住宅メーカ、交通信号用省エネ青色高輝度発光ダイオードLEDを開発した日亜化学工業、自動車シュレッダーダストの溶融燃焼発電センタに取り組む自動車金型メーカ、ISO環境認証機構を設立した日立製作所の福島氏、オフィス街の紙回収に先鞭をつけた東電の中谷氏、川崎製鉄と協同でゴミ固形燃料化RDFセンタを設立した伊藤忠の滝本氏、25年をかけ公害都市を克服しその経験を中国に伝える北九州市、最悪の大気汚染地域からの脱却を図る板橋区の取り組み、地域企業が協同して廃棄物処理を行なう山梨県国母工業団地、風力発電所建設にとりくむ山形県立川町などの活動が紹介されている。若干サクセスストーリ臭さがあり、現状はどうなのか疑問は残る。だが「小さな一歩が重要」を肝に銘じよう。


資源循環型社会への道

経済成長と環境保全、地球資源枯渇は地球規模での矛盾(グローバルトリレンマ)であるが、持続可能な発展のためには資源循環型社会への転換が不可欠である。そのために産業クラスターの形成(企業協調)と環境税など経済的手法の導入(政府政策)が車の両輪になる。


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