松井茂記 著 「情報公開法入門」


岩波新書(2000年)


      

「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(情報公開法)がようやく1999年5月に成立した。施行は2001年4月1日からとなる。情報公開はすでに世界の潮流であり、日本でもすべての地方自治体で実施されている。国の行政機関が最後になった。企業関係では国に届けた情報の一部、たとえばPRTR情報(化学物質排出)は公開されることが前提であり、情報公開法と期を一にして実施される。この時期に情報公開法の概要を記す大阪大学法学部松井教授の本書が上梓されたことはまことに時宣をえたものであり、リスクコミュニケーション関係者の一読を願う。

1) 情報公開法の根拠   法第1章[総則]第1条[目的]

情報公開は憲法第21条「表現の自由」に基礎をおく。国民が憲法の保障する権利を公使し国政について最終的決定を下すには政府の諸活動を知る権利が保障されなければならない。これはインターネットなどにより政府広報を窺い知ること、「情報提供」とは決定的に違う。米国では国民の「知る権利」として定着し民主主義に不可欠の要素となった。しかるに本法では国民の「知る権利」は明記されず「説明責任」という官主導の論理が残った。しかし官の抵抗は見えるものの法の示す内容は大きな前進と評価される。

2) 情報開示の対象機関・対象情報  法第2条第1項[行政機関]、第2項[行政文書]

国の総ての行政機関が対象機関とされたが、実質的に政府が支配する政府外の法人いわゆる「特殊法人」等は対象機関にはあげられていない。行政文書とは行政機関が組織的に用いるために職員が作成・取得した文書・図面・電磁的記録したものをいう。国民が一般に入手可能な刊行物は含まない。

3) 開示請求の仕組み  法第3条から第18条まで開示の流れに沿って解説する。

*第3条[請求権] 何人も行政機関の長に請求できる。(外国人、法人も可能)
*第4条[開示請求書] 行政文書を特定できる事項の記載が不充分でも行政機関は補正参考情報を提供する義務がある。
*第5条 [原則開示] 公開対象外文書は4)に示した。
第6条[開示決定]  開示決定(全部開示、部分開示)または不開示決定をする。部 分開示とは行政文書のなかに不開示情報が含まれる際はその部 分を除いて開示する。
*第7条 [裁量的開示] 不開示情報は公開を禁止されているわけではない。裁量的開示は可能
*第8条 [開示拒否]  文書の存在を明らかにする事が情報開示にあたるときは拒否できる。(犯罪等)
*第9条 [決定の通知]  開示の実施について文書で通知する。開示拒否理由も通知す る。
*第10条[決定期限] 30日以内
*第11条[分割開示] 文書が大量の場合、相当部分を30日以内に開示決定を行なう。
*第12条[事案の移送]  他の機関が該当する場合、事案を移送できる。
*第13条[第3者の意見提出機会] 情報に関係する第3者の意見を聞く機会を設ける。
*第14条[開示の方法] 文書、図面、電磁的記録
*第16条[手数料] 手数料を収入印紙で支払う。減額・免除も可能
*第17条[決定権限の委任] 下部実施機関へ委托
*第18条[不服申立てによる情報公開審査会] 開示拒否に対する救済。行政不服審査法に基づく。
      イ ンカメラ審査、ボーンインデックス提出命令
*第4章 [補則] 文書管理ガイドラインの整備に努める義務。インデックスや電子閲覧室の設置など

4) 不開示情報(第5条関係)

個人情報(公務員の職務は開示)、法人情報(公益優先情報は開示)、国の安全・外交情報、公安情報、意思形成過程情報、行政執行情報。さらに詳細は判例を参考にする。


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