「予防原則」に関する欧州委員会ECのリスクコミュニケーション

     

昨年12月1日EU製品安全性委員会(EUEPC)は3歳未満の幼児向けフタル酸エステル含有塩ビ製玩具の使用禁止を決定した。 毒性委員会(CSTEE)委員長の談話「玩具中のフタレートが幼児の健康に恐怖を与えると言う科学的根拠はなく、高い優先順位にあるとは思えない。しかしCSTEEは今回のEC決定に反対はしない。欧州では米国と違って公衆の関心事には科学的に根拠が明確でなくとも予防原則をとる傾向がある。」また米国のヒト生殖リスク評価センタ(CERHR)は昨年12月15日に第2回フタル酸エステル会議を開催し、プラスチック玩具に含まれる柔軟材曝露による幼児に対する内分泌かく乱作用は心配するにあたらないとするリスク評価結果を公表した。このように化学物質に対するリスク評価が欧米で著しい相違を示した。
日本では今年2月9日の朝日新聞は、「環境ホルモン全国市民団体テーブル」による玩具人形のフタル酸エステルとビスフェノールAの溶出試験結果を引用して玩具業界の対応を伝えた。このように最近、科学的根拠が曖昧なまま、欧州のように行政的禁止措置をとったり、日本のように業界の自主的対応を求める圧力が横行するようになった。今回欧州の予防原則に関するガイドライン文書が入手できたので、その主張を紹介する。今後日本は欧米のいずれに近い方向へゆくのか注目される。
   欧州ECは「予防原則」に関するリスクコミュニケーションを開始した.。欧州委員会は今日(2月2日)、予防原則に基づくリスクコミュニケーションを開始した。コミュニケーションの目的はECがどのように予防原則を適用するかやどんな適用ガイドラインを作成したかを関係当事者・団体に情報を提供することである。さらにEUおよび国際レベルで進行している問題のデータベースを作成することも目的の一つである。
予防原則はリスク解析とリスク管理に対する組織的取り組みの一環であることを強調したい。科学的な証拠が不充分,不完全であるが、環境やヒト、動植物の健康に与える危険性がEUの選択した保護策に脅威を及ぼすと考える正当な理由がある場合に予防原則が適用される。今日のECリスクコミュニケーションは、最近採用された食品安全白書や生物安全性プロトコルに関して合意に達したモントリオール議定書の結果を継続発展させるものである。

ECが提示する予防原則適用ガイドライン

釣合いの基準

施策はECが選択した保護のレベルに釣合うことが必要である。リスクは決してゼロには出来ないし、不完全なリスクアセスメントは逆にリスク管理策の選択の幅を狭めることになる。

非差別の基準

状況が似ていれば異なった対応をしてはいけない。異なった状況では正当な理由がなければ一律の施策をしてはいけない。

一貫性の基準

あらゆる科学的データを用いた過去の施策と、新規な施策はその性格、内容において一致しなければならない。

費用/利益調査の基準

施策に必要な全費用と、施策を行なわ無かった時に社会が支払う全費用を短期、長期に付いて比較することが必要である。これは単純な経済的コスト/ベネフィット分析ではない。

再評価の義務の基準

予防原則に基づいた施策は、科学情報が不完全で決定的データがなく、リスクが依然として高い状況が続くならば維持継続されなければならない。新しい科学上の進歩による知見に基づいて、施策は定期的に見直し必要なら訂正しなければならない。

科学的根拠立証責任の基準


  

施策の当然の結果として、危険だと思われる製品に関して市場当局者に使用許可を要求された場合、逆に製品が安全であると主張できる科学的データを企業に作成するよう求めることができる。


   
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