Livio D.deSimone(3M 会長)、Frank Popoff(ダウケミカル会長)著

山本良一監訳  「エコ・エフィシエンシーへの挑戦」

(日科技連 98年11月初版)

1992年リオサミット以来、産業界はアジェンダ21に則った活動を展開し持続可能な発展の道を追い求め実践してきた。持続可能な発展とは経済的には資源に付加価値を与え有効に活用しながら全体の繁栄を確保する事である。環境的には地球の供給能力、吸収能力、回復能力を超えないよう調整し、社会的には人間をすべての中心に置き機会平等、社会正義、自由を確保するという調和的、継続的な人間活動である。

1、持続可能発展のための世界経済人会議(WBCSD)

WBCSDは環境破壊を伴わない開発に関連した問題を経済界に訴えるための活動を行う国際機関である。リオサミット以来、持続的発展の重要性を認識して実際の経営戦略に組み込んできた先進企業は環境効率(Eco-efficiency)という原則で経済的価値を創造する活動を開始した。WBCSDは将来を見据えて予防策を講じる姿勢と、企業の最高責任者が活動のリーダシップを発揮することを特徴とする。

2、環境効率の7つの要素

1)製品、サービスの物質集約度の低減
2)製品、サービスのエネルギー集約度の低減
3)有害物質の拡散抑制
4)材料のリサイクル利用の向上
5)再生可能資源の最大限の持続的な活用
6)製品耐久性の向上
7)製品利用密度の向上


3、環境効率と企業利益

環境効率は価値創造の企業的概念で、優れた環境対策活動は必ず優良企業を生み出すと理解されるべきである。規制やリスクからの服従意識や回避主義からの脱却と企業の環境や社会への配慮が市場や社会での評判を向上させる。長期的に環境パフォーマンスと企業利益は結ぶつくものである。

4、環境経営の効率化

環境効率を高める上で企業内部には多くの障害が存在する。コスト、技術、世論、経営資源、やる気、経営者・従業員の認識不足などの障害を克服するため多くの精神的側面の重要性が指摘される。中でも企業の自己防衛的姿勢は非建設的だけでなく疑惑と反感を招き易い。透明で開放的な企業文化が環境効率の推進にとって最大の効果を発揮することを銘記すべきであろう。

5、環境効率のためのパートナーシップ

監督官庁の命令と管理は柔軟性を失いコスト高に繋がり易いため、つぎの5つの政策的原理を採用するべきである。
@結果責任を伴う規制(協定的政策)
A製造者責任制の拡大
B環境税などの市場原理の活用(インセンティブ政策) 
Cパートナーシップ
D環境技術の開発導入
パートナーシップとは企業内、市場関係者、科学界・学会、市民団体NGO、国際機関と段階的な対話と連携である。そのためにはイーストマンコダック社のようにNGOと経営者との対話を進め、プロクタ&ギャンブル社のようにNGOを経営に参加させる事も視野に入れなければ消費製品企業の将来は暗い。


環境書評に戻る

ホームに戻る
inserted by FC2 system