サックスの寵児ジョン・コルトレーン  駆け抜けた60年代 

重く情念的、過激なヘビーサウンドジャズの旗手


60年代の日本のジャズ喫茶では、ジョン・コルトレーン一色であったという。私は不良ではなかったのでそういう場所には出入りしなかったので、真偽の程は知らないが、硬派の旗手であったのがコルトレーンである。ジョン・コルトレーンは1926年生まれで、マイルス・デーヴィスに認められて1955年グループに入団した。1955−56と1958−60はマイルスクインテットで活躍したが、ひどい麻薬と酒でマイルスから首にされたり、マイルスと意見が合わなくなってセロニアス・モンクに預かりとなった。1957年マイルスから首になった時、ピアニスであったトセロニアス・モンクに弟子入りをしてハーモニックス奏法を学んだ。ヤクを断って、1958−1960の間は、マイルスバンドで再出発した。数多くのレコーディングをなしとげ、マイルスのモード奏法のもとで自在なサックスを吹きまくった。マイルスのところでも紹介したが、アルバムROUND ABOUT MIDNIGHT(1956)、MILESONES(1958)、KIND OF BLUE(1959)のメンバーに参加している。60年夏から自分のバンドで活躍し始めた。鮮烈・過激な演奏でジャズ界をリードした。先鋭的なロックミュージックにも影響を与えた。1950年代後半から60年代は黒人人権運動の高まりの文脈でジョン・コルトレーンの活躍を見る必要がある。「音楽を通じて平和と平等を訴える」ことがコルトレーンの理念だったそうだ。ジョン・コルトレーンとエリック・ドルフィーはまさに過激なジャズの好ライバルとして60年代の話題をさらったが、ジョン・コルトレーンは1967年40歳で亡くなった。ジョン・コレトレーンの名義になるアルバムは次のものなどである。
COLTRANE(1957),LUSH LIFE(1957),BLUE TRANE(1957),THE LAST TRANE(1958),SOULTRANE(1958),STANDARD COLTRANE(1958),COLTTRANE TIME(1958),GIANT STEPS(1959),MY FAVORITE THINGS(1960),LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD(1961),BALLARDS(1962),JOHN COLTRANE AND JOHNNY HARTMAN(1963),LIVE AT BIRDLAND(1963),A LOVE SUPREME(1964),THE JOHN COLTRANE QUARTET PLAYS JOHN COLTRANE(1965),COLTRANE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD AGAIN!(1966),EXPRESSION(1967)

ジョン・コルトレーン  オリジナルアルバム集
アルバム名とCDカバー 収録曲名とメンバー メ    モ
1:JOHN COLTRANE ANTHOLOGY 1956-1958
ユニバーサルビクター1997


1.TRANE'S BLUES(アルバムWORKING1956より)
2.SOULTRANE(アルバムMATING CALL1956より)
3.VIOLETS FOR YOUR FURS(アルバムCOLTRANE1957より)
4.I HEAR A RHAPSODY(アルバムLUSH LIFE1957より)
5.NUTTY(アルバムTHELONIOUS MONK WITH COLTRANE1975より)
6.BLUE TRAIN(アルバムBLUE TRANE1957より)
7.COME RAIN OR COME SHINE(アルバムTHE LAST TRANE1958より)
8.I WANT TO TALK ABOUT YOU(アルバムSOULTRANE1958より)
9.SPRING IS HERE(アルバムSTANDARD COLTRANE1958より)
10.JUST FRIENDS(アルバムCOLTTRANE TIME1958より)
この企画は1956年から1967年までのジョン・コルトレーンの活躍時の代表的な曲を年代順に並べたもので、2枚のCDにまとめられた。前半(1956−1958)のCDには左の10曲が納められている。この時期はマイルスバンドとの関連なしには語れない。バップからモードジャズの時代である。1.TRANE'S BLUESはマイルス・デービスのアルバム「ウォーキング」から採られた。すばらしいブルースを聞かせてくれる。 2.SOULTRANEはダメロンのアルバム「マッティングコール」より採られ、ソウルフルなバラードのデキがいい。 3.「コートの菫を」はコルトレーン初リーダー作品である。バラード 4.I HEAR A RHAPSODYは早いスウイング。 5.NUTTYは師モンクのアルバムから採られた。 6.BLUE TRAINはハードバップでブルースが刺戟的 7.COME RAIN OR COME SHINEではピアノ:レッド・ガーランド、トランペット:ドナルドバードと気の合う演奏でスタンダードナンバー。 8.I WANT TO TALK ABOUT YOUはバラード 9.SPRING IS HEREはアップテンポなモード演奏 10.JUST FRIENDSはフリージャズのティラーとの競演で貴重なアルバム。
2:JOHN COLTRANE ANTHOLOGY 1959-1967
ユニバーサルビクター 1997


1.GIANT STEPS(アルバムGIANT STEPS1959より)
2.MY FAVORITE THINGS(アルバムMY FAVORITE THINGS1960より)
3.SOFTLY,AS IN MORNINNG SUNRISE(アルバムLIVE AT THE VILLAGE VANGUARD1961より)
4.IN SENTIMENTAL MOOD(アルバムDUKE EKINTON & JOHN COLTRANE1962より)
5.SAY IT(アルバムBALLARDS1962より)
6.THEY SAY IT'S WONDERFUL(アルバムJOHN COLTRANE AND JOHNNY HARTMAN1963より)
7.ALABAMA(アルバムLIVE AT BIRDLAND1963より)
8.PART1:ACKNOWLEDGEMENT(アルバムA LOVE SUPREME1964より)
9.CHIM CHIM CHEREE(アルバムTHE JOHN COLTRANE QUARTET PLAYS JOHN COLTRANE1965より)
10.NAIMA(アルバムCOLTRANE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD AGAIN!1966より)
11.OGUNDE(アルバムEXPRESSION1967より)
コルトレーンは1959年はマイルスデービスセクステットで活躍したが、モード奏法でもハーモニーを重視した。1960年より独立しソロの長さと速さと重さの三拍子の所謂コルトレーンミュージックに突き進む。ソプラノサックスの開眼したのもこの時期である。黒人社会運動に参加し、インド哲学やアフリカ回帰と云う思想を深めていった。もはやジャズは楽しみを超えた時代の要求に沿った活動に変わった。そして演奏はますます難解になって、長大なソロを吹きまくり、団員の離反を招いた。自分の世界に埋没し、1967年肝臓がんで40歳の命を終った。2.MY FAVORITE THINGS 3.SOFTLY,AS IN MORNINNG SUNRISE 4.IN SENTIMENTAL MOOD 5.SAY IT 6.THEY SAY IT'S WONDERFULはスタンダードナンバーであるがアドリブでは凄まじい即興を聞かせる。ハートマンのヴォーカルとの2重唱6.THEY SAY IT'S WONDERFULは歌心満点である。9.CHIM CHIM CHEREEはスタンダードであるが、テーマを終えると直ぐに支離滅裂な逸脱にはいり、グループ解散の基になった。7.ALABAMAは殺された黒人の子供へのレクイエムで実に重苦しい演奏だ。 8.PART1:ACKNOWLEDGEMENTは神への捧げ物で、10.NAIMAは実に長いソロが重いバラードで、10.NAIMAでは美しいサックスを聞かせてくれてほっとする。
3:JOHN COLTRANE PLAY BALLADS
ユニバーサルビクター 1996


1.SAY IT
2.VIOLETS FOR YOUR FURS
3.I WANT TALK ABOUT YOU
4.SOULTRANE
5.YOU LEAVE ME BREATHLESS
6.LIKE SOMEONE IN LOVE
7.TIME AFTER TIME
8.RUBY,MY DEAR
9.IN A SENTIMENTAL MOOD
10.WHY WAS I BORN
11.MY ONE OND ONLY LOVE
コレトレーンは音の洪水と静かなバラードを使い分けている。バラードはコレトレーンの休息だったのだろうか。バラードではメロディも忠実に演奏しているの親しみやすい。このアルバムはバラードのオムニバスで、プレスティッジ盤、インパルス盤、リバーサイド盤から集めたものだ。11曲全部がホーン1本演奏で、シンプルで静かにに聞ける。1.SAY IT 2.VIOLETS FOR YOUR FURS 3.I WANT TALK ABOUT YOU 4.SOULTRANE 9.IN A SENTIMENTAL MOODは前の「JOHN COLTRANE ANTHOLOGY」 にでている。何も説明は要らない。そのまま聞けば腑に落ちるスタンダードばかりである。
4:SOULTRANE
ユニバーサルビクター1958


 
1.GOOD BAIT
2.I WANT TO TALK YOU
3.YOU SAY YOU CARE>br>4.THENA FOR ERNIE
5.RUSSIAN LULLABY

テナーサックス:ジョン・コレトレーン
ピアノ:レッド・ガーランド
ベース:ポール・チェンバース
ドラム:アート・テイラー 
マイルス・デービスバンドにいた時期に録音されたアルバム「SOULTRANE」(1958)は間違いなくコルトレーンの名演奏に分類される。比類ない美しさを持っている。モードジャズのはしりを髣髴とさせる。1.GOOD BAITはバップのスタンダードナンバーで、メロディをゆったりと太く吹いている。2.I WANT TO TALK YOUもバップ期のスタンダードで、コレトレーンバラードの典型といわれている。4.THENA FOR ERNIEも若死にしたサックス奏者を悼んで作ったナンバーで哀調を帯びたバラードの名曲である。5.RUSSIAN LULLABYはシーツオブサウンドの典型でハードな演奏が魅力である。


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