イザーイ 「無伴奏ヴァイオリンソナタ」(作品27)を聴く


モルドコヴィッチとツィマーマンのCD2枚を聴く



バッハ没後最高の無伴奏バイオリンソナタはベルギーブリュッセル生れのイザイ(1858〜1931)のソナタ集であることは衆目の一致するところである。このイザイの無伴奏バイオリンソナタ無くしては後年の一群の無伴奏バイオリンソナタは考えられない。しかしイザイの無伴奏バイオリンソナタが演奏されることは少ない。この作品は1923年イザイ晩年の65歳に作曲された。シゲティのバッハ演奏に刺激されて生まれたという、まさにバイオリン以外には演奏の仕様が無いヴァイオリンのための作品である。イザイは丸1日で全6曲のスタイルの異なる作品のスケッチを行ったという伝説がある。イザイの天才とヴァイオリンにこめられた技術・楽想が集約された傑作であろう。しかし下の6曲の構成に示すように完結したソナタは第1番、第2番、第4番のみで、ほかの作品は動機のみである。

第1番でバッハへの敬意を表して、第2番ではバッハを乗り越えるための意思を示し、第3番以降は自らの足取りと試みを提示してゆく構成になっている。

(1)試聴システム

私のオーデイオシステムを下の写真に示す。タンノイスターリングを直熱3極管300Bシングルアンプ(7W)でドライブした。

  

トータル試聴システムの装置仕様
CDプレーヤ:TEACのVRDS-50:フルエンシー理論(20KHz再生)RDOT類推補間技術、VRDSメカニズム
真空管式コントロールアンプサンオーディオSVC-200: ECC82×2本 10Hz-100KHz タムラSPT-P1
メインアンプ直熱3極管300Bシングルアンプ(7W):アドバンス ステラHC-1(300Bは中国製OldTime)(上の右の写真)
スピーカタンノイ スターリングHE:10インチ同軸2ウエイ、能率91dB、クロスオーバ1.7KHz、35Hz〜25kHz
スーパツィータータンノイ ST-200: 25mmチタンドーム型、能率95dB、18KHz〜100KHz


(2)イザーイ 「無伴奏ヴァイオリンソナタ」の試聴CD

ヴァイオリン独奏はモルドコヴィッチとツィマーマンのCD2枚を試聴した。全6曲の演奏時間はモルドコヴィッチの演奏で76分にもなる大作である。そこで今回は第1番と第2番について試聴して感想を述べる。独奏ヴァイオリン演奏者のリディア・モルドコヴィッチは旧ソ連生まれ、モスクワ音楽院でルーベンシュタインに師事し、1974年イスラエルに移住、1979年英国デビューを果たし、1982年アメリカでデビューした。一方フランク・ピーター・ツィマーマンはドイツ正統派の筆頭株という風評が一般的である。美音が特徴だが際立った個性が少なく不満が残るといわれる。「抜群の安定感があるが、クレメールのような切れすぎる個性が感じられない」という下世話評がある。
モルドコヴィッチの演奏は刺激的で挑発的でさえある。ある意味で強い意志の演奏である。ツィマーマンの演奏は力強さはないが音の連続性に優れ、聞き疲れのしない滑らかな演奏になっている。ツィマーマンのCDは音量が小さいのでボリュームをあげて聴くことにした。これはミキシングのとき音色付けがなされているのであろうか。また曲の演奏時間が極端に短い。第1番でモルドコヴィッチの演奏(19分36秒)より5分も短い。第2番で2分短い。繰り返しの省略か、譜版が違うのか。

   
ヴァイオリン独奏:リディア・モルドコヴィッチ
1986年1月録音DDD chandos  
バイオリン独奏:フランク・ピーター・ツィマーマン
1993年録音DDD EMI
第1番
第1楽章(レントアッサイ):強音で主題が開始される、刺激的な展開の後、弱く繊細な高音弦が印象的
第2楽章(モルトモデラート):高音弦で主題が繰り返され、強い上昇を挟んでメロディーが復活、後半は強い音
第3楽章(ポコスケルッツオ):静かな導入部があって高音弦が優しいメロディーを奏でる
第4楽章(アレグロフェルモ):強いフィナーレの中にも悲しいメロディーが聞こえる


第2番
第1楽章(ポコビバーチェ):強弱の明確な演奏で生き生きとした動きが感じられる
第2楽章(ポコレント):静かな黄昏のような演奏、深い思索の後消え入るように終わる
第3楽章(レント):強い弦をはじく音で始まり、主題が静かに展開される、生き生きした高音弦の動きから強音に変化
第4楽章(アレグロ):躍動的なフィナーレ、高音弦の繊細な動きも面白い
第1番
第1楽章(レントアッサイ):聞き逃すような弱い音で開始される、音の変化が実に滑らか、中低音の響きが豊か、繊細な高音弦の静かな動きでエンディング
第2楽章(モルトモデラート):弱音で主題に入り次第に強く展開される、強いが聴きやすい音である
第3楽章(ポコスケルッツオ):いきなりスケルッツオから入り全体として繊細な演奏
第4楽章(アレグロフェルモ):力強さはないが中庸にまとまった演奏


第2番
第1楽章(ポコビバーチェ):生き生きした演奏で実に滑らかに進行する、音の連続性が顕著
第2楽章(ポコレント):消え入るような静けさ
第3楽章(レント):強い弦をはじく音で始まり、主題が静かに展開される、中低音の響きが豊かに聞こえる
第4楽章(アレグロ):フィナーレの主題を高音弦の繊細さで演奏


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