オーディオシステム

オーディオ雑誌例えば私が定期購読している「無線と実験」などには、「夢のリスニングルーム」コーナーがある。その記事と写真をみていつも私は羨望のため息をつく。金のことを言っては音質には邪道だと言われるかもしれないが、少なく見積もっても3百万円から1千万円くらいのシステムである。お医者さんかオーナ社長またはオーディオ専門家でなければ買う気になれないものばかりである。たまにサラリーマンの紹介があるが、人生の全てと女房の怒り狂う声を天秤にかけなければ決断できないはずである。ちなみに私のオーディオシステムは定価で150万円ぐらい(秋葉原で買うと30-40%引きである)になる。それも数年かけて少しずつ買い足していった物である。パソコンも欲しい健全で円満な家庭のサラリーマンの小遣いの範囲ではそれが限界である。だからオーディオ雑誌の記事は参考にはならない。「一本数百万円のスピーカやアンプが買えるわけないでしょ。そんな装置の音質の話を聞いても仕方ないでしょ。」と開き直ったところから私のささやかなオーディオシステムの話が始まります。


私のささやかなオーディオ遍歴

このコーナーの最初の「挨拶」のところで簡単に私のささやかなオーディオ遍歴を述べたが、現在のシステムに至る経過と音の傾向を振り返ってみたい。
@最初、デンオンのシステムコンポを買った(約30万円くらい)が、すぐに本格的なシステム構成を考えスピーカーをヤマハNS1000X(2本で約25万円)にアップグレードしたつもり。CDをソニー(約14万円)に、インテグレイテッドアンプをヤマハAX1000a(約20万円)にしてこれでバランスをとって一段落しました。このときの音質はやたら元気のいい当時の流行の堅い音質です。今から思えばこの音質はスピーカーのヤマハNS1000Xによって決定されていたようです。30cmウーハが非常に堅くてヤマハAX1000aのアンプではほとんど鳴らしきれていなかったようです。電子楽器が主のポップには向いてはいたのでしょうがこの硬質な音に嫌気がさして、さらなるシステムの改善に向かいました。
Aスピーカーを英国BBCご用達のスペンドールSP3(ブックシェルフタイプ、2本で約11万円)に、CDはフィリップス(約15万円)に変更したところ非常に柔らかい音質に変りびっくりした事を覚えています。それからはスピーカは英国製に限るという変な確信をもちました。アンプが壊れたのでサンスイAU−907XR(約25万円)に変更しました。そして十年前ごろから友人に真空管アンプに長けた人がいたのを機会に、色々意見を聞きかつ影響を受けつつさらに音質に改良を志しました。以後は半導体アンプは廃止し全面的に真空管式アンプのシステムに鞍替えしました。
Bスピーカは英国タンノイのスターリングHE(定価48万円 購入約30万円)とタンノイスーパツィーターST200(定価25万円 購入約16万円)、メインアンプは名機真空管マッキントッシュMC240(出力管6L6GC,プッシュプルアンプ 20W  中古品で約25万円)、コントロールアンプはサンオーディオ真空管SVC200(10万円)、CDはTEACのVRDS50(定価25万円 購入約17万円)としたのが現在のシステムになっています。狙いはタンノイの同軸2ホーンスピーカであるスターリングHEによるクラシック向きの音質とスーパツィーターによる20KHz以上の超高音再生による音質変化を見るためです。CDはスーパオーディオSACDにしようかどうか迷った挙句、SACDのソフト不足で見送り、TEACのCDが擬似倍音再生という趣旨でスーパツィーターによる20KHz以上の超高音再生に資することから選択しました。なおパワーアンプには真空管直熱3極式出力管300Bシングルアンプ(8W)を購入して、真空管300Bを中国製やロシア製、スロバキア製に取り替えては音色の違いを楽しんでいました。ソロや室内楽には300Bシングルアンプを、交響曲やピアノ曲にはマッキントッシュプッシュプルアンプMC240を使用しております。主にパワーとスピード感に違いがあり、CDによってアンプを交換しています。これでクラシック音楽再生では一応の音質が出ていると考えています。何度も言いますがオーディオ再生の要はスピーカで決まるといっても過言ではありません。いまはタンノイスターリングHEの音です。ケーブルなどの変更による音質向上は確認できませんでした。アースの有無、電源±コンセントの位置変更による音質変化もよく分かりません。

現在のオーディオ装置の特徴・仕様

つぎに各パーツの特徴を下に略記します。


TEACのCD:VRDS-50
フルエンシー理論(20KHz再生)RDOT類推補間技術、ノンフローティングVRDSメカニズム、強靭なボディ
真空管式コントロールアンプ:サンオーディオSVC-200
ECC82×2本 10Hz-100KHz   電源トランス タムラSPT-P1
パワーアンプ:マッキントッシュ MC240
出力管6L6GC2プッシュプルアンプ 出力40W、12AX7,12BH7,12AU7各2本と12AX7シールド管
直熱三極管300Bアンプ:ステラHC-1
シングルアンプ8W、300Bは中国製、スラバキア製、ロシア製
スピーカ:タンノイ スターリングHE
バスレフ、10インチデュアルコンセントリック(同軸2ウエイ)、能率91dB、クロスオーバ周波数 1.7KHz、周波数特性  35Hz-25kHz
スーパツィーター:タンノイ ST-200
25mmチタンドーム型、能率95dB(スターリングHEに対しては90.5dBを選択)、周波数特性カットオフ18KHzから100KHz
スーパツィータシステムによる音質変化

現在のシステムの狙いはタンノイの同軸2ホーンスピーカであるスターリングHEによるクラシック向きの音質とスーパツィーターによる20KHz以上の超高音再生による音質変化を見るためである事は先に述べました。現在のシステムでよく分からない事が2つありました。それはコントロールアンプの役割とスーパツィーターによる音質変化です。コントロールアンプを入れると音楽的雰囲気がよく出るといわれますが今一よく判別できません。またスーパツィーターによる音質変化もよく判別できませんでした。スーパツィーターの接続はメインスピーカより取っていました。ある日コントロールアンプの出力が2つあることにふと気がついて、スーパツィーターを別アンプで駆動すればどうかと考えました。そこでメインスピーカであるスターリングHEの駆動はマッキントッシュMC240(20W)で、スーパツィーター タンノイST-200をステラHC-1 300Bシングルアンプで駆動することにしました。チャンネルデバイダーによる周波数分割とイコライザーは持っていませんので、このような変則的分割を行ないました。タンノイスーパツィーターST-200がネットワーク回路を持っていることと、300Bアンプのボリュームでイコライザーの代行ができたようなものです。
するとはっきり分かる音質変化が出ました。おとに圧力が出来、チェンバロやピアノの高音に非常に繊細な余韻が響きます。説得力のある納得のできる音です。中音部は非常に引き締まった圧力を感じます。弦楽器はある意味で強い音に変化し体調によってはきつく感じるかもしれません。やわらかなスターリングHEの音の像がはっきりしてきました。ここに述べた音質はいうまでもなく他の機器の制約があるため、であくまで私のシステムでの話です。一般性はないと思います。

アキュフェーズ春日会長「オーディオ匠のこころを求めて」(2003年自費出版)

オーディオマニアには垂涎の的であるハイエンドメーカ・アキュフェーズ社の会長である春日次郎氏が自費で表題の本を出版したので、ホームページから申し込んで入手しました。ケンウッドから独立して、「高級品だけに的を絞った適量生産、小規模経営、商品も経営も世界一を目指した」アキュフェーズ社を立ち上げて30年、マッキントッシュを理想とするオーディオ機器の開発してきた春日氏の言葉に面白い話が尽きない。
*オーディオとは演奏会の追体験ではなく1世紀をかけて作られた文化である。つまり一つの虚像である(虚像といって悪ければ人工物である。それを文化という)。
*耳の悪い人には高級アンプやスピーカで音がよく聞こえるとはいえない。むしろ高度の耳を持った人だけに分かる差である。高級な音は投資額とは比例しない。
*オーディオメーカには連綿とした独自の音があり、それは作られた音で良し悪しではなく好き嫌いである。その音を頑固に守る事がメーカの存在意義である。同じような音が同じ金額で買えるとしたら、そのメーカの存在意義はない。消え去るのみである。
*客観的な音質評価法は難しい。短時間の目隠し切り替え試験では何も判別できないだろう。部屋、音楽ソース、他の機器との相性などなどの状況に合わせた聞き込みで主観的な評価の積み重ねが客観性をもつことがある。
かくのようにオーディオの音質は掴み所がないような、人の言うことは全く鵜呑みに出来ないような、厄介な代物です。自分の経験や文化や好みが密接に絡んできていますのでいわゆる総合芸術ともいえます。



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