モーツアルト弦楽五重奏曲・続編

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CDの表示パネルに半導体発光文字で[track],[index],[time:min,sec]が常時表示されている。最近は曲名などの情報が電光掲示板なみに流れるものもある。ところが私の持っている数千枚のCDのなかで、indexは表示されるが1のままであるものがすべてで、indexが時々刻々と変化するものは皆無である。ところがここにindexが時々刻々と変化するCDがある。DENON発売の「モーツアルト弦楽五重奏曲1番〜6番」クイケン弦楽四重奏団+寺神戸亮ビオラ  COCO-80076,-83087,-83423の3枚のCDである。しかもCDカバー裏の曲明細解説には楽章についでindexの内容が日本語で書いてある。これはスコアーで節の変化を追いかけるようで曲の構造理解には欠かせない情報になる。ああいい曲だとぼんやり聴いていた楽章も2つくらいの主題の提示と展開そして反復がからんだ構造になっていることが分かる。変な仮定だがもし繰り返しが無かったら曲の感動も理解もなくなること請け合いだ。絶えず新しい主題を入れなければならない作曲家も大変だ。ということで歌謡曲でも(私のホームページの「中島みゆきの魅力」のコーナーでも紹介した)さわりというかサビというものが執拗に繰り返され展開される。漢詩で言うところの対句・転句である。一定のリズムを持たなければ歌ではない。散文では口ずさむことは出来ない。

そこでまず、DENON「モーツアルト弦楽五重奏曲1番〜6番」の[track](楽章),[index](節)の記述を行い各節の意味と構成を示す。曲全体の印象は私個人の鑑賞に過ぎない。モーツアルト「弦楽五重奏曲1番〜6番」はすべて四楽章形式である。テンポ表示は第1楽章と第4楽章はアレグロ、第2楽章と第3楽章はアダージ、メヌエットもしくはアンダンテである。スコアーの読めない人にとって(ほとんどがそうだろうが)、このindexの記述はスコアーを眺めているように参考になる。どのCDもindexの解説があればさらに曲の理解が進むはずなのだが、大変な手間が必要なのだろうか?

弦楽五重奏曲 第1番 変ロ長調 K.174 (1773年12月 16歳 ザルツブルグ)
楽章[track] 節[index]の記述 (min'sec")
前半:茶字、後半:青字
各楽章の構成(上段は森泰彦氏の解説より、下段は私のメモ)
第1楽章
アレグロモデラート
12'51"
@前半:提示部:第1主題(0'00")
A推移(0'42")
B第2主題(1'02")
C終止主題群(1'52")
D推移(2'25")
E前半の反復(2'37")
F後半:展開部1:推移(5'11")
G展開部2:展開部本体(5'24")
H再現部:第1主題推移(6'11")
I推移(6'50")
J第2主題(7'22")
K終止主題群(8'10")
L推移(8'50")
M後半の反復(9'10")
Nコーダ(12'42")
@第1バイオリンが11小節をゆったりと歌い続いて1ビオラがそのまま繰り返す。
A交響曲的推移
B交響曲的属調主題
Cバイオリンがメロディーを歌い、そのあとディベルトメント風にいろいろな主題が提示される
D冒頭への回帰転調と後半への推移
E反復
F音楽がもう一度ト短調で鳴る
G3連符の終止音形で本格的な展開部
H再現
I〜Mまで調性を含めて同じ形で現れる。N7小節のコーダで終了する
4回も同じ音楽が繰り返されるがその都度別の音楽へつながるのが面白い。

*前半で第1、第2主題を提示し反復、後半で主題の展開と反復の合計4回の反復がある。
*後半のほうが変奏の自由度が大きいので面白い
*デベルトメント風の展開がいかにも優雅で楽しい
第2楽章
アダージョ
11'50"
@前半:提示部:第1主題と推移(0'00")
A第2主題(1'10")
B小結尾(1'40")
C前半の反復(2'34")
D後半:推移部(5'07")
E再現部:第1主題と推移(5'56")
F第2主題(6'52")
G小結尾(7'15")
H後半の反復(8'15")
Iコーダ
(11'24")
変ホ長調のアダージョ
前半・後半の反復

*第1主題は高域へ伸びる気持ちよさがいい
*第2主題は低音でゆっくりした運びである
*前半部はバイオリンの伸びが印象的、後半部は低音で暗示的に展開される
第3楽章
メヌエットマアレグロ
4'02"
@「メヌエット」:前半(0'00")
A前半の反復(0'11")
B後半(0'21")
C再現(0'37")
D後半の反復(0'50")

E「トリオ」:前半(1'15")
F前半の反復(1'39")
G後半(2'05")
H再現(2'20")
I後半の反復(2'44")
Jメヌエット再現(3'22")
「メヌエット」では第1バイオリンと第1ビオラの競争的掛け合い。「トリオ」ではバイオリン・ビオラ・チェロの2組のトリオが2群となって強音と弱音部を交替する。
*明るく軽快な協奏曲である
第4楽章
アレグロ
8'22"
@前半:提示部:第1主題(0'00")
Aフガート(0'09")
B第2主題1(0'22")
C第2主題2(0'45")
D結尾主題1(0'55")
E結尾主題2(1'05")
F推移(1'14")
G前半の反復(1'20")
H後半:展開部1(2'39")
I展開部2(2'47")
J擬似再現(3'04")
K減7和音の連続(3'20")
L再現部:第1主題(3'35")
Mフガート(3'43")
N第2主題1(3'56")
O第2主題2(4'20"))
P結尾主題1(4'34")
Q結尾主題2(4'44")
R推移(4'53")
S後半の反復(5'13")
21)コーダ(7'47")
22)楽章終止(8'11")
バロック時代の教会音楽の伝統を継いだザルツブルグ時代のフガート、4分の2拍子
A〜Eフガートでは2つの第1主題を持つ
F終楽章では第1楽章と同じく毎回推移がある
H〜Jはフガート主題により擬似再現をして
K大胆な減7和音の連続
L本当の再現部は形通り
*力強く活気にあふれた展開がめまぐるしい
曲全体の印象 モーツアルト「弦楽五重奏曲 k.174/614 クイッケン四重奏団+寺神戸亮 ザルツブルグ時代の成長したモーツアルトが喜遊曲(デベルトメント)を越えた弦楽五重奏曲を作った。デベルトメント的軽快さでいききとした展開が魅力的であるといえるが、 中には力強い迫力も感じられる。


弦楽五重奏曲 第2番 ハ短調 K.406 (1787年 30歳 ウィーン)
楽章[track] 節[index]の記述 (min'sec")
前半:茶字、後半:青字
各楽章の構成(上段は森泰彦氏の解説より、下段は私のメモ)
第1楽章
アレグロ
12'49"
@提示部:第1主題(0'00")
A第1主題確保および推移(0'40")
B第2主題(1'13")
C終止主題(1'53")
D前半の反復
(2'37")
E後半:展開部1:新主題(5'12")
F展開部2:第2主題(5'34")
G再現部:第1主題(6'10")
H第1主題確保及び推移(6'47")
I第2主題(7'30")
J終止主題(8'10")
K後半の反復(8'59")
バロック的な形と古典的な形式観が見事に融合した
@分散和音上行とトリルの冒頭主題と
Bなだらかな第2主題の対比
E〜Hの後半部では同主調のハ長調ではなく主調のハ短調で再現され
Iでは旋律が大きく姿を変える
*力強い第1主題
*優しい第2主題
*後半第1主題は短調で展開され力強い
*後半第2主題は切ないような気分にさせる第1バイオリンの高音
第2楽章
アンダンテ
4'06"
@提示部:第1主題と推移(0'00")
A第2主題(0'55")
B小結尾(1'28")
C展開部(第1主題)(1'45")
D再現部:第1主題と推移(2'40")
E第2主題(3'14")
F第2主題(3'30")
G小結尾(3'50")
平行調の変ホ長調のアダージョ8分の3拍子のシチリアーノ調
@〜Cの前半とD〜Gの後半の反復が前半は管楽器、後半が弦楽器へ主役が交代している
*冒頭第1主題はゆっくりして後半は力強くなる
*展開部第1主題はかなり遅い展開
*前半@〜Cは明(光)、後半D〜Gは暗(影)の展開
*Eの第2主題は間違った調では入り、Fの第2主題は正しい調ではいる工夫が面白い
第3楽章
メヌエット;アレグレット
4'13"
@「メヌエット・イン・カノーネ」:前半(0'00")
A前半の反復(0'27")
B後半(0'38")
C再現(0'53")
D後半の反復(1'17")

E「トリオ・イン・カノーネ・アル・ロヴォルシオ」:前半:提示(1'55")
F提示(転回形)(1'59")
G応答(2'04")
H応答(転回形)(2'09")
I前半の反復(2'13")
J後半(2'29")
K再現(2'36")
L後半の反復(2'50")
Mメヌエット再現(3'12")
対位法で有名なメヌエット
メヌエット前半@Aではチェロが第1バイオリンを1小節おくれで追いかける
B第1バイオリンを第2バイオリンが5度下で模倣する
Cビオラが入って3声のカノンになる瞬間がある
Eトリオでは4声部書法で第2バイオリンが主題を提示する
F第1バイオリンが2小節遅れで追いかけ
G第1ビオラが
Hチェロがそれぞれ2小節遅れで転回形で追いかける
*メヌエットは実に美しいメロディーで始まる
第4楽章
アレグロ
6'20"
@主題前半とその反復(0'00")
A主題後半とその反復(0'21")
B第1変奏(前半・後半の反復)(0'33")
C第2変奏(前半・後半の反復)(1'04")
D第3変奏(前半・後半の反復)(1'37")
E第4変奏(2'10")
F第5変奏:変ホ長調(前半・後半の反復)(2'44")
G推移(4'09")
H第6変奏:短調(4'16")
I第7変奏と推移(4'48")
J第8変奏:ハ長調(5'35")
終楽章アレグロはハ短調、4分の2拍子の変奏曲、ロンド主題の魁
ロンドの簡潔な主題は息つく間もなく多様な形に変えながらハ長調で全曲を終わらせる
*変奏が緩・急・伸びやか・軽快・静か・活気などめまぐるしく変化して活気がありかつ美しい曲
曲全体の印象 モーツアルト「弦楽五重奏曲 k.406/593 クイッケン四重奏団+寺神戸亮 ・管楽合奏曲風の作品(原曲は「セレナーデ」 ハ短調K.388)
・原曲は管楽器8本のにぎやかな曲をしっとりとした弦楽五重奏に変えている

*終楽章アレグロの第1〜第8の変奏曲は実に多彩でかつ静かな曲である


弦楽五重奏曲 第3番 ハ長調 K.515 (1787年4月 30歳 ウィーン)
楽章[track] 節[index]の記述 (min'sec")
前半:茶字、後半:青字
各楽章の構成(上段は森泰彦氏の解説より、 下段は私のメモ)
第1楽章
アレグロ
13'50"
@提示部:第1主題(0'00")
A終止確認と推移(1'43")
B第2主題(2'20")
C終止小節及び終止主題(3'30")
D前半の反復
(4'04")
E後半:展開部1:第1主題(8'07")
F展開部2(8'35")
G展開部3:終止主題(9'12")
H再現部:第1主題(9'30")
I終止確認及び推移(10'30")
J第2主題(11'10")
K終止主題(カデンツア)(12'35")
L終止小節および終止主題(13'25")
@ベートーベンのワルトシュタインソナタの手本になった長大なチェロと第1バイオリンの対話による第1主題(56節)
B静的な半音階の第2主題
C長い終止主題で展開部EFにつながり、KLの末尾でも壮大なコーダを作り上げる

*第1主題は美しいメロディーで天国的な第1バイオリンと低いチェロの掛け合いにビオラの忙しげなトリルが活気をもたらすこの部分だけでも第3番を代表的な名曲とする
*第2主題は静かなメロディーが後半を支配するが毒した主題になっていない
第2楽章
メヌエットアレグレット
5'00"
@「メヌエット」:前半(0'00")
A前半の反復(0'12")
B後半(0'22")
C再現(0'42")
D後半の反復(1'02")

E「トリオ」:前半:主題(1'43")
F属調主題(2'00")
G前半の反復(2'10")
H後半:展開(2'39")
I再現(2'54")
J属調主題の主調再現(3'11")
K後半の反復(3'20")
Lメヌエット再現(4'06")
中間楽章は「メヌエット」とアンダンテの順序が入れ替わったとされる。
@「メヌエット」は低音部なしで開始され、なだらかな山形のメロディーラインで壮麗軽快な曲のはずが、短調に傾く半音が随所にかげを落とすため不安が付きまとう
E「トリオ」でもその不安は消えない
*メヌエットはなだらかな山、バイオリンが活気を作るが後半は不安な気分
*トリオは属調主題が活発にリズムをつくるが、不安は消えない
第3楽章
アンダンテ
9'30"
@提示部:第1主題(0'00")
A推移(0'55")
B第2主題(2'20")
C回帰転調(4'05")
D再現部(4'35")
E推移(5'29")
F第2主題(6'50")
G第1主題後半による終止(8'52")
モーツアルトの典型的なアダージョ楽章で、第1バイオリンと第1ビオラの豊かな二重奏になっている。情感あふれる世界
*第1主題は情感あふれるアダージョ、ビオラがリズムを生む
*長い第2主題はバイオリンの静かなメロディーをチェロが下支えする
第4楽章
(アレグロ)
7'40"
@ロンド主題(ルフラン)(0'00")
A副主題及び推移(0'48")
B属調主題(第1クーブレ)(1'25")
Cロンド主題による終止(2'00")
D終止主題と推移
(2'36")
Eロンド主題(ルフラン)(2'59")
F副主題および推移(3'45")
Gロンド主題の展開(4'10")
H推移へ復帰(4'40")
I属調主題(第1クーブレ)(5'02")
Jロンド主題による終止(5'40")
Kロンド主題によるコーダ
(6'16")
ロンド形式のようで実は「展開部の無いソナタ形式」でもある

*ロンド主題は軽快なリズムで美しいメロディー
*副主題は力強い音
*属調主題は第1バイオリンが繊細なメロディーをかなでる
*第4楽章は壮大で流麗にまとめられている
曲全体の印象 モーツアルト「弦楽五重奏曲 k.515/516 クイッケン四重奏団+寺神戸亮 壮大流麗なハ長調の第3番K.515と劇的なト短調の第6番K.516はおそらく対比関係で同時に仕事が進められたらしい。
*弦楽五重奏曲第1、第2番と比べても壮大で流麗に出来ている名曲である
*3番からデベルトメントを卒業して古典派的代表作になった


弦楽五重奏曲 第4番 ト短調 K.516 (1787年5月 30歳 ウィーン)
楽章[track] 節[index]の記述 (min'sec")
前半:茶字、後半:青字
各楽章の構成(上段は森泰彦氏の解説より、 下段は私のメモ)
第1楽章
アレグロ
14'29"
@前半:提示部:第1主題(0'00")
A第2主題(0'54")
B第2主題終止部:第1主題(2'00")
C小結尾及び推移(2'30")
D前半の反復(2'49")
E推移(5'37")
F後半:提示部:第1主題(5'45")
G第2主題(6'00")
H再現部:第1主題(6'45")
I第2主題(7'45")
J第2主題終結部(8'43")
K小結尾及び推移(9'21")
L後半の反復(9'40")
Mコーダ(14'02")
@上3声のみで第1主題が始まり、下3声が答えるのは8節目から。上行する分散和音動機の支配力は強い
A独立した第2主題になっていない
B〜Eずっと第1主題の支配力が継続する
*第1主題は美しいメロディーと軽快なリズムで傑作
*第2主題はほとんど第1主題に支配されているが、ビオラのしっかりしたリズムが印象的
*前半はリズミカルに明るいメロディー、後半は複雑で千変万化な変容が楽しいが重い暗いさすが短調の作品になっている
第2楽章
メヌエットアレグレット
4'20"
@「メヌエット」:前半(0'00")
A終止形(0'12")
B前半の反復(0'16")
C後半(0'31")
D再現(0'44")
E終止形(0'58")
F後半の再現(1'05")

G「トリオ」:前半(1'39")
H前半の反復(2'00")
I後半(2'22")
J再現(2'40")
K後半の反復(2'55")
Lメヌエット再現(3'28")
@下行形からスタートする「メヌエット」は弱拍の強打音や強拍の休符に満ちたリズムは強い効果を生んだ
G主部の終止形AEを変奏して主題となす「トリオ」は実に重苦しい
*前半のメヌエットは力強いチェロの対話が繰り返されるので重いリズムの効果になる
*後半のトリオは静かに暗いメロディーに支配される
第3楽章
アダージョマノトロッポ
8'24"
@提示部:第1主題(0'00")
A推移(1'23")
B第2主題と推移(2'45")
C再現部(3'49")
D推移(5'10")
E第2主題(7'00")
F第1主題の要素による終止(7'40")
@「展開部の無いソナタ形式」であるが濃密で暗い世界だ
ADの推移は拍子を無視した過激なリズム
*第1主題は暗いアダージョの始まり、低音の不気味な響きは動的ではあるが不安なリズム進行
*第2主題は軽快なリズムに変容し美しいメロディー
第4楽章
アダージョーアレグロ
10'45"
@序奏(0'00")
A主部:ロンド主題(ルフラン):第1部分と反復(2'54")
B第2部分と反復(3'17")
C副主題(3'48")
D第1部分と反復・推移(4'10")
E推移主題(4'58")
F属調主題(第1ターブレ)(5'17")
Gロンド主題(ルフラン):第1部分と第2部分推移(6'11")
H下属調主題(第1ターブレ):第1部分と反復(6'52")
I第2部分と反復(7'11")
J推移:副主題と推移による展開(7'30")
K推移主題(8'03")
L属調主題の主調再現(第1ターブレ)と推移(8'24")
Mロンド主題(ルフラン)(9'27")
N副主題による終止(10'00")
@モーツアルトでは珍しく終楽章がアダージョの序奏から始まる
A:ロンド主題(ルフラン)A,B:属調主題(第1ターブレ)F,C:下属調主題(第1ターブレ)Hとすると終楽章はA-B-A-C-B-Aの形式をとる
A第1バイオリンのバロック風の演奏は明るいト長調のロンドへ移行する
CAの終わり部分は第2楽章「トリオ」主題の変奏
FBの属調主題(第1ターブレ)は第1楽章の第2主題の長調化
H,Cの下属調主題(第1ターブレ)はクラヴィーア協奏曲K.488の終楽章ロンド主題からの拝借ということで縦横無尽に張り巡らされた引用関係に驚く
*序奏はゆっくりしたアダージョで長く哀しいメロディーが続くが、実に美しい
*ロンド主題は明るい明快なバイオリン演奏
*副主題は滑らかな短いテーマと軽快な変奏
*属調主題ターブレは実にいいメロディー、下属調主題ターブレは繊細なメロディー
*主題の展開が千変万化で充実した分厚い変奏群を構成している
曲全体の印象 モーツアルト「弦楽五重奏曲 k.515/516 クイッケン四重奏団+寺神戸亮 *第3番と並んで第4番ト短調はモーツアルトを代表的古典派作家とする名曲である
*第1バイオリンとチェロが動機の対話を繰り返し、肉声部3声(第2バイオリン、第1、第2ビオラ)が強力な刻みで支える。美しいメロディーと軽快なリズムが時を刻むモーツアルトの傑作
*第1楽章のりずむが全曲を支配、第3楽章の暗く重いアダージョ、第4楽章の変容極まりない展開に圧倒される


弦楽五重奏曲 第5番 ニ長調 K.593 (1790年12月 33歳 ウィーン)
楽章[track] 節[index]の記述 (min'sec")
前半:茶字、後半:青字
各楽章の構成(上段は森泰彦氏の解説より、 下段は私のメモ)
第1楽章
ラルゲットーアレグレット
12'24"
@ラルゲット序章(0'00")
Aアレグロ提示部第1主題(1'31")
B推移(2'10")
C第2主題(第1主題の変形)(2'27")
D小結尾及び推移(3'00")
E前半の反復(3'18")
F後半:展開部:第1主題冒頭による(5'02")
G第1主題後半による(5'45")
H再現部:第1主題(5'58")
I第1主題冒頭の展開(6'14")
J推移(6'40")
K第2主題(第1主題の変形)(6'55")
L小結尾及び推移(7'35")
M後半の反復(7'53")
Nコーダ:ラルゲット序奏の変形された再現(10'48")
Oプリモテンポ、第1主題(12'10")
@弦楽五重奏では唯一のラルゲット序章でチェロと上四声による対話が6回続いて劇的な和音進行に入る
A主要主題アレグロはホルン5度ではじまり激しい短調でかき乱され、4つの動機がすべて出揃った
B主題の反復は3つの動機の劇的な展開部となり短調で終了する
C独立した第2主題ではない、ホルン5度動機が対位法で掛け合う
D楽章前半は激しい和音や技巧をはさんで終局となる
E回帰転調と後半への受け渡し転調
F楽章後半の本格的な展開部がはじまる
G展開部の後半では激しさと安定の入り混じった和音進行
H再現部は著しく変形されNいきなり序奏の再現になる
O第1主題を反復して結ばれる
*前半はほとんど1つの主題で展開され第2主題は第1主題の変容である、後半は劇的な変奏・転回が繰り返される
*ラルゲット序奏は間をおいた低いチェロが6回反復され印象的
*アレグロ第1主題は低いところから上行する力強い動き
*第1楽章はラルゲット序奏とアレグロ第1主題が独立して配置されることが特徴である
第2楽章
アダージョ
7'14"
@提示部:第1主題(0'00")
A推移もしくは第2主題(短調)(1'04")
B小結尾(1'42")
C推移(2'13")
D展開部:第1主題(2'25")
E再現部:第1主題(3'50")
F推移もしくは第2主題(短調)(4'58")
G小結尾(5'40")
Hコーダ(6'29")
一切反復の無いアダージョ、ト長調
@静かな第1主題
A短調の激しい推移部が終われば第2主題の冒頭になる
まとまった旋律に欠ける楽章だが手の込んだアダージョであろう
*第1主題は静かな繊細なメロディーだが、第2楽章のメインは第2主題(短調)の美しいメロディーが劇的に進行するところにある
第3楽章
メヌエット;アレグレット
4'22"
@「メヌエット」:前半(0'00")
A前半の反復
(0'11")
B後半(0'18")
C再現(2声カノン)(0'33")
D小結尾(2声カノン)(0'50")
E後半の反復(0'59")
F「トリオ」:前半(1'41")
G前半の反復(2'00")
H後半(2'11")
I再現(2'25")
J後半の反復(2'49")
Kメヌエット再現(3'30")
第3楽章はアレグレットの「メヌエット」
@冒頭主題は3度下行音列F「トリオ」は反対の上行分散和音にはじまり、下三声はピッチカートで伴奏する。第1ヴァイオリンが異常な高音域を呈する
*メヌエットはかわいい繊細な曲、トリオは上行と下3声のピッチカートの小曲である
第4楽章
アレグロ
7'55"
@提示部:第1主題(ルフラン):第1部分とその反復(0'00")
A第2部分とその反復(0'17")
B推移(1'00")
C第2主題(第1クープレ、フガート)(1'15")
D第2主題(第1クープレ)終結部(1'28")
E小結尾:第1主題(1'47")
F推移以降の反復(1'54")

G後半:展開部(第2クープレ)(2'49")
H再現部:第1部分(反復なし)(3'48")
I第2部分(4'00")
J第2部部分での主題再現と第2主題(第3クープレ、フガート)の同時進行(4'10")
K第2主題(第3クープレ)終結部(4'24")
L意外な転調と転調部引用による拡大(4'43")
M小結尾:第1主題(5'08")
N後半の反復(5'19")
終楽章は6/8のアレグロ、ロンド形式を帯びたソナタ楽章
@冒頭主題第1部分
A冒頭主題第2部分は@と反復を持った複合3部形式
B冒頭動機は転調
Cフーガとして展開される第2主題
F丸ごと反復
H後半を丸ごと反復
*前半の第1主題は明るく軽快なリズムが力強く展開される、第2主題も軽やかなリズム
*後半は切れ目なしに激しく変化する主題
曲全体の印象 モーツアルト「弦楽五重奏曲 k.406/593 クイッケン四重奏団+寺神戸亮 *ラルゲット序奏とアレグロ第1主題が独立して配置されるが、ラルゲット序奏の存在は協力である
*アレグロ第1主題が完結しているため、各章では第1主題の変奏ではなく変形第2主題の展開になっている
*後半は激しい変容が短い時間で進行するのでめまぐるしい


弦楽五重奏曲 第6番 変ホ長調 K.614  (1791年4月 34歳 ウィーン)
楽章[track] 節[index]の記述 (min'sec")
前半:茶字、後半:青字
各楽章の構成(上段は森泰彦氏の解説より、 下段は私のメモ)
第1楽章
アレグロディモルト
10'43"
@前半:提示部:第1主題(0'00")
A推移(0'28")
B第2主題部(0'59")
C小結尾及び推移(1'21")
D推移(1'51")
E前半の反復(2'04")

F後半:展開部(4'07")
G再現部:第1主題(5'00")
H推移(5'28")
I第2主題部(6'00")
J小結尾(6'25")
K推移(6'55")
L後半の反復(7'10")
Mコーダ(10'14")
N終止(10'27")
@冒頭の同音連打動機とそれに答える下行音形同音連打動機は執拗なまで第1楽章で使われる
*第1主題は軽快なアレグロで、同音連打の繰り返し、第2主題も第1主題と変わらない
*後半は力強く展開される
第2楽章
アンダンテ
9'32"
@ロンド主題(第1ルフラン):前半(0'00")
A前半の反復(0'30")
B後半(1'00")
C後半の反復(1'29")
D推移(2'00)
E第1クープレ(属調)(2'29")
Fロンド主題(第2ルフラン、反復なし)(3'09")

G第2クープレ(下属調):前半小結尾(4'04")
H前半の反復(4'44")
I後半(5'30")
J後半の反復(6'20")
K推移(7'10")
Lロンド主題(第3ルフラン、反復なし)(7'47")
Mコーダ(8'50")
下行音形(ド・ソ・ファ・ミ)の原型と転回は第2楽章の主題全体を構成するだけでなく、第3楽章、第4楽章にも変容して全体を支配する
@大規模なロンド主題は簡潔なメロディー
A〜Dロンド主題の変奏
Eクープレもロンド主題の変奏
K主題の多声的展開、半音の多用
*ロンド主題はゆっくりした下行音形(ド・ソ・ファ・ミ)の繰り返し、これが不思議な安定感を生む
第3楽章
メヌエット;アレグレット
3'41"
@「メヌエット」:前半(0'00")
A前半の反復(0'14")
B後半(0'27")
C再現(0'47")
D小結尾(2声カノン)(1'01")
E後半の反復(1'09")
F「トリオ」:前半(1'52")
G前半の反復(2'00")
H後半(2'10")
I再現(2'25")
J後半の反復(2'30")
K「メヌエット」再現(2'24")
@単純そうに見えて実は対位法の技巧を凝らしたアレグレットの「メヌエット」
Fのんびりした「トリオ」
*前半のアレグレットのメヌエットが軽快に進行する
*後半のトリオはゆっくりした進行
第4楽章
アレグロ
5'34"
@ロンド主題(第1ルフラン):第1部分とその反復(0'00")
A第2部分とその反復(0'15")
B推移(0'45")
C第1クープレ(ロンド主題に基づく属調主題)(1'11")
Dロンド主題(第2ルフラン、不完全)と推移(1'43")

E第2クープレ(展開部1;フガート)(2'07")
F展開部2(2'45")
Gロンド主題(第3ルフラン、反復なし)(3'13")
H推移(3'35")

I第3クープレ(第1クープレの主調での再現)(4'04")
Jフガートの再現と推移(4'36")
Kロンド主題(第4ルフラン)、コーダ(4'52")
L冒頭動機の転回と終止(5'15")
@(第1楽章冒頭の同音連打動機と)それに答える下行音形に由来するロンド主題
Cロンド主題に基づく属調主題が導かれる
E第2クープレは厳格なフガート、第1番K.174のザルツブルグ時代のフガートに比べるとなんと複雑な19世紀的
*ロンド主題は軽快なリズム、第1楽章の同音連打
*第1クープレは明るく軽快でいい気分にさせてくれる響きだ
曲全体の印象 モーツアルト「弦楽五重奏曲 k.174/614 クイッケン四重奏団+寺神戸亮 ホルンの響きである変ホ長調特有の暗い音響、管楽的な屈託の無い楽章、強烈な不協和音を含む多声書法<は少しとっつき難い
*同音連打のリズムは極めて明快、リズムの安定感と軽快な進行で聴きやすい分かりやすい曲になっている
*多少明るく単純すぎて、物足りない気持ち、「どうしてこんな明るい曲が死の直前に出来るのか」は後世の評論家の作文で、本人は何も自覚していない


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