モーツアルト  「ピアノ協奏曲」


私はこんなCDを聴いた

18世紀の音楽家は多作だった。

モーツアルトは1792年に35歳で死亡するまでに626曲を書いた。その中でピアノ協奏曲は27曲である。27曲のピアノ協奏曲を書いたのはモーツアルト唯一人であろう。バロック時代の音楽家は極めて多作であった。J.Sバッハ(1750年没)は1200曲を残しており、同時代のスカルラッティはチェンバロソナタだけで500曲以上、ビバルディは協奏曲だけで600曲以上だそうだ。古典派から以降は作曲数は激減する。モーツアルトと同時代のハイドンは交響曲102曲ピアノソナタ51曲、弦楽四重奏曲77曲、全曲で300曲あまりである。ベートベン(1826年没)は135曲であった。ロマン派時代のメンデルスゾーン(1845年没)は109曲、ショパン(1849年没)は72曲、後期ロマン派のブラームス(1896年没)は103曲、マーラー(1911年没)、ブルックナーなどは10数曲程度という風に激減する。しかしチャイコフスキー(1893年没)は74曲、ドボルジャーク(1904年没)は101曲、シベリウス(1957年没)112曲であった。年代と作曲数の相関を求めると下の図のように対数関数的になると考えられる。バッハからシベリウスに至るとじつに作曲数は十分の一に落ちる。バッハの時代は職人の時代で自己パロディー曲が多く自己増殖していたともいえる。時代が下るにつれて音楽家は職人から芸術家へ移行し、過去のパロディーは出来ないとなればクラシックという枠内でねたが尽きてきたのか、創造の泉も枯れるのかも知れない。



私が聞いたモーツアルトのピアノ協奏曲CD

モーツアルトにとってピアノ協奏曲は重要な位置を占めていた。ピアノ協奏曲の数だけ見てもモーツアルトのピアノ協奏曲は多い。バッハのチェンバロ協奏曲は10曲以下だし、ベートベンではピアノ協奏曲は5曲、あとの作家では2,3曲ぐらいである。ショパンでさせ2曲しか書いていない。もっとも華麗にして天国的なピアノ協奏曲のメロディーは彼のおはこであったし、当時の貴族の趣味に一致して需要が多かったためであろうか。いままで私はどのようなモーツアルトのピアノ協奏曲を聴いてきたのか興味を催したので整理してみることにした。系統的に収集したわけではないので私が持っているCDは氷山の一角であろう。演奏家別にまとめて下の表に示しめす。ピアニストのみではA:内田 B:アシュケナージ C:ゼルキン D:ブレンデル E:プレビン F:ラローチャ G:ミケランジェリ H:コチッシュ I:ラーンキ J:レヴァイン K:フィルクスキーの11名と限られたアーチストである。最初はアシュケナージから聞き始めて最近は内田光子の全集を聞いた。

モーツアルトピアノ協奏曲CDの詳細
番号 ピアニスト 指揮者 オーケストラ 録音年 CD発売元
A 内田光子 ジェフリー・テイト イングリッシュ室内管弦楽団 1985-1990 フィリップス
B ウラディミール・アシュケナージ ウラディミール・アシュケナージ フィルハーモニア管弦楽団 1980-1988 ロンドン、DECCA
C ルドルフ・ゼルキン クラウディオ・アバド ロンドン交響楽団 1981,1987 ドイチェグラモフォン
D アルフレッド・ブレンデル ネビール・マリナー セントマーティン室内管弦楽団 1981 フィリップス
E アンドレ・プレビン アンドレ・プレビン ウィーンフィルハーモニー 1984 フィリップス
F アリシア・デ・ラローチャ ユリ・シーガル ウィーンフィルハーモニー 1981 ロンドン
G ベネデッティ・ミケランジェリ コード・ガーベン 北ドイツ放送交響楽団 1989 ドイチェグラモホン
H ゾルタン・コチッシュ ヤーノシュ・ローラ フランツリスト室内管弦楽団 1992 ハーモニア・ムンディ
I デジュー・ラーンキ ヤーノシュ・ローラ フランツリスト室内管弦楽団 1985 HUNGAROTON
J ロバート・レヴァイン クリストファー・ホグウッド エンシェントミュージック楽団 1995 オワゾリエール
K ルドルフ・フィルクスキー エルネスト・ボーア エンシェントミュージック楽団 1993 インターコード



ピアノ協奏曲前27曲と2台、3台のピアノのための協奏曲2曲を演奏者別に示したのが下の表である。内田光子とジェフリー・テイトによる録音は全集に近いがなぜか1,2,3,4,7,10を欠いている。1から4番のピアノ協奏曲は曲として態をなしていないので省いたのか、7,10番の譜面は失われているので演奏不能というのだろうか。同一曲でもCDを4枚持っているのは13番、20番、25番である。3枚持っているのは12番と24番である。20番は別にして、結果として偶然に過ぎない。

モーツアルトピアノ協奏曲の演奏者
演奏者:ピアニストのみ注記する。詳細は上の表を参照のこと)
A:内田 B:アシュケナージ C:ゼルキン D:ブレンデル E:プレビン F:ラローチャ
 G:ミケランジェリ H:コチッシュ I:ラーンキ J:レヴァイン K:フィルクスキー
ピアノ協奏曲名 A B C D E F G H I J K
ピアノ協奏曲1番 K37 F major - - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲2番 K39 B flat major - - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲3番 K40 D major - - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲4番 K41 G major - - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲5番 K175 D major - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲6番 K238 B flat major - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲7番 K37 - - - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲8番 K246 C major - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲9番 K271 E flat major(1977.1) - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲10番  - - - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲11番 K413 F major - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲12番 K414 A major(1782) - - - - - - - -
ピアノ協奏曲13番 K415 C major(1782) - - - - - - -
ピアノ協奏曲14番 K449 E flat major(1784) - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲15番 K450 B flat major(1784) - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲16番 K451 D major(1784) - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲17番 K453 G major(1784.4) - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲18番 K456 B flat major(1784) - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲19番 K459 F major(1784.12) - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲20番 K466 D minor(1785.2) - - - - - - -
ピアノ協奏曲21番 K467 C major(1785.3) - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲22番 K482 E flat major(1785.12) - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲23番 K488 A major (1786.3) - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲24番 K491 C minor(1786.3) - - - - - - - -
ピアノ協奏曲25番 K503 C major(1786.12) - - - - - - -
ピアノ協奏曲26番 K537 D major(1788) - - - - - - - - -
ピアノ協奏曲27番 K595 B flat major(1791.1) - - - - - - - - -
3台のピアノのための協奏曲ロドロン K242 F major - - - - - - - - -
2台のピアノのための協奏曲 K365 E major - - - - - - - - - -



モーツアルトの全作品番号(全612曲)のなかでピアノ協奏曲番号(全27曲)の占める位置を下に図示した。作曲の集中時期が理解できる。やはり15番(1784年)から24番(1786年)にピアノ協奏曲の作曲が集中している。2年間に10曲である。ほぼ2〜3ヶ月に1曲書いていたことになる。

モーツアルト全作品(K612まで)のなかでピアノ協奏曲の位置と製作の集中性


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