モーツアルト クラリネット協奏曲 イ長調 K.622
モーツアルトのクラリネット協奏曲・五重奏曲は恐らくテレビの劇などで物憂げな哀調を帯びた雰囲気をかもし出す場面でよく耳にされているはずである。なんと金八先生の番組にも使われていた。モーツアルトは晩年秘密宗教結社フリーメイソンに入会し同じ会員の天才クラリネット奏者アントン・シュタードラーに出会うことにより、この傑作2曲を作曲することになる。シュタードラーはクラリネットの下のほうを拡大する改良を繰り返しついに4音下まで延長したバセットクラリネットを生み出した。バセットクラリネットが当時どのような形だったのか不明で最近になってシュタードラーのスケッチが発見され、実に変な形である事が分かった。それまではバセットクラリネットはバセットホルン(120°に折れた管楽器)に近いとされてきた。下に私が持っているモーツアルトのバセットクラリネットとバセットホルンのCDを3枚記す。
モーツアルトのクラリネット協奏曲・五重奏曲は実にコインの裏表の関係にある。クラリネット協奏曲が明るい軽い悲哀感とすれば、クラリネット五重奏曲は暗い悲哀感が滲み出るようである。クラリネット協奏曲のメロディーラインは流れるように透明で明確である。クラリネットは全域音をフルに使用し音の多様さを生かしている。同じイ長調のピアノ協奏曲K.414にも共通するモーツアルトの美しさに満ちている。クラリネット五重奏曲はクラリネットの高音域を多用するがゆえに悲壮感が漂うようだ。クラリネットはいずれにせよ中音域の楽器で人間の声に一番近いといわれる。従って耳に優しく入ってくる。精神をいらだてる事はめったにない。いつ聞いていても優しい音楽である。またいつかモーツアルトの管楽器曲について語りたい。
モーツアルト クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581