先回直熱3極真空管シングルアンプ2A3と300Bの聴き比べについて試聴結果を書いた。その時には中島みゆきの曲も1曲試聴したが、その後2A3直熱3極真空管シングルアンプを聞き続けていると、中島みゆきの歌といっても1曲ではみゆきの氷山の一角にもならないことが分かった。そこで中島みゆきに限って2A3と300Bアンプをじっくり聞きなおした。中島みゆきの歌は、@哀切極まりないお涙頂戴式の歌(若いときに多い。みゆきの10才台から20才台前半)A恨み節・すれ違い恋愛歌B社会的風刺歌C叩きつけるようなハードロック調の歌(1990年代、みゆき30才台)などなど、もっと細分化類型化することも可能である。そこで@哀切極まりない歌とAハードロック調の歌について直熱3極真空管シングルアンプ2A3と300Bの聴き比べを行った。するとアンプによって表現が随分違ってくることに気がついた。どちらの表現力がいいかとは簡単に決め付けられない。結論的には@哀切極まりない歌には2A3シングルアンプがいい、Aハードロック調の歌について300Bシングルアンプがいい。それはどこから来ているのかを考えてみた。
下表に2つの歌の代表曲を示した。哀切極まりない曲は比較的初期の曲「海鳴り」から「鳥になって」の七曲を選んだ。ハードロック調の歌は1990年代より「夜を往け」から「たかが愛」の5曲を選んだ。聴きこんだ結果は明白で、2A3直熱3極真空管シングルアンプはその繊細な表現力と華麗な高音域の特長によって哀歌を切々と歌い上げて美麗である。しかしハードロック調では美人がヒステリーをあげているようで長くは聞いていられない。やはり低音不足と分解力・スピードがないため聞くに堪えない音になっている。300B直熱3極真空管シングルアンプでは声が太くなって哀歌には向いていないが、ハードロック調では十分な低音域の弩迫力が表現できている。中島みゆきの幅の広さ表現力には驚き入るしかない。歌によってアンプの切り替えを要求するようだ。なお下表の曲名をクリックすると、中島みゆき研究所の歌詞を見ることができます。
哀切極まりないみゆき | 爆走するハードロック |
アルバム「愛していると言ってくれ」(1978)より @ 「海鳴り」 アルバム「親愛なる者へ」(1979)より A「根雪」 B「ダイヤル117」 アルバム「おかえりなさい」(1979)より C「雨・・・」 アルバム「生きていてもいいですか」(1980)より D 「エレーン」 アルバム「臨月」(1981)より E「雪」 アルバム「寒水魚」(1982)より F「鳥になって」 |
アルバム「夜を往け」より(1990) @「夜を往け」 A「新曽根崎心中」 アルバム「歌でしか言えない」(1991)より B 「南三条」 アルバム「時代」(1993)より C「慟哭」 アルバム「パラダイスカフェ」(1996)より D「たかが愛」 |