コダーイ 「無伴奏チェロソナタ」を聴く


ヨーヨー・マとユーリー・チュロスキーのCD2枚を聴く



コダーイ(1882-1967 ハンガリー生まれ)の「無伴奏チェロソナタ」はクラッシクの中では現代音楽に属する。バッハ以来絶えてなかった無伴奏チェロ作品であるが、この楽器に名手が現れ演奏技術が飛躍的に向上したため再び無伴奏チェロ作品が書かれるようになった。主だった作曲家にはレーガー、ヒンデミット、リゲティ、ブリテン、ヘンツェなどが輩出した。なかでもコダーイの無伴奏チェロ作品は傑出している。20世紀の西欧クラシック音楽は19世紀のソナタ形式の脱構造化を課題とした12音階や無音階に進化し泥沼に突入した。誰が聞いても難解で、美が目的ではなくなった。しかしコダーイなど東欧の作曲家は民族音楽研究を元に西欧音楽と格闘していた。そのなかでコダーイの無伴奏チェロソナタは奇跡的に出来がよく水準が高い。バッハ以来の傑作という評判が固まった。とはいえ分解寸前のソナタ構造を明確に意識して引かないと訳がわからなくなる難曲であり、演奏者には高い技術と知性が要求される。今回取り上げたCDはヨーヨー・マとチュロスキーによる演奏である。この2枚のCDを下の写真に示すシステムで聴いた。

(1)試聴システム

私のオーデイオシステムを下の写真に示す。タンノイスターリングを4極ビーム管KT88ppアンプ(35W)でドライブした。

  

トータル試聴システムの装置仕様
CDプレーヤ:TEACのVRDS-50:フルエンシー理論(20KHz再生)RDOT類推補間技術、VRDSメカニズム
真空管式コントロールアンプサンオーディオSVC-200: ECC82×2本 10Hz-100KHz タムラSPT-P1
メインアンプ4極ビーム管KT88ppアンプ(35W)サンバレー&Tri VP-3488(上の右の写真)
スピーカタンノイ スターリングHE:10インチ同軸2ウエイ、能率91dB、クロスオーバ1.7KHz、35Hz〜25kHz
スーパツィータータンノイ ST-200: 25mmチタンドーム型、能率95dB、18KHz〜100KHz


(2)コダーイ 「無伴奏チェロソナタ」の試聴CD

ヨーヨー・マについてはすでに本コーナーのバッハ「ビオラダガンバソナタ」で取り上げている。中国系米国人ヨーヨー・マは名実ともに現代最高のチェリストである。彼の音楽活動の広がりはとまる所を知らない。バイオリン奏者のギドン・クレメールと並び称される所以である。鬼才ギドン・クレメールは奇を狙う天才だとすれば、ヨーヨー・マは角の無い秀才である。最近は、今は亡きピアソラとの仮想デュオ録音を仕組んだり、ガット弦を張ったバロックチェロによるバッハとボッケリーニノの作品を収録した「シンプリーバロック」などで変幻自在な活躍をしていることは周知であろう。下のCDカバーはなんと京都の竜安寺で撮影されている。ユーリー・チュロスキーは旧ソ連生まれで西へ移住前はボロディントリオの一員で活躍していたチェリストである。現在はカナダモントリオールのケベック伝統音楽院に在籍している。下のCDカバーは彼の奥さん(ヴァイオリニスト)の書いた絵である(ゴッホのタッチに似ている)。コダーイの無伴奏チェロソナタには古典派的な歌うようなメロディーは皆無だが、西欧音楽にはない音楽リズム(東欧独特?)がかえって新鮮である。ベートーベンの晩期の弦楽四重奏曲も、難解で歌のない苦渋に満ちた現代音楽に通じるところがある。

   
チェロ独奏:ヨー・ヨー・マ   チェロ独奏:ユーリ・チュロスキー


第1楽章:高音部生き生きとした動きで低音弦がよく響いている。実に柔らかな表現できついところが少しも含まれていない。風のように爽やかな演奏で好感度抜群
第2楽章:出だしは唸るような低音の響きで始まる。概して低音弦の表現が豊かである。後半の消え入るような余韻が心にしみる。
第3楽章:力強いリズムでハンガリー舞曲が進行する。特徴的な主題がリズミカルである。高音弦が不安げに走り回る。


第1楽章:非常に強い音で開始される。大きな波のうねりと、するどく高音が伸びる。メリハリの利いたダイナミックレンジの大きい演奏で、感情を明確にしたわかり易い演奏ではあるが、長時間は聞けないだろう。
第2楽章:静かに低音弦が唸り始め、高音への移動が鋭い。分厚い低音が特徴的だ。
第3楽章:力強いリズム進行はヨーヨー・マと同じ。高音弦が切ない叫び声を上げる。



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