ヘッドホーン試聴記


ヘッドホーン2種と半導体アンプと真空管式アンプの比較



ヘッドホーンと試聴システム

今回多少勉強して、新たにヘッドホーンを購入した。オーディオテクニカ ・・ATH-A900である。ヤマダデンキで2万1千円であった。先回ヘッドホーン兼用アンプ・・サンバレー・SuperSubキット組み立て後の試聴に使用したヘッドホーンはビクター・・HP-M1000で、同じくヤマダデンキで1万3千円であった。もっといい音がするヘッドホーンを求めて賭けに出た。ソニーが出したクオリアQ010-MDR1はハイエンドヘッドホーンらしく26万円なので最初から考慮外。下の写真に示すように左がビクター・・HP-M1000、右がオーディオテクニカ・・ATH-A900である。オーディオテクニカ ・・ATH-A900のほうが一回り大きくて頭へのフィット感がソフトである。各々の仕様についてはクリックしてサイトで参照してください。



早速この種類のヘッドホーンが自分の所有するシステムでどのように鳴るのかを試験するため、前回と同じ試聴システム(下の左の写真の真空管アンプ・・サンヴァレーSuperSub・7EM7pp(8W)と半導体アンプ・サンスイプリメイン・・AU-α907XR(160W),CDプレーヤーはPHILIPS・・ LHH3008)で比較した。参考までに下の右写真のフロアースピーカー(タンノイスターリングHE+タンノイスーパツィータ)と真空管コントロールアンプ+真空管アンプ(300Bシングル(7W)とマッキントッシュ・・MC240・6L6GCpp(20W)システムでの音の鳴り方も確認した。なおCDはTEACのCD:VRDS-50で、これが私のメインシステムである。



ヘッドホーン試聴方法

@ヘッドホーンはビクター・・HP-M1000とオーディオテクニカ ・・ATH-A900の2種類を対象とした。この2種のヘッドホーンの音の出し方をチェックするため、半導体アンプ・サンスイプリメイン・・AU-α907XR(160W)とヘッドホーン兼用真空管アンプ・サンヴァレーSuperSub・7EM7pp(8W)の2種類のアンプで試聴した。合計4通りの試聴システムがあることになるが、さらに自分の耳をチェックするため参照システムとして上に示した3極真空管300Bアンプと5極ビーム管6L6GCppアンプMC240でタンノイスターリングを鳴らすシステムも追加した。合計6通りのシステムを考えた。
A試聴に使用したCDソースは次の五枚であり、チェックする音の狙いどころも下に示した。試聴CDにはチェックできない項目がありそれはーでスキップした。この5枚のCDを6つのシステムで試聴するため5×6=30回の試聴になった。CD毎に1枚のシートを作成し6通りのシステムの試聴結果を5つのチェック項目について記入した。記入方法については下の表の中段に示した。

  1. 中島みゆきアルバム「おかえりなさい」より「雨」: PONY CANYON 1979・・・・・中島みゆきは特別高音ではなく、つやのある中音の切ない声を聞きたかった。
  2. 綾戸智絵アルバム「To You」より「A House of Gold」:EWSA 2003・・・・・どすに効いた大阪弁の壊れた声帯の震えとピアノのダイナミックな音
  3. ベルゴレージ「スターバト・マーテル」より第1章二重唱:アバド指揮ロンドン交響楽団 ソプラノ:マーシャル アルト:テッラーニ グラモホン 1983・・・・・アルト中音とソプラノ高音の天国的美声の響きを聞きたい
  4. ベートーベン「交響曲第3番英雄」より第1楽章冒頭:アバド指揮ベルリン交響楽団 グラモホン2000・・・・・オーケストラの響きとダイナミックレンジの確認
  5. バッハ「無伴奏バイオリンパルティータ2番」より「シャコンヌ」冒頭:バイオリン寺神戸亮 DENON 2000・・・・・バイオリン弦の振動の明晰さと高音の伸びの美音
ヘッドホーン試聴方法
試聴システム ヘッドホーン試聴システム フローワ-スピーカ試聴システム
( 参照)
CDプレーヤ PHILIPS LHH3008 TEAC VRDS-50
スピーカ/ヘッドホーン ヘッドホーン
オーディオテクニカ ATH-A900
ヘッドホーン
ビクター HP-M1000
フロワースピーカ
タンノイスターリングHE+タンノイスーパツィータ
アンプ 半導体アンプ
サンスイプリメイン
AU-α907XR(160W)
真空管アンプ
サンバレーSuperSub
7EM7pp(8W)
半導体アンプ
サンスイプリメイン
AU-α907XR(160W)
真空管アンプ
サンバレーSuperSub
7EM7pp(8W)
真空管アンプ
アドヴァンス
300Bシングル(7W)
真空管アンプ
マッキントッシュMC240
6L6GCpp(40W)
システムNo.
CDアルバム試聴:聴くべき特徴を有するCD5枚(各々シート1〜5)を用意し、各シートにつき試聴システム(6種)を変えて約3分だけ聞いて5つのポイントについて◎、○、△の三段階相対評価を記録する。なおボリュームは固定し変更しない。
1:中島みゆき 「おかえりなさい」 シート1:1-1 シート1:1-2 シート1:1-3 シート1:1-4 シート1:1-5 シート1:1-6
2:綾戸智絵  「To You」 シート2:2-1 シート2:2-2 シート2:2-3 シート2:2-4 シート2:2-5 シート2:2-6
3:ベルゴレージ 「スターバト・マーテル」 シート3:3-1 シート3:3-2 シート3:3-3 シート3:3-4 シート3:3-5 シート3:3-6
4:ベートーベン 「交響曲第3番」 シート4:4-1 シート4:4-2 シート4:4-3 シート4:4-4 シート4:4-5 シート4:4-6
5:バッハ 「無伴奏バイオリン」 シート5:5-1 シート5:5-2 シート5:5-3 シート5:5-4 シート5:5-5 シート5:5-6


ヘッドホーンとアンプ試聴結果シート

上の表「ヘッドホーン試聴方法」の下段の欄には各CD毎にシート番号を記入した。シート番号1:1-1とはCD1をシステム1で試聴した結果を示す。上表のシート番号をクリックすると下の各試聴シート結果表に飛ぶことが出来る。

試聴シート1:中島みゆき「おかえりなさい」より「雨」
試聴システム/



評価ポイント
ヘッドホーン:
ATH-A900
半導体アンプ:
AU-α907XR

1-1
ヘッドホーン:
ATH-A900
真空管アンプ:
7EM7pp(8W)

1-2
ヘッドホーン:
HP-M1000
半導体アンプ:
AU-α907XR

1-3
ヘッドホーン:
HP-M1000
真空管アンプ:
7EM7pp(8W)

1-4
スピーカ-:
スターリングHE
真空管アンプ:
300Bシングル

1-5
スピーカ-:
スターリングHE
真空管アンプ:
6L6GCpp

1-6
ダイナミックさ
繊細さ・分解能
中音のソフトさ
高音の伸び
低音の響き

[試聴シート1結果まとめ]

中島みゆき「おかえりなさい」より「雨」については、声のつやはやはり真空管MC240の参照システ(システム6)が一番である。ヘッドホーンではオーディオテクニカ ・・ATH-A900と真空管アンプ・・サンヴァレーSuperSub・7EM7pp(8W)の組み合わせ(システム2)が一番いい様だ。ビクター・・HP-M1000と半導体アンプ・サンスイプリメイン・・AU-α907XR(160W)の組み合わせ(システム3)は少し硬さが気になった。半導体アンプはダイナミックレンジが高く周波数特性もよく伸びているのが特徴である。真空管アンプは物理特性では計り知れない何かに期待するわけであるが、独特のダンピングと歪が特定の音楽にフィットしたとき言いがたい満足を与える。LPレコードが懐かしがられるのもその独特のピックアップ機構の歪とフォノイコライザーの味付けにあるとされる。オーディオテクニカとビクターヘッドホーンについてはどちらもまずまずの結果であるが、オーディオテクニカ ・・ATH-A900はよりソフトで疲れない音が特長であり、ビクターヘッドホーンは少し堅めかなという気がしたが、ビクターヘッドホーンのもっと高級品ではどうなるかは分からない。


試聴シート2:綾戸智絵「To You」より「A House of Gold」
試聴システム/



評価ポイント
ヘッドホーン:
ATH-A900
半導体アンプ:
AU-α907XR

2-1
ヘッドホーン:
ATH-A900
真空管アンプ:
7EM7pp(8W)

2-2
ヘッドホーン:
HP-M1000
半導体アンプ:
AU-α907XR

2-3
ヘッドホーン:
HP-M1000
真空管アンプ:
7EM7pp(8W)

2-4
スピーカ-:
スターリングHE
真空管アンプ:
300Bシングル

2-5
スピーカ-:
スターリングHE
真空管アンプ:
6L6GCpp

2-6
ダイナミックさ
繊細さ・分解能
中音のソフトさ
高音の伸び
低音の響き

[試聴シート2結果まとめ]

綾戸智絵「To You」より「A House of Gold」は、女性ジャズボーカルの売り出しNo1の綾戸智絵吉本風大阪弁しゃべくりと、ピアノのダイナミズムを聴くためである。CDがハイブリッド(SACD)でダイナミックに編集されているのでどのシステムもいい結果であった。しかし堅い声だと長くは聞けない。そのためヘッドホーンではオーディオテクニカ ・・ATH-A900と真空管アンプ・・サンヴァレーSuperSub・7EM7pp(8W)の組み合わせ(システム2)が一番いい様だ。フロワースピーカーは数メータは離れて聞くのでヘッドホーンと違って細かい声の動きは表現していても聞こえない。その代わりヘッドホーンシステムは聴きたくも無い鼻歌や騒音雑音(ノイズではなく)がいやでも耳に入る欠点がある。半導体アンプシステムではダイナミックレンジが大きすぎて疲れるし、ついてゆけない精神状態の時もある。フラッシュ映像で気分が悪くなるのと同じである。


試聴シート3:ベルゴレージ「スターバト・マーテル」より第1章二重唱
試聴システム/



評価ポイント
ヘッドホーン:
ATH-A900
半導体アンプ:
AU-α907XR

3-1
ヘッドホーン:
ATH-A900
真空管アンプ:
7EM7pp(8W)

3-2
ヘッドホーン:
HP-M1000
半導体アンプ:
AU-α907XR

3-3
ヘッドホーン:
HP-M1000
真空管アンプ:
7EM7pp(8W)

3-4
スピーカ-:
スターリングHE
真空管アンプ:
300Bシングル

3-5
スピーカ-:
スターリングHE
真空管アンプ:
6L6GCpp

3-6
ダイナミックさ
繊細さ・分解能
中音のソフトさ
高音の伸び
低音の響き

[試聴シート3結果まとめ]

ベルゴレージ「スターバト・マーテル」より第1章二重唱はアルトとソプラノの二重唱の明快さと美声を聞くためである。アルトのテッラーニの声はすごい迫力で完全にソプラノを食っている。したがって中音・高音と繊細さの項目をチェックすれば、ヘッドホーンではビクター・・HP-M1000(システム2,3)が一番いい様だ。あまりソフトすぎても明晰さを欠くのでいけない。フロワースピーカシステムもオーディオテクニカ ・・ATH-A900システムももう少し音量を上げればまた違った結果かもしれないが。


試聴シート4:ベートーベン「交響曲第3番英雄」より「第1楽章」冒頭
試聴システム/



評価ポイント
ヘッドホーン:
ATH-A900
半導体アンプ:
AU-α907XR

4-1
ヘッドホーン:
ATH-A900
真空管アンプ:
7EM7pp(8W)

4-2
ヘッドホーン:
HP-M1000
半導体アンプ:
AU-α907XR

4-3
ヘッドホーン:
HP-M1000
真空管アンプ:
7EM7pp(8W)

4-4
スピーカ-:
スターリングHE
真空管アンプ:
300Bシングル

4-5
スピーカ-:
スターリングHE
真空管アンプ:
6L6GCpp

4-6
ダイナミックさ
繊細さ・分解能
中音のソフトさ
高音の伸び
低音の響き

[試聴シート4結果まとめ]

ベートーベン「交響曲第3番英雄」より「第1楽章」冒頭はもちろん交響的響きをチェックするためである。ヘッドホーンではオーディオテクニカ ・・ATH-A900と真空管アンプ・・サンヴァレーSuperSub・7EM7pp(8W)の組み合わせ(システム2)が一番いい様だ。ソフトで残響のよさが影響したに違いない。個人の部屋で聞くフロワースピーカシステムはこの点損をしている。スピーカでは出ていた周波数特性も部屋特性で変に歪められ削られて耳に達しない。ソフトな残響特性はヘッドホーンの独壇場かもしれない。ヘッドホーンではビクター・・HP-M1000と半導体アンプ・サンスイプリメインの組み合わせ(システム3)もいいのだが少し堅いかなという気がする。


試聴シート5:バッハ「無伴奏バイオリンパルティータ2番」より「シャコンヌ」冒頭
試聴システム/



評価ポイント
ヘッドホーン:
ATH-A900
半導体アンプ:
AU-α907XR

5-1
ヘッドホーン:
ATH-A900
真空管アンプ:
7EM7pp(8W)

5-2
ヘッドホーン:
HP-M1000
半導体アンプ:
AU-α907XR

5-3
ヘッドホーン:
HP-M1000
真空管アンプ:
7EM7pp(8W)

5-4
スピーカ-:
スターリングHE
真空管アンプ:
300Bシングル

5-5
スピーカ-:
スターリングHE
真空管アンプ:
6L6GCpp

5-6
ダイナミックさ
繊細さ・分解能
中音のソフトさ
高音の伸び
低音の響き

[試聴シート5結果まとめ]

バッハ「無伴奏バイオリンパルティータ2番」より「シャコンヌ」冒頭はバイオリンの弦の振動を繊細に表現できるか、また高音がきつくならずに無理なく伸びているかをチェックするためである。ヘッドホーンではオーディオテクニカ ・・ATH-A900と真空管アンプ・・サンヴァレーSuperSub・7EM7pp(8W)の組み合わせ(システム2)が一番いい様だ。また3極真空管300Bとフロアースピーカー(タンノイスターリングHE+タンノイスーパツィータ)の組み合わせ(システム5)が絶妙な弦の響きを表現できていた。300Bとタンノイの組み合わせはバイオリンがきれい過ぎるという人もいるが。半導体アンプではきつくてバイオリンは聴きたくない(システム1,3,),やはり真空管だ、しかも直熱型3極管だ。出力仕様は必要ない表現の繊細さだけが問題なのだ。



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