私の読んだクラシック・CDの本
・・料理番組でタレントが「美味い」の表情と叫び声で勤めを果たしていることがよく見かけられる。料理は文化である事は言い古された文句であるが、そうすれば美味い(旨い)だけでは動物的叫び声にすぎない。音楽についてもしかりで、癒されるとか美しいとか力強いとか言う言葉だけでは表現した事にはならない。音楽の専門家ならともかく、吉田秀和の書物のように楽譜を並べられてもこれまた素人には狐につまされたような物である。かくも音楽評論は難しい。そこで多くのクラシック音楽関係書のハウツー物のように作者の人生、作品の経緯、演奏家、指揮者、楽団、CDの出来などについて語って読者の理解の助とすることになる。ただしCDの出来やオーディオの音質評論についてはメーカの回し者か思われるほど提灯持ちに徹しているので参考にはならない。とくにオーディオ雑誌でアンプやスピーカなどの視聴記事では一体どの装置のせいで音質がよくなったのか、全く笑ってしまう記事ばかりで信用できないこと極まりなし。
立花隆の「僕が読んできた本」には面白い本とだめな本があることが記されている。確かに彼の大量読書法と蔵書のすごさには感心する。どんな分野にでも物怖じせず短期間で精通する読書術はすごいが、私の分野である科学や化学物質安全性においては彼の論点はやはりメディア関係者の限界か結論が早すぎるきらいがある。「環境ホルモンのせいで最近の子供が切れやすくなった」など笑止千番であろう。聞いている人はなるほど着想がいいですまされるが、関係者にとっては一体何を根拠にそんな暴言が吐けるのかと言いたくなる。アルミがアルツハイマー病の原因ではないかと言う仮説はほとんど否定されているが、「風が吹いたら桶屋が儲かる」の類の連鎖関係さえ見出せない。
別にここで立花隆批判をやるつもりはないのであるが、どんな分野でもある程度の書物は読まないと話にならないことは確かである。例えば私はこのホームページを立ち上げるために1ヶ月で4冊のHTML,CSS,SCRIPTJAVA関係の本を勉強した。それでもよく分からない。使えれば使ってしまえ式に慣れて来たようです。
私はクラシック音楽をかなり集中的に25年間以上聞き続けています。何千枚のCDを聞いてきましたが、人にこうだと言える位の自信はまだありません。好き嫌いはありますが、論理的にこれが名曲だ名演だとなかなか言えません。マニアのオーディオ愛好家が莫大な金をつぎ込んでなお迷路に落ちいっているのは結局自分の意見がないからでしょう。考えが無くて道具に血道を上げているようなものです。そこで考えた。考えを整理してみよう。それにはまず今まで読んできたクラシック関係の本を整理したら何かが分かるのではないか。クラシック音楽が私を魅了する訳、モーツアルトやバッハが私を捕らえて離さない訳を理解してゆこうと思うようになりました。各論はこれから展開するとして今回は私が読んだ本をリストしました。たいした量は読んでいませんので読む本の傾向は
すぐに明瞭になります。なお今回の蔵書リストにはオーディオ関係は除いてあります。
- 磯山 雅 「バッハ=魂のエヴァンゲリスト」 東京書籍(1985)
- 磯山 雅 「J・Sバッハ」 講談社現代新書(1990)
- 大村恵美子 「バッハの音楽的宇宙」 丸善ライブラリー(1994)
- 大角欣矢・加藤浩子 200CD「バッハ名曲・名盤を聞く」 立風書房(2000)
- フォルケル著柴田冶三郎訳 「バッハの生涯と芸術」 岩波文庫(1988)
- 井上太郎 「モーツアルトのいる部屋」 ちくま学芸文庫(1995)
- 井上太郎 「わが友モーツアルト」 講談社現代新書(1986)
- 柴田冶三郎編 「モーツアルトの手紙上・下」 岩波文庫(1980)
- 吉田秀和 「レコードのモーツアルト」 中公文庫(1975)
- ドン・キャンベル 「モーツアルトで癒す」 日本文芸社(1999)
- 200CD「モーツアルト」 立風書房(1997)
- 渡邊学爾・石井宏 「モーツアルト名曲名盤」 音楽の友社(1991)
- ロマン・ローラン著片山敏彦訳 「ベートーベンの生涯」 岩波文庫(1938)
- 諸井三郎 「ベートーヴェン」 新潮文庫(1966)
- 五味康祐 「ベートーヴェンと蓄音機」角川ランティエ叢書(1997)
- アルマ・マーラー著石井宏訳 「グスタフ・マーラー」中公文庫(1987)
- ドビュシー・平島正郎 「ドビュシー音楽論集」 岩波文庫(1996)
- ミシェル・シュネデール著千葉文夫訳 「グレン・ブールド孤独のアリア」 ちくま学芸文庫(1995)
- フィッシャー著佐野利勝訳 「音楽を愛する友へ」 新潮文庫(1952)
- フルトヴェングラー著芳賀檀訳「音と音楽」 新潮文庫(1976)
- ドナルド・キーン著中矢一義訳 「音楽の出会いと喜び」 中公文庫(1992)
- ドナルド・キーン著中矢一義訳 「わたしの好きなレコード」 中公文庫(1987)
- 俵孝太郎 「CDちょっと凝り屋の楽しみ方」 コスモの本(1993)
- 五味康祐 「音楽巡礼」 新潮文庫(1976)
- 吉田秀和 「私の好きな曲」 新潮文庫(1985)
- 吉田秀和 「この1枚」 新潮文庫(1992)
- 吉田秀和 「世界のピアニスト」 新潮文庫(1978)
- 吉田秀和 「ヨーロッパの響き・ヨーロッパの姿」中公文庫(1988)
- 吉田秀和 「1枚のレコード」 中公文庫(1973)
- 吉田秀和 「今月の1枚CD・LD36選」 新潮社(2001)
- 中村紘子 「ピアニストという蛮族がいる」 文春文庫(1995)
- 中村紘子 「チャイコフスキーコンクール」中公文庫(1991)
- 茂木大輔 「オーケストラ楽器別人間学」 草思社(1996)
- 茂木大輔 「オーケストラは素敵だ」 音楽の友社(1993)
- 中野雄 「丸山真男 音楽の対話」 文芸新書(1999)
- 中野雄 「ウィーンフィル音と響きの秘密」 文芸新書(2002)
- 小坂裕子 「ショパン知られざる歌曲」 集英社新書(2002)
- 宮城谷昌光 「クラシック千夜一曲」 集英社新書(1999)
- 許光俊 「生きていくためのクラシック」 光文社新書(2003)
- 皆川達夫 「バロック音楽」 講談社現代新書(1972)
- 皆川達夫 「中世・ルネサンスの音楽」 講談社現代新書(1977)
- 皆川達夫 「ルネサンス・バロック」 音楽の友社(1992)
- 宇野功芳 「クラシックの名曲・名盤」 講談社現代新書(1996)
- 宇野功芳 「交響曲の名曲・名盤」 講談社現代新書(1991)
- 宇野功芳 「協奏曲の名曲・名盤」 講談社現代新書(1994)
- 200CD「バイオリン」 立風書房(1999)
- 200CD「ウィーンフィルの響き」 立風書房(1997)
- 砂川しげひさ 「聴け聴けクラシック」 朝日文庫(1993)
- 志鳥栄八郎 「憂愁の作家チャイコフスキー」 朝日文庫(1993)
- 志鳥栄八郎 「クラシック名曲物語り集成」 講談社文庫(1993)
- 神保m一郎 「クラシック音楽鑑賞事典」 講談社文庫(1983)
- 松本矩典 「オペラ名作名演全集」 講談社文庫(1995)
- 200CD「オペラの発見」 立風書房(1997)
- 山田治生ほか 「オペラガイド126選」 成美堂(2003)
- 池辺晋一郎 「バッハの音符たち」 音楽之友社(2000)
- 池辺晋一郎 「モーツアルトの音符たち」 音楽之友社(2002)
- 鈴木淳史 「クラシック名盤ほめ殺し」 洋泉社(2000)
- 玉木宏樹 「音の後進国日本」 文化創作出版(1998)
- 諏訪内晶子「ヴァイオリンと翔る」NHKライブラリー(2000)
- 樋口隆一「バッハ」 カラー版作曲家の生涯 新潮文庫(1985)
- 田辺秀樹「モーツアルト」 カラー版作曲家の生涯 新潮文庫(1984)
- 平野昭「ベートーベン」 カラー版作曲家の生涯 新潮文庫(1985)
- 前田昭雄「シューベルト」 カラー版作曲家の生涯 新潮文庫(1993)
- 土田英三郎「ブルックナー」 カラー版作曲家の生涯 新潮文庫(1988)
- 森田稔「チャイコフスキー」 カラー版作曲家の生涯 新潮文庫(1986)
- 三宅幸夫「ブラームス」 カラー版作曲家の生涯 新潮文庫(1986)
- 遠山一行「ショパン」 カラー版作曲家の生涯 新潮文庫(1988)
- 船山隆「マーラー」 カラー版作曲家の生涯 新潮文庫(1987)
- 三光長治「ワーグナー」 カラー版作曲家の生涯 新潮文庫(1990)
- 小宮正安「ヨハン・シュトラウス」中公新書(2000)
- 佐久間 俊「音楽三昧放浪記」誠文堂新光社(2005)
- 佐久間 俊「続直熱管アンプ放浪記ー失われた音を求めて」誠文堂新光社(2002)
- 佐久間 俊「直熱管アンプの世界ー失われた音を求めて」誠文堂新光社(1999)
- 山口 孝「ジャズオーディオエイクアップ」誠文堂新光社(2004)
- 寺島靖国「ジャズオーディオ快楽地獄ガイド」講談社(1998)
- 菅原正二「ジャズ喫茶ベイシーの選択」講談社α文庫(2001)
- 後藤雅洋「ジャズの名演・名盤」講談社現代新書(1990)
- 内藤遊人「はじめてのジャズ」講談社現代新書(1987)
- 岡田暁生「西洋音楽史」中公新書(2005)
結論から言えばこの程度しか読んでいないから何も言えないのだ。やはり楽譜が読めない素人に悲しさか。丸山真男のようにスコア-を丹念に読めれば、詳細な機微が検証できたのかもしれないがいまさら自分の無才を愚痴っても仕方ない。自分の数千枚のCDが財産なのだから、1枚1枚丹念に聞いて行くしかなかろうと言うのが結論か。
上にリストした音楽関連書籍とほぼ同じ本について、サイト「本で聴く音楽」において林侘助氏が概要を書いておられるのでアクセスしてはいかが。