J.S.バッハ  「無伴奏フルートのためのパルティータ」

無伴奏フルート曲の最高傑作・・・後にも先にも是しかない・・


無伴奏フルート曲というとY.SバッハとC.P.Eバッハ、テレマンの3曲が有名である。フルート(横笛)は1703年に登場し、表現力に富みダイナミックなコントラストが要求される時代の要請によって、従来のデリケート(繊細)なリコーダ(縦笛)に代わって一躍音楽界の寵児になった。プロイセン王フリードリッヒ2世によってブームになったことは有名である。澄み切った晴れやかな音を持ち、牧歌的な雰囲気、自然な感覚、軽やかさ、優しさを兼ね備えた高音メロディー楽器として、オーボエやバイオリンと競い合うまでになった。

バッハのフルートのためのソナタとして次の4曲が真作だといわれている。

次の2作については真偽のほどは定まっていない。

ジャン=ピエール・ランパルによる演奏CDでは(1985 DDD  CBC/SONY 下の写真左)、全てのソナタとパルティータを録音している。私がこのCDを聞いて文句なしに傑作と感じたのは、12分ほどの舞曲「無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013」とソナタ ホ短調 BWV1034の第1楽章アダージョであった。あとはそれぞれいい曲ではあるが似たり寄ったりで独自性が無い。「無伴奏フルートのためのパルティータ  BWV1013」は1717年ごろの作品で、本来重音は出来ないはずのフルートにもポリフォニー的な味わいを持たせた名曲である。テレマンの「無伴奏フルートのための幻想曲」が全く軽やかに流れるだけの作品に留まっていることからすると、バッハの無伴奏パルティータは隔世的に構成が感じられる曲である。

バッハ「無伴奏フルートのためのパルティータ  BWV1013」は一応舞曲の形をとるが、簡単には速度指示程度の意味しかない。アルマンドは美しい旋律と通り抜けるような風が感じられ、クーラントも同様な構成である。サラバンドがこのパルティータ曲の白眉をなす。喩えようも無く哀切なメロディーが特徴である。ブレー・アングレーズは活気に満ちた軽快なメロディー、それでいて流されない構造が見られる。

一方、テレマン 「無伴奏フルートのための幻想曲」(下の写真右)は一般の音楽愛好家を対象とした技術的に難しくないことを狙った曲である。バロックというよりフランスロココ風の一定の書法に従わない気楽な小品集である。一本のメロディーが軽やかに流れるだけの小品の寄せ集めである。


無伴奏フルートのCDより
J.S.バッハ  「無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013」 
ジャン=ピエール・ランパル(63才)(1985 DDD) CBC/SONY
テレマン 「無伴奏フルートのための幻想曲」
 ジャン=ピエール・ランパル(50才)(1972 DDD) DENON
J.S.バッハ  「無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013」 ジャン=ピエール・ランパル テレマン 「無伴奏フルートのための幻想曲」 ジャン=ピエール・ランパル
 


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