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綾戸智絵を知らない人の為に略歴を記す。生まれは大阪。大阪のクラブでピアノ伴奏のアルバイト。高校卒業後米国ロスへ。84年よりニューヨークでソロボーカリストとして活躍、ゴスペルとの出会いがその後の彼女の方向を決めた。黒人と結婚して男児をもうけ離婚して91年帰国。神戸在住。自主制作CDとして1994年[A song for you]、1996年[Only you]、1997年[But beautiful]を発表。新宿のジャズクラブ[DUG]でステージを踏んでいるところを、元外科医で名古屋ジャズクラブの創設者「ドクター・ジャズ」として有名なセッションの仕掛け人内田修氏に認められ、1998年アルバムCD「For all you know]を発表。一躍全国区デビューを果たす。

その後は、立て続けに次のアルバムCDを1年に2枚のペースで大量生産。2004年末現在でオリジナルアルバムを14枚発表した（すべて青山にあるeast works entertaiment というレーベルより出されている）。なんと2001年には芸術選奨文部科学大臣新人賞をゲット。歌う道具として体の一部となったピアノの弾き語りのエンターテイナーとか、ゴスペル、楽器を口でまねるスキャットは超一流でネイティブ英語を操れるジャズミュージシャンとか、ジャズも歌える吉本芸人とかいろいろ形容されている。今日の智絵の声は、乳がん手術後の制癌剤で声帯をつぶされて声が出なくなったのだが、息子のイサ君が智絵の足に物を落としたときに発した「イタッ！！！」という声で復活したようだ。声帯だけで声を作るのではなく腹から、全身から声を絞り出すようだ。

ここにレビューした1998〜2004年の綾戸智絵の14のアルバムは曲数にして（ダブル録音もあるが、違った歌い方をしているのでカウントする）約190曲からなる。曲はバラエティに富んでおり、ジャズに限らずポピュラー曲もこなしている。最近は選曲を人に任せて、綾戸智絵のイメージの幅を広げているようだ。自分で自分を再発見できるそうだ。綾戸智絵の魅力を纏めると、

• 分厚い声を全身から絞り出す、黒人っぽい歌い方。ゴスペルに代表される。
• 本場のジャズがネイティーブイングリッシュのように聴こえる歌唱力。みなぎるパワー。
• 芸達者なスキャット、特にトロンボーンのスキャットは超一流だ。
• ピアノ弾き語りの不思議な説得力。歌の一部と化したピアノ。
• 観客を盛り上げるエンターテイナー性。大阪人の人を惹きつけるおしゃべりとサービス精神。
• バンドとの一体感。優秀なスタッフ。