岩波書店同時代ライブラリー(1996年)

日本人の美意識と日本絵画の特徴

日本と西洋の美意識の比較
- 日  本 西  洋
美意識 1:心情の美学
2:小さいもの、愛らしいもの
「縮小された世界」視点の移動・複数の視点
3:清らかなもの
否定の美学・余白重視の美学
モティーフのクローズアップ
1:客観的・合理的な幾何学の美
2:力強いもの、豊かなもの(ギリシャの美)
3:完成された空間・・・遠近法(視点の固定)
空間意識 1:空間の連続性「連続の美学」
巻物形式(旅もの)
2:非対称性に美を見る(数奇屋つくり)
3:平面性
4:線と色による面構成
1:画面の枠による空間構成
完結性の美学
2:幾何学的空間の美
左右対称の美、黄金分割などの原則
3:3次元的実体世界・・・らしく表現
陰影法(円と球との区別を影により実現)
描く対象 1:物の中にある精神、心、形、霊
心情的世界
2:観念主義(かたの思想)
1:物質と精神の一致
2:唯物主義(ものの思想)


日本画技法の特徴
- 日本画代表例 日本画技法 西洋画技法
視形式 1:平面的物体
肖像画で顔は斜め、体は正面向き
2:線的輪郭
洋画家でも晩年の日本回帰が見られる
1:エジプト画でも顔は側面、体が正面
2:ギリシャからロマン派にいたるまで自然らしい表現が伝統であった。
3:キュービズムやピカソから多面表現
枝垂れモティーフ 部分によって全体を暗示させるのは、江戸以来日本画の常套手段であった。 このような枝垂れモティーフは極めて少ない。ジャポニズムによるモネの睡蓮(水の習作・朝)以降のことである。
旅の絵 1:日常生活と異なった環境へ行くことを、時間的・空間的連続して風俗・風景を入れながら展開する。
2:絵巻物形式や浮世絵の連作もの(東海道五十三次など)
1:絵巻物形式は西洋には存在しない。
2:旅ものは移動する途中ではなく、到達したところでの体験を描く
装飾性 1:3次元の世界よりは2次元平面に固執する。
2:視点の移動(俯瞰図と水平視点の混合)
3:「装飾性の原則」金箔により平面性と装飾性が強調される。余白の切捨てにより構図の単純化。

4:尾形光琳による日本画の特徴の完成,
*モティーフの省略
*複数の視点
*クローズアップ 
*紋様化(服飾デザイン) 
*実用品や工芸品の美術化(襖・壁・茶碗・箱など)
写実性の原理


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