日本画の岩絵の具について



日本画で使用される絵の具は奈良時代から天然岩絵の具(いわえのぐ)と水干(すいひ)絵の具が主たる材料でした。天然岩絵の具は鉱物を砕いて粒子を作るためその色の種類は極めて少ない。また天然鉱物絵の具は乾燥や折り曲げに弱く剥がれ易かった。水干絵の具は焼き物の釉薬から由来する物で泥状で粒子はきわめて細かい。従って絹の上に絵を書く時にはこの水干絵の具を使用しいた。明治大正時代までの日本画にはこの水干絵の具が主に使用せられ、部分的に天然岩絵の具で鮮やかさをつけていた。水干絵の具は粒子が細かいため色に彩度がなく一様なおとなしい色になります。
ところが戦後「新岩絵の具」が発明され日本画は一変しました。「新岩絵の具」は粒子が粗いため色が深く鮮やかになります。日本画が急に鮮やかに美しく変身しました。これは日本画の革命です。そのかわり筆で書いくというより、色を載せてゆくことになります。色にむらが出やすく多数回色を置いてゆかないと地肌を覆う事ができません。そのことが技法上では色の重ね合わせというか複雑な色の調子が生み出されるわけです。「新岩絵の具」で細い線を書く事は基本的にはできません。砂絵にちかい取り扱いになります。事実筆を使用しないで膠を塗布した画面に絵の具を手で振りまく技法もあります。
絵の具は粒子状で3番から13番と番手が高くなるほど細かい粒子です。13番以上は粒子の全反射のため色が白っぽく見える関係から「白(びゃく)」と言います。絵の具の調整の仕方にもひとつのこつがあります。粒子状の岩絵の具を少し濃い膠液を滴々注いで指でよく練りこみます。団子状になったら適量の湯を注いで薄めます。膠と水の順番をまちがえてはいけません。粒子の表面に濃い膠の膜を作ってから、粒子の流れを良くするため水を加える事が基本になります。膠は冬季には直ぐにゲル状に固まりますので、つねに加熱しておきます。
岩絵の具の色の種類は例えば京都の吉祥というメーカによりますと約80種が入手可能です。各色にはそれぞれ荒さの番手が普通奇数番で3,5,7,9,11,13番があります。荒さによって色合い(彩度、深さなど)がかなり異なりますので使い分けによっては約500種の色があるともいえます。私はすこし深い美しい色が好きですので基本的に7番を使用し、薄い感じをだすために11番を使用する事多いようです。
最後に、日本画絵の具の楽しみに色の名前の優雅さがあります。例えば下記に心を引く名前を列記します。
古代錦、山吹、黄土、岱赭、紫紺、藤紫、紫紺末、辰砂、古代朱、利休鼠、緋、蘇芳、白群、浅葱、納戸、群青、緑青、白緑、群緑、鶯、鶸色、若葉などなど。



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